好き嫌い―行動科学最大の謎―

  • 早川書房
3.25
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本棚登録 : 372
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097743

作品紹介・あらすじ

古来説明・予測など無理と言われた人の好き嫌い。だがIoT/ビッグデータの時代、人の選好を操る手法が開発されている。心理学から行動経済学までさまざまな最新研究を取材して紹介、ネットフリックス社などの現場潜入も敢行の「好き嫌いのフィールドワーク」

感想・レビュー・書評

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  • 人の好みを左右する法則について考察した内容。
    ビッグデータを扱うビジネス現場への取材と心理学・社会学・行動経済学などの学問の知見を参考に、「好き」「嫌い」というあらゆることが説明でき、でも何も説明できない人の習性を読み解いていく。

    結論からいうと本書はわかりにくい。記述構成も取材内容や学問の知見が乱れ飛んで読み辛い。結論らしいものもなく、結局のところ読み終えても人の好みについては科学的にいろいろ言えるが厳密には分かっていない、ということしかいえない。

    それでも好みについての知見はやはり興味そそられることばかりだ。
    例えば、自分が何が好きなのか分かってないことがある。そして奇妙なことに何が好きかより、なぜそれが好きなのか。人はその理由についてよく分かってない、説明できない。これは好悪というものは様々なバイアスや社会状況や環境から簡単に影響を受ける。幼少期の記憶や単純接触効果(よく目にし、触るもの)によって、あるいは習慣として親しんだ文化的な枠組みとして好みが表われているだけの場合がある。
    心理学の見地からいうと、人は分類できるものを好む。よく分からないもの、親しみにくいものは好まれにくい。知覚流暢性のせいで、人はわかりやすい刺激を求めるため単純なものにすぐ好感をもつ。でも流暢性ゆえに記憶に残りにくく、すぐ飽きてしまう。毎年表われては消えていく一発屋芸人や流行りのファッションやゲームといった流行にも科学的な根拠がある。
    そもそも好みは学習するものであるという。生物学的には生まれついての好みというものはほとんどない。人間は、ある対象に対して感情判断をミリ秒単位で下している。これは複雑な世界に対応するために人が進化の過程で手に入れた能力だ。だが代わりに本当に好きなことを見過ごすあるいは軽く見たり、好きな理由を勘違いする。むしろ文化や環境から学んだり、親しんだものによって人の好みは作られる。好みとは外部から形作られるものというと違和感を覚える人もいるかもしれないが、人は社会的・文化的動物であると考えれば決しておかしな見解ではないだろう。

    ならば、著者がいうには「好き」「嫌い」を超えよう。対象をありのままに判断するためには「好き」「嫌い」を一旦留保する。そこから物事の面白味が引き出される。「好き」「嫌い」の即断はその芽を早々と摘んでしまうという指摘は大変頷いた。(でも実行が難しい。。)


    で、結局、人の好き嫌いは何によって決まる?そこに法則は?味覚や音楽、絵画の現場を取材し科学の知見てんこ盛りの内容を読み切っても分からない。答えを求めて本書を読んだ人は失望するだろう。
    でも、何が好きかを問うよりも、なぜ好きか?を問うたほうがおもしろい探求の旅に行けるとこの本は教えてくれる。人の「好き」「嫌い」にまつわる考察と探求はまだまだ道半ばで謎は多い。まだ広大なフロンティアが人間のなかに残されているなんてロマンがある話です。
    そんなことを感じた本だった。

    • corpusさん
      わかりにくい、というところには賛同します。
      わかりにくい、というところには賛同します。
      2022/11/06
  • 「行動科学の最大の謎」とタイトルされているように、「人の好き嫌いは説明できない」というのが常識のようだ。

    そのテーマにあえて挑戦した著者の中間報告的な書ととらえた。全体的に著者の調査や研究の過程で得られた情報が羅列的に書かれているように感じるが、客観的な分析結果が述べられているものではない(と思う)。

    しかし、その「好き・嫌い」というものの特徴をおぼろげながら掴んでおり、それを表現した一つの言葉が、以下のものではないだろうか。

    「好みにはさまざまな無意識のバイアスがつきまとい、そのときの状況や社会からの影響であっけなく揺れ動く。」

    「今日好きなものを明日も好きでいる可能性は思いがけないほど低く、以前に好きだったものを何が好きにさせたのかを覚えている可能性は低い。」

    「好き・嫌い」というのは絶対的なものではなく、なんらかの影響により存在し、変化するものなのだということを知ることができた。

    自分がなぜ本書を手に取ったのかのそもそもを考えてみると、「好きとか嫌いとかがどうして発生するのか?」とか、特に「嫌いなものが好きに変わることはあるのか?」というようなことが知りたかったからだと思う。

    「野菜嫌いの子供が毎日食べることで好きになる」というようなことから接触回数が嫌いを好きにさせるというような話もあったが、それだけでは世の中で離婚する人がいることと矛盾するようにも感じた。

    やはり、接触効果により嫌いが好きに転じるには、他に別のバイアスがからんでいるようにも思われる。

    今後そのへんの仕組みまで明かしてもらえれば、嫌いを好きに転じることができ、ハッピーライフをもっと拡張できるのではないかと感じた。

  • 結局好きか嫌いかはなかなかわからない。

    分類したり、今まで知っていることの方が好きになりやすい。
    好きか嫌いかを話すよりもどんなところが良いかを話す。

    結局最後の上を読めばこの本は終わり

    もう少し端的に結論を書いて欲しかった

  • ○○が好き、嫌い。昼食に何を食べたいか?聞きたい音楽は?など、日常は好みと選択の場面に満ちている。そんな好み、選択を分析した書。
    好みなんて極めて個人的だが、移ろいやすく、時代や周囲にも大いに影響を受けるもの。著者はネットフリックスなど人の好みを商売ネタにする企業へも取材するが、この摩訶不思議さがよくわかる。
    本書は興味深いテーマに満ちているものの、読み通すのに時間を要した。馴染みのない固有名詞や作品名、一読して意味をとれない文があり、あまり楽しめなかった。

    • corpusさん
      わかりにくいところがありますよね。
      わかりにくいところがありますよね。
      2022/11/06
  • 好きか嫌いかはなかなかわからない。好みについて語ったりすることでそれが好きになる。どんなところが好きかを話すことが大事。という至極当たり前のことが書いてある本だが、ワインのテイスティングの話に行ったり、味覚や嗅覚が好きに与える影響を考えていたり、色んな可能性を感じられる本だった。特に私は昆虫食や昆虫を関心領域とするので、なぜそれが嫌いになるのかに関心があったが、目に入るものが好きになり、好きなものが目に入るという理屈は(美術館の話)とても面白かった。要するに身近にあるかが大事なのだ。

    趣味や好みで選ばれる対象の場合、「賞の最終選考にとどまった作品は受賞作よりも評価が低かった――受賞作が決まる前は。ところが受賞作という広告が添えられたとたんに、その本の評価は最終選考にもれて負けたほかの候補作への評価よりも急激に低下しはじめるのだ。」という風に、本のレビュー研究や動画の再生回数、音楽の好みの話も面白かった。

  • 好きなものを選ぶとき、選ばれるものの良さを計測するとともに、その選ぶ人間の趣味の良さも計測されるというところは面白かった。

    また、素人と専門家で判断が異なることも書いてあって勉強になった。レビューを書くときのコメントで、わかるという。このレビューも素人であることが分かってしまうのだろう。

  • ふむ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/708238

  • 流し読みしてしまったのでまたいつかじっくり読みたい

  • 要約↓↓
    1 期待した通りだともっと好きになる。
    2 なじみのあるものほど好きになりやすい
    3 単純な刺激は好きになりやすく飽きやすい
    4 最初の肯定意見は多くの追随者を呼ぶ
    5 「こうありたい」願望が「好き」にさせる

    1~3あたりは、脳科学の本とか、習慣術の本とかで言ってることとも共通している気がするな。人間ってそういうものなんだろう。
    生物としての作りによるもんなんだろうなぁ。そういう現象に「好き」「嫌い」というレッテルを貼っているわけで、レッテルを貼った後で分析しているって感じかな?鶏卵問題みたい。

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