貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで

  • 早川書房
3.53
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096111

作品紹介・あらすじ

金融危機を経験したウォール街の投資銀行家が25カ国を訪ね、生物学、行動経済学、古銭学などの最新知見を基に「お金」の魔力に迫る。ノーベル賞受賞者、伝説のFRB議長、元米国大統領らが絶賛

感想・レビュー・書評

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  • オススメできる。この本を通して、1)お金について考えるべき観点を多く得られる、2)歴史を通してお金というものを全体的に見る事ができる。それによって、お金とは一体何なのか、人間にとってそれが何を意味しているのか、深く考えるキッカケになる。今我々が接しているお金の形が全てではなく、絶えず変化している。これからのお金というものを考える礎になると思う。

    ただし、一部説明が不足している(あるいはコンテキストが必要とされており難しい)部分はある。正確に理解しながら読み進めるには時間がかかるかもしれない。また、何か明快な「答え」を探しているのであれば、それは自分で考える必要があるだろう。

  •  人間は食べものや住みかなど、生き残りに必要なアイテムを獲得するために色々なものを交換する。お金はその手段のひとつとして発明されたが、あらゆる生物の例に漏れず、人類にとって最大の目的は生き残りである。だから、ほかの生物に依存しながら日々健康の維持に努める。(p.39)

     かつてガラパゴス諸島を訪れたチャールズ・ダーウィンは、自然淘汰があらゆる生物種を結びつける共通の絆だということを認識した。そして同じ場所で、自然界には交換行為が遍在しており、すべての生物は生き残るために依存し合っているという事実を私はレイチェルから学んだのである。
    (中略)協調行動は進化にとって有利にはたらくことを認識した人間は、協力を促すために言語や手斧などの道具を発明した。そして、交換や協力を円滑に進め、生き残りのチャンスを高めるため、新しい道具を継続的に想像していく。貨幣の形状が何千年もかけて変化していったのは、交換が効率よく便利に行われるように改良されたからだ。(p.65)

     お金の起源をめぐる論争には終わりがないが、何が貨幣として流通していたかという点については全員の意見がほぼ一致している。価値と耐久性を備えた金属が、食糧に代わる原始貨幣としての地位を手に入れたのだ。そしてこれはメソポタミアの都市国家だけでなく、ナイル川流域の村にも当てはまった。(p.152)

     もっとも明快なのは経済学者ミルトン・フリードマンの説明だろう。「緑色の紙切れに価値があるのは、価値があると誰もが信じるからだ」という。
    ソフトマネーはなぜ創造されたか。
    ・利便性(金塊や金貨よりも扱いやすい)、抽象性(表象的思考能力を発達させたおかげで、価値の源泉を目で見たり手で触れたりする必要がなくなった)、普遍性(ソフトマネーを発行する機関が万国共通の金融制度を支える形態が標準になった)、権力(政治や経済に関する目標達成のために貨幣供給量を容易に変更し、望みどおりの社会を形成していく)。(p.186)

    iPadを使っているとき、iPadは消えてなくなる。
    あなたは本を読みウェブサイトを閲覧し、
    ウェブサイトに触れているあいだ
    テクノロジーに就て考えない。
    モバイル決済サービスのスクウェアも同じだ。
    テクノロジーは見えないところに消え去り、
    購入したばかりのカプチーノを味わうことに専念したいと思う。
    (ジャック・ドーシー6章表紙)

     ほとんどすべてのものがお金によって評価される世界で、信仰は避難所のような存在になり得る。世界中で洪水のように氾濫するお金を、精神的なダムのように押しとどめてくれる。宗教や芸術などの人文科学においては、富の蓄積へのこだわりが少なく、いかに生きるべきかが重視される。思いやりや寛大さや自己充足感が、人間としての判断基準になっている。それゆえ古代の宗教の文献や精神的指導者の教えを振り返ってみれば、お金の氾濫する世界で生きるための方法について役に立つ指針を得られるだろう。(p.312)

     ところで、世の中にはお金という物体そのものに興味を抱く人たちもいる。貨幣の表面に刻まれている芸術は、私たちが共有する過去について物語っているからだ。貨幣に刻印されたり印刷されたりしているシンボルは、単なる公正価格の表示ではない。過去の様々な社会や文化、さらには人間が築き上げてきた現代文明全体のなかで、評価されてきたものの実態を明らかにしてくれる。そこで私は世界各地に足を運ぶことにした。そしてあちこちで出会った人たちから、お金をもっとじっくり観察し、価値の象徴としての役割に目を向けることの大切さを教えられた。(pp.312-313)

     アメリカのコインは、視覚的な美しさを介して民主主義の普及を目指す大胆な試みであり、未だにそのプロセスは続いている。コインは芸術の一形態であり、しかも鑑賞する機会がすべてのアメリカ人に常に提供されている。多くの国民が触れることのできる唯一の彫刻品と言ってもよい。コインは政府公認の由緒ある美術品であり、あらゆる時代のアメリカ市民から支持されるように工夫されている。その事実が理解されれば、美的考察の対象としての価値も認識されるだろう。(p.320)

     私たちがお金をどのような角度から眺めるにせよ、お金のほうでも私たちを見返している。しかし、お金は私たちを待ってくれるわけではない。常に変化や移動を繰り返し、私たちの生活の様々な部分に入り込んでくる。しかも私たちは、往々にしてその事実に気づかない。お金についてじっくりと考えるようになってはじめて、その歴史が人間を形創ってきたことを理解できるようになる。(p.350)

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/626989

  • すでに文庫化までされている書籍です。
    目が弱い…頭もトロイ…から字の大きな単行本を買うんだ

  • 2016.04.23 HONZより

  • ?『貨幣の「新」世界史』。お金がどこからきたのか、どのように進化して、人とどのように関わってきたのか、そしてこれからどのようになっていくのか。ということを俯瞰しつつ、新しい研究の結果も踏まえて再解釈を試みる、という、良書だった。貨幣史の本も、併せて読みたい。?

    ?ハンムラビ法典からビットコインまで、と副題がついてるけど、ビットコインをがっつりと扱っているわけではなくて、あくまでお金(と価値)の普遍的な考察の一部として出てくる。なので、お金について考えたあと、ビットコインについてさらに知りたかったら、さらにほかの本を読むとより楽しいと思う。?

  • 数ヶ月前にビットコインが暴落した時に貨幣について興味が湧いたので、読んだ。筆者が貨幣について調べたありとあらゆることが書いてある。
    大変勉強になった気がするが、いかんせん色々な教科書をたくさん抜き書きしてる感じで、いささか退屈なで読み進めるのが辛い時もあった。けど、当初の目的はかなり達成されたので、総じて良い本だと思います。

  • やや話が散らかってるけどいい本です

  • 人類が誕生してから我々は800世代目にあたる。
    火を使って肉食ができるようになって胃袋は小さくなった。食料を保存できるようになった。

    認知バイアス(ヒューリスティック)によって合理的行動仮説は崩される。利用可能性ヒューリスティック、スキルの錯覚、損失回避、貨幣錯覚。

    イギリスからアメリカに渡った人の大半は債務者で、債権者から逃れるために船に乗った。

    金属主義者=ハードマネー。物々交換によって貨幣が生まれた。
    表券主義者=ソフトマネー。債務や信用供与の手段として生まれた。金の裏付けがない。

    ヤップ島のフエ。遠くの石灰岩の島から切り出してきたもの。海に沈んでも貨幣として流通した。

    古代の原子貨幣は、銀と小麦。
    古代エジプトでは労働者が受け取ったのはビールとパン。

    リディアの富の源泉は貨幣=シニョリッジを考案した=貨幣の改鋳によって差額を得る。
    ドラクマは古代ギリシャにさかのぼる通貨。

    カエサルはガリアから金を大量に略奪し、ローマの経済は繁栄した。ネロも同じ。ハードマネーの改鋳は景気を回復させる手段。ルーズベルトのニューディール政策も同じ。

    ソフトマネーは利便性が高く抽象性、普遍性がある。
    ソフトマネーはインフレを起こす。ゲーテのファウストの悪魔は将来の金の発掘を担保に紙幣の発行を提案する。その結果インフレになる。

    中国もドラゴンマネー。貸金庫の証書や受領書が流通した。

    フビライの紙幣は、銀による裏付けがあった。折に触れて銀と交換したが、やがて紙幣が大量発行されて信頼性が失われた。
    初期のソフトマネーは、悪魔との契約を交わしていて、最終的には支出を膨らませてインフレになる。

    フランスのジョンロー。銀行を設立しミシシッピー会社の株を売った=バブルの始まり。やがてはじける。

    ベンジャミンフランクリン=土地担保による紙幣の発行を提案した。

    リンカーンは戦費調達のため期限付きのグリーンバックスを発行した。しかしハードマネーの裏付けがあるソフトマネーが流通し始めた。

    戦争によって、各国は一時的に金本位制を離脱する。戦争が終わると金本位制が復活するが、金為替本位制という修正されたシステム=金の延べ棒としか交換できない=紙幣が金より多くても大丈夫=インフレが発生した。


    ニクソンショックによって、世界のマネーがソフト化。10%の外国製品に対する追徴税、金との交換停止。アメリカの株式市場は活況だった。

    中央銀行制度はスウェーデンで始まった。
    銀行に払い出されたお金は信用創造を産んで乗数効果があるが保険会社から買われた資産は乗数効果は働かない。

    1970年代のスタグフレーションは、ニクソンショックによるハードマネーからソフトマネーへの移行が引き金となったのではないか。

    アメリカの地下経済は2兆ドル規模。

    地域通貨、物々交換、ビズエクスチェンジ。
    一部地域ではすでに地域通貨がある。ニューヨーク州イサカのイサカアワー、パークシェアーズ、イコールドル、スイスのWIRなど。
    トーマスグレコ「貨幣の終焉と文明の未来」

    ビットコインは不安定性に注目すると価値貯蔵手段としての機能を果たせない。ビットコインは金と同様のデフレ効果がある。

    ビットコインはプロトコル=これを使ってデジタルなアイテムはすべてコピーされることなく移動できる。
    車のキーが携帯電話に入っていれば、車の所有権は携帯電話上を移動できる。

    ベラミー「顧みれば」=SF小説。

    クレジットカード、モバイル決済、モバイルコマース。
    レビューの投稿さえも通貨の代わりになる。

    老後の創造写真を見せると貯蓄に励むようになる。

    どの宗教も少ないほど良い=足るを知る、を強調している。

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