道程:オリヴァー・サックス自伝

  • 早川書房
4.13
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本棚登録 : 159
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152095893

作品紹介・あらすじ

今夏ガンで亡くなった、脳と患者の不思議に魅せられた著者が、オートバイに夢中の奔放な青年時代から医師として自立する際の懊悩、世界中で読まれた著作の知られざるエピソードを綴った衝撃の自伝

感想・レビュー・書評

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  • 「妻を帽子と間違えた男」「火星の人類学者」を著した著名な脳神経科医が自ら綴る、波瀾万丈の生涯。

    ユダヤ系の医者の家系で統合失調症の兄を持ち、自らは相貌失認症で片頭痛持ち。同性愛者で無類のバイク好き。ウエイトリフター。博物学、化学史、植物学(シダやソテツ)に興味関心が深く、そして根っからの物書き、ストーリーテラー。詳細な日記をまめに綴り、両親や友人達への手紙も欠かさない(なんと、日記帳は千冊近くになるという)。薬物常用者でもある。「内気で、自信がなくて、臆病で、従順」。

    とても感性豊かな著者。死にかけたことは数知れず、理不尽な批判を浴び挫折を味わったこと数度。まさに波瀾万丈の人生だ。多くの友人に愛されながらもこれだけトラブルに見舞われると言うことは、著者に他人を誤解させる何かがあるのかな。

    迸り、溢れ出る文章の数々。著者のビビッドな描写、叙情的な文章には、読者を引き込む強い力がある。怪我や病気の治療の際に、自らの脳や体の症状について実況中継的している部分もなかなか面白かった。ジルボルト・テイラー「奇跡の脳」を思い出す。

    個々の症例を詳細に観察し「臨床物語」にビビッドに書き起こし、また一般化して神経学の学術論文にまとめる。この両刀使い、同業者から無視されたり批判されたり、だいぶ辛い目に遭ったようだ。でも、今や著者の様々な功績、揺るぎないものになっているんだろうな。

    「手話の手法」「音楽嗜好症」「色のない島へ」など、著者の著作をもっと読んでみたくなった。

  • 訳者あとがきによれば、本書の翻訳作業が佳境に入った頃、著者の訃報を聞いたとのこと。そのタイミングも含めて最初から最後まで驚きの一冊。
    エピソードのひとつひとつの情報量が多くて医学的なことは分からないこともあるのだけど、家族のこと、恋愛のこと、波瀾万丈でドラマティック、かけがえのない人生を丸ごと書き残し広く共有してくれたことに感謝。映画『レナードの朝』撮影時の話も必読。S氏推薦本。

  • 7月新着

  •  12歳のときの通知表に <やりすぎなければ成功する> と書かれた少年がバイクに、化学に、ウェイト・リフティングに、同性愛に、サーフィンに、ドラッグに‥‥とありとあらゆることに首を突っ込んで、ひたすらやりすぎながら神経生理学の世界を突っ走った脳神経科医の自伝。「レナードの朝」や「音楽嗜好症」等々の世界をうならせた著作は、このようなエネルギーの持ち主でなければ生まれなかったのかもしれない。
     それにしても60年代のヒッピーの先頭を走っていたのも若きオリヴァー・サックス先生であったという話は、ヒッピー文化の多様性と深さを知るうえで大いに参考となるエピソードといえるだろう。

  • 誠に素直で誠実な自伝に勇気を頂きました。安らかにお眠り下さい。

  • レナードの朝の作者だとは知らず読み始めたが、一気に引き込まれた。
    しばしば医学は科学と感性の融合だと感じるが、オリバーサックス氏は誰よりもそれを分かりやすく伝えてくれた。他の著書も読んでみたい。

  • この本を通院先の脳神経内科の待合室で読んでいるとき、オリバーサックス急逝のニュースがテレビから流れてきて、しばらく無心状態になった思い出がある。
    その後に主治医の脳神経科医にオリバーサックス知ってるか尋ねたら、知らないと伝えられたのも印象的だった。専門家よりは一般人に知名度があるタイプの人なんだろうか。

    サックス氏の著書には中学生頃に出会い、夢中で読んで一時期医者になりたいと思っていた。
    彼の人生が丸々書かれていて、嬉しくも新鮮だった。彼自身のことはあまり知らなかったので、僕と同じかそれ以上に紆余曲折していて少し安心できた。

  • <blockquote>書くという行為は―筆が進んでいるときにはだが―ほかでは得られない満足と喜びを与えてくれる。テーマにかかわらず、書いていると別世界に引き込まれる。文字どおり無我夢中になり、気が散る考え、心配、関心事、さらには時間の経過さえも忘れる。そんなめったにないすばらしい心理状態にあるとき、私は紙がみえなくなるまで、とめどなく書くこともある。紙が見えなくなってようやく、もう暗くなっていて、自分が一日中書いていたのだと気づく。私は生涯にわたって無数の言葉を紡いできたが、書くという行為は、七十年近く前に始めたときと同じくらい新鮮で、楽しい。</blockquote>

  • 道程:オリヴァー・サックス自伝

  • 穏やかで人間好きな優しいお医者さん、という典型的なイメージを勝手にずっと抱いていたのが間違いと気づきました。珍しい症例を見世物的に並べるだけ、という批判に接したこともあり、しばらく著作を手にしていませんでしたが、未読の著作はもちろん、既読の著作もまた違ったところに重点を置いて、読み直したくなりました。
    想像以上に遥かに魅力的な人でした。
    ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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