人喰観音

著者 :
  • 早川書房
3.85
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本棚登録 : 204
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098054

作品紹介・あらすじ

美しい容姿と豊満な肉体、そして人より永い寿命を持つ〈寄生種〉のスイ。彼女は人間に混じって慎ましくも幸せな生活を送っていた。しかし、東方と名乗る美青年の扇動で人間たちに疎まるようになり、やがて運命を暗転させていく。美しくもおぞましいホラー書き下ろし長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 分限者の薬種問屋に拾われた女、スイ。並外れて美しく豊艶な肉体を持つ彼女は、人の形をして人にあらざる「観音様」だった…

    作品全体に漂う妖しい雰囲気。彼女に魅了され狂っていく人々はとても幸せそう。
    『なよやか』などスイを表現する言葉は神々しくも艶めかしい。

  • なんと妖艶な物語なんだろう。そのような描写はほとんどないのだが、なんとなく官能的に感じるのは何故だろう。

    各章にスイという生き神様が登場し、それぞれの人物に寄生して暮らしている。スイは魅力的に表現され、寄生する人物もスイに寄生していく。
    ただ、スイは単なる生き神様ではなく、人間の赤ん坊を食べる化け物だった。
    各章ごとに分かれていて、登場人物もそれぞれ違うのだが、物語としては全て繋がっていて、その世界観にさえハマれば楽しめる。

    実際、こういった感じの物語は初めてだが、面白かった。好き嫌い分かれる作品だが、好きな人はかなりハマる作品。3.5。

  • フォロワーさんのお勧めより。極上の幻想怪奇小説。「観音様」と崇められた美しい女は人を喰う異形のものだった。スイの妖しいまでの美しさと不思議な能力に魅入られた人々は彼女に翻弄され、深い業の淵へと堕ちてゆく。耽美な文章共々、大変好みの作品でした。グロいのが苦手な人は要注意。

  • 大好き過ぎ。 もうどうしようもない。
    『あたしお肉が食べたいの』
    濃い粘液の中で悦び深く沈み溺れて死ぬ。
    東方は死んでない。きっと死なない。


  • 設定はわりと好み。スイの話し方と行動のギャップも魅力の1つだと思うが、魂を震わせるほどのねっとり感がもう少しだけ感じられると、はまったかもしれない。何だろう……文章に色香がない?怪しさはあるが妖しさはやや欠けているというか、残虐な行為がグロテスクから昇華できないままで終わってしまった印象。しかし、スイとともに破滅へと向かっていく一族のバトンリレーは興味深く読めた。一番よかったのは2章だな。あのときの宿主とスイの関係はよかった。

  • 諸悪の根源は スイなのか
    それとも惑わされた人間なのか
    と思うのですが
    最後の短編では
    狂言回しかと思われた 行商人東方が
    思わぬ秘密をもって
    すべてを知る妹と対峙します
    スイの存在すら実は・・・という
    おぞましい結果に
    業の連鎖の恐ろしさを感じます

  • 面白かったです。
    生き神とされる「スイ」が関わる人たちがどんどん堕ちていく…目眩くグロテスクな世界でした。
    スイは観音として永く生きていてその間に更に化物と化していくのですが、スイの側にいる人たちはあてられておかしくなるのか、既に狂っているからスイがとりつくのか。
    お話は泰輔と奈江のところが好きです。好きです、というとちょっと違うかもしれないけど、この関係が良い。
    東方さんも怪しくて良いです。この人はスイより上位なのかな。。
    幕切れも好きです。駆逐されていくのか。。
    概ね満足なのですが、妖しさの深度がちょっと物足りない感じはあります。もっと目眩いても良いのですよ、となりました…皆川博子さんの読みすぎなだけですきっと。

  • 最初の方はよくわからなく情景がぴんとこなかったが読み進めるうちにわかった。

  • 某書店の「怪奇幻想」コーナーにあって購入。
    ちょっと恐いけど美しく非現実的な物語が読みたいな〜と思って手に取った。
    あらすじを読むとなんとなくだんだん狂っていく人間を見ながらも何もできない無力な観音のその悲しみのようなものを描いているような感じがしたのだが、むしろ主役は人間。観音様は何も知らない。
    個人的には第二章の「飴色聖母」が一番好きだった。自身が平穏に生きていくために、無惨にも多くの人間を手にかけ、「私に懐いたばっかりに」と子犬にだけ謝るその姿は、まるで『エルフェンリート』のルーシーのようだ。

  • 人の肉を求める生き神様と、それに翻弄された男と女たち…
    病み衰えて死んだ坊ちゃんを生きてるみたいに介護して添い寝してる媼…気持ち悪怖いな…
    そんな男に恋焦がれてその妻を代わりに抱く男…
    やばみが凄い…

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著者プロフィール

しの・たまき●秋田県出身。東京都在住。ホラー作家、ライター。第10回「幽」文学賞短篇部門にて「やみ窓」で大賞受賞、デビュー。著書に『人喰観音』『氷室の華』『月の淀む処』などがある。

「2022年 『やみ窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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