誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち

  • 早川書房
4.15
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本棚登録 : 533
感想 : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096388

作品紹介・あらすじ

田舎の工場で発売前のCDを盗んでいた労働者、mp3を発明したオタク技術者、業界を牛耳る大手レーベルのCEO。彼らのたどる道が奇妙に交錯し、音楽産業が根底から覆された過程を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • とても面白かった。
    訳者のあとがきにうまくまとめられているが圧縮ソフトmp3の開発にかかわるドイツの技術者の物語から始まり、世界的な音楽市場を独占するようになったある音楽エグゼクティブの物語と「シーン」というインターネットの海賊版を支配した音楽リークグループの中で音楽の流出源となった男のものがたりが絡み合っている。

    「そういえば」と思い当たることがいくつかある

    YouTubeから主な楽曲がどんどん削除されてつまらなくなった時期があって、著作権の問題が公に議論されるようになった。

    Jpopがチャートを席巻し、「今の若い人は洋楽を聞かないんだな」と思ったことなど。
    ギャングスタラップはリズムで踊れる人以外は英語がわからないと面白くないからだ。

    スザンヌ・ヴェガを知らなかったので「トムズダイナー」を聞いてみた。
    YouTubuにあった、画面にはVEVOの文字があった。

    音楽はライブで聞く人が増えたというのはわかる。録音・録画はいくらでも「キレイ」にできる。ライブでは実力がわかる。世界は変わっていく。

    • miwasekiさん
      読んで下さってありがとうございます!楽しんでいただけてうれしいです。
      読んで下さってありがとうございます!楽しんでいただけてうれしいです。
      2016/11/04
    • magatama33さん
      まさか訳した方に読まれていたとは(赤面)読んだ本を忘れないようにメモがわりにしています。ドイツで開発された技術や洋楽の流通する仕組みなどとっ...
      まさか訳した方に読まれていたとは(赤面)読んだ本を忘れないようにメモがわりにしています。ドイツで開発された技術や洋楽の流通する仕組みなどとっても面白かったです。
      2016/11/04
  • サブタイトルは「巨大産業をぶっ潰した男たち」。2000年くらいからの同時期に、かたやインターネットは普及し発展していき、かたや音楽産業の売上は右肩下がりになっていく。その中身を解剖するように見ていくと、僕の世代なんかではよく知っているmp3圧縮技術が時流を作った要となっていたのです。本書は日本でも少なからず影響のあった違法コピー音楽の面でのインターネット史・ノンフィクションといえます。

    本書は三つの観点からこのインターネット・音楽違法コピー史の内実をひも解いています。インターネットが市民権を得るずっと前から、後にmp3として結実する音響技術の研究を続けていたブランデンブルク氏が中心の音響チームのストーリー、つまり音楽コピーに続いていく技術面でのストーリーがまずひとつ。次に、CD製造工場から発売前のCDを盗みネットにリークするいわゆる「シーン」と呼ばれる世界でもっとも優秀なひとつの集団のなかにいてリーク元としての大物だったグローバーのストーリー、つまり違法コピー曲を世に広めた側のストーリーがふたつめ。最後に、ユニバーサル・ミュージックなどのエグゼクティブ職(お偉いさん)として音楽産業を引っ張っていたモリスのストーリー、つまり音楽業界の体質ひいていえば金を生むことを第一とするビジネス世界の体質が、顧客とする一般大衆に知らず与えていた影響が違法コピーの敷居を下げたともコピー禍を招いたともいえるその関連性のストーリーがみっつめ。これらを10ページから20ページの分量の章を順繰りに読ませていくかたちになっています。

    mp3を再生するソフト、「winamp」は僕も使っていたことがあります。スキン(ソフトのデザイン)を変えられるようになった頃だったので、もう終盤だったのかもしれません。その後、日本製のコーデックを手に入れて、個人的に、それもたまにCDをリッピングしたり、DTMで作成したファイル(自分で作った音楽)をmp3にして自身のホームページ上で一般公開したりしていました。どこかのサイトからダウンロードしたのは20曲もなかったと思うし、それに手に入れた曲はレンタルし直したりもしていたタイプなので、あまり「音楽を盗んでいた」感覚はないほうなのですが、それでも、そういう時代のそういう状況や場を知っていましたから、本書で描かれるさまざまなエピソードにはどこか自分と近い世界のことのように感じられるものもありました。また、世界的に有名な音楽シェアソフト・ナップスターも出てきますが、それほど記述は多くありません。

    本書の帯に「すでに知っている話と思うなかれ(NYタイムズ)」とあります。ほんとうにその通りで、ここまで「違法コピーの広まり」という事象が、偶然やタイミングのちょうど良さなどの要素がいくつも絡み合ったものだということには気付けていませんでした。当時とても勢いがあって台頭著しかったラップミュージックにしても、その歌詞の内容は非倫理的なものでした。殺人や強姦などを歌うものもあったようですし、効果音に銃声を用いた曲も聴いたことがあるような気がします。そうやって壊されていった道徳観が、違法コピーを拒絶するはずの心理的な壁をも壊していたともとれるのです。ミュージシャンが音楽で訴えていた自由や反権力などは違法コピーを作ったり聞いたりする心理と親和性があるものだったのに、違法コピーが無視できなくなるとミュージシャンが食べていけなくなるという現実的な問題を前に、引きはがされることになりました。これには、一般人が困惑して当然だったと僕は思います。ミュージシャンにも本音と建前があったのか、と見えたりもしましたから。今でもそうですが、そこのところをうまく、ミュージシャンとリスナーを繋げていくような言説は見なかったです。それがきれいごとでも、反対にまるだしの欲望でも、納得は生まれにくい案件なのではないかなあと思います。それだけ、音楽の、過去からの蓄積が定着していて、それらは違法コピーに対峙するようなものではなかったからだと言えるかもしれない。

    本書では、そういった細かな事実たちを見逃さず、しっかりライトを当てて語るようなところがあります(短く語るだけで読者に委ねるようなものもありますが)。それは音楽業界や研究者、消費者の世界の局所的な歪みのようにみえて、実は社会全体で看過している歪みだったりすることに気づくことになるでしょう。

    どうしてグローバーは音楽を盗むようになったのか。どうしてmp3が、他の似たような技術のようではなく、違法音楽コピーつまり音楽流出のための技術になっていったのか。そういったことも、「事実は小説よりも奇なり」というような展開の連続をしながら明かされていきます。

    はじめに書いたように、インターネット史の一面を知る内容なのですが、それにしたってエンターテイメント的に知ることができる本です。僕なんかにとっては、この違法コピーの当時の流れこそが、インターネット史を知る上では避けられない「負のメインストリート」として知っておくべきことだと思うくらいです。だって、ほんとうに大勢の人が違法コピーを経験していますから。Win98前後のころなんて、パソコンに詳しくなろうと思ったティーンならば、こういった世界を知るのはマストってくらいでした。そういう時代だったともいえます。

    そんな時代も、こういうふうに客観的に、そして整理されて伝えられるものになったというわけです。それでも、まだなかなか割り切れない部分を多く残しています。それは現代においてもそのままになっている課題がそこに眠っているからなのでしょう。分量は350ページほどですが、けっこう読み終えるのに時間がかかりました。むずかしくはありませんが、一章よむごとにふうと息を吐いて物想いに浸るような感じでした。今、40代半ばくらいの人で当時からインターネットに触れている人、またはそんな時代を知らない10代の人、どんな世代でも楽しめる本だと思いました。

  • 実に面白かった。90年代半ばから現在に至るまでの音楽業界を俯瞰する視点に、他に類を見ない圧倒的な説得力がある。ここまで徹底した取材ができるものかと驚くと同時に、さぞ語らせるのに苦労したであろう相手についても、ネガティブなことも含めて遠慮せずに書いていることに唸ってしまう。

    最初の章はmp3が世に出る前の裏話で、技術的なことはちっともわからないシロートにはちょっとつらい。次の章では田舎のCD工場に勤める若者、その次は大手レコード会社の幹部が登場する。この三つの話がかわりばんこに語られていくのだが、途中まではなかなか全体像が見えなくて、読み進めるのに苦労した。よくわからない用語がしばしば出てくるし。

    しかし、半ば過ぎたあたりからどんどん引き込まれていって、音楽のデータ配信や海賊版摘発に話が及ぶあたりからは、夢中で読みふけってしまった。三つの話は最後まで交わらないのだが、それが複雑に絡まり合って、現下の状況を作り出してきたのだということがじわじわと腑に落ちてきた。

    なんといっても一番すごいのは、海賊版mp3の大半がきわめて少数の組織されたグループから発信されていたことを突き止めたことだ。これには著者自身驚いたらしい。ウェブの広大で曖昧な拡がりのあちこちから、アナーキーにアップされたものだと思っていたのに。さらにその元となる新曲CDのほとんどは、ある個人が供給源だったというのだ。一介の労働者である彼は、既にその行為によって有罪とされ、服役した後出所しているのだが、そんなこと誰も知らなかったのだ。

    「著作権保護」というと、クリエイティブな活動を萎ませないために必要なことだという文脈で語られることが多いが、ことはそう単純な話ではないというのもよくわかった。著作権を保護するには海賊行為の摘発が不可欠だ。そこで業界と権力が結びつく。たくさんの予算をつぎ込んで、海賊行為を摘発することが、結果としては業界のごく少数の誰かさんの利得を守り、その懐に巨額の金を流れ込ませることになっている。「摘発」と言っても、たいていは見せしめ的に、軽い気持ちで曲をダウンロードしたユーザーが厳しく罰せられ、大元まで及ぶことはまれ。及んだとしても、そういう人たちは「有能な」弁護士の力で刑に服すことを免れている…。わりきれない話だ。

    金目当てで海賊行為に関わる人はもちろん多い。しかし、権力にクソ食らえと言いたいがために、あるいは、みずからの力量を誇示するために、無報酬どころか身銭を切ってまで、危険は承知でせっせと海賊行為にいそしむ人たちがいる。これをどうとらえたらいいのか、考え込んでしまう。

    著者は、10万曲を超えるmp3ファイルをハードドライブにため込んでいたが、「クラウドコンピューティングの出現で意味がなくなった」と、配信サービスに会員登録し、ファイルを捨てたそうだ。データの入ったハードドライブが処理業者のくぎ打ち器で壊され、ゴミの山に捨てられる場面が最後に書かれている。感傷的になってしまうが、しかたのないことだ、という気持ちなのだろう。そういう流れってもう止まらないものなのだろうか。私自身は、昨今の音楽状況にはとんと疎いのだけど、ここにも非常に大きな変化の波が来ているのだということをひしひしと感じた。


    ・CDの流出元になる若者の人生が活写されていて、心に残る。傑出したノンフィクションだが、こういう所は小説を読むような面白さもある。

    ・テクノロジー関連の記述内容はよくわからなかったが、技術者というものについては考えさせられる。mp3の開発者は、海賊行為を憎み、自分は必ずCDを買っていたそうだ。でもねえ、その技術があったからこそ海賊版が流布したわけで…。そういう技術はいずれ誰かが開発しただろうとは思うが。

    ・海賊版は年代的に(性質上も?)ラップと密接に関わっている。発祥の地米国のラップは実に反社会的なものなのだとあらためて認識した。日本のラップシーンについてはほとんど知らないけど、かなり違いがあるのでは?

    ・ITオンチを自認する高野秀行さんが、本書の感想として「音楽がタダだなんて知らなかった。そこに一番驚いた」と書いていて、そうだよねえと笑ってしまった。そういう人間にもこの本は面白い。

    ・データとして「持つ」ことも今や古臭いことのようだが、それよりもっと手前で、データではなく、愛着ある「もの」として所有したいという気持ちって旧世代とともに消えていくものなのだろうか。私は「本」というのは結構長く残っていくんじゃないかと思っているけれど、音楽はどうなんだろう。うーん、わからない。

  • フィクションを超えたノンフィクション
    文系の私は絶対読めないと思ったけどガンガン読めた。話がとっても面白いから。音楽業界で何かしら動きがあるごとにこれを思い出すだろうな。

  • 2021/4/30購入
    2021/6/2読了

  • 【信州大学附属図書館の所蔵はこちらです】
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB22097368

  • 進歩すれば、廃れたり、死んでいく文化があることは
    必然なのかもしれない…

    ただ、姿形を失い、手に取る重みが無くなって、どんどんコンパクトに、手軽になっていくのはやっぱり悲しい

  • まさかノンフィクションとは思わず手に取ったので、途中からハラハラして、一気読み。
    音楽がどうやってリークされて、何でタダになったのか。歴史的な流れも踏まえて、色んな人の利害や想いが絡まり面白かった。

  • ☆違法コピーが溢れ出す。

  • MP3開発の話が一番スリリング

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