- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152098559
感想・レビュー・書評
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先日、ウクライナのゼレンスキー大統領が平和公園を訪問したことにより、『ちびまる子ちゃん』の放送が中止になりました。すると、『ちびまる子ちゃん見ないと日曜日が終わらない』『楽しみにしている子どもの気持ちも考えて!』なんて声がTwitterにあがったようでネットニュースになっていました。日本って平和だなー、と職場の人たちと笑い合いました。
その後、本書を読んだのですが、ネットニュースを見て苦笑している私自身が、この物語の登場人物たちに『あなたの頭の中も平和ですね』と苦笑されてしまうだろう、と恥ずかしくなりました。
物語の主人公はインド、イタリア、カナダの三人の女性。それぞれの生きる場所で女性であるが故に抑圧され差別されている。中でもインドの章では初めて知ることばかりが書かれていて心が震えるほどの衝撃を受けました。こんなことが同じ地球上で起こっているなんて、俄かには信じられません。
でも、これが紛れもない現実です。恵まれた日々を送っている自分には知り得なかった現実。
カナダの登場人物も、初めは恵まれた側の人間だったのですが、ある日を境に差別される側になります。ここが、本書の優れた点のような気がします。差別される側になることにより初めて自分が今まで知らずに差別していたことに気付く。
そして、三人とも力強く前を向いて進んでいくことを選ぶ。
素晴らしい本に出会えました。何よりも怖いのは知らないことです。私に様々な現実を教えてくれた本。映画化も予定されているようなので、ぜひ観たいと思っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フォローしている方のレビューを読んで、図書館で借りた。
異なる3つの国の3人の女性の生きざまが、最後により合わさっていく…まるで三つ編みのように…短いながらその凝縮された物語に引き込まれた。
著者のレティシア・コロンバニさんは、映画監督をされているだけあって、文字を追うだけで映像が浮かんでくる…インド、シチリア島、カナダそれぞれを包む大気まで想像してしまう。
インドの話は、先日ラジオで「インドのトイレ事情」を聴いたばかりだった。
モディ首相は、全土にトイレを設置する「クリーン・インディア」キャンペーンをぶち上げた(そもそも、インドのトイレ事情ってそんななの?ってびっくりだったが)
実際にトイレが設置された村もあるそうだが、利用する人が極端に少ないという。その理由は、ダリッド(不可触民)の仕事を奪うから。
この物語のインドの主人公スミタが、まさにその仕事に代々従事させられているダリッドだ。
ラジオの情報だけではピンとこなかったが、そういうことなのかと腑に落ちた。
ラジオでは、女性は夜明け前に連れだってどこかに用を足しに行く…もちろん襲われる危険があるからで、用を足すのは1日それ1回きりだという。1日1回って、病気になってしまうのではと思うが、取材した女性は「皆そうだし、体が慣れている」と言ったらしい。
3つの国の話が交互に語られるが、インドの物語が圧倒的に印象が強い。
日本のジェンダーギャップ指数もかなり低いが、それとは比べる基準が違うのだということを思い知らされた。
2020.8.30 -
3つの大陸の3人の女性が今の状況に甘んじ屈するのでなく、強い意志を持って人生を切り開き、変えようとした物語
畳み掛けるようなリズミカルな短い文章が、強い意志を表しているようで読んでいて心地よかった
3人とも生まれつき置かれた身分や不運や試練に見舞われながらも、それを乗り越えようと奮闘する
娘に自分と同じ思いはさせないと誓うスミタ
娘のため、自分を必要としている息子たちのため、消えたりしない、諦めないと戦いに戻る決心をするサラ
家族や工場の従業員のために生き残りをかけて、変化を選択するジュリア
なかでもインドのスミタの置かれた状況には、言葉が出なかった
カースト制の外、不可触民(ダリット)であるスミタは、人と言葉を交わすことはおろか姿をさらすことも許されない人間以下の身分とされる
この世の中にこんな身分に置かれた人がいるとは全く知らなかった 衝撃だった
初めは、インドのスミタ、イタリアのジュリア、カナダのサラの人生が交互に並行して進行していく
何の関係もないかのように見えたのに、後半になって3人の人生がしっかり交差し、三つ編みのように固く編まれていった
見事な構成に唸った
それも女性の命とされる髪の毛を通してー
なるほど、それでタイトルが「三つ編み」なのかと腑に落ちる
著者が「 男性に闘いを挑むつもりはありません。闘う相手はまず社会」と語っているように、スミタの夫のナガラジャンやジュリアに国外へと目を向けさせた恋人のカマル、サラの家庭を支えた家政夫のマジック・ロンなど、主人公の女性たちを応援するパートナーやサポーターとして男性を登場させているのも好感が持てた
男vs女では、何も前進はないと思うから
そして、3人のこれからの人生を暗示しているかのような希望の光が見えるラストに拍手を贈りたくなった -
インド、イタリア、カナダ。それぞれ遠い三国に生きる女性、スミタ、ジュリア、サラ。彼女らの闘う姿が、三つ編みを編むような順番で語られる。まったく違う境遇。最後にはそれは太く固い結束となって、世界の女性たちに投げ渡される「綱」になる。
女性は、その多くが「産む性」であり、生き方は男性よりも複雑で繊細。右に行き左に行き揺らぐ。
「三つ編み」は、そのように揺らぎながらも、最後は一本筋になる、強くたおやかに編み込まれたもの、女性の象徴。
「これは私の物語。
なのに、私のものではない」。
読後、光がさす作品。 -
気になっていたコチラの作品。
女性に圧倒的不利な社会で逆境に立ち向かう3人の女性が世界を舞台に、交互に綴られています。
「インド」不可触民の母親
「カナダ」毛髪加工会社で働く女性
「カナダ」シングルマザーの女弁護士
壮絶な現実。女性蔑視や身分制度による差別は、人の尊厳どころか命をも簡単に奪ってしまう。
特にインドが壮絶。こんなにも人権無視で非道な行いが罷り通っているなんて…。読んでいて悔しいし怒りが渦巻いた。
自分の置かれた境遇に抗い、自分の手で未来をつかもうと奮闘する3人の女性の姿を祈るように追い続けました。
どんな状況であっても諦めない3人の女性が逞しい。
「髪」で繋がる展開とラストは希望を感じられて良かった。勇気をもらえる作品。
まずは「知ること」から。そして感じて「考えること」。
続編「あなたの教室」も読みたい。 -
苦難に直面する3人の女性の人生を、三つ編みを
編むように交差させながら物語っている。
文章の簡潔さゆえ映像がすぐさまイメージできるのが良い。
置かれた境遇から立ち上がって前へ進もうとする
3人の姿に共感を覚えた。
ヴィシュヌ神に捧げられた髪がイタリアを経て
遠くカナダのモントリオールへ届けられた時、この物語は繋がっていたのだなと実感した。 -
すごく良かった。
この作品、確か2019年の夏に雑誌で紹介されてたんですよね。いつか読もうとブクログに登録した記憶が。
作品に登場するのは、住んでる地域も境遇も年齢もバラバラな3人の女性。それぞれのストーリーが進んでいきます。
読み終えるとタイトルの「三つ編み」の意味がとても心地よく、しっくり来ました。中島みゆきの「糸」もちょっと連想してしまいました。
それにしてもインドの身分差別の酷さといったら!スミタの物語に一番感情移入してしまいました。この親子のその後は描かれていないけど、希望の持てる終わり方で良かった。