地下鉄道

制作 : 谷崎 由依 
  • 早川書房
4.07
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本棚登録 : 307
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097309

作品紹介・あらすじ

アメリカ南部の農園で、苦しい生活を送る奴隷の少女コーラ。あるとき、仲間の少年に誘われて、意を決して逃亡を試みる。地下をひそかに走る鉄道に乗り、ひとに助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北をめざす――。世界的ベストセラーついに刊行!

感想・レビュー・書評

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  • 生きるためには逃げることが必要になることもある。
    そして「痛ましくも感傷に落ちない筆致」は重要だ。

    朝日新聞読書欄の”書評委員が選ぶ「今年の3点」”で円城塔が書いていた「これはおそるべきことに、我々が日常目にしている光景そのものである」が、最もこの物語を表しているだろう。

  • この本が書かれたこと、出版されたこと、そしてなんと日本語で読めること、にまずは感謝したい。
    本当に読めてよかった。

    奴隷制に限らずだが、歴史から学んだことを未来につないでいくときに物語が持つ力を私はいつも(批判的な態度を忘れないようにしつつ)信じている。この本にもやっぱり強大な魔力があった。

    一人の奴隷少女コーラが、「所有されていた」農園から北へ北へと逃亡する、その手助けをするのが「地下鉄道」。史実としては「地下鉄道」というのはコードネームで、実際に物理的な駅があったりしたわけではないが、そこから発想を得てホワイトヘッドはこの本を書いたそうだ。血なまぐさく苛烈を極める奴隷への抑圧描写のあいまに挟まれる、ゴトゴト不器用に進む地下鉄道は、この時代、血塗られたアメリカの数少ない良心の象徴なんだろう。

    地下鉄道は、もうない。でもその先に、アメリカ史上初の黒人大統領が誕生したことを、コーラが知れたらよかったのに。

    まだ、コーラはまだ逃げ続けているんだと思う。
    差別の問題は根深く複雑で、まだ一向に消える気配はないもの。でも今、私達がその歴史を知ることはけして無意味ではないし、知らなきゃいけないことだと思う。

    黒人が文字を読むことすら禁じられていた時代で、ある一人の御者が言ったこの言葉。
    「おれの主人は言った。銃を持った黒んぼより危険なのは、本を読む黒んぼだと。そいつは積もり積もって黒い火薬になるんだ!」(p.343)
    これは作者のメッセージなのかもしれない。御者、って、物語の手綱を握る人だから。

    幸いなことに、私は読むことも書くこともできる。
    それはとても大きな力になるってことを、絶対に忘れちゃダメだ。

    どうか多くの人たちがこの本に出会えますように。

  • 逃げる物語。途中でどんなことがあっても、あきらめない
    あきらめないことはいいことなんだろうか、と考えながら読んだ。犠牲が大きすぎる。自分も他人も。
    これを書いて出版して賞が取れるアメリカってすごい。
    日本で、例えばアイヌ人とか大陸の人とかが、虐待されて差別されて逃げたという小説書いて、きちんと評価されるだろうかとちょっと考えた。日本ってこういうのあまり表に出さない気がする。

  • 解説を読んで、なるほどこの作品自体があの博物館の展示なのかと納得をした。
    物語から数歩下がって全体を見ると、構想も構成も非常に理性的で、胸の痛む展開が続いて凄惨な場面も多かったのに、案外綺麗にまとまってしまったように思う。
    物語作家としての力量は相当なのだろうとも思うのだけど。

  • 奴隷の苦しみ、自由へのかつえ、逃亡の恐怖――。幾重にも織りこまれ、沈みこんでいくこうした心理の深みへは、私たちは書物(ことば)という素材を使って造船した潜水艦に想像力を載せ、私たちの未来と可能性を託することでしかたどり着けないのかもしれない。その意味で、世界の至るところで書物や想像に禁止の刻印がちらつく今、地下鉄道という空想は、卓越した比喩には違いない。そればかりか想像を新たに紡ぎ出し絆のもとに繋ぎ留め直すために私たちがこれから必要とする装置になるのかもしれない。その意味で本書の試みは評価されるべきである。

    だがそうであったにせよ、読んでいる間中私の心にはローラン・ビネの問いが谺していた。即ち「ナチズムに関して何らかの創作をして、どんな意味があるのだ!」(『HHhH』)。人類が犯した拭い難い罪の記録は、フィクションという尾鰭をつけると決定的に信頼を損なってしまう。ナチズムも奴隷制も事実として語るだけで充分おぞましいはず。作品が扱うそれぞれのテーマは中途半端な印象は最後まで残った。香り高く巧緻な文学的表現も不自然なまでに整然とした語りも、私には奴隷制における異物のようだった。地下鉄道がその姿を現したときに私が得た子どものような胸の高鳴りも、本書を閉じる時には萎れてしまっていた。改めて小説の技法の困難を思った。

  • 逃げることについての小説。

    19世紀後半、ジョージアのプランテーションにすむ15歳の少女コーラは奴隷。
    おなじく奴隷の青年シーザーにある時逃亡を持ちかけられる。
    奴隷州から自由州へ。
    州境を越えて北へ逃げれば自由になれる決まりだつた。
    いつまでも追いかけてくる奴隷狩人リッジウェイ。
    こんな時代があったのかとも思うけど、差別はいろんなところに残っている。

  • タイトルから奇想天外な内容かと思っていたが違った。リアリティのある物語であった。読んでいて、展開はある程度、予想できるが、なんでこうなるんだ!、えぇ!などと、心を締め付けられながら一気に読み終わった。悲しく残酷なテーマだが、アメリカらしくもあり、面白い小説だ。

  • 装丁が気になって手に取った本なのですが、面白かった!
    時代背景の知識は社会の授業で習った程度しか持っておらず、文書でぶつかってくる重さに挫けそうにもなったのですが、エンタメとしての面白さもあって集中して読めました。
    この本を読んで、改めて自分が見ていなかったこと、知らなかったことを痛感したので、アメリカの歴史を知りたいと思いました。

  • 登場人物が多い上に、独特の文体ではじめは読みにくかった。が、慣れると引き込まれて一気に読んだ。
    コーラはアマンドラ・ステンバーグのイメージで読んだ。
    地獄巡りみたいな話。はじめはジョージアの農園で奴隷として酷使され、次に暮らしたサウス・カロライナでは一見親切そうな白人たちに囲まれるが、彼らの優しさは優越感から来ており、黒人の断種を行っている。次のノース・カロライナはKKKのような騎士団が名士として町を支配し、黒人と黒人を匿う白人を日常的に処刑している。テネシーでは焼けただれた集落を鎖に繋がれて奴隷狩人と旅する(訳者は「マッドマックス」風の演出が合うと書いているが、私はタランティーノがいいと思う。)。インディアナでは善き仲間に巡り会うが、仲間割れが白人につけこまれ惨劇に。もう、これでもかっていうくらい不幸が続く。これが実話に基づいているんだからやりきれない。
    黒人奴隷を拷問し、最後は火炙りにするのを白人たちが豪勢な食事をしながら見物するシーンがあったけど、それも本当にあったのか?
    奴隷制度では、人間を家畜として扱うが、家畜を強姦する主人はまずいない。強姦できるってことは性的魅力を感じているわけで、その点で既に同じ人間と認めてしまっていると思うが。そこに矛盾を感じなかったのか?不思議だ。
    アメリカの黒人奴隷の歴史を描いた本は多いが、地下鉄道という架空の設定を持ち込むことで、様々な差別の実態を一人の視点で描ける。そこが斬新だし、だからこそこの小説が成り立っているわけだけど、個人的には心からは納得できない。東京という狭い地域でも地下鉄を掘るのは大変なのに、広大なアメリカで、一部とはいえ州をまたがる路線を秘密裏に作れるはずがないと思う。そこを呑み込めれば満点だったんだけど。
    黒人奴隷が信じられないほど残酷な目にあったことは事実であり、それを残す意味では価値があると思うが。絵本『あなたがもし奴隷だったら…』も読んで欲しいと思う。あれで十分という気もする。

  • 黒人奴隷の子供として農場で生まれ育った少女が逃亡したくましく生きる話。最初の奴隷生活の様子が生々しく気が滅入る。しんどく始まるが、逃亡生活に突入すると駆け足で話は転がりだし読みやすい。続きは気になるしすぐに読み終わる。確かによく調べて詳しく書かれているが、書き方が話題に上るような、映像化を見越してるというか、なんか鼻につく。もっと静かに重たく書く方が心に染み入るぜ。あんまり好きな書き手じゃないなあ。少女に共感できない部分がでかい。

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