水底の女

  • 早川書房 (2017年12月6日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784152097286

作品紹介・あらすじ

私立探偵フィリップ・マーロウは、香水会社の社長から行方知れずの妻の安否を確認してほしいと頼まれる。妻が最後に滞在していた湖畔の町を訪れるが、そこでは別の女の死体が見つかるのだった。マーロウが探している女と何か関係が? 旧題『湖中の女』新訳版

感想・レビュー・書評

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  • 事件の様相はぐるぐるまわって、結局このトリックになっちゃたわけか、それにしても登場人物のクリス・レイヴァリーには偶然の要素が多すぎるかもね。気の利いたセリフやじんわりと情景を感じさせてくれる文章で、次々とページを繰っていくことができたので、まあ面白かった。後書きで村上春樹が、この小説では溌溂としていない冷静なフィリップ・マーロウだといっていて、確かにそんな感じだが、いいのか悪いのかは、「ロンググットバイ」を読んでから決めよう。

  • 「湖中の女」の村上春樹翻訳版。
    相変わらず丁寧な翻訳という印象。いかにもハードボイルドな印象の清水版とは違ってマイルドなマーロウという感じ。

    「湖中の女」を読んだ時も感じたが、ミステリーとしてはイマイチ。序盤で大体の構図が分かってしまうし、結局はそれを確認しながら読む作業となった。
    だがマーロウの容赦ない、絶対に手抜きしない仕事ぶりは相変わらず発揮されていたし、警察との『タフ』な関係も相変わらず描かれていたし、このシリーズらしいオチも良かった。
    結構好きだったのは老境にかかろうとする保安官代理。マーロウを『若いの』と表現するのが何とも渋くて良かった。

    マーロウシリーズの長編はすべて翻訳完了。できれば短編集も翻訳してほしいのだけど、あとがきで『さいごの一冊』と書いてるからにはないのか。残念。

  • 村上春樹のチャンドラー長編新訳、これにて完結。
    MONKEYのインタビューだか対談だかで「今年中に出るかも」とのご本人の弁だったので、指折り楽しみにしていた。
    予定のない週末、至福の読書時間でした。

    村上春樹の解説にもあるように、ストーリーはなんとなく先が読めるのであるが、チャンドラーの小説(村上訳)の楽しみは、文体そのものにあるので、登場人物の把握や関係性にとらわれずに文章そのものを楽しめて、かえって良いくらいであった。

    装丁も美しく、クリスマスプレゼントにも良いかもしれない。

    再読してチャンドラーらしい比喩などをまた楽しみたい。

  • いろんな意見があるようだけど、私は最高に楽しめた。
    誰とも均等に保ったポジションに立つマーロウ、その雰囲気も私にとっては魅力的。
    パットンが最後に口にした「私のような男には余裕を与えてはいかんのだ、若いの」という台詞は、日常的に覚えておきたい。

    時が足音を忍ばせ、唇に指を当てて、しずしずと過ぎていった。
    って、美しい表現じゃありませんか。

  • ハードボイルドな私立探偵が真相を暴いていく、最後の真相解明はさすが。私には前半淡々と進んでいき、登場人物も多く背景描写や感情など、また当時の時代背景や文化もあるが、感情移入しにくかった。

  • 2.9

  • 今まで読んだ作品で初めて犯人がすっきり明らかとなり、割とマーロウの謎解きと自分の考えが重なった。キャラクターの描写が確かに女性より男性のほうが詳しい。同じ主人公のシリーズものだと、主人公の性格が一定していて、ある意味行動がワンパターンになる気がするが、チャンドラー作品のマーロウは気分のムラがあるように読める。芯の部分は動かないが、作品によって違う。そこが面白い。

  • 同じ著者の長編ではこれが1番好き。舞台の半分がいつもの荒んだ大都会から離れて郊外の山や湖で、老保安官のキャラクターがとても良い。悪役も鮮やかでよかった。

  • 戦時下という時代を背景に、悪女に振り回される馬鹿な男共のお話。銃とウイスキーと麻薬とカネと愛憎と死体がこれでもかと絡んで救いようもない。
    それでも読後に絶望感に浸らず居られるのはチャンドラーの筆致か、翻訳者の村上春樹の腕か。

  • 読んでいて楽しいミステリー。こういう本はゆっくり読みたい。訳者の村上春樹氏によるとスピード感の不足やロジックの弱さが指摘されているが、それでもチャンドラーらしい。情景描写が細やかで、殺人事件なのにジメジメ感がない。展開にはらはらさせられる。▼表紙の裏に的確な案内がある。:私立探偵フィリップ・マーロウは、香水会社の経営者ドレイス・キリングのオフィスを訪ねた。男と駆け落ちしたらしい妻の安否を確認してほしいとの依頼だった。妻の足取りを追って、湖の町に赴いたマーロウはそこで別の女の死体を見つける。行方知れずの社長の妻となにか関係があるのか……。マーロウの調査はベイ・シティーの闇をえぐる──。チャンドラー長編最後の作品。

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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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