幻想の経済成長

  • 早川書房
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本棚登録 : 63
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098450

作品紹介・あらすじ

GDP(国内総生産)を拡大し続ければ、我々は幸福になれるのか?『日本‐喪失と再起の物語』で話題を呼んだ《フィナンシャル・タイムズ》の元東京支局長が、日本の新幹線からケニアの物々交換まで、世界各地で取材した事例を踏まえ、新たな可能性を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • GNP否定派でなく、定義の問題

  • GDPの有効性は認めつつは万能ではないと説き、政治においてあまりにも重きを置かれすぎていることを批判する本。
    例えば、穴ほって埋めるを繰り返すとGDPは上がるが、そういうものを排除した指標が必要である。
    しかし指標というのは常に恣意的なものであり、であるならば国民の価値観が反映されたものであることが望ましい。

  • 読むのにとっても時間がかかった。理由は、この本は学術書や実用書の類ではなく、「面白いノンフィクション、ルポタージュ」の体裁だから。

    いつものようにビジネス書を読んでいる時ならば、マーカーと付箋を片手に「読み返した時に拾うところ」を残していく感覚で読み進めるのだけども、今回は実に時間がかかった。エキサイティングな小説を読んでいるように活字を追ったし、適度に難解なので読み返すこともしばしば。

    読書感としては「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン)とよく似ている。ジャーナリスト特有の時折ユーモアや皮肉を交えた饒舌な筆致。貨幣価値に交換可能な尺度ばかりに注目すると本来的な幸福観を歪めたり見失ってしまうぞ、というのはマイケル・サンデルを始め、「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」(ヤニス・バルファキス)でも語られていることであるが、本書はより統計官のジレンマや苦労に寄り添ったものになっている。そして、全体的に「経済学者」と「金融業」に対する批判が漂っていて。

    まとめると、
    ①GDPの測定対象になっているものも、正確に計れていない。
    ②GDP測定対象になっていないものも相当ある。
    ③絶対視されているGDPが映す世界とリアルはかなりの乖離がある。そもそも「経済」という概念がリアルではない。
    ④より良い代替指標も無いので、様々な指標を用いて補完し合うべき。
    という事のよう。

    そして、経済成長万歳という手放しな姿勢には疑念をぶつけながらも「FACTFULNESS」(ハンス・ロスリング)にもあるように、低開発国の人々が人間らしい生活を手に入れるための経済成長を否定するべきではないとし、実際にハンス氏のコメントも紹介している。

    私が心に残ったのは、指標や統計の設計そのものが恣意的で政治的であるとは言いながらも「測定できないものは管理できない」というドラッカーの言葉を引用しながら、良き統治を目指すのなら良き測定をしなければならないというメッセージだ。まさに政策や意思決定でのdata drivenの重要性と難しさを語っているわけで、正確に測る事も記録に残す事も放棄してしまったように見える我が国は、世界が国民所得3.0に向かおうとしている時に、国民所得1.0の要件を満たしていないのではないかという2週遅れの絶望感を禁じ得ない。

    『「より優れた」測定方法ほど、「より優れた」社会を築く力を持っていることを意味する。』(p274)

  • 日常で数多く耳にするGDPには、1つの数値で簡潔に経済を示せる利点がある一方で、その簡潔さゆえに家事などの仕事量は示すことができない。
    GDPは便利なものであるが、過信は良くなく、多面的な見方が必要であると思う。

  • 東2法経図・6F開架:331.19A/P65g//K

  • GDPの限界、と言えば新しい話ではない。
    それでも本書は、GDPの技術的な問題だけでなく、なぜ我々はGDP教のような経済最優先の社会になったのか、そのために何に目をつぶってきたのかを問う点が新鮮だった。
    四半期の成長率に一喜一憂し、コンマいくつを伸ばすのが我々の望みではではないはず。
    一方で、幸福度を測ると言われても、抽象的過ぎて全くしっくりこなかったが、カナダなどで新たな取り組みが行われているという。我々は何に価値を置くのか、その変化を測定し、見える化する努力が大切だと思った。

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