黒猫のいない夜のディストピア

著者 :
  • 早川書房
3.67
  • (7)
  • (38)
  • (33)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 291
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098238

作品紹介・あらすじ

ポオの研究を続ける付き人は、街で遭遇した自分そっくりの人影に怯えていた。頼りの黒猫は、些細なことで喧嘩になったまま出張に出て傍にいない。時を同じくして家に届いた不審な絵葉書、次第に怪しくなる母親の言動……付き人の周囲で一体何が起きているのか

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 黒猫の美学講義ミステリー、第2部がはじまります。

    前作でようやく黒猫の恋人となった助手ですが、彼とのあいだになにやら気まずい出来事があった様子。
    そんなときに目の前に現れたのは、全身白ずくめの自分にそっくりな女性。
    不可解な行動をとる母、住民の反対を受ける奇抜な街の再開発計画、それにポーの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」…
    今回もいつのまにか謎の渦中に置かれてしまった助手から目が離せませんでした。

    今作では、出張中の黒猫に代わり、新たな登場人物・灰島が助手と行動をともにします。
    なかなか性格がひねくれた美学者ですが、今までの登場人物たちとは一味違ったキャラクターでおもしろかったです。(彼もまた眉目秀麗…)
    おそらく第2部では彼の美学講義を聞く機会も増えそうなので楽しみにしています。

  • 黒猫シリーズ第2部スタートとなり、何だか空気が変わった気もする。サスペンスフルな展開は、黒猫が不在だからか。しかしこれまでも長い間離れ離れになっていたわけで、やはり距離を詰めてしまったことからくる存在欠如のダメージの倍増が影響しているのかもしれない。都市開発計画については、甚だしいエゴじゃないのかとつっこみたくなったが、出会いがあれば別れありで、新たに登場したドーナツ大好きな気難し屋と付き人の絡みが楽しみでもある。二人を比べると、黒猫が柔らかい人間なんだなと再確認できたのもよかった。

  • 黒猫シリーズ。第2部1作目らしいです。

    自分は今まで何かに興味を持って心から追ったことが全くなく、研究というものについてはなんとなくなあなあで生きてきたため、このシリーズ読むとなんか劣等感を刺激されます。
    まあそんなことはどうでもいいのですが、美学反美学やグロテスクについての講義については読んでいるうちはとても面白いのですが、通り過ぎた瞬間に脳からぽろぽろ抜け落ちていきます。
    昔からそんなんでした(読み飛ばす系本読み)
    ですので、話の中に出てきた雪絵さんの言葉「文字はよく噛んで」に衝撃を受けました。
    どうしようもなく「丸のみ」してます。
    ああー。

    まあ今更変わりませんが。

    ところでネタバレになるかもなんですけど。
    白ゴスでアクセサリーちゃんとつけて白いカツラにカラコン入れているような人がメイクしてないわけがないと思うんですけど、メイク、それでいいの?っていう主人公と紛う「そっくり」ってどうなん…

  • このシリーズの興味深いところは『美学』を感じられるところ、だけじゃなく黒猫と付き人の彼女の関係の進み具合がドキドキハラハラ、ときめきが持続して止まない。

  • 友人に勧められて、読み始めたシリーズ、久しぶりの新刊。
    前作で第1部が終了し、第2部の発行まで間が空いたので、待望の新刊。
    黒猫と「私」の関係性が変化し、どうなったのか、すごく気になっていたのに、いきなり酔った勢いで、喧嘩してしまい、すれ違うことから始まる。
    せっかく、二人の距離が近くなったのに、今作はまた別々のところで謎を解いていく二人。
    その辺は少しもどかしいし、今までも難解だったこのシリーズなのに、今作では「反美学」やら「ドッペルゲンガー」など、序盤はかなり理解に苦しんだ。
    でも、中盤ぐらいに来ると、ポーを扱った作品らしく、本格的な謎解きが始まると、一気に面白さを増す。
    特に暗号文を解いていくシーンは、最近の推理小説にもあまり見受けられなくなり、推理小説ファンの私はかなりワクワク♪
    「私」の出生の話や、二人の関係にも進展が見られ、この先、どうなるのか、これもまた楽しみ。

  • 黒猫シリーズ第7弾。完結したのかと思ってたけど、第2部スタートとのことで。

  • 灰島とのパートでは、歪で不気味なものに思えた所無の都市計画と、付き人のドッペルゲンガー。黒猫の手にかかると、まったく違うものに見えてくる。
    こんな恋人がいたら、依存するなという方が無理だよなあ…今まで、じれったいとか、付き人はいつまでぐるぐるしてるんだろう、とか思ってたけど、仕方ないわ、付き人偉いよ…という気持ちになった。
    それはそれとして、灰島さん素敵ですね…続きが楽しみ。

    言葉が足りないふたりと、言葉がなくても通じるふたり。んん、でもやっぱり、言葉を使うことは諦めたくないなあ。見せなくてもわかっても、母君に暗号を渡してほしいし、黒猫もちゃんと説明してよ〜と思った。言葉にならないこととか、分かってるけど言いたくないこととか、あるのは分かる。分かるけれど、その上で。

    付き人の母君の子育てが素敵。
    「言葉を丸のみしない」読み方が大切、という言葉が印象的でした。



  • 酔って黒猫と喧嘩をしてしまったまま、彼が出張に行ってしまった。抱えこめないもやもやを抱えている日、付き人は自分にそっくりな女性と遭遇する。ただし、彼女の髪も目も唇も服装も全て真っ白、まるで真っ白なドッペルゲンガー。恐怖と不安に晒された己を唐草教授の知人で有名な「反美学」の研究者である灰島に見透かされ、黒猫不在の今、彼とともにドッペルゲンガーの謎と向き合うことに……

    付き人ってこんな情緒不安定だったっけ?そしてきみたちはいつのまに婚姻届を出す中に……まあとにかく単純に付き人と黒猫が仲良くしている続編を今後も見られそうというのは嬉しい。相変わらず黒猫たちがなんの話をしているのかはよくわかってないけど、今回はいつもよりはわかりやすかったかな?内容そのものは、なぜこんな大げさな話に……そして都市計画をそんな個人的なことに……みたいな気持ちになった。でも相変わらず黒猫シリーズの時の空気感が好き。

  • 黒猫シリーズ。第二部開始らしいです。
    収まるところに収まったかのように思えたけれど、なのに素直になれない元付き人。彼女の不安と焦燥がもどかしくもあり、可愛らしくも思えます。
    そんな彼女の前に現れたドッペルゲンガーと、母の謎の行動。揺らぐアイデンティティ。不穏な謎がいっぱいで、彼女には気の毒だけれどわくわくさせられる展開でした。
    お決まりのポオの作品がモチーフになっているのも読みどころだけれど、今回のテーマはそれだったのか! しんみりとして、そしてロマンチックな物語でした。

  • 美学や反美学は難しいし暗号はさっぱり。グロテスクとかゴシックとか都市計画などは知ってるつもりが、知らない切り口で語られるのが面白い。ドッペルゲンガーに関しては「私」の空回りか。新キャラも出てきてますます今後が楽しみ。

全44件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。日本大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。ライターとして漫画脚本などを手掛けながら小説の執筆活動を続け、『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞(早川書房刊)。同作は続刊も刊行され、「黒猫シリーズ」として人気を博している。ほか、『名無しの蝶は、まだ酔わない』(角川書店)の「花酔いロジックシリーズ」、『ホテル・モーリス』(講談社)、『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)、『かぜまち美術館の謎便り』(新潮社)などがある。

「2021年 『使徒の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森晶麿の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
今村 昌弘
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×