地下道の鳩: ジョン・ル・カレ回想録

制作 : 加賀山 卓朗 
  • 早川書房
4.06
  • (5)
  • (7)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 106
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096746

作品紹介・あらすじ

イギリスの二大諜報機関MI5とMI6に在籍していたことを明かし、詐欺師だった父親の奇想天外な人生を打ち明ける。スマイリーなどの登場人物のモデル、紛争地域への取材、小説のヒントになった出来事、サッチャーをはじめとする要人との出会いも語る話題作

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • スパイ小説と言えばフレデリック・フォーサイスと、本書の著者である
    ジョン・ル・カレなんだよね、私にとっては。しかもふたりとも実際に
    スパイだった。あ、フォーサイスは協力者だっけ。

    私の中の2大巨匠のひとりでるジョン・ル・カレも既に85歳だそうだ。その
    人の回想録だもの。読むでしょ、やっぱり。

    時系列になっていないので「自伝」と捉えて読むと読み難さがあるが、
    全38章のそれぞれが短編小説を読んでいるような感じだ。

    小説の取材の過程であった人々のなかでもPLOのアラファト議長との
    邂逅はまるで映画のよう。尚、アラファト議長のヒゲは柔らかく、ベビー
    ローションの匂いがしたそうだ。あぁ、触ってみたかったよ、議長のヒゲ。

    イギリス最大の裏切り者キム・フィルビーの友人であり、同僚であった
    ニコラス・エリオットとの会見の様子もあるし、『寒い国から帰って来た
    スパイ』の映画化をめぐっての話、そしてイギリス諜報機関に在籍し
    てた頃の話も少々。スパイだったから多くは語れないんだろうね。

    最大の注目はル・カレの父親ロニーのことを綴った章だ。常習の詐欺師
    にしてDV夫。この為、ル・カレとその兄の生母はふたりが幼いうちに家を
    出てしまう。

    ル・カレもお兄様も、きっと多大な苦労をしたに違いない。家庭環境を考え
    たら相当に重い話なのだが、ユーモアを交えた筆致が読ませるんだよな。

    各章がル・カレの人生の断片なのだ。それをパズルのように組み合わせて
    いくと、彼の数々の作品が生まれる。

    近年は小説から離れてしまっているが、昔々に読んだル・カレの作品を
    引っ張り出したくなった。

    困ったな。フレデリック・フォーサイスの自伝も買って積んである。きっと
    こちらも面白いはずなんだよな。

  • 2017年7月9日に紹介されました!

  •  『裏切りのサーカス』『寒い国から帰ってきたスパイ』などの原作者ル・カレの回想録。みずからがMI5やMI6に所属していた事実をさらりと明かしながら、グレアム・グリーンや他のジャーナリストたちも同様にスパイ・エージェントであったこと、元スパイという肩書きからインテリジェンスにかかわる様々な依頼を受けてきたことなどが、淡々と綴られる。香港の海底トンネル完成を知らずに作品を書いてしまったという「失敗」から、必ず現地取材を重ねることにした、という挿話も興味深いものだった。
     
     イギリス史上もっとも著名な二重スパイ、キム・フィルビーと彼の親友で、彼を追いつめたニコラス・エリオットのこと。ヤセル・アラファト、マーガレット・サッチャー、サハロフ、プリマコフらとのエピソード……。不思議なことだが、ル・カレが書くと、なんだかすべてスパイ小説の中の出来事のように見えてしまう。しかし、終盤の映画化権をめぐる交渉の顛末などは、まるでハリウッドのショー・ビジネスの世界の方が、スパイたちのそれよりはるかに複雑だと言っているようで、そこはかとないユーモアも感じられた。

  • 【罠にかかると知りながら】『寒い国から帰ってきたスパイ』,『テンィカー,テイラー,ソルジャー,スパイ』等の至極の諜報小説で知られるジョン・ル・カレが著した回顧録。自身も従事したスパイとしての活動から父親への葛藤した思いまで,謎の多かった著者の半生が明らかになっています。訳者は,推理小説の翻訳でも知られる加賀山卓朗。原題は,『The Pigeon Tunnel: Stories from My Life』。


    極端に言えば,ジョン・ル・カレの小説をまったく読んだことがなくても十二分に面白い作品(ということは読んでいる場合は言わずもがなです)。描かれる内容そのものが興味深いのはもちろんのこと,その叙述の仕方がスパイの世界「らしい」陰影をもたらしており,読む者をつかんで話しません。

    〜詐欺師と詐欺師が顔を合わせれば,どちらもしまいに相手が悪いとなじるものだ。〜

    これを読んでしまったらジョン・ル・カレの小説に足を踏み入れざるを得ないでしょう☆5つ

  • 文学

  • 作者の半生、下っ端スパイだった頃や、父母の話やら色んなエピソードが面白かったです。
    スマイリーものって三部作しか読んでなかったので、他のも読んでみよう。
    映画も見直して、やっぱ良いなぁ、と。続編作られるといいなぁ。

  • ちょいと寄せ集めなのか。

  • 「寒い国から帰ってきたスパイ」「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(映画「裏切りのサーカス」原作)などなど、スパイ小説で名高いル・カレの回想録。
    詐欺師の父親を持ち、苦労しながらも寄宿学校からオックスフォードに進学し、イギリス諜報部に所属し、在職中に小説家デビューという本人の人生も小説のようです。
    ほんとイチイチかっこいいし、小説や映画を一度でも見たことがあれば、俳優や映画監督の交流を読んでもよし、小説の取材で数々の紛争地帯に行ったり有名人に会った(自慢話になりがちですが)ところを読んでもよし。
    短い章に分かれてるので短編小説のような味わいもあります。
    いや、ごちゃごちゃ言わずル・カレの世界はかっこいい。それだけでいい!と個人的には思いますw

  • まさかル・カレの回想録が読めるなんて思ってもいなかった。過去の作品の登場人物たちのモデルが出てくる逸話は感涙もの。ル・カレらしいバランスの取れた皮肉とまわりくどいユーモアはとても楽しい。書く前に徹底的に現地取材をしたこと、そうなるきっかけのエピソード等、とことん誠実に作品に向き合ってきたことがよく分かる。詐欺師の父親や幼い彼を残して去った母親への複雑な思い、映画監督や俳優たちとの思い出は、ル・カレの私的な面を垣間見られて長年のファンにはたまらない。

全10件中 1 - 10件を表示

地下道の鳩: ジョン・ル・カレ回想録のその他の作品

ジョン・ル・カレの作品

地下道の鳩: ジョン・ル・カレ回想録を本棚に登録しているひと

ツイートする