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本 ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784152095961
作品紹介・あらすじ
生物に備わる交尾のための器官に関する研究の歴史は意外と浅いが、実は多様性のカラフルさでは随一。いまも論争の的である性淘汰と合わせ、生物の不思議と面白さが凝縮されたテーマを明かす1冊。
感想・レビュー・書評
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面白いことは面白いんだが、大規模雪崩のように襲ってくる様々な生物とその生殖器と交配サンプルの多さに、途中からちょっとしんどくなってくる。網羅?って感じ。オランダの生殖器進化研究者。生殖器研究の歴史、現在の研究最前線、古生物から人間までのありとあらゆる生物の性行為について。先日、性淘汰というか、少し前にプラムの『美の進化』を読んだが(鳥類学的な性選択とかの話)、進化とか性選択というと、オスが美しくなってメスに選ばれようとするという説明はとても受け入れやすい。本書では、受け入れられた後にも(交配が行われた後にも)、そうは問屋が卸さない、というような例が多数引用されている。子孫を残すというのはビッグディールなんやと、つくづく感じさせられた。
邦題が変ではあるが(主観)
いろんな意味で一読する価値のある本だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016年発行の本なので、古いといえば古い。多分、この本が発行された後にも新しい知見が出ていると思うけれども、それはそれとしてとても面白い。
本文が全体の77%で、残りは謝辞と訳者あとがき、そして参考文献という構成なので、途中で『あれ?もしかして終わっちゃう?』という若干の拍子抜け感はあった。
とはいえ内容は実に面白く多岐にわたっている。
以前読んだ『おちんちん学』よりも広く、また雄の交尾器だけでなく雌の交尾器についても書かれていて、雌雄の繁殖戦略の違いがわかりやすく伝わった。
性というテーマは、時に誤解を受け冷笑の対象になるのだけれど、人間の生き物としての本質的な好奇心の対象でもあるというのは事実で、知ることによってより良い生存を手に出来るだろうと思う。
とにもかくにも、雌雄の繁殖戦略の違いは興味深い。関連図書をまた読みたいと思った。 -
最近、『○○なんてことするのは人間だけだ!』みたいなセリフを聞かなくなったのは、生物の多様性が人間の範疇を超えていることが知れ渡ってきたからだろうか。
・オスのアゴとメスの腰の穴で交尾するコシボソダニ
・振動して音を鳴らすペニスを持つガガンボ
・メスの役割を押し付け合う雌雄同体のカタツムリ
・交接腕を付け根から切断し、自力でうねってメスの中に侵入するカイダコ
・ばね式の精包が爆発して皮膚から精子を侵入させるイカ
・同性の雄の死体を集団で死姦するマガモ
・交尾栓をつくる霊長類
マット・リドレーの『赤の女王』よりもカタログ的で例が豊富だが、論理と解説はその簡易版。
なぜそうなっているのかの探求よりも、刺激的な事例を集めることに心血が注がれている趣味本だが、
こちらを先に読んだほうが、後に仮説に対応する事例を思い浮かべられるので、理解の助けに出来るだろう。
生殖に失敗する個体は子孫を残せず、成功した性機構のみが時代に受け継がれる。
強いものでも環境に適応したものでもなく、生殖したものこそが存続するこの世界では、
これらの生殖システムのすべてが"正解"であることを本書から学べば、
人間が考える"多様性"が如何に矮小な範囲内であるかということを、思い知らされるだろう。 -
フォアプレイがまえがきとなっている時点で、すでに性的なニュアンスがプンプンの本書。
生物の誕生に必要な性交とそのための装置である生殖器を、様々な生物についてじっくりと観察した様子が、盛りだくさん。
ヒトの祖先にはペニスにトゲがあったらしく、その時代の雌は大変だったろうな、などどワケのわからない感想を抱いたり。
そんな雄と雌が別々の雌雄異体はもちろん、驚くのは雌雄同体のナメクジの性交。
もう、めくるめく生物の合体に、あたまがくらくらしてきそう(もちろんいい意味で)な本である。 -
2016.01.24 HONZで見つける。,
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各所の評判に違わぬ面白さ。
雄と雌で化かし合いをしているけれど、雌の方がやや優勢って感じですかね?(^^;
研究としてはそれこそどうやって繁殖しているのかという大事なところなのに、ちょっと本道から外れているような扱いになっている(なっていた)ところが気の毒ですね。(^^;
一般教育における性教育で学んだ知識とは幾分異なったことが事実だったりしそうなので、これは必読かも。 -
性器、性交といっても、種によって様々。
雌の体に穴を開け、直接性液を注入する生物がいるのには驚いた。
やっぱり、こうして生きているってのは奇跡なんだねぇと思わせる一冊だった。 -
生殖器という分野は何故だか、基礎生物化学の世界でも研究の対象とはされにくく、まして一般向け科学啓蒙書でも触れられてこなかった領域だという。オランダの生化学研究者である著者は、その原因は第一次性徴を自然淘汰の結果としてある意味当然視したダーウィンの説にあるとしてこれに異議を申し立てる。彼によれば、異性らしさの発現である第二次性徴のみならず、第一次性徴を体現する生殖器そのものが性淘汰、即ち異性の好みによる選別を受けているという。性淘汰は自然淘汰と異なり、例えば「より真新しいものは何か」といったアドホックな評価軸で相手を選別するため、ともすれば適者生存の前提となる「より適応したもの」とはかけ離れた方向に進化していく。これこそが自然界の生物の生殖器に呆れるほどの多様性をもたらしている原因だとするのだ。
この仮説が様々な生物が営む生殖行為を例に挙げながら解説されるのだが、とにかくこの実例が面白く、またよく調べたものだと思うほど細部にわたって記述されており生々しいことこの上ない。生殖器の解説がこれでもかと言わんばかりに羅列されるため満員電車の中で読むには細心の注意が必要だ。随所にニヤリとさせられる表現が散りばめられた(題材が題材だけに、か?)文章も魅力たっぷり。
この豊富な実例により、一見艶めかしくみえる様々な生き物の性の営みも、つまるところ精子と卵子の希少性のギャップを原因とする、雄と雌との戦略的なせめぎ合いだということが良く理解できる。なお、本書ではこのことを説明する理論について、「雌による隠れた選択(Cryptic female choice)」説と「性拮抗的共進化(Sexually antagonistic coevolution)」説を並置するが、僕には違いがよく理解できなかった。雌がイニシアチブを保持し続けるか、雄雌共に戦術を繰り出しあって終わりのない囚人のジレンマに入り込んでいくかの違いだろうか?まあ、著者によれば両者の違いは僅かだというから門外漢は気にしなくても良いのかも。 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:481.35||S
資料ID:95160347 -
生物の性器や性交渉の多様性に驚かされた
ヒトについての記述がメインではないのであまり構えないず読んでほしい
著者プロフィール
メノ・スヒルトハウゼンの作品





