行動経済学の逆襲

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制作 : Richard H. Thaler  遠藤 真美 
  • 早川書房 (2016年7月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096258

作品紹介

人間は合理的。市場は正しい。こうした経済学の大前提に真っ向から挑んだ行動経済学。その第一人者が、自らの研究者人生を振り返りつつ、“異端の学問”が広く支持されるようになった過程を描く。

行動経済学の逆襲の感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって単に「面白かった」で終わりにしてしまう本ではなく、身近なあれこれに応用ができそうなヒントを与えられ、つい実践してみたくなるような、刺激に満ちた本だった。
    「行動経済学とは何ぞや?」に答える解説書でありながら、一人の「将来有望」とされたひよっこ学者が経済学にパラダイムシフトを起こすまでの軌跡を綴った自伝でもある。
    「革命」のきっかけは、著名な心理学者たちとの親密な交流がはじまりで、やがて彼らとの話し合いから心理学の要素を経済学に取りこみ、二つを結合させようと決意する。
    この二つの化学反応は、少しずつ周りからも支持を集め、貴重な資金援助を受け、発展していく。
    会議になれば、既存の大御所経済学者から集中砲火的に批判されていたが、やがて学問的な理論と実証を重ねて、彼らにも認めさせていく。
    行動経済学という新分野の学問を打ち立てた著者にはさらに隠れた目標があった。
    それは、行動経済学を使って世界をよりよくするという野心的なミッションで、すでにオバマやキャンベル政権下で担当部署まで設けられ、政策の立案に関わっている。

    常に合理的な行動をするエコンではないヒューマンである我々は、予測可能なエラーをするため、そのエラーを先回りして発生を減らせるのではないか。
    たとえば、自動車が通るセンターラインに眠気防止のデコボコの溝をつけたり、トイレの小便器にハエの絵を描き「飛び散り」を防いだり、退職準備貯蓄を増やすために自動加入方式を採用して煩雑さに対する躊躇を減らしたりして効果をあげている。

    「ナッジ」には、私たちの注意を引きつけて行動に影響を与える環境をつくるという特徴を持っているため、トイレでよく見かける「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」という注意書きも、この好例と言えるのではないか。
    ただし、この文面に反発を覚える人たちも少なくない。
    「私たちがしたいのは、人々が自分の目標を達成する手伝いをすること」と著者は言うが、常に行動経済学には人々の行動を官僚的に指図しようとしているという批判がつきまとう。

    著者も自戒を込めて語る臓器提供をめぐる政策の顛末は、多くの読者が注意して読まねばならない問題を含んでいる。
    最初に、この「オプトアウト」型の事例を知ったのは、ダン・アリエリーの著作がはじめだったと思うが、その頃からこれは大丈夫なのかと不信に思っていた。
    本書でも最初は効果があると思われた推定同意方式が、いかに最善の策ではなかったかを詳しく書いている。
    運転免許更新時に臓器提供の意思の確認を行なうイリノイ州の事例もそうなのだが、左派の社会改良主義的な考えの人たちのある種の鈍感さが如実に現れていると感じた。

  • 行動経済学の発展を当事者の立場からたどる。たんなる行動経済学の紹介をする本とは違い、異端視されていた黎明期から、無視できない地位を築くまでの足跡をたどれるようになっている。とくに本書では、「エコン」(経済モデルが想定する合理的な人間像)の牙城と見られていたファイナンスの世界に、多くのボリュームが割かれているのが特徴だ。
    自分が行動経済学に惹かれるのは、自分を含む「ヒューマン」がつい犯してしまいがちな罠を、あらかじめ知っておくことが有益だと考えるからだ。本書でも、実利のある知見はいろいろ得られる。たとえば(すくなくとも米国においては)株式投資のプレミアムは大きいということだとか、グロースよりバリューのほうが戦略としては正しいだとか。まぁ、でもそうした「実利」を求めるならもっとコンパクトにまとまったものがある。本書の価値は、ユーモアのある著者の語り口に乗せられつつ、たのしくこの分野の発展を理解できるということになるだろう。

  • 従来の経済学は最強の社会科学らしいのだが,偽なる前提から始まる論理体型体系なので,何を言っても真なので,およそ科学とは言えない。このとんでもない経済学をまともな学問にしようとしている流れの一つが行動経済学。とんでもなく間違っている従来の経済学の理論の馬鹿さ加減が分かる。こんな人たちが政策に口出ししていいのだろうか?
    マクロ行動経済学というのが必要なのだが,これはなかなか難しいらしい。

    原題は MISBEHAVING The Making of Behavioral Economics なのだが,なぜ「逆襲」になるのか意味不明。編集者?訳者?どっちがこんな日本語タイトルにしたの?

  • 仕事で必要になり、急遽ななめ読み。
    話題の行動経済学について、概略はわかったかな。
    なるほど、な内容でした。

  •  ノーベル経済学賞を受賞した作者による受賞内容に関する一般者向けの本で、自分の研究履歴を振り返りつつ、行動経済学の進展を説明している。この分野へ入る切掛けは、やはりカーネマンとトベルスキーである。
     作者は経済学者なので心理学より経済学に重心を置いてきたが、経済学の重鎮からは冷たく辛く当たられたようだ。アメリカにおいてもだ。
     21世紀になってようやく少しずつ理解者も増え、「ナッジ」を出版してから諸外国でも政治に活用し始め、”行動科学”として認知されている。
     経済よりも心理学として効用が先に実用化されたというのは、作者にとってはカーネマン/トベルスキーを超えられなかったという気持ちがあったのではないだろうか。素人門外漢の勝手な憶測だけど。

  • 知識ゼロでよんだので基本的な考え方のようなものはわかった。

  • 伝統的なミクロ経済学では、完全合理性、最適化、均衡が前提条件で演繹的な理論。数学や物理のような体系的な科学のように見えて、何か胡散臭い。一方、行動経済学は、その前提条件に疑いを持ち、ランダム比較実験や自然実験でまさに今のデータから結果検証しようとする。その対比、論争がすごく面白い。

  • 行動経済学の本って、オレにとっては、読みにくいんだよなー。

    従来の経済学の形式に慣れてるからかな。
    それとは、違うんだよね。

    従来の経済学の前提となってる仮定が間違ってる、というのは以前からずっと言われてきたことだし、オレもそう思っていたし、そこはよく分かるんだけど。

  • ノーベル経済学賞を受賞した著者だが、ぐうたらな人間と自身を称しておられる。謙虚!
    行動経済学ってなんじゃらほい、と読み始めたが、我々の生活に密接した学問であるのだな。とてもわかりやすくおもしろかった。

  • 先ごろ、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーによる書。行動経済学の発展を、自身の研究半生を振り返る形でまとめられている。誰と会い、どこから着想を得、どう行動したか、研究者の人生が垣間見える。500ページ近い大著だが、ちょいちょい笑わせてくれ、読みやすい。これで2800円はお得。

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