遺伝子‐親密なる人類史‐ 上

制作 : 仲野 徹  田中 文 
  • 早川書房
4.26
  • (24)
  • (14)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 316
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097316

作品紹介・あらすじ

「科学史上、最も強力かつ危険な概念のひとつ」――ピュリッツァー賞を受けた医師が描く「遺伝子科学」の全貌とは? メンデルのエンドウマメは、いかにダーウィンに出会い、優生学の暗黒の歴史をへてゲノム編集へと発展したのか? 我々の未来を占う必読書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 遺伝学の歴史を変えた出来事や人物が紹介されており、とりわけ印象に残ったのは二つ。1920年代のアメリカで「遺伝的に欠陥のある」人々が収容、断種、根絶され、1930年代のドイツでは同じように25万人が安楽死させられ40万人が強制断種させられた優生学の考え。まったく異なる生物の遺伝情報を組み合わせるのは危険だと思われていたが予想外にも医薬品を製造するための最も安全な方法であると分かったこと。下巻も楽しみ。

    p22
    二〇〇九年に、スウェーデンの研究者が、何千もの家系の何万人もの男女を対象もした大規模な国際的調査の結果を発表した。調査によれば、複数の世代にわたって精神疾患の患者が存在する家系を分析した結果、双極性障害と統合失調症には強い遺伝的な関連があるという驚くべき証拠が見つかった。

    p88
    「ごく些細な考えが、人の人生全体を満たす」

    p112
    遺伝形質を人為的に選択し、選択された形質を持つ人間だけを増やすことによって人類を改良するための学問である優生学

    p144
    スタートバントがつくった簡単な遺伝子地図は、一九九〇年代をとおしておこなわれる大規模かつ入念な研究、すなわち、ヒトゲノムのすべての遺伝子の染色体上の位置を突き止める研究の先駆けとなった。連鎖の強さから染色体上の遺伝子同士の相対的な位置関係を導き出したことによって、スタートバントは、乳がんや、統合失調症や、アルツハイマー型認知症などの複雑な家族性疾患に関連した遺伝子を解読するための基盤をつくった。

    p145
    抽象的な概念を真実として受け入れる科学者の能力

    p158
    遺伝型+環境+誘因+偶然=表現型
    個体の形や運命を決定づける遺伝、偶然、環境、変化、そして進化の相互作用の本質を、この方程式は簡潔ながら堂々ととらえていた。自然界では、野生の生物集団の中に遺伝型による多様性が存在し、そうした多様性が環境や、誘因や、偶然と相交わることによって個体の特性(気温への抵抗性が強いショウジョウバエか、弱いショウジョウバエか)が決定される。気温の上昇や食糧の急激な減少などの厳しい選択圧が加わると、「最適な」表現型を持つ個体のさが選択される。そうしたショウジョウバエが選択されて生き残ることで、その遺伝型の一部を受け継いだ幼虫が多く生み出され、選択圧に適応したショウジョウバエが多く誕生する。選択のプロセスが作用するのは身体的あるいは生物学的な特質であり、その結果、そうした特質をもたらしている遺伝子が受動的に選択されるのだ。

    p165
    だがまれに、遺伝物質がある個体からべつの個体へと移ることがあるー親から子へとではなく、互いに無関係な個体から個体へと。こうした水平方向の遺伝子の交換は「形質転換」と呼ばれる。それは、私たちの驚嘆を表す言葉だ。というのも私たち人間は、遺伝情報の伝播は繁殖によってのみ起きるものだと思い込んでいるからだ。しかし形質転換が起きると、月桂樹の枝を生やすダプネーのように、ある個体が異なる個体に変態するかのように見える(というよりもむしろ、遺伝子の移動によって、ある生物の特徴がべつの生物の特徴へと転換する。ダプネーの空想物語を遺伝学で物語るなら、枝を生やす遺伝子がダプネーのゲノムに入り込み、人間の皮膚から樹皮と、心材と、木質部と、師部を生やすのだ)。
    形質転換が哺乳類で起きることはほぼ皆無だが、生物界の隅っこにいる細菌は、水平方向に遺伝子を交換することができる

    p168
    「形質転換」のあいだ、細菌に病原性を与える遺伝子(滑らかな皮膜をつくる遺伝子)がなんらかの方法で細菌の身体を離れて科学的スープの中に入り込み、そこから生きた細菌に移って、生きた細菌のゲノムに組み込まれたにちがいなかった。つまり遺伝子は繁殖という過程を経ることなく、菌から菌へと移動できるということだった。遺伝子とは、情報を運ぶ自律性の単位、つまり物質単位だったのだ。(中略)遺伝のメッセージは分子を介して移動しているのであり、その分子は化学物質として細胞外で存在できると同時に、細胞から細胞へ、個体から個体へ、親から子へと情報を運ぶことができるのだ。

    p170
    放射線によりショウジョウバエの突然変異率が上がるという結果は、以下のふたつの事実を意味していた。ひとつめは、遺伝子は物質でできているということだ。放射線というのは結局のところ、エネルギーにすぎなかった。フレデリック・グリフィスは遺伝子を個体から個体へと移動させ、マラーはエネルギーを使って遺伝子を変化させた。その正体がなんであれ、遺伝子というのは動いたひ、個体間を移動したり、エネルギーによって変化したりすることができるものであり、そうした性質は一般的に、化学物質の持つ性質だった。
    だか遺伝子の物質的な性質以上に科学者を仰天させたのは、ゲノムの完全なる可鍛性だった。X線によって遺伝子がまるでシリーパティ(自由自在に変形させることのできる粘土状のおもちゃ)のように変化するとは。(中略)マラーの実験は、遺伝とはかなり簡単に操作できることを示していた。突然変異率そのものがかなり変化しやすいものだったのだ。

    p196
    核酸 nucleic acid

    p197
    DNAやRNAの骨格は糖とリン酸が結合した鎖でできている。RNAの糖はリボース(ゆえにリボ核酸、RNAと呼ばれる)で、DNAの糖はリボースとわずかに構造が異なるデオキシリボース(ゆえにデオキシリボ核酸、DNAと呼ばれる)である。

    p203
    物質を構成する最小単位と考えられていた原子は、さらに根源的な物質単位である、電子と、陽子と、中性子でできていたのだ。

    p205
    ヘモグロビンのうち、いちばん詳しく研究されてきたヘモグロビンAは、四つ葉のクローバーのような形をしている。四つの「葉」のうちふたつはαグロビンと呼ばれるタンパク質でできており、残りのふたつはそれとよく似たβグロビンというタンパク質でできている。これら四つ葉はそれぞれの中心に、鉄を含むヘムという名の化学物質をひとつずつ握っている。ヘムは酸素と結合することができ(この結合は鉄が錆びる過程にやや似た反応である)、四つのヘムすべてに酸素が一分子ずつ結合すると、四つの葉がサドル取付金具のように酸素をきつく締めつける。ヘモグロビンが酸素を放出する際には、四つの葉の締めつけが緩む。

    ヘモグロビンはその形のおかげでそうした機能をはたすことができる。分子の物理的構造が化学的性質を可能にし、分子の化学的性質が生理機能を可能にし、分子の生理機能が最終的に、生物学的活動を可能にしている。生物の複雑な働きというのは、こうしたいくつもの層の重なりとして理解できる。物理学が化学を可能にし、化学が生理学を可能にしているのだ。シュレディンガーの「生命とは何か」という問いに、生化学者なら「化学物質にちがいない」と答えるかもしれず、「化学物質とは何か?」という問いに、生物物理学者なら「分子にちがいない」と答えるかもしれない。

    p263
    突然変異というのは、DNAが化学物質やX線によって傷ついたり、DNA複製酵素が遺伝子をコピーする際にたまたまコピーミスをおかしたりすることによって起きる。だが、遺伝的多様性を生み出すメカニズムはこれだけではなく、染色体間で遺伝情報が交換されることによる場合もある。母親由来の染色体上のDNAが父親由来の染色体上のDNAと場所を交換し、母と父の遺伝子のハイブリッドをつくる場合だ。この場合には、染色体間で遺伝物質の塊がまるごと交換されるわけだが、このような組み換えも「突然変異」の一形態だ。
    染色体から染色体への遺伝情報の転移はきわめて特殊な状況でしか起きない。そのひとつが、生殖のために精子と卵子がつくられる過程だ。精子形成や卵子形成の直前、精子や卵子になる細胞の核はつかの間、遺伝子の遊技場のようになり、その遊技場で、対をなす母親由来の染色体と父親由来の染色体同士が抱き合って、遺伝情報を交換する。父親と母親の染色体間での遺伝情報の交換は、父親と母親の遺伝情報を混ぜ合わせるために不可欠であり、モーガンはこの交換を「乗り換え」と名づけた(彼の弟子はショウジョウバエの特定の遺伝子の染色体上の位置を突き止めるために、この乗り換えを利用していた)。乗り換えは現代の遺伝学の用語では「組み換え」と呼ばれる。遺伝子の組み合わせのそのまた組み合わせをつくる能力を指す用語だ。

    p281
    ヒトの細胞にもアポトーシスによる細胞死を制御する遺伝子が存在する。それらの遺伝子の多くは太古からあるもので、その構造や機能は線虫やショウジョウバエで見つかった死の遺伝子と似ている。一九八五年、主要生物学者のスタンリー・カーズメイヤーがBCL2という名の遺伝子の変異がリンパ腫で頻繁に見られることを発見した。BCL2はホルビッツが発見した、線虫の死を制御するced9遺伝子に相当するものであることが判明した。線虫では、ced9は細胞死をもたらす「死刑執行タンパク質」の機能を遮断することで細胞死を防いでいる(それゆえに、変異体では「死なない」細胞が出現したのだ)。ヒトの細胞では、BCL2の活性化によって細胞内の死のカスケードが阻害され、その結果、病的なまでに死ねない細胞、つまり、がん細胞がつくり出される。

    p294
    ウイルスは単純な構造をしており、その構造はたいていの場合、膜に包まれた一組の遺伝子にすぎない。免疫学者のピーター・メデワーはそんなウイルスを「タンパク質の膜に包まれた悪い知らせ」と呼んだ。細胞の中に入り込むと、ウイルスは殻を脱ぎ捨て、細胞を工場のように利用して自分の遺伝子をコピーし、新しい殻をつくり、最終的には何百万もの新しいウイルスが細胞から放出される。ウイルスはこのように、自分のライフサイクルを最低限の本質にまで純化している。感染し、繁殖するためだけに生き、生きるために感染し、繁殖するのだ。

    p360
    医薬品、つまり薬というのは本質的に、ヒトの整理現象に治療的な変化をもたらすことのできる分子にすぎない。それは単純な化学物質の場合もあれば(たとえば、正しいタイミングで正しい量を与えたならば、水も効果的な薬になる)、複雑で多次元かつ多面的な分子の場合もあるが、その種類は驚くほど少ない。ヒトに使用されている薬は何千もあるものの(アスピリンひとつをとってみても、何十種類もある)、それらの薬が標的にしている分子反応は、体内で起きている全分子反応のごく一部にすぎないのだ。ヒトの体内にある数百万の生体分子(酵素や、受容体や、ホルモンなど)のうち、現存する薬によって治療的に調整されているのは約二五〇(〇.〇二五パーセント)にすぎない。

    p365
    RNA リボ核酸。細胞内でいくつかの機能をはたしいる化学物質。遺伝子からタンパク質が翻訳される際の「中間」メッセージとしての役割もはたしている。糖とリン酸の骨格に沿って塩基(A、C、G、U)が並んだ構造をしている。RNAはたいてい、細胞内で一本鎖として存在しているが(つねに二本鎖として存在しているDNAとは異なる)、特殊な状況では、二本鎖のRNAか形成される場合もある。レトロウイルスなどの生物は、RNAを使って遺伝情報を運んでいる。

    逆転写(Reverse Translation) 酵素(逆転写酵素)の触媒により、RNA鎖を鋳型にしてDNA鎖が合成される反応。逆転写酵素はレトロウイルスが持つ酵素である。

    浸透率(Penetrance) ある特定の遺伝子の変化が、その個体の実際の表現型として表れる割合。遺伝医学では、あるは遺伝型を持つ集団のうち、その遺伝型が関与する疾患の発症者の割合を指す。

    セントラル・ドグマ(Central dogmaあるいはCentral theory) ほとんどの生物において、生物の情報はDNA→メッセンジャーRNA→タンパク質の順に伝達されるという分子生物学の基本原則。この原則には例外があり、レトロウイルスは、RNAの鋳型からDNAをつくるための酵素を持っている。

    タンパク質(Protein)
    アミノ酸が鎖状につながってできた化合物で、遺伝子が翻訳されて合成される。タンパク質の機能は多岐にわたり、その中には、シグナル伝達、生体構造の形成、生化学反応の促進などが含まれる。遺伝子は通常、タンパク質の青写真を提供することで「作用」する。タンパク質はリン酸基、糖鎖、脂質などの小さな化合物の付加による化学的な修飾を受けている。

    転写(Transcription)
    遺伝子のRNAコピーをつくる過程。転写では、DNAの遺伝子暗号(たとえば、ATG-CAC-GGG)を鋳型として、RNA「コピー」(AUG-CAC-GGG)が合成される。

    翻訳(Translation)
    リボソームにおいて、遺伝情報がRNAメッセージからタンパク質へと変換される過程。翻訳の過程では、RNAの三つ組みの塩基(たとえば、AUG)をもとに、アミノ酸(たとえば、メチオニン)がタンパク質に次々と付加されていく。RNA鎖はこのようにしてアミノ酸の鎖をコードしている。

    リボソーム(Ribosome)
    あらゆる生物の細胞内に存在する構造で、タンパク質とRNAからなる。メッセンジャーRNAの情報を読み取ってタンパク質へと変換する。

  • 『病の皇帝「がん」に挑む』のシッダールタ・ムカジーが、今に至る遺伝子学について書いた本。「がん」が遺伝子の病であることを考えると、遺伝子の歴史について語るのは自然なことなのかもしれない。
    (なぜか文庫版になるときには『がんー4000年の歴史』とタイトルが変わっている...)

    著者は、遺伝子を、原子とビットに並ぶ二十世紀を変えた三つの概念のひとつという。つまり、原子が物質の、ビットが情報の基本単位であるように、遺伝子は生物学の基本単位だとする。遺伝子の射程範囲は広い。著者は、「遺伝子という概念をまず最初に念頭に置くことなしに、生物や細胞の生物学や病理学、さらには行動、気質、病気、人種、アイデンティティ、運命といったものを理解することはできない」という。その通りだと思う。「われわれが人間のゲノムを理解し、操作する能力を手に入れたなら、「人間」とは何を意味するのかというわれわれの考えは変わってしまうはずだ」というのも決して大げさではない。

    本書の構成は「遺伝子」についての歴史を書くと、まあこうなるだろうなという建付けになっている。メンデルとダーウィンから始めて、優生学、ワトソン・クリックのDNAの発見の物語、ヒトゲノム解析、そしてCRISP CAS9。もちろん、やや冗長に感じることもあるが、細かな事実を丹念に追った物語が紡ぎだされる。でも、...長すぎかも。

    がんの話は知らないことも多かったのだけれども、遺伝子の話はそれなりに知識があったので、ちょっと長さがつらかった。一つ一つは面白いんだけれども。

  • 遺伝子研究の歴史書といったふうに読みました。
    とても面白いです。
    上巻はメンデルによる遺伝法則の発見、優生学の勃興、遺伝子がDNAに刻まれていること、DNAの構造の発見。それが物質として現れていく仕組み…といったところでしょうか。

  • さすが『がん』の筆者だけあってとてもスリリングで多方面に目配せが効いていて面白い。さすがに『がん』ほどの強烈な衝撃はないけど生物の知識さっぱりない僕でも分かりやすく,するする読めました。

  • 漠然と知っている遺伝子とその歴史を知ることができる。難しい内容もあり、優生学のくだりは恐怖や嫌悪を感じたけれど、それでも読み進めることができた。技術の危険性を検討するためのアシロマ会議とその経緯には、成果云々よりも感銘を受けた。

  • とてもおもしろい

  • 人類の遺伝子探求について把握できる良書。
    物語りとしても面白い

  • メンデルから始まる遺伝の謎をめぐる歴史をたぐる。著者の家族に潜む統合失調症の遺伝的要素もエピソードに混じる。遺伝、遺伝子、DNAの二重らせん、そしてDNAを操作する技術。

  •  前作『がん――4000年の歴史』でピュリッツァー賞を受賞した著者が、こんどは〝遺伝子全史〟に挑んだ大作である。
     著者は医師で、がん研究者(米コロンビア大学メディカルセンター准教授)。がんは遺伝子が暴走し、細胞の増殖が制御できなくなる病だから、がん研究を続ける著者が遺伝子についてもくわしいのは当然のことだ。

     くわえて、著者には遺伝的な精神疾患を持つ家系に生まれたという個人的背景があった。著者が生涯の中で精神疾患を発症するリスクは高い。だからこそ、遺伝は彼にとってきわめて切実なテーマだったのである。
     本書は随所に、著者一族の精神疾患をめぐる物語が挿入され、読者に「親密さ」を感じさせるアクセントになっている。

     メンデルとダーウィンを中心とした〝遺伝子前史〟から説き起こされる本書は、ポストゲノム時代(「ヒトゲノム計画」完了以後のゲノム研究)までの約一世紀半を丹念に辿り、最後に未来を展望して終わる。

     本書の内容は、学術論文として、または研究者向けの専門書として読めば、一般読者にとっては難解で無味乾燥だろう。それが著者の手にかかると、科学に疎い読者にも楽しめる、格調高い〝遺伝子の叙事詩〟になるのだ。

     ビル・ゲイツは本書に寄せた推薦の辞の中で、著者を「ほれぼれするストーリー・テラー」と評している。まさにそのとおり。著者は文筆専業の道を選んでいたとしても、ひとかどの作家になれた人だろう。

     著者の文章のカッコよさの例を挙げよう。

    《自然界を取り憑かれたように観察したふたりの男、ダーウィンとメンデルは「自然」はどのように生まれたのかという同じ質問を異なる形で投げかけることによって決定的な大ジャンプをした。メンデルの質問は顕微鏡的だった。生物はいかにして子に情報を伝えるのか? ダーウィンの質問は巨視的だった。生物は何世紀も経るあいだにいかにして自らの特徴についての情報を変化させるのか? やがてこのふたつの視点が収束して、近代生物学における最も重要な統合と、ヒトの遺伝についての最も力強い説明がもたらされることになる。》

     薫り高い比喩なども随所にあり、本書を味わい深いものにしている。
     たとえば――。

    《その現象はまるで遺伝的な月蝕のようだった。ふたつのまれな症例が重なりあい、きわめてまれな症例をもたらしたのだ。》

    《私が建物の中に入りかけたとき、駐車場を渡っていく彼女の姿が見えた。スカーフがまるでエピローグのように後ろにたなびいていた。》

     ちなみに、日本が誇る山中伸弥博士も、下巻の登場人物の一人である。

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

シッダールタ・ムカジー(Siddhartha Mukherjee)
がん専門の内科医、研究者。著書は本書のほかに『病の皇帝「がん」に挑む——人類4000年の苦闘』(田中文訳、早川書房)がある。同書は2011年にピュリツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞。
コロンビア大学助教授(医学)で、同メディカルセンターにがん専門内科医として勤務している。
ローズ奨学金を得て、スタンフォード大学、オックスフォード大学、ハーバード・メディカルスクールを卒業・修了。
『ネイチャー』『Cell』『The New England Journal of Medicine』『ニューヨーク・タイムズ』などに論文や記事を発表している。
2015年にはケン・バーンズと協力して、がんのこれまでの歴史と将来の見通しをテーマに、アメリカPBSで全3回6時間にわたるドキュメンタリーを制作した。
ムカジーの研究はがんと幹細胞に関するもので、彼の研究室は幹細胞研究の新局面を開く発見(骨や軟骨を形成する幹細胞の分離など)で知られている。
ニューヨークで妻と2人の娘とともに暮らしている。

「2018年 『不確かな医学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遺伝子‐親密なる人類史‐ 上のその他の作品

遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房) Kindle版 遺伝子―親密なる人類史(上) (早川書房) シッダールタ・ムカジー

シッダールタ・ムカジーの作品

遺伝子‐親密なる人類史‐ 上を本棚に登録しているひと

ツイートする