平均思考は捨てなさい 出る杭を伸ばす個の科学

  • 早川書房 (2017年5月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784152096906

作品紹介・あらすじ

人や物事を評価するうえで平均という尺度が欠かせない、というのは間違っていた! ユニークな「個の科学」に基づき、平均を排して成功した企業などの実例を紹介、個性を十分に発揮しながら人生で優位に立つヒントにもなる3原理を説く、生き方のガイドブック。

感想・レビュー・書評

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  • 「〇〇は捨てなさい」的なタイトルはあまり好きじゃないけど、本書はとても気になったので購入してみた。

    しょっぱなから出てきた空軍のコックピット問題についての記述は、私の中で大ヒットだった「多様性の科学」でも出てきたやつだったので、かなり期待して読み始めた。

    まず、平均というものが社会に出てきて、多用されるようになった歴史から。とても興味深かった。私にとって、「平均」は「平均」であって、「平均」についてそれ以上のこともそれ以下のことも考えたことがなかったので、「平均」が登場したころの「平均が完璧である」という考え方には逆に新鮮さを感じた。平均な人間が問題のない人間であって、そこから外れると劣った人間とみなされるなんて、なんてなんて窮屈な考え!

    平均主義の歴史が研究者とその研究に基づいて理論的に説明されるので、少し退屈になってくるけれど、よくよく読むと本当に面白い。こうやって、〇〇主義とか生まれて、いずれは市民にまで浸透して、固定観念ができていくんだな~と思った。

    で、少々疲れてきたところにやっと、解決策となる3つの原理
    ・バラツキの原理
    ・コンテクストの原理
    ・迂回路の原理
    について語られる。こう理論的に語られると本当にどれもその通りと思うのだけれど、実際まだまだ平均主義は根付いていて、自分だってそうじゃないかと何度も自分に突っ込みを入れた。

    実際に平均主義ではなく、これらが取り入れられた社会システムになることで救われる人がどれだけいるか。まだまだ浸透していないからこそ、現在の教育では取りこぼされる才能や個性があって、したくもない仕事をすることになって・・・と本書に同意すればするほど、平均主義やテイラー主義がなくなった社会はユートピアなんじゃないかと思う。

    今後このような考え方はもっと浸透していくだろうか。口先だけではなく「個」を重んじる社会になれるだろうか。自分自身の意識から変えていこう。

    少し中だるみした読書だったけど、読んで良かったと思う。

    • ちゃちゃまるさん
      「平均」は「平均」であって、それ以上でもそれ以下でもない。URIKOさんのこの感想に、読書が持つ意義を感じ取りました!自分の持つ既成概念を読...
      「平均」は「平均」であって、それ以上でもそれ以下でもない。URIKOさんのこの感想に、読書が持つ意義を感じ取りました!自分の持つ既成概念を読書により変化させる事ができる。読書の大切さを示唆する感想だなと思いました!
      2023/02/10
    • URIKOさん
      〉ちゃちゃまるさん
      コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけて嬉しいです。本当に読書ってこういう素晴らしさがありますよね。だ...
      〉ちゃちゃまるさん
      コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけて嬉しいです。本当に読書ってこういう素晴らしさがありますよね。だから読書はやめられない!!
      2023/02/10
  • 飛行機事故の原因はパイロットエラーだった。コックピットはパイロットの平均体型をもとに設計されていたが、体型が一致するパイロットは空軍に1人もいないことがわかった。
    平均主義ではなく個性主義。
    才能にはバラツキがある上、内向的な人間でも外交的な面も持ち合わせているなど、ありのままの姿を見る必要がある。
    人生も平均的な道ではなく人それぞれの道がある。
    353冊目読了。

  • 私たちは生まれてから死ぬまで「平均」という言葉に一喜一憂している。しかし平均の値の人はいるのか?例えば身体サイズを測定しそれぞれの平均値を持つ人がいるのかといえばそれはNOである。ヒトはモノではない。バラツキがあり、それぞれ・その時のコンテキストがあり、ゴールへの道のりも各々違う。それを理解せずに、いわゆる科学的管理手法でヒトを判断するのは、人間の可能性を最小評価する元凶である。

  • 当たり前のように偏差値や平均との比較に馴染んでいるが、直感に即していたり、便利さ故に使われているだけで、一人一人の能力を図るのには適切でないという。
    ・同じ人でも、能力の種類によってバラツキがあること
    ・その場面(コンテクスト)によって振る舞いが異なること
    ・平均的な成長の一本道があるのではないこと
    目からうろこのような話が続く。
    しかし、この邦題は陳腐な啓蒙書や自己啓発書のようで残念だ。敬遠して危うく読み逃すところであった。

  • この本はすごい!!!
    目からうろこが落ちるどころが、うろこをひっぱがされる感じ!
    データをとって、「これが平均値」となると、それがマジョリティの中のマジョリティ、母集団を代表する存在である、と思うじゃないですか?
    でも平均に一致するものが何もなかったり、あるいはその+/-の範囲に入るものがすごく少ないケースは多々あるという話なのです。

    1940年代のアメリカ空軍は墜落事故が多発していましたが、その原因がコックピットの使いづらさだと判明。当時「パイロットの平均体形」に基づいて設計されていたものの、1950年に改めて身長、胸回りや腕の長さなど10カ所の平均値を割り、10項目すべてにおいて平均範囲におさまるパイロットがどれだけいるかを調べたところ、4,063人の内10項目全てが平均内の者はただの一人もおらず、3項目だけに絞っても該当する者はたったの3.5%しかいなかったのです。

    これは体という物理的な話ですが、能力においても同じ「平均主義の偏見」がはびこっています。
    大学出願のための全国統一試験において点数が高ければ「能力が高い」とみなされるわけですが、この点数とは、「平均値とどれだけ乖離しているか?」で測られます。
    高いほうに乖離すれば、あらゆる分野で能力が高く、低いほうに乖離すれば、あらゆる分野で能力が低い、とみなされてしまう。
    結果、生徒は「同じ分野(試験の対象となる科目)でどれだけ抜きんでるか」を競わせられ、その試験では図られない分野の能力は切り捨てられていき、能力の無駄遣いや自尊心の欠落などの悲劇が生まれるわけです。

    人格でもそうです。かの有名なマシュマロテスト(マシュマロを食べずに我慢できた子は人生で成功する確率が高い)には、他の学者による続きのテストがありまして。
    それは、マシュマロテストの説明をする大人を二人に分け、一つ目のグループには信頼を置ける大人、二つ目のグループにはそれまでに子供に約束したことを破って信頼感を持てないようにした大人が、マシュマロテストの指示を出します。
    すると、当然ながら二つ目のグループのほうが、マシュマロを食べる確率が高くなりました(我慢しても報酬がもらえるとは思えないのでね)。
    つまり、人格のようになかなか変わらないものですら「コンテキスト(その場の状況、背景ですね)」に左右されるわけです。
    なので、人格テスト(SFでもVIAでもそうですが)も、実はそのコンテキスト次第なんですね。
    例えば社交性ひとつとっても、友人たちとの集まりなどカジュアルな場では社交的だが、会社のパーティなど年齢層が幅広く、固い場ではシャイになる人がいるわけです。
    でもテスト結果によって、「この人は(世の平均と比べてこの項目の点数が高いから)こうである」と判断されてしまう。
    そして同じ点数を取った人が、いつでもどこでも同じようにふるまうとは言えないのですね。

    この著者は高校までさんざんな成績(Dばかり)でした。
    そのあと、結婚し、子供も生まれ、なんとか凡庸な大学に進学しなおしたのですが、勉強する時間が限られていたため、「自分にあったクラスを集中的にとる」やり方で生き延びようとします。
    その結果、Aばかりの成績となり、ハーバード大学院に進学するのですね。
    彼自身、平均というものから思い切りかけ離れていた人なのです。
    (そうは書いてありませんが、ADHD的な行動パターンを感じさせる人です)
    だから、平均のうさん臭さがわかるんでしょうね。

    この本に書かれていることは、言われてみればそうだな・・・と納得できることばかりなのですが、逆に「どうして今まで改めて考えてみなかったんだろう?」ということばかりでもあります。
    どれだけ世の中が平均主義にやられてしまっているか。
    どれだけ、世の常識から離れて思考できるようになるか?
    正直、そうできる自信がありません。

    常識の呪縛から離れるためにも、めちゃお勧めの本です。

  • 「かずをはぐくむ」の中で出てきた本

  • 平均は数値として計算できるが、平均的な身体のサイズの人はいない。同様に平均的な才能や知性や性格、も存在しない。
    平均信奉はテイラー主義が由来。
    マイクロソフトはスタッフランキングで失敗した。社員に多様な才能があることを見逃し、ひとつの尺度で測定した。官僚的組織になる。
    太って背の低い人と痩せてて背の高い人、どちらを大きい人と呼ぶか。答えられない。
    新入生の知能テストは、テスト間での相関はない。学業成績と知能テストも同じ。卒業後の仕事の実績と学業成績にも相関はない。
    グーグルは社員の実績に相関がある変数は見つけられなかった。
    履歴書不要の採用プログラムで実際にプログラムを教えて採用を決定すると、履歴書があったら採用しない人材が成績が良かった。

    性格や特性はコンテクストによる=コンテクストの原理。人間の特性は決まっていない。本質的な性質はない。特定のコンテクストで一定なだけ。
    道徳的な行動でさえ、外的状況に左右される。人間のそもそもの特性はない。
    マシュマロテストの結果も、事前に大人が嘘をつくか否かによる。自制心は本質的な能力ではない。

    採用はコンテクストを細かく分析して、職務経歴書と付き合わせる必要がある。そうすれば隠れた才能を採用できる。

    標準化と階層管理=テイラー主義の産物。平均的な使い捨て可能な社員を求める。
    コストコはキャリアの決定権を従業員に委ねている。
    ウォールマートは離職率は50%を超える。テイラー主義で成長した。
    インドのZOHO。発掘されない才能のためにZOHO大学を創設。
    モーニングスターは、トマト加工の製造業なのに、管理職がひとりもいない。個人の成長を促す仕組み。ほかの企業で管理職として働いてきた人は、何をしていいかわからない。イノベーションが組織内から起こる。
    個性を重視するには、自分の会社ならどうすればいいか。

    現在の高等教育もテイラー主義に基づいている。学校の内容と社会の要求はずれているが、平均主義の構造の根深さにある。
    卒業証書の代わりに、能力証明書(資格証明書)を発行する。コンピテンシーを判断基準にする。
    自己決定型の経路を支援する。

    平等の概念も変割る必要がある。従来はアクセスの平等。個人の機会が平均的に最大化することを目指すもの。
    平等のフィット=個人に合わせたアクセスを確保する。教科書も1人1人違う。外れ値を考慮する。

    アメリカンドリームとはもともとは金持ちや有名人になることを意味しない。個人の潜在能力を発揮できる機会がある社会を意味した。
    医療の個別化医療の試みのように、あらゆる社会で平均を相手にすることを拒否するべき。

  • ・才能にはバラツキがあるとして、画一的な評価をやめたグーグルやマイクロソフトの事例が興味深い。特にグーグルは具体的な項目を洗って調べており、説得力があった。

    ・個人は、特性心理学・状況心理学、いずれか一つではなく、複合的な要因で形作られるという当たり前のようで、偏っていた思考がわかった。

    ・「あなたは正直、不正直」では、誰もが一貫性を持っておらず、状況によって変わる事がわかった。

    ・「才能は特別なコンテクストで発揮される」でも、似たような事が書いてあり、その通りだと感じた。

    いずれも思い込みと事実が実は異なっているということに、はっと気付かされた。

  • 平均より頭がいい、仕事が出来る、年収が良いなど、「平均」て言葉をよく使いますが、そもそも平均て何なのか?平均的な人間は一体どのぐらいいるのか?平均的思考とは何なのか?
    とても興味深い本です。

  • 途中難しい箇所ありましたが、最後は盛り返します。人には特性がある。バスケの集団も、バランス。

  • 最初からびっくり。ちょっとFACTFULLNESを彷彿とさせる。
    学問ができたころの考え方は今の価値観で見ると気分が悪いが、いずれはきっと今主流の考えもおかしいとなっていくのだろうと思った。
    標準化した工場のパーツとして働けるように、画一化教育が行われているんだというのは陰謀論者が言いそうなことにも思えるが、アメリカで一般教育委員会なる組織が本当にそれを押し出していたというのは驚き。

  • ↓こちらのURLをクリックすると富山大学蔵書検索画面に飛び、所在を確認できます。
    https://opac.lib.u-toyama.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23867879

  • いまのところ今年いちばん面白かった本。タイトルが軽薄なビジネス書のように思われるが、出典明示度が高く骨太。原題はTHE END OF AVERAGE How We Succeed in a World that Values Samenessなのでビジネス書感はある。単純な平均だけでは物事は測れない、環境(コンテクスト)で事象の起こりやすさが変わる。そもそも平均して人間の特質を評価しようとすること自体が発明であり、企業が利益を追うことに適合していたのでそのまま広く使われるようになった。学習においての偏差値が使われるのも、差を見出したいからであってそれが本質かどうかは別の問題である。テストの成績が良い人は、そのテストが良く解けた人であって、他の優秀さとは全く相関がない。当たり前だけれども、あらためてそこに気付かされた。
    手の長さや身長体重など様々なパラメータを平均した場合に、すべてが平均的な人は存在しない。得点力が優れた選手だけを集めたバスケットボールチームが弱体化した。平均からとても離れた優秀な戦闘機パイロット、など事例が多く読みやすい。
    筆者は学業において平均から離れていたため、非常に苦労して大学教授になった。成功するためには個性を活かすようにすること、というあるいみ平凡な結論ではあるが、そこにしっかり理由があった。

  • ちょっと難しい。
    冒頭のパイロットのコックピット席のサイズを平均値で割り出しても事故は減らなかった、それぞれに合わせる工夫が大事だというところが全てのように感じた。

  • 平均思考は自分の可能性を潰している事を本書は教えてくれた。
    平均を目指してそれより上だと安心する事が不毛であり自分の全体像が見えていないのだろう。
    平均と比べて一喜一憂するのではなく自分には何が出来て不得意なのかに注目して特性を上手く活かして生きていきたい。
    平均という呪縛は根強い観念だが徐々に解き放たれていきたい。

  • 平均を理想とするのは幻想
    画一的な方法ではうまくいかない
    個の重視が結果として全体の発展に繋がる

  • ・人にはばらつきがある
    ・このバラツキの平均を取ったとしてもその平均に収まる人はいない
    ・個人を測ろう時平均値を使うのは全く意味のないこと

    というのがこの本の趣旨
    個人的にすごく共感できたのは、大切なのはまず自分がどういう人間かを知るということ。自分の嗜好にあった道を自分で選んで行った方が幸福度が高くなる。

    また参考になったのがマイクロソフト社もう採用していたスタック評価である。
    Microsoft 社は既にこのスタック評価を止めており、スタック評価を使っていた期間を失われた10年とまで言っている。

  • Kindle、

  • "平均"の値を出した時、実際にその平均にぴたりと当てはまる人は100人いてもほんの1,2人存在するかしないかのレベルだという。これは面白い。平均についての概念が変わった。平均年収、というのも全然平均ではない。

  • 意外と面白い。心理学のゴルトンについての個人情報もあるし、マシュマルテストについての育った環境での相違(すぐに食べないとなくなる施設で育った子供の行動)、性格について、教育、など、学生が卒論で役に立つ研究が多く掲載されていて、しかも文献で豊富である。

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著者プロフィール

心理学者。誰もが活気ある社会で満ち足りた人生を送れるような世界の実現を目指すシンクタンク〈ポピュレース〉共同設立者・代表。ハーバード教育大学院心理学教授として〈個性学研究所〉を設立したほか「心・脳・教育プログラム」を主宰した。著書に『ハーバードの個性学入門――平均思考は捨てなさい』(早川書房)、『Dark Horse――「好きなことだけで生きる人」が成功する時代』(共著、三笠書房)がある。

「2023年 『なぜ皆が同じ間違いをおかすのか 「集団の思い込み」を打ち砕く技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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