- 本 ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096784
作品紹介・あらすじ
新興勢力セガ、巨大帝国・任天堂、そして第三極ソニー――三つ巴のゲーム界「三国志」を制し、覇者となるのは誰か? 隆盛期のゲーム業界に集った熱き人びとの栄光と苦悩を描き切る大河ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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今は特に時代の動きが早いという。
しかしこの時期のゲーム業界の栄枯盛衰も同じじゃないか。
本書を読んだだけでも、そのスピード感を体験できると思う。
やはり優れたリーダーとは類まれなる才能なのだと思う。
この時期のセガに、カリンスキー以外に適任がいたのだろうか?と思ってしまう。
カリンスキーがセガに合流した時には、彼自身はゲーム業界の知識がほぼ皆無。
しかし、ライバルに打ち勝つというための強力な情熱。
仲間を大切にし、誰を自分の側近として最高の仕事をさせるかの巻き込み力指導力。
当然に状況分析力、冷静な判断力。
決して諦めないという粘る力。
それらすべてに長けていることを感じる。
リーダーとはこれぐらいでなくてはいけないのではないだろうか。
しかし、そんな優れたリーダーでも、戦いとは非情なものなのだ。
製品力で負けてしまったり、相手の方が一枚上手であれば、結局は負けてしまう。
戦いに勝つか負けるかは、リーダーの資質だけではないのだが、やはり色々と考えさせられてしまう。
この本で描かれるカリンスキーには、悪い点は見当たらない。
むしろセガ製品の悪さだったり、セガ本社の大企業病的な官僚組織の弊害だったり、そういう点が彼の壁となって内部崩壊をしていく点が目立ってしまう。
「NETFLIX コンテンツ帝国の野望」https://www.amazon.co.jp/dp/4105071211
「NOKIA 復活の軌跡」https://www.amazon.co.jp/dp/4152098724
など企業ストーリーの中で、自社目線だけでなく、相手側ライバル企業も丁寧に描く手法が増えている。
だからこそ、片側だけの情報で成功失敗を判断する事なく読めるのだ。
本書も任天堂側の状況を非常に丁寧に描いている。
これを読むと、セガだけが特殊な状況であったとは到底思えない。
任天堂側も、製品開発におけるセガとの劣勢部分、日本本社との確執は似たようなものだからだ。
つまり勝負というのは本当に紙一重。
運が左右する部分も当然に大きいのだ。
だからこそ、ビジネスに対して、従業員である仲間たちに対して、我々の製品を購入してくださるお客さまに対して真摯に対応しなくてはいけない。
一時期でもセガが任天堂のシェアを奪ったことが驚きに値するが、そこで任天堂が冷静に巻き返しを図っていく。
その過程において、任天堂に王者としての驕りは感じられない。
荒川にしても、ピーター・メイン、ハワード・リンカーンも、ニンテンドーアメリカ(NOA)の創業メンバーだ。
何もないところから築いたからこそ、いつまでもチャレンジ精神を維持することができるのだと思う。
本書にもNOAの創業時のことが少し書かれているが、本当に苦労をしたようだ。
そして一時の成功を得て、事業が急拡大していく様が描かれる。
これはすでに出来上がっていて完成された業界に、後からCEOとして参加するのとは大きな違いがあると思う。
(しかしカリンスキーは、その中では特異な才能と情熱でセガを押し上げていくのだが)
日本でも、どの業界でも似たようなものかもしれない。
今だからこそ、既存の守られていた業界が益々厳しくなっている。
これはやはり経営者の能力不足に他ならない。
情熱、巻き込み力、指導力、分析力、判断力、粘る力・・・
リーダーには、あらゆる能力が求められるのだ。
既存勢力の緩い考えでは勝てる訳がない。
だからこそ真摯に、一つ一つ愚直に上を目指すことが必要なのではないだろうか。
手遅れにならない内に。心からそう願うのだ。
(2020/9/19)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
セガが敗れた理由がある
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日本のゲーム会社が米国でこんな戦いを繰り広げていたとは、あの時の私は知らなかった。
あの時は純粋に、全てのゲーム機が欲しかったとなつかしみました。
そんで、感情による衝突で合理的な判断が出来ない経済人が本当に多くいることよ。おっさんになった今の私は知ってます。 -
12月2日 Wiiが発売された日
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メガドライブに熱中し、任天堂を呪いながらサターンにがっかりしながらもドリキャスまで付き合ったSEGAファンにとってはあの時を「そうだったのか!」と思い起こしながら一気に読み終えた。
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「Sega, Nintendo, and the Battel That Defined a Generation」の翻訳(2017/03発行)。