書店主フィクリーのものがたり

  • 早川書房
3.67
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本棚登録 : 1322
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095701

作品紹介・あらすじ

これは書店を愛する人たちの物語――島に小さな書店が一つ。店主フィクリーは店内に捨てられていた幼児マヤに出逢う。フィクリーは愛情深くマヤを育て、成長していくマヤは本を好きになり……。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で本を探していると目につくのは「本屋」「図書館」「司書」などの本にまつわるワードがタイトルに含まれてたりする作品なんですが、見つけるとついつい手を伸ばしてみたくなりますよね。もうこれは猫じゃらし的誘引効果で本好きの本能をくすぐったりされるんですよね。って皆に同意を求めながらも手に取ってしまったのがこの作品でした。(本当は解錠師ってタイトル探していたんですけど見つからなくって・・・テヘペロ)

    本を開くとウィットに富んだアメリカンユーモアが溢れていて幼い頃に見たアメリカのホームドラマを思いだしました。人前で臆するとこなく意見を述べたり、いちいち理屈っぽいところが日本人の感覚とはちょっと違っているけど、観衆の笑い声が入っていて、ここが笑いどころなんだと学習したあの感じが蘇ってきました。ギャグが解るようになると観衆と一緒になって、拍手したり大声でAhahaって笑えるようになってくつろいでたんです。

    あらすじは、
    島にたった1軒の本屋さんを経営するA・J・フィクリーは妻を亡くして偏屈になっているところから始まります。お客さんも変わった人が出入りしてるようで、本を値引きしろだとか、薦められて買った本の内容があまりにも涙を誘い眠れなかったので返品するだとか。うぁークレイマーだぁってストレス溜まりそうになるんですが流石は偏屈なアメリカン、確固たる信念で客を追出したり、返品に応じたりでスマートでした。

    希少価値のある本を盗まれて以来、閉店後は鍵も掛けずにジョギングに出かけるA・Jが帰ってくると2歳半の女の子マヤが置き去りにされていて本好きな人に育ててもらいたいとか書置きが添えられておりマヤの里親になることを決意する。
    島の人々も心配して様子をみにくるようになって交流がはじまりとても心が豊かになる作品でした。ダークで悲しいとこはふんわりとベールで覆って明るく振る舞うような表現が無骨なんですが器用じゃないところがより涙を誘うんですよね。
    気に入った本しか店に置かないとゆう店主A・Jなんですが、各章のはじめに本の紹介がされていてこのレビューが皮肉たっぷりで教訓めいたものもあり面白くて楽しみになりました。
    すべてが海外の傑作短編小説のタイトルになっていたり、本にまつわる仕掛けや伏線が魅力的に迫ります。私は引用された小説はサリンジャーぐらいしか知りませんでしたがグイグイ引き込まれてしまいました。他のタイトルも知ってたらさらに興味をそそられると思いますしオマージュしてるとことか見つけてアハ体験する楽しみも増えそうです。
    本好きな人には堪らないと思えるようなお薦めの一冊でしたww

    • つくねさん
      かなさーーん、今晩はっw

      本にまつわるタイトルはひきつけられますよねっw
      あと、食堂とか喫茶店とか食にまつわるタイトル。
      2つあわ...
      かなさーーん、今晩はっw

      本にまつわるタイトルはひきつけられますよねっw
      あと、食堂とか喫茶店とか食にまつわるタイトル。
      2つあわせれば反則級の吸引効果ありますよね。「居酒屋図書館」とかっw
      この本に出てくる人みんな読書好きなんですよ。ミステリーの要素もありますし楽しませてくれました。日本人作家のような繊細な表現には乏しいかもですが大雑把で個人主義な感覚は新鮮に映りましたっw
      かなさんのレビュー楽しみにしてますね (*'▽'*)
      2023/09/06
    • かなさん
      しじみさん、こんばんは♪なんか笑えるっ(*^▽^*)

      「居酒屋図書館」これいいっ!!
      めっちゃいいっ!!
      もし、そんな作品があれば...
      しじみさん、こんばんは♪なんか笑えるっ(*^▽^*)

      「居酒屋図書館」これいいっ!!
      めっちゃいいっ!!
      もし、そんな作品があれば、
      速攻買いますっ(^O^)/

      あ、この作品図書館にありそうなので
      そんなにすぐには無理だけれど、
      いつか、読みますね♪

      2023/09/07
    • つくねさん
      かなさん、こんにちはww

      「居酒屋図書館」いいでしょww
      なんておもってたら原田ひ香さんが「古本食堂」とか
      出してるのみつけて笑っ...
      かなさん、こんにちはww

      「居酒屋図書館」いいでしょww
      なんておもってたら原田ひ香さんが「古本食堂」とか
      出してるのみつけて笑ってしまいました。
      流石は売れっ子作家さんですねww
      2023/09/08
  • 小さな島で唯一の本屋を営む主人公。
    偏屈な男性が幼い女の子を育て、しだいに人と関わるようになる。
    とてもいい話でした。

    大学でポーを研究していたフィクリーは、妻の故郷で本屋を開きました。
    ところが妻がとつぜんの事故死。
    酒におぼれる彼に、意外な運命の扉がひらきます。

    本屋に女の子が置き去りにされたのです。
    2歳半のマヤ。
    思わず世話を始める彼が一時的なことと言いながら次第にほだされ、ふいに愛情を自覚することに。
    周りの人々も、心配して様子を見に来ます。
    なき妻の姉のイズメイや、その夫の作家、警察署長で人の良いランビアーズ。

    そして、はるばる島まで本の営業にやってきた取次店の女性アメリア。
    大柄でアンティークな服が好き、(ビッグバードというあだ名だった)ぽわぽわの金髪の彼女。
    自分の好きな本しか注文しない気難しいフィクリーと、しだいに心を通わせるようになってゆくのです。

    本を愛する気持ちがあふれていて、そんな人たちの交流に心温まります。
    泣けるけど~感傷的というのではなく、ちょっと距離を置いた寛容さやユーモアがいい。
    登場人物にいろいろな面があって、単純ではないのが魅力的ですね。

    各章のはじめに、フィクリーが好きな短編が紹介されているのもお楽しみ。
    マヤに向けて書き残したものということのようで、愛情あふれる内容なんです。
    本屋大賞で受賞したため知りましたが、これは素晴らしかった!

  • 原作からなのか、翻訳のためか、分かりづらい文の展開がいくつかあった。人生の転換と儚さが描かれていた。

  • 愛する妻を交通事故で亡くし偏屈になっていく書店主フィクリー。孤児であるマヤの里親になる事や、好意を寄せる女性との出会いなど、人との繋がりで少しずつ人柄が丸くなっていく様が微笑ましかった。
    人生何が起こるか誰にもわからない、とはこういう事を言うんだと思った。
    店の希少本が盗まれるというミステリー要素もあり、先が気になりながら読み進められた。

  • 島で唯一の小さな書店「アイランド・ブックス」の店主、フィクリー。愛する妻を事故で亡くし、1人きり本を売る日々を送るうちに、偏屈な性格になっていた。
    ある日、書店の中にぽつんと幼女が置き去りにされた。幼女の名前はマヤで、彼女の若い母親は遺体で発見された。
    フィクリーは戸惑いながらも使命感を覚え、マヤを引き取り育てることに決める。そして時間は過ぎ、フィクリーは再び女性を愛することが出来るようになり…。

    物語の冒頭、主人公のフィクリーはとても偏屈で嫌な男として映る。だけどそれには抱えた悲しみとか孤独感とか理由があって、読み進めるにつれて彼の人間的な魅力がどんどん明かされていく。
    フィクリー以外もキャラクターがとても魅力的。ほんの少しずつ悪い心を持ち合わせていたりするところが人間臭くてリアル。
    フィクリーの亡くなった妻の姉・イズメイ、フィクリーの友人であり警察署長のランビアーズ、フィクリーの後の妻で編集者のアメリアのキャラクターがとくにとても好きだった。

    ポップな雰囲気だけど、人間関係の入り組み方がけっこう複雑だったり、悲しい死が訪れる場面もいくつかある。だけど悲壮さをあまり感じないのは恐らく、前向きに強く生きる人々が描写されているから。
    フィクリーの娘となったマヤは聡明な少女へと成長し、書店主の娘らしく文学の才能を発揮し始めるところも素敵。マヤが小学生になり学校の課題で書いた掌編が出てくるのだけど、とても素晴らしい内容だ。

    各章の冒頭に、実在する本がたくさん登場するところが面白い。その本についてフィクリーが語り、そして次のページから始まる本編とも関わっていく、というつくり。
    オコナーやサリンジャーなど有名な作家の本も取り上げられていて、また読みたい本が増えてしまった。

    悲しく思えたラスト近くの後に訪れる本当の結末はとても希望的だった。
    誰かを想う気持ちが人の生き方を変えることは現実にもある。そういう人々の生き様を、温かい気持ちで見届けられる結末だった。

  • 孤独で偏屈な書店主が、店に置き去りにされていた幼児を育てることで変わっていく…というような紹介から受ける印象(ハートウォーミングなお話だろうな)とはかなり違う物語で、いやあ、良かったです。終盤の展開は好きなパターンではないけれど(「感動」を誘う安易な常套手段だと思ってしまう)、本書の場合は、過剰に情緒に流れることのないクールな書き方で、素直に読むことができた。

    最初のあたりは、主人公フィクリーの偏屈ぶりがおかしく、嫌いなものへの辛口評にクスリとさせられる。ミステリっぽい意外な展開もあって、どんどんひきつけられて読んでいくと、終盤は、本と本を好きな人たちへの愛であふれんばかりの言葉が並んでいる。ちょっと気恥ずかしくなるくらいだけれど、やっぱりここはぐっとくる。

    本を愛するフィクリーは、本を心の糧とし、言葉によって生きている。彼に自分と似たところを見出す本好きの人は、少なくないだろう。そうだよねえと、あちこちで頷きながら読んだ。その中で一番心に残ったのは、フィクリーが、引き取ったマヤという子どもへの愛を自覚する場面だ。

    「酒に酔ったような、気持ちが浮きたつような感じがする。狂おしいような感じ。これが幸福というものだと思うが、そのうちこれは愛なのだと彼は気づく。」「愛というもののなんともやりきれないところは、ひとがひとつのものにくそったれな愛を注ぐと、あらゆることにくそったれな愛を注ぐはめになるということだ。」

    人を変えるのはやはり人との関わりなのだ。本や言葉じゃない。でも、本は(うまく言えないけれど)変わりうるように心を耕してくれるものではないかなあと思った。

  • 本を愛する、書店を愛する人たちの物語。

    愛する人を失った時、癒してくれるのは何?
    それは人によってそれぞれですが、その一つは人との繋がり。

    愛する妻を事故で失って、投げやりになっていたフィクリーが前向きに生きていくようになったのには、そんな人との出逢い、繋がりができたから。

    そしてフィクリーにとっては、本も大きな役割を果たしていた。
    「ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ。ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。ぼくたちは読む、そしてぼくたちはひとりぼっちではない。」
    そう語るフィクリーだから。

    この本を読んで、ますます本を大切にしていきたいと思った。

    小さな島にあるたった1軒の書店を経営するのは、数年前に妻を交通事故で亡くしたフィクリー。妻の事故死以来、お酒に溺れることもあり、どこか投げやりな毎日を送っていた。

    そんな彼がとても大切にしていた本が盗まれた。そして、数日後、彼の書店に2歳になる女の子が置き去りにされていた。名前はマヤ。母親は自ら命を絶ったので、フィクリーはマヤを育てていく決心をする。

    マヤを育てていく中で、人との繋がりができてきて、フィクリーは変わっていく。

  • とても良い時間でした。あたたかいお話なのですが、悲しいこともあり、でもそれがちょうどいいバランスです。主人公の書店主がだんだんと人と関わって行くのが優しくて。本屋のない町なんで、町にあらずだぜ、という台詞に大きくうなずきます。素敵な本の虫たちがたくさんです。各章のタイトルが短編?の名前にもなっていて、A・Jのコメントも良くて読みたくなりました。先日読んだ「本泥棒」が本編にちらっと出てきたのも嬉しかったです。本を読むっていいなぁ、と感じたお話でした。

  • 読み始めた時には思ってもいなかった展開だった。
    店に捨てられていた子供を引き取り
    男手ひとつで育てあげ、というのは正直現実味が無いようには思う。

    本と娘への愛情に溢れた柔らかいお話。

  • 海外文学に詳しくないので、出てくる本を読んでいない・知らないことが悔やまれる!
    最初は独特の文体(訳)で読みにくいし、登場人物の関係性も中々頭に入ってこなかったけれど、マヤが出てきてから一気に読めました。話の一つ一つの区切りは短いので(短編小説が主人公が好きだから?)、文体に慣れれば無理なく読めます。
    心温まるストーリーではあるのですが、ミステリー要素もあり、読み応えがありました。

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