地下鉄道

制作 : 谷崎 由依 
  • 早川書房 (2017年12月6日発売)
4.10
  • (19)
  • (12)
  • (7)
  • (4)
  • (0)
  • 本棚登録 :221
  • レビュー :22
  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097309

作品紹介・あらすじ

アメリカ南部の農園で、苦しい生活を送る奴隷の少女コーラ。あるとき、仲間の少年に誘われて、意を決して逃亡を試みる。地下をひそかに走る鉄道に乗り、ひとに助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北をめざす――。世界的ベストセラーついに刊行!

地下鉄道の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 生きるためには逃げることが必要になることもある。
    そして「痛ましくも感傷に落ちない筆致」は重要だ。

    朝日新聞読書欄の”書評委員が選ぶ「今年の3点」”で円城塔が書いていた「これはおそるべきことに、我々が日常目にしている光景そのものである」が、最もこの物語を表しているだろう。

  • 逃げる物語。途中でどんなことがあっても、あきらめない
    あきらめないことはいいことなんだろうか、と考えながら読んだ。犠牲が大きすぎる。自分も他人も。
    これを書いて出版して賞が取れるアメリカってすごい。
    日本で、例えばアイヌ人とか大陸の人とかが、虐待されて差別されて逃げたという小説書いて、きちんと評価されるだろうかとちょっと考えた。日本ってこういうのあまり表に出さない気がする。

  • 解説を読んで、なるほどこの作品自体があの博物館の展示なのかと納得をした。
    物語から数歩下がって全体を見ると、構想も構成も非常に理性的で、胸の痛む展開が続いて凄惨な場面も多かったのに、案外綺麗にまとまってしまったように思う。
    物語作家としての力量は相当なのだろうとも思うのだけど。

  • 逃げることについての小説。

    19世紀後半、ジョージアのプランテーションにすむ15歳の少女コーラは奴隷。
    おなじく奴隷の青年シーザーにある時逃亡を持ちかけられる。
    奴隷州から自由州へ。
    州境を越えて北へ逃げれば自由になれる決まりだつた。
    いつまでも追いかけてくる奴隷狩人リッジウェイ。
    こんな時代があったのかとも思うけど、差別はいろんなところに残っている。

  • タイトルから奇想天外な内容かと思っていたが違った。リアリティのある物語であった。読んでいて、展開はある程度、予想できるが、なんでこうなるんだ!、えぇ!などと、心を締め付けられながら一気に読み終わった。悲しく残酷なテーマだが、アメリカらしくもあり、面白い小説だ。

  • 19世紀前半のアメリカ南部には、奴隷たちを秘密裏に、命がけで北部に逃がす組織が存在した。地下鉄道、と呼ばれるその組織を、本作では本当に地下に鉄道を走らせていた、として描いている。設定はフィクションなのだが、伝わってくる黒人奴隷たちの苦しみは本物で、読んでいてとても息苦しかった。特に処刑のシーンの残虐さには読むのをやめたくなった。逃亡奴隷と関わっていることが知られたら処刑されるかもしれないのに、それでも彼らを助けようとする白人がいたことが本当にすごいと思う。最後のメイベルの物語に救われた。

  • 奴隷制度の時代の南部アメリカ、綿花農園で奴隷として暮らすコーラは、北へ逃げようとシーザーに誘われる。最初は拒んだコーラだが母メイベルが幼かった自分を残して逃げたことなどをきっかけに、シーザーと逃亡する。地下にあるという北へ続く鉄道に乗り貨物車で北を目指す。逃げる途中で追っ手の白人少年について瀕死の怪我を追わせたことが奴隷狩りの追っ手に拍車をかける。農園主はコーラに賞金をかけ遠く離れた州の新聞にも載せた。二転三転する過酷な逃亡劇が続く。

    これでもか、というほどに続く困難な状況。悲惨を極める白人たちの仕打ち。何度読むのを止めようかと思ったが、コーラのストーリーがどうなるのか気が気でなく読み進めた。
    コーラは自由を手にいれるのだが、その代償や失ったものを思うと素直に喜べなかった。

  • 奴隷としてジョージア州の綿花農場で暮らす少女コーラ。白人達に虐待され何の希望もなく死ぬまで働くだけの日々。白人に打たれ殴られ殺されるのも日常である描写は本当に恐ろしい。だがもっと恐ろしいのは、コーラが農場を逃げ出した州の白人達だ。直接的にコーラを捕まえ暴力を振るおうとする男たちももちろんだが、黒人たちを実験台にする医師や博物館の見せ物にする悪気のないふるまい。そしてノースカロライナでは、黒人を庇ってないか互いに監視しあい、叱られた腹いせに子が親を密告し処刑させるディストピアのような街。どこまでが史実でどこまでが作られたものなのかは不明だが、無知と憎しみと傲慢さが混ざりあった世界では今も昔も起こり得る現象なのだ。
    何度も途中で本を置かざるを得ないほどツラい描写が多いが、だがらこそ地下鉄道という一握りの人々の良心で支えられる一本きりの逃げ道を、コーラがたどる旅は強く胸を打つ。異質なものを理解し受け入れようと努力することを放棄したら、これと同じ世界にたどり着いてしまうのだということを実感できた。

  • これは予想外に面白い。
    逃亡奴隷たちを助けるため地下鉄道が存在した、という架空の設定なんだけど、
    正直ここまでエンタメ要素が強いと思わなかった。
    奴隷制時代のお話なので、読むのが辛くなるような場面も多々ある(ひどいとか哀しいとか軽々しく言うことすら申し訳なくなる)にも関わらず、展開にスピード感があって飽きさせない。
    主人公の逃亡劇の合間に挟まれる各登場人物の物語もとても良く、挟むタイミングもまた絶妙にいい。光も闇も、なにもかもぜんぶ抱えたラストもいい。
    ザ・小説を読ませてもらいました。

  • 奴隷の苦しみ、自由へのかつえ、逃亡の恐怖――。幾重にも織りこまれ、沈みこんでいくこうした心理の深みへは、私たちは書物(ことば)という素材を使って造船した潜水艦に想像力を載せ、私たちの未来と可能性を託することでしかたどり着けないのかもしれない。その意味で、世界の至るところで書物や想像に禁止の刻印がちらつく今、地下鉄道という空想は、卓越した比喩には違いない。そればかりか想像を新たに紡ぎ出し絆のもとに繋ぎ留め直すために私たちがこれから必要とする装置になるのかもしれない。その意味で本書の試みは評価されるべきである。

    だがそうであったにせよ、読んでいる間中私の心にはローラン・ビネの問いが谺していた。即ち「ナチズムに関して何らかの創作をして、どんな意味があるのだ!」(『HHhH』)。人類が犯した拭い難い罪の記録は、フィクションという尾鰭をつけると決定的に信頼を損なってしまう。ナチズムも奴隷制も事実として語るだけで充分おぞましいはず。作品が扱うそれぞれのテーマは中途半端な印象は最後まで残った。香り高く巧緻な文学的表現も不自然なまでに整然とした語りも、私には奴隷制における異物のようだった。地下鉄道がその姿を現したときに私が得た子どものような胸の高鳴りも、本書を閉じる時には萎れてしまっていた。改めて小説の技法の困難を思った。

全22件中 1 - 10件を表示

地下鉄道のその他の作品

地下鉄道 (早川書房) Kindle版 地下鉄道 (早川書房) コルソン・ホワイトヘッド

コルソン・ホワイトヘッドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フランシス・ハー...
西 加奈子
ピエール ルメー...
森 絵都
柚木 麻子
陳 浩基
ジョン・ウィリア...
原田 マハ
恩田 陸
ジョン アーヴィ...
佐藤 雅彦
平野 啓一郎
佐藤 正午
有効な右矢印 無効な右矢印

地下鉄道を本棚に登録しているひと

ツイートする