- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152095770
作品紹介・あらすじ
個人情報と引き換えに完璧な生活が約束されるアガスティアリゾート。安全と安心に満たされて生きることに、人間存在の自由と幸福――未来の姿はあるのか?
感想・レビュー・書評
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世界観が素晴らしい。作者の頭脳明晰なことが際立っている。近未来を予測させる内容で、非常に面白く読ませて頂いた。
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アガスティアリゾート
マイン社が運営するサンフランシスコ沖合の特別提携地区。そこは住人が自らの個人情報(視覚や聴覚、位置情報などのすべて)への無制限アクセスを許可する代わりに、基礎保険によって生活全般が高水準で保証される。
しかし、大多数の個人情報が自発的に共有化された理想の街での幸福な暮らしには、光と影があった。
リゾート内で幻覚に悩む若い夫婦、潜在的犯罪性向により強制退去させられる男、都市へのテロルを試みる日本人留学生。
SFの新世代を担う俊英が、圧倒的リアルさで抉りだした6つの物語。
そして高度情報管理社会に現れる【永遠の静寂(ユートロニカ)】とは。
第3回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作
(あらすじより)
十二国記後、すっかり冷めてしまった読書熱。
ようやく回復してきた!
1ヶ月くらい風邪も引いてたし… -
――
此処は、どちら側なのだろう。
さてこれを、いつまでディストピア小説として読んでいられるのかが心配なところである。そういうところも含めてポスト・ディストピア小説、と銘打たれているのだろうけれど、果たして本当にポストなのか。もしかしたらこれって手前なんじゃないだろうか。
ディストピア建造中?
未完成のディストピア、って書いてみてまぁディストピアの時点で完成はしてないよな、と一旦落ち着いたわけですが、こういう、現行の法やシステムに則って世の中がディストピア化していく途中、というのもぞっとしない。
リゾートという形で現出するディストピア。あるいは、一見理想郷にも見えるアガスティア・リゾートを抱え込んでしまったその世界全体がもう、ディストピアと云えるのか。
リゾート以外でも情報等級、であるとか情報のやりとりはされている様子なので、ある程度の管理社会にはなっているようだけれど…云々、って、そういう過程を見られるのが特に面白かったです。
なんつーか、ディストピア作品って所謂「こんな社会は嫌だ」ってテーマよりも、こうならないために我々に何が出来るのか、という要素のが強くなってきてるのかもしれない。管理社会が既に荒唐無稽でなくなっているいま、例えば管理社会ネイティブ、被監視ネイティブみたいな存在さえ簡単に想像出来て。それは畏れ、を想像することが難しくなっていくことになるのかしら?
自分を監視する視線の消失=神の消失、と繋げていいのかどうか。
しかしどちらかと云うと、ここで描かれるリゾートの適合者はむしろ、狂信者の態度に似ている。だとすると適合出来ない皆は不信心になるのか? いま既に神は消失していて、技術が神の姿を模しているのか。
いやー、お天道様が見てるぜオラ、くらいのがいいかなぁ…
☆3.8。面白かったです。
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最近出た文庫本の帯にこぞって高評価の評が載っていたので、とりあえず第一作のこちらを手に取る。
章立てしていたので長編かと思いきや、中身は連作短編集といったところ。といってもそれほど有機的に繋がっているというわけでもないので、もう少しうまくそれぞれが絡み合っていると良かったように感じる。
ただ内容は一部のSFにありがちな排他的とも言える難解な部分がほとんどなく、いたって読みやすい。評価は保留に近いが読んでいる間は楽しかったので、先の書いた文庫本にも手を出してみたいと思う。72 -
GAFAを想定させる会社にすべての個人情報を売り、監視させることで自由、報酬を得る社会を描いたSF連作短編集。
世界観とそこに悩む人々の心情が良く描けていると思いますが、主人公がそれぞれ異なる連作短編で、作者が描きたいことは理解できるのですが、人間がやや薄い印象を受けました。 -
短篇で、色々な角度からユートロニカの姿を描く
終わり方は、古い思想と新しい概念の融合による救いなのかもしれないし、新しさの受容ができない人は古い思想の残骸に頼るしかないという当然の答えなのかもしれない
もう少し書き込んで欲しかった気もするけれど、クリアで乾いた読後感が心地良い
著者プロフィール
小川哲の作品





