ちいさな国で

  • 早川書房 (2017年6月8日発売)
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096913

作品紹介・あらすじ

90年代初頭にブルンジ共和国で生まれたガブリエルは、家族と幸せな日々を送っていた。しかし隣国ルワンダの民族対立が深刻化すると、平穏な生活は音を立てて崩れていくのだった――フランスで活躍する現役ラッパーが自らの過酷な生い立ちをもとに書いた感動作

感想・レビュー・書評

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  • インドやアフリカなどに行くと、様々な理由で自分の国では生きていけない先進国の人間が、自国ではあり得ないほど幅をきかせていることがあるが、この主人公の父もそういう人。そういう人たちのコミュニティもある。現地人の妻と暮らしてるけど、妻を対等に扱っていない人も多い。
    この主人公や友人たちは生粋の現地人よりいい生活をしてはいるが、それは差別や妬み等危険もある。そういう情況は想像がつくのだが、ここでは更にルワンダの悲劇が起こる。
    はじめの父の言葉が厭な感じだ。
    フツは背が低く醜い、ツチはスラリとして美しい(もちろん妻はツチである)。こういう白人の意識がルワンダの悲劇を生んだと言っても過言ではない。更にツチのルックスは褒めながら、何を考えてるかは分からないという。分かろうという努力はしないのである。
    ワルガキの友情とそれが戦争で壊れていくところ、ギリシャ人の老女から本を借りて夢中になる様子は実体験ではないかと思う。
    若い作家のデビュー作たから、センセーショナルな(しかも実話に近い)ところが評価されたのかと思っていたが、きちんと古典を読んで育った人だと感じた。
    内線の原因となった白人社会に対する批判は弱い気がした。
    これからに期待したい。

  • 恣意的なはずのツチとフツの区別が恐怖と怒り、悲しみによって超えがたい溝となってゆく

    主人公はツチの母親を持つが、物語の視点にツチ側への肩入れはない。ツチからフツへの暴力や、白人の傲慢さも描かれる。ルワンダで親族が虐殺されたことに衝撃を受け、正気を失った母親は、理不尽にも娘(主人公の妹)に暴力を振るう。後に息子と再会しても、フランス人との混血である息子を拒絶するかのように、殺されたツチである甥だと認識する。家族を人質に取られた主人公はついに人を殺すが、その時抱くのは特定の集団(ツチ)のアイデンティティではなく普遍的な恐怖と諦念...

    主人公が抱き続けた普遍主義は本やベッドの中の塹壕に過ぎず、現実は分断でしかないのだろうか?

    ここから作者の近作『ジャカランダ』への変容が気にかかる。あのラストは一種の風刺なのだろうか。それとも、悲しみと恐怖を拭い去ることは不可能で、分断に満ちた現実は変わらないのでいっそのこと楽しく受け入れるべきだという諦め?

    文体、特に比喩表現が好みだと思ったら作者はセリーヌをよく読んでいたとのこと。

  • アフリカのルワンダ(大量虐殺)のさいさな隣の国、まだまだ知らないことがあるなあー

  • 最後まで引き込まれる文章、小さな国の紛争がひしひし伝わってきた

  • そんな昔話じゃなく
    今だってアチコチあるし
    私たちはどれほど知らないか
    恵まれているか

  • 徐々に悲惨な暴力の影が近づいてくる感じがヒシヒシと感じられて怖かった。
    急に『殺人』『身近な人の死』『理不尽な殺人』が日常茶飯事になってしまう恐ろしさ。
    そこから逃れる術のない人達の多さ。
    敵と味方を作らないといけなくなってしまう怖さ。
    めちゃくちゃ重い内容やけど、読みやすい文体で、それでも色んな事を考えながら読めた。
    みんなが読んだら世界は少し変わると思う。

  • アフリカ諸国の一つにしては小さな国ブルンジ。この本を読むまでどこにあるか正直知らなかった。しかも、あのルワンダ大虐殺と時を共にして、同じようにフツ族とツチ族との紛争により30万人の死者が出たことも。ルワンダ難民の母とフランス人の父との間に生まれた筆者の実体験を元にした小説なのだけれども、その目を瞑りたくなる程の内容はさておき(があるからこそ?)是非主人公と同じく小学生〜中学生に読んでもらいたいと思った。「こちら側」と「あちら側」、「敵」と「味方」の境界線がいつ形成されるのか、主人公の問いかけに考えさせられる。「背が低い」「鼻が潰れている」といったステレオタイプで相手を捉えるようになった時点で圧倒的な壁は出来上がってしまっている気がするが、逆にそういった固定観念を抱かないようにするにはどういった条件が必要なのか…教訓を引き出す必要はないので、是非子供達から意見を聞きたいと思った。それにしてもブルンジのように、たわわに実るマンゴーに、日向ぼっこをするワニとハチドリがいる…そんな極彩色の動植物に恵まれた天国のような地であっても、血塗れの地獄に急変し得るのは、ある意味で絶望的でしかないな…。人間はいつになったら変わるのだろう。それもどう思うか聞いてみたい。

  • 同世代の、ブルンジ生まれの、フランスとルワンダのハーフの人の自伝的小説。作者がラッパーなので、ポンポンと繰り出される文章は短く、詩的で、ぐいぐいと引き込まれる。原語(仏語)で読めれば良かったのだろうけど、日本語訳でも読み応え十分(訳者さんすごい)。
    なぜ内戦が激化するのか分からなくて混乱していく主人公の様子はとても正直でリアル。90年代、私がのうのうと行きていたときにこんな風に子ども時代を奪われていった人たちが同世代でいたのかと思うと、教科書やルポでは得られないリアリティをもって、内戦やジェノサイドの恐怖が迫ってくるようだった。折にふれて描かれるブルンジの光景はとても壮大で和やかで鮮やか。
    姉からのいただき物。

  • 読んだ後にみるとグッとくる。
    ファイユの曲。
    https://youtu.be/XTF2pwr8lYk

  • 文学

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