日本の15歳はなぜ学力が高いのか?:5つの教育大国に学ぶ成功の秘密

制作 : 苅谷剛彦 
  • 早川書房
3.64
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本棚登録 : 207
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097156

作品紹介・あらすじ

日本、フィンランド、中国(上海)、シンガポール、カナダ。国際学力テスト「PISA」で優秀な成績を収める5つの国を実地調査。勉強は何歳から始めればいい? 能力別のクラス分けは有効? 学力を伸ばすために競争は必須? 子どもの力を引き出す秘訣を探る!

感想・レビュー・書評

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  • 早すぎる進路決定はプラスではないらしい。

  • とても興味深い。

    たくさんの引用を元に、信頼出来る場所からの情報が盛り沢山だったので、納得させられることか多かったです。

    一教員として、非常に勉強になりました。

  • 好感が持てたのは、単にPISAの得点だけで各国の良し悪しを測るのではなく、同時に公平性についても注目していたところである。確かにいくらその国の平均得点が高いからと言って、国内での点数に格差があったら決して良い教育とは言えない。
    同時に、ただデータのみで語るのではなく、その国の文化や思想と関連付けながらその国の教育を見つめることで、なぜその教育が可能なのか理解することができた。

    日本の教育は、国内では、画一的で個性がない、と言われているが、イギリス人の著者から見ると、公平性が高く、集団を意識した社会性の高い教育なのだ。
    学校の中の自由は制限されているように感じるのに、結果として公平性が高い(家庭環境が学力に与える影響が小さい、家庭環境から自由である)のは、不思議に思えた。

    そこで「自由」と「勉強」の関係について考えてみた。
    仮に「自由」を「自分が望むことが実現すること」(平たく言えば「自分の思い通りになること。」)と定義してみる。すると、自分が望むことを実現するためには、実現するための能力が必要になることが分かる。(お腹が空いても大人が食べ物をスプーンで口まで運んでくれないと食べられない赤ちゃんは自由でない。なぜなら自力で食べる能力がないから。)
    一方で「勉強」は「能力を身に付けるための行為」である。つまり「自由」へ近づくための行為なのだ。その「勉強」を「子どもの自由」を謳って無責任に子どもに過度に委ねるのは、能力を身に付ける機会の損失である。子どもの「主体性」や「自由」を謳いながらも、やはり教師の関与は必要なのだ。

    今の日本が推し進めている、主体的な学びそれ自体を否定しようとは思わない。しかし、これまでやってきた教育の中でまだ捨てるべきでない方法があることに気付く。
    批判ばかりを受ける現代の日本の教育だが、今の教育にある価値を再評価するきっかけを与えてくれる本であった。

  • 5ヶ国の教育を現地でのエピソードとデータの両方を踏まえて説明していて、とても興味深かったです。比較することで自国で上手くいっていないと思われていることがそうではなかったり、意外な問題点が見つかることが分かりました。

  • イギリスの教師が、世界の高教育5カ国(フィンランド、日本、シンガポール、中国、カナダ)を訪問して現場インタビューをもとに考察をまとめている。筆者の教育者としての現場感覚が非常に生かされている。日本については、とくに集団生活が重視されていること、中学卒業まではどこでも同じレベルの教育が受けられるように制度上もとくに注意が払われれいること、が特徴として挙げられている。

    他の国についても、教育のやり方の特徴だけでなく、制度についても精密な分析がなされていて、それが教育風土と強い関連があることが興味深い。

    本書で繰り返し述べられている考え方として、西洋では個人には生得的な能力差があると考えられているが、東洋では努力により能力は獲得できると考えられている、という考察だ。遺伝解析では半分ぐらいの能力は遺伝的らしいし、東洋人もそれを認識している。しかし、能力で劣っていても努力で克服できるというのが東洋式(儒教的)な考え方、と指摘している。逆に西洋人は、努力=能力が劣っているという認識らしい。逆に生得的なものを変えられないという考え方が個性を尊重するということにもなっているのだろう。

  • 自分のことばっかり
    外国人にはこのように見える

  • 日本語のタイトルは、「日本の15歳はなぜ学力が高いのか」だけど、

    英語のタイトルは、
    ”The secrets behind the success of the world's education superpowers”であり、

    ・フィンランド
    ・日本
    ・中国
    ・シンガポール
    ・カナダ

    の教育の国際比較になっているので、別に日本だけに注目したものではない。でも、海外の教育大国の事例にぱっと目を通せるのと、苅谷さんの書いている部分もあるので興味深いと思う。

  • イギリス教育研究者のルーシー氏が、日本、フィンランド、シンガポール、上海、カナダの5カ国を訪れ、教育システムについて調査し、知見を述べている。どの国の教育システムも優れていると評価している。
    高い成果を上げる5原則として、①子どもたちに学校で勉強する準備をさせる②きちんと習得できるカリキュラムを作る③低いレベルで妥協せず子どもたちが向上を目指すようにサポートする④教師を専門家として待遇する⑤学校の成績責任と学校へのサポートを両立させるを挙げている。

  • このタイトルは日本向けで偽りあり、原題が内容を正しく表してるな。著者が個人旅行で5カ国巡りながら、教育現場をルポしていくんだが、めっちゃ良かった。もちろんプロとはいえ個人が見た限りでの考察だから、全部網羅なんてできないし誤りもあるだろうけど(それは国全体の教育システムというより個別ケース、とか)、かなり的確だとは思う。外からの視点で、日本の教育システムの特異さに気づくねー。そして乱暴を承知で自分ならカナダがいいと言うなど、個人的な感想やエピソードが入っているのが、読みやすくて良かった。

  • イギリスの中等学校の女性教師が、PISAで高得点を上げた5つの国(フィンランド、日本、シンガポール、中国、カナダ)を旅する。フィールドワークを行った結果をまとめたものが本書。

    子どもたちや教師たちと直接触れ合うことで得られた分析・考察がまとめられており、その探究する姿勢に共感が持てる。

    それぞれの国の特徴をまとめた後、「質の高い教育とは何か?」という問いに対し、「確かなことはだれにもわからない」と本音を吐露しつつ、5つの原則をまとめていた。

    子ども、カリキュラム、学校、教師それぞれにおいてポイントが置かれている。この5つがすべてかどうかはさておき、いずれも納得感があるものだ。

    日本に特に足りないものは何か。それは、原則4の「教師を『専門家』として待遇する」ではないかと思う。授業の実施だけでなく、保護者の対応、部活動の指導、調査依頼などの雑多な作業・・・。教師は「何の専門家」たるべきなのか。すべてを一人でこなさなければならない状況は、専門家としてあるとは言えない。教師が子ども一人ひとりと向き合い、授業を通じて質の高い指導ができるように、国がトップダウンでサポートすべきではないか。
    それは、原則3にも通じる。子ども一人ひとりにきちんと向き合おうとすれば、教師以外の専門家からのサポートが必要な場合も当然出てくる。学校がオープンな組織となって、さまざまな立場の人たちと協働で取り組めるようにする必要がある。学校としての組織の在り方も問われている。

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