書店主フィクリーのものがたり

制作 : 小尾芙佐 
  • 早川書房
3.78
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本棚登録 : 621
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095701

作品紹介・あらすじ

これは書店を愛する人たちの物語――島に小さな書店が一つ。店主フィクリーは店内に捨てられていた幼児マヤに出逢う。フィクリーは愛情深くマヤを育て、成長していくマヤは本を好きになり……。

感想・レビュー・書評

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  • 小さな島で唯一の本屋を営む主人公。
    偏屈な男性が幼い女の子を育て、しだいに人と関わるようになる。
    とてもいい話でした。

    大学でポーを研究していたフィクリーは、妻の故郷で本屋を開きました。
    ところが妻がとつぜんの事故死。
    酒におぼれる彼に、意外な運命の扉がひらきます。

    本屋に女の子が置き去りにされたのです。
    2歳半のマヤ。
    思わず世話を始める彼が一時的なことと言いながら次第にほだされ、ふいに愛情を自覚することに。
    周りの人々も、心配して様子を見に来ます。
    なき妻の姉のイズメイや、その夫の作家、警察署長で人の良いランビアーズ。

    そして、はるばる島まで本の営業にやってきた取次店の女性アメリア。
    大柄でアンティークな服が好き、(ビッグバードというあだ名だった)ぽわぽわの金髪の彼女。
    自分の好きな本しか注文しない気難しいフィクリーと、しだいに心を通わせるようになってゆくのです。

    本を愛する気持ちがあふれていて、そんな人たちの交流に心温まります。
    泣けるけど~感傷的というのではなく、ちょっと距離を置いた寛容さやユーモアがいい。
    登場人物にいろいろな面があって、単純ではないのが魅力的ですね。

    各章のはじめに、フィクリーが好きな短編が紹介されているのもお楽しみ。
    マヤに向けて書き残したものということのようで、愛情あふれる内容なんです。
    本屋大賞で受賞したため知りましたが、これは素晴らしかった!

  • 孤独で偏屈な書店主が、店に置き去りにされていた幼児を育てることで変わっていく…というような紹介から受ける印象(ハートウォーミングなお話だろうな)とはかなり違う物語で、いやあ、良かったです。終盤の展開は好きなパターンではないけれど(「感動」を誘う安易な常套手段だと思ってしまう)、本書の場合は、過剰に情緒に流れることのないクールな書き方で、素直に読むことができた。

    最初のあたりは、主人公フィクリーの偏屈ぶりがおかしく、嫌いなものへの辛口評にクスリとさせられる。ミステリっぽい意外な展開もあって、どんどんひきつけられて読んでいくと、終盤は、本と本を好きな人たちへの愛であふれんばかりの言葉が並んでいる。ちょっと気恥ずかしくなるくらいだけれど、やっぱりここはぐっとくる。

    本を愛するフィクリーは、本を心の糧とし、言葉によって生きている。彼に自分と似たところを見出す本好きの人は、少なくないだろう。そうだよねえと、あちこちで頷きながら読んだ。その中で一番心に残ったのは、フィクリーが、引き取ったマヤという子どもへの愛を自覚する場面だ。

    「酒に酔ったような、気持ちが浮きたつような感じがする。狂おしいような感じ。これが幸福というものだと思うが、そのうちこれは愛なのだと彼は気づく。」「愛というもののなんともやりきれないところは、ひとがひとつのものにくそったれな愛を注ぐと、あらゆることにくそったれな愛を注ぐはめになるということだ。」

    人を変えるのはやはり人との関わりなのだ。本や言葉じゃない。でも、本は(うまく言えないけれど)変わりうるように心を耕してくれるものではないかなあと思った。

  • とても良い時間でした。あたたかいお話なのですが、悲しいこともあり、でもそれがちょうどいいバランスです。主人公の書店主がだんだんと人と関わって行くのが優しくて。本屋のない町なんで、町にあらずだぜ、という台詞に大きくうなずきます。素敵な本の虫たちがたくさんです。各章のタイトルが短編?の名前にもなっていて、A・Jのコメントも良くて読みたくなりました。先日読んだ「本泥棒」が本編にちらっと出てきたのも嬉しかったです。本を読むっていいなぁ、と感じたお話でした。

  • なんとも心温まるお話だった。テンポよく一気に読んだ。映画化されそう。訳者あとがきにも書かれていたが物語のイメージが頭によく浮かんだ。

  • 最初はつまらない小説だと思って読んでいた。
    でも、読み進むにつれて、本が人にもたらす恩恵をよく書き表した小説だと分かってきた。
    本がつまらないという人は、この本を読まないだろうけど、本がつまらないという人に傷ついた本好きの人にはぜひ読んでほしい傑作。

  • アリス島にあるアイランドブックスが彼の店だ。
    ただでさえ偏屈のフィクリーは、妻を交通事故で亡くし、ますます偏屈に磨きをかけていく。
    ある日、彼の店に2歳の女の子が置き去りにされ、女の子の母親は入水自殺してしまう。曲折があったが、そこからフィクリーと女の子の暮らしが始まる。なぜ、その女の子を育てることになったのかは、運命としか言いようがない。
    後に、その背景がわかるようになるが、彼の人生はそこから穏やかに流れ始め、あらたに迎えた妻や、彼の書店に集まる善き人たちとの「島の書店」としてのものがたりが語られる。

    ものがたりの終盤、「古本屋」の章を読んでいると、急に涙があふれだす。ごく自然に涙が流れる。自分でも少し驚いたけれど、泣けてきて仕方ない。涙をふき、再び読み出すとアイランドブックスの新たなものがたりが動き出すさまに、心は暖かく、涙の跡は消えていく。

  • 島で唯一の本屋「アイランド・ブックス」の偏屈書店主の物語。物としての本への愛にあふれていて、本好きにはたまらなくなる。こうあってほしいという切ないファンタジーとして読んでしまった。

    地方では、その町で唯一の本屋なんてざらにあるけれど、はなぜこのようにならないのか寂しさとともに思う。

    どんなに主張をもった店主だとしても、生業としていくためには、住んでいる人がどんな本を買っていくかによって仕入れも変わってくるよね。
    そういった意味では、本屋さんはそこに住む人々を写す鏡でもあるとも思う。読者として本屋を変えていこう!

  • 主人公は、島で唯一の小さな書店を営むフィクリー。
    偏屈で孤独(だった)彼の物語。

    交通事故で妻を失い酒に溺れる毎日、唯一の財産とも言えるポーの「タマレーン」を盗まれ、彼の本屋に女の子が置き去りにされた。

    彼女の名前はマヤ。2才半。
    不思議と気があった彼ら。フィクリーは、マヤを養女にする決意をする。
    そこから彼の世界が広がっていく。
    何かと世話になった警察官ランビアーズ。
    男やもめで偏屈なくせに女の子を育てるなんて!と心配してやってくる島民たち。
    ある時、傲慢ともいえる態度で拒絶した一冊の本。
    それを紹介したセールスマンの女性。


    登場人物たちの本への愛情がすごく愛おしい。
    「本屋のない町なんて町じゃない」と本屋を開業しちゃう彼ら。
    本なんてほとんど読まなかったのにマヤを心配して本屋に通うランビアーズは「本屋はまっとうな人間を惹きつける。」とまで言う。
    本屋の2階で育った、とてもとても羨ましいマヤ。

    そして、各章の初めに、フィクリーが好きな短編と短い感想がつけられているのがなかなかよかった。

    (おばあちゃんに死神がストーリーテラーの物語を薦め、クレームがくるくだりに笑ってしまった。)

  • 請求記号:933/Zev
    資料ID:50082494
    配架場所:図書館1階東館

  • 島でただ1つの本屋「アイランドブックス」の書店主フィクリーはとても偏屈で、自分の好きな本しか仕入れない。ある日、書店に2歳の少女マヤが置かれていて、フィクリーはマヤを育てることになる。マヤと過ごすうちに、フィクリーは少しずつまあるく、他人のことを考えるようになっていく。マヤのいる書店を中心に、島の人々は本を読むようになり、本を通じて、人が繋がっていく。本が好きな人たちの、愛の物語。

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