- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152098290
作品紹介・あらすじ
冤罪で収監された恋人ファニーを救うため、彼との子を妊娠中のティッシュは奔走するが……若き恋人たちを描いたボールドウィンの名作が新訳で登場。アカデミー賞受賞作「ムーンライト」のB・ジェンキンズ監督により映画化。解説:本合陽(東京女子大学教授)
感想・レビュー・書評
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権力が今以上に堂々と人種差別をする時代だった70年代。憎悪以外のなにものでもない理由で無実の罪をきせられ収監された男と、彼の子どもを妊娠している女、そして彼らを救おうとする家族の奮闘。ラブストーリーなんだけど、これはちょっとすごいです。とてつもない絶望と瑞々しい希望のイメージが、交互に湧き上がり畳みかけてくる文章。小説というより迫力ある絵画を見たような気持ち。映画版もすぐ見て、そちらも良かったけど原作とは別物の良さ。文字でここまで光と闇を「見た」っていう気分になれることってそうそうないから、みんな小説版を読んでほしい!
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レイプの冤罪で逮捕されたことを背景にしてるが、純粋に無実が証明されるというようなスッキリさを感じさせない鬱を感じる作品だった。姉と母の活躍も見れてる点ではフェミニズム小説でもある作品と感じる。理不尽さをしっかり描写しながら、人間ドラマもしっかり描写されてるのが非常に良い点だ。
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社会には、ほかの人に害を及ぼす人をやむを得ず拘束して隔離する仕組みや施設は必要だと思う。社会への信頼を保って、社会を存続させるためには必要なことだ。
でも、その仕組みに差別が組み込まれていると、罪の無い人やその周りの人の人生を破壊してしまう。社会のシステムに差別が組み込まれていると、そのシステムはかえって社会を破壊してしまう。
私はボールドウィンの描く人生の複雑さがずっと好きだ。 -
今まで私が読んできた海外の小説はどれもこれも白人が主人公だったんだな、と改めて思い知らされた。
この小説には様々な差別の眼差しがある。
例をひとつだけ挙げるとすれば、貧しくて家を買うのも一苦労なのに、そもそもここに住みたい!と思っても内見もさせてもらえないのだ。
それは彼らが「黒人だから」。
私が読んできた海外小説の主人公達はそういう状況に陥ったことはない。
誰もが皆んな学校に通えるくらい貧しくない家庭状況で、当たり前のように勉強をしていて、大学を入学したり卒業したり就職したり。
そして誰かから肌の色だけで決めつけられて、あからさまな差別を受けたりしない。
通りを歩いているだけでジロジロ見られたりしない。
書いている作家の人種が違うだけでここまで見ている世界が違う。
この小説の映画版を先に観ていたが、改めて文章で読むと衝撃がかなり大きかった。
映画版がこの小説でほかした結末を敢えて選んでいることも最近よく考える。
この小説が発表されたずっと後に制作された映画があの結末を迎えることがどれだけ現実的で深刻なことなのか。
是非映画版と比較してほしい。
BLM運動が日本人の私達には関係ないだなんて思わないで。
日本にも移住してきた黒人をはいるし、旅行に来る黒人だっている。
そういう人達が差別されている現場に遭遇したら、おかしいことをおかしいと言える人になりたい。
誰かが誰かをを差別することが当たり前の世の中になるべきではない。
2021年を迎えた今だからこそ、私達が戦わなくてはならないし、連帯することで切り拓ける未来がきっとあるはずだ。
私はそう信じたい。
この本を読んでより一層BLM運動を支持していこうと思った。
自分がへこたれそうな時はこの本を引っ張り出そう。
素晴らしかった。 -
真相を究明して勝利を勝ち取る!という小説ではないのは、もしかするとこの問題が日常的に起きているという、その根深さを描こうとしているからなのかな?
でも独特な文体というかリズムがあってとても読みやすく登場人物たちの優しさがすごく伝わってきた。映画も見てみたいな… -
理不尽。
1973年、この頃よりずっと時代は良くなったと思いたい。
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近年映画化されたため日本で出版されたが、1973年に書かれた作品。自分が手に取ったのは黒人作家という理由。ビールストリートとは有名なブルースの曲名であり、黒人の魂を象徴しているそう。物語→若くして結婚し、腹には子供が宿りながら、旦那は無実の罪で拘束されている。妻の家族が一枚岩となり厳しい状況に立ち向かう様子。まだまだ差別のあからさまだった時代に、「黒人だから」そしてそれにおもねらない態度が生意気ととられ、世の中に対し見せしめとして利用された。後味悪く終わる最後だが、事件は終わっても社会の問題は解決しない。
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ボールドウィンの名を久々に見たような気がするが、映画になったため新訳で出たんだね。
人種差別の面もさることながら、恋愛小説としての純度が高い。19歳の”ティッシュ”の目で語られることで、なお一層ヒリヒリする。
選曲がクール。