予測マシンの世紀: AIが駆動する新たな経済

  • 早川書房
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098375
#AI

作品紹介・あらすじ

人工知能(AI)により予測のコストが格段に下がり、経済のルールが根本から書き換わりつつある。この激変期を勝ち抜くための競争戦略は? ケヴィン・ケリー(『WIRED』創刊編集長)らが絶賛、AI研究の最前線・トロント大学の経済学者による超話題作

感想・レビュー・書評

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  • AI=予測マシンとし、いま起こってるAIの急速な発展・普及を的確に表現している。「予測コストを下げる」のがまさにAIの役割であり、その基となる膨大なデジタルデータを収集するのがIoTだ。AI+IoTが予測と決断を迅速化し質を向上させると考えればGAFAやアリババ、バイドゥの数々の取組みの戦略が見えてくる。本書内の技術動向と豊富な事例はいずれも興味深いが、特に医療画像診断のスタートアップが「結論」ではなく「予測」を提供し「判断」は人間に委ねるという境界整理は面白い。技術的限界ではなく法規制や役割分担と考えると、これから様々な産業でAIが普及し同等な境界整理が行われることだろう。

  • AI(人工知能)の持つ根本的な役割は「予測」を安上がりに実行することであるとして、それが今後の社会に与える影響を解説した一冊。

    AIは、膨大な量のデータを様々に組合わせて瞬時に分析し、より精度の高い予測を実現することで、ビジネス上の不確実性を減少させ、様々なトレードオフを解決するため、企業の組織構造やビジネスの境界に変化をもたらすが、AIはデータが少ない領域や例外的な処理は不得意であり、さらには予測以外のタスク(判断や行動)についても、その大半は汎用的なスキルを持った人間が担うので、人間は機械によって駆逐されるのではなく、それぞれの得意分野によって分業することが可能である。

    また、AIには規模の経済が働くため、GAFAやアリババ等の一部企業による富の独占を招く恐れがある一方、規制によって規模が縮小すれば性能が低下するので、AIの生産性やイノベーションと、競争や富の公平な分配との間にトレードオフがあるという。カナダ・トロント大学でAI研究の第一線を担う著者の主張は、経済的な視点からAIの本質的な意味を明確化しており、とても興味深い。

  • 予測マシン、いわゆるデータによるAI技術を使った予測によってどんなことが起こり得るか、その特性、活用の仕方、リスクなどについてまとめられている本。AI技術による予測について学ぶのに適している本であると感じた。
    データにも入力データ、訓練データ、フィードバックデータの3つのタイプのデータがあり、それが何に使われる価値となるか、また、偏ったデータによる予測のリスク、好ましくないデータによる悪用などについても勉強になった。
    データの予測能力向上に対して、人による判断の価値はある。特性を理解しておくことは今後のビジネスにおいて重要。
    アマゾンではシッピングバイショッピングというビジネスモデルも実現される可能性がある。

  • 予測のコストが下がってくる先の世界についてあれこれ想像できる本

  • AIが社会に与える影響を「予測」「意思決定」「ツール」「戦略」「社会」の枠組みで段階的に因果を持って解説している。
    一見AIというと万能な魔法のツールのように聞こえるが、実は予測を担っているにすぎない。しかし、予測ができると意思決定が変わり、意思決定が変わると仕事のツールが変わる。仕事のツールが変わると企業の戦略が変わり、企業の戦略が変われば結果として社会が変わる。と、こういった建付け。
    ツールの話までで終わる技術書、ビジネス書が多い中で、企業の戦略や社会へのインパクトまでを丁寧に解説している良書ではないか。

  • ●人工知能の進歩が現在目覚ましいからといって、知能そのものが実現するわけではないことを重要な点として指摘しておきたい。私たちに実際もたらされるのは、知能の重要な構成要素の1つである「予測」だ。子供が質問を声に出したときにアレクサが何をしているのかと言えば、音声を聞き取り、子供が話す言葉から、どんな情報を探そうとしているのか予測する作業である。アレクサはデラウェア州都がどこなのかを知らない。それでも、誰かがこのような人をする時には「ドーバー」と言う回答を探していることを予測できるのである。
    ●情報の欠落部分を埋め合わせるプロセスは一見すると平凡だが、そのおかげで予測マシンは魔法のように働く。これは既に実現しており、機械は見ることも、操縦をすることも、翻訳することも可能だ。
    ●データは新しい石油。データ収集はコストのかかる投資。
    ●機械は日常的な通常のデータに基づいたほとんどの予測を行い、稀な事象が発生すると、人間の助けを求める。すると人間は、求めに応じて例外予測を行う。
    ●機械は人間の判断を学習することができる。自動運転システムに多くの事例を示し、人間の判断を予測できるように訓練することが可能だ。この状況で人間ならどうするか、予測させるのだ。
    ●AIによる予測は差別に繋がりかねない。
    ●ハッカーからの攻撃
    ●第三者が予測マシンを情報源として利用することは可能で、そうなると知的財産が盗まれ、弱点をついた攻撃を受けやすくなる。
    ●生産性は上がるが、富の分配に問題が出る。
    ●プライバシーとのトレードオフ

  • AIで有名なトロント大学教授の本なので読んだ。経済と今後のテクノロジーの変化がわかりやすい。ツールで書かれていたAIキャンバス面白い

  • 難しかったが経営戦略の観点からの主張が織り交ざっていることが良かった。

  • 未来を知ることが出来たら、どれだけ人生にプラスだろうか。
    それは未来を知ることで、他人との勝負に断然有利になるからだ。
    未来が分かれば、経済的な富を得ることもたやすいだろう。
    何せ、次に何が流行るのか?何の需要があるのか?が分かるからだ。
    つまり「正確に予測する」ということは、人類の念願なのだ。
    この本で更に面白いのは、予測が進化し過ぎると、業態まで変化をさせるということだ。
    今までAMAZONなどの通販では「ショッピング・ゼン・シッピング」だった。
    それがAIの進歩によって「シッピング・ゼン・ショッピング」に変わるという。
    俄かには信じがたいが、AMAZONは真剣にそんな世界を目指している。
    後者が実現すると、何が変わるだろうか?
    物流の仕組みもビジネスの仕組みも変わって行くだろうということだ。
    今AIを通じて、それらがかなり精度高く実現されようとしている。
    果たして「予測」とは、少数の人だけが独占するのだろうか?
    それは本当に恐ろしい世界だ。
    AMAZONもGoogleもFacebookも、自分たちがそうなることを目指していると言ってもいい。
    もちろん中国勢も黙っていない。
    アリババ、テンセントのAI開発競争も凄まじい勢いだ。
    勝者総取りと言われる中で、果たしてAIの予測は民主化されないだろうか?
    少数が独占するよりも、人類の発展のために寄与させた方がいいのではないか?そんな議論もある。
    しかし民主化された予測は、便利な面も確かにあるが「すべてが予測通りになってしまう」ともなるのではないだろうか?
    まさにどちらが主で、どちらが従かは分からなくなるようなものだ。
    むしろ「AIの予測(答え)」は「AIから人間への命令」のようにならないだろうか?
    AIは複雑すぎて、その答えが「どうやって?」導き出せたかは説明が出来ない。
    人間にとっては、腹落ちしないまま、答えだけ「これが正しいはずだから実行せよ」と通達される。
    これでは、なかなか上手くはいかないだろう。
    AIを上手く使って出させた答えに対して、人間が判断をしていくという意見もある。
    AI+人間のハイブリットが、確かに正しい答えを導き出すためには、今の段階では有効そうだ。
    しかし、その状態はいつまで続くだろうか?
    AIが勝者総取りされ、我々は服従する側となってしまうのか。
    果たして民主化されても、やはりAIそのものが力を持ちすぎることで、いずれにしても我々は服従する側となってしまうのか。
    どちらとなっても、AIは更に複雑化し、進化していくことには違いがない。
    人間は益々AIの予測に依存していくのだ。
    本来は「人間が持つ経験」が「野生の勘」につながり、それが未来予測となっていたはずなのに、「正しい判断を行う」ための経験が圧倒的に不足していくのだ。
    未来世界において、AIに依存した人類がAIを正しく使いこなす側になるのは、相当に難しいことのように感じる。
    全てがデジタル化されていく未来。
    そんな社会で我々はどうやって生きていくのか?
    AIでは絶対に侵せない人間の領域とは何なのか?
    本当に真剣に考えてしまう。
    (2020/5/16)

  • 端的な具体例を多く並べつつ、章毎にキーポイントをまとめてくれているので、とても分かり易かった。
    AI/予測マシンを活用する時に意識すべき具体的な要検討項目や、キャンパスツール、トレードオフについて書かれている本。

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