三つ編み

制作 : 髙崎 順子 
  • 早川書房
4.09
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本棚登録 : 2107
感想 : 200
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098559

作品紹介・あらすじ

注目の書店員賞、第10回新井賞受賞作!

三大陸の三人の女性。かけ離れた境遇に生きる彼女たちに共通するのは、女性が押しつけられる困難と差別に立ち向かっていること。ある者は娘の教育のため、ある者は仲間の生活のため、ある者は自身の夢のために理不尽と闘う。絶大な共感と感動を集めた話題作!

感想・レビュー・書評

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  • 先日、ウクライナのゼレンスキー大統領が平和公園を訪問したことにより、『ちびまる子ちゃん』の放送が中止になりました。すると、『ちびまる子ちゃん見ないと日曜日が終わらない』『楽しみにしている子どもの気持ちも考えて!』なんて声がTwitterにあがったようでネットニュースになっていました。日本って平和だなー、と職場の人たちと笑い合いました。
    その後、本書を読んだのですが、ネットニュースを見て苦笑している私自身が、この物語の登場人物たちに『あなたの頭の中も平和ですね』と苦笑されてしまうだろう、と恥ずかしくなりました。
    物語の主人公はインド、イタリア、カナダの三人の女性。それぞれの生きる場所で女性であるが故に抑圧され差別されている。中でもインドの章では初めて知ることばかりが書かれていて心が震えるほどの衝撃を受けました。こんなことが同じ地球上で起こっているなんて、俄かには信じられません。
    でも、これが紛れもない現実です。恵まれた日々を送っている自分には知り得なかった現実。
    カナダの登場人物も、初めは恵まれた側の人間だったのですが、ある日を境に差別される側になります。ここが、本書の優れた点のような気がします。差別される側になることにより初めて自分が今まで知らずに差別していたことに気付く。
    そして、三人とも力強く前を向いて進んでいくことを選ぶ。
    素晴らしい本に出会えました。何よりも怖いのは知らないことです。私に様々な現実を教えてくれた本。映画化も予定されているようなので、ぜひ観たいと思っています。

  • フォローしている方のレビューを読んで、図書館で借りた。

    異なる3つの国の3人の女性の生きざまが、最後により合わさっていく…まるで三つ編みのように…短いながらその凝縮された物語に引き込まれた。
    著者のレティシア・コロンバニさんは、映画監督をされているだけあって、文字を追うだけで映像が浮かんでくる…インド、シチリア島、カナダそれぞれを包む大気まで想像してしまう。

    インドの話は、先日ラジオで「インドのトイレ事情」を聴いたばかりだった。
    モディ首相は、全土にトイレを設置する「クリーン・インディア」キャンペーンをぶち上げた(そもそも、インドのトイレ事情ってそんななの?ってびっくりだったが)
    実際にトイレが設置された村もあるそうだが、利用する人が極端に少ないという。その理由は、ダリッド(不可触民)の仕事を奪うから。
    この物語のインドの主人公スミタが、まさにその仕事に代々従事させられているダリッドだ。
    ラジオの情報だけではピンとこなかったが、そういうことなのかと腑に落ちた。
    ラジオでは、女性は夜明け前に連れだってどこかに用を足しに行く…もちろん襲われる危険があるからで、用を足すのは1日それ1回きりだという。1日1回って、病気になってしまうのではと思うが、取材した女性は「皆そうだし、体が慣れている」と言ったらしい。

    3つの国の話が交互に語られるが、インドの物語が圧倒的に印象が強い。
    日本のジェンダーギャップ指数もかなり低いが、それとは比べる基準が違うのだということを思い知らされた。
    2020.8.30

  • 3つの大陸の3人の女性が今の状況に甘んじ屈するのでなく、強い意志を持って人生を切り開き、変えようとした物語

    畳み掛けるようなリズミカルな短い文章が、強い意志を表しているようで読んでいて心地よかった

    3人とも生まれつき置かれた身分や不運や試練に見舞われながらも、それを乗り越えようと奮闘する
    娘に自分と同じ思いはさせないと誓うスミタ
    娘のため、自分を必要としている息子たちのため、消えたりしない、諦めないと戦いに戻る決心をするサラ
    家族や工場の従業員のために生き残りをかけて、変化を選択するジュリア

    なかでもインドのスミタの置かれた状況には、言葉が出なかった
    カースト制の外、不可触民(ダリット)であるスミタは、人と言葉を交わすことはおろか姿をさらすことも許されない人間以下の身分とされる
    この世の中にこんな身分に置かれた人がいるとは全く知らなかった 衝撃だった

    初めは、インドのスミタ、イタリアのジュリア、カナダのサラの人生が交互に並行して進行していく
    何の関係もないかのように見えたのに、後半になって3人の人生がしっかり交差し、三つ編みのように固く編まれていった
    見事な構成に唸った
    それも女性の命とされる髪の毛を通してー
    なるほど、それでタイトルが「三つ編み」なのかと腑に落ちる

    著者が「 男性に闘いを挑むつもりはありません。闘う相手はまず社会」と語っているように、スミタの夫のナガラジャンやジュリアに国外へと目を向けさせた恋人のカマル、サラの家庭を支えた家政夫のマジック・ロンなど、主人公の女性たちを応援するパートナーやサポーターとして男性を登場させているのも好感が持てた
    男vs女では、何も前進はないと思うから

    そして、3人のこれからの人生を暗示しているかのような希望の光が見えるラストに拍手を贈りたくなった

  • インド、イタリア、カナダ。三つの地で、差別、理不尽な選択、病に必死に抗いながら生きる三人の女性の物語。

    素敵な作品だった。
    三人の選ぶ道を応援せずにはいられなかった。

    特にインドのスミタの人生には言葉を喪う。
    カースト制に縛られ多くの女性があきらめという選択をし息苦しさにもがく中、スミタの、娘への想い、自由な呼吸を求める姿には圧倒された。

    三人の女性が選びとった人生がこういう形で結ばれるとは…。
    タイトルが心に響く。

    もしかしたら世界はこういう巡り巡った繋がりが溢れているのかもしれない…それが誰かの希望に少しでも繋がればいい、そう強く感じた作品。

  • インドのバドラプールでカースト制度の枠外である「不可触民」ダリットとして生きるスミタ。
    イタリアのシチリアで家業のかつら製作に従事するジュリア。
    カナダのモントリオールで、競争を勝ち抜き女性初のアソシエイト弁護士として働くシングルマザーのサラ。
    彼女たちの人生の挫折と希望を三つ編みのように交差させながら、一つの物語が紡ぎ出されていく。

    三人の女性は、環境や立場は違えど、皆女性であるための苦労を強いられている。
    スミタは、女性が男の所有物として扱われる社会の中で、さらに人間として認められていない「不可触民」として他人の糞便を素手で拾い集める仕事をしている。彼女は自分の娘だけには同じような生活を送ってほしくない、となけなしの金をはたいて娘を学校に通わせるが、娘は先生にひどい辱めを受け、学校に通えなくなってしまう。
    父が突然の事故で亡くなってしまい、借金まみれの工房を背負うことになったジュリアは、男社会の中で家族を養うために金持ちの男との結婚を迫られるが、彼女には初めて自分から好きになった男性がいた。
    サラは、男性優位の事務所の中で家族との時間を犠牲にしてまで仕事を優先してきたが、突然がんの告知を受け、これまで築き上げてきた地位を奪われる。
    苦境に立たされた彼女たちは、それでも自分の過酷な運命に立ち向かうべく行動する。

    感情的な表現を廃した客観的な視点で描いており、ドキュメンタリー映画を観ているような印象を持った。三人の人生が「三つ編み」というキーワードのもと、徐々に一つになっていく構成は見事で美しくまとめられている。ただ、個人的に小説としては描き込み方が足りないような気がして、少し物足りなさを感じた。

    著者は映画監督、脚本家、女優の三つの肩書を持つ女性で、当初から映像化を念頭に置いて描いていたように感じられる。映画化がすすめられている(現時点ではもう映画化されているかも)そうなので、映像でどのように描かれるのか、興味は持っている。

  • 3人の女性。インドのスミタ、イタリアのジュリア。カナダのサラ。3人はそれぞれ自分の人生と戦う、女性であることで理不尽な人生と戦う。
    スミタ…カースト制度に基づき排泄物を集める作業をする。自分と同じ道を進ませないよう娘を学校に通わせたが、差別の壁が立ちはだかった。
    ジュリア…毛髪加工会社を家族で営む。父が事故で倒れ、会社を任されるが、倒産寸前であった。お金のために家族は望まぬ結婚を迫る。
    サラ…シングルマザーの弁護士。仕事で活躍し上のポジションを狙うが、癌を宣告される。それを機に会社での対応が変わる。
    戦っているのは自分だけではない、自分よりもっと苦境に立ちハードに戦う女性がいることを知らされる。3人の姿に力をもらえました。特にスミタの境遇は想像を絶するもの。力や勇気を感じるだけでなく、最後は髪の毛でまとめているところ、そして、戦う相手を社会と見据えているところが素晴らしいですね。それぞれの場所で社会と戦う女性たちは輝いていました。物語は三人ですが多くの女性の力になれたらと思います。

  • これは闘う女性達の物語だ。
    国も社会的背景も職業も年齢も何もかもが異なる三人の女性は皆、理不尽な世の中と闘っている。

    カースト制度のせいで奴隷のような生活を余儀なくされるインドのスミタ。
    父の事故を機に倒産寸前の工場を突然背負わされたシチリアのジュリア。
    弁護士としてのサスセスストーリーを上り詰める目前で乳癌の告知を受けるカナダのサラ。
    何故自分だけがこんな目に…周りの柵に押し潰され、それでも怒りの炎をパワーに変え誇り高く、自分の道を真っ直ぐ進んでいく。

    全く交わることのなかった三人の人生が「髪の毛」で繋がった時、涙が止まらない。
    「髪の毛で結ばれた女たちへ、愛し、子を産み、願う女たち、何度も倒れ、また立ちあがる女たち、うちのめされても、屈しない女たち、その戦いは私も身におぼえがある、その涙とよろこびを分かちあう」

    ラストの三人の希望に満ちた笑顔を私も忘れない。
    世界中の沢山の人達に読んでもらいたいと願う作品だった。

    「最期まで戦う。けっしてあきらめない:サラ」
    「必要なのは勇気と信念だけ。自分にはある:ジュリア」
    「まったく悲しくはない。確信があるのだから:スミタ」
    「男性に闘いを挑むつもりはありませんでした。闘う相手はまず社会です:著者」

    著者の力強いメッセージが、どうか世界中に届きますように。

  • なんとも上手いお話だった。

    3か所の異なる国に生まれ、それぞれが苦境にたたされ、
    でも負けじと前進していく姿。
    それが交互に交錯されながら話は進み、
    髪というキーワードで、最後には編まれるように繋がっていく。

    凄く読みやすい文章で、誰にでも理解できわかりやすい内容。
    だけど特にインドの親子の話は、本当にこんな事が行われているのかと考えさせられる。

    彼女たちの勇気のおかげで、カナダの女性はまた生きる勇気をもらえる。
    それを作ったのはシチリアの女性の職場。

    素晴らしいタイトルだし、内容だった。

  • インド、イタリア、カナダ。それぞれ遠い三国に生きる女性、スミタ、ジュリア、サラ。彼女らの闘う姿が、三つ編みを編むような順番で語られる。まったく違う境遇。最後にはそれは太く固い結束となって、世界の女性たちに投げ渡される「綱」になる。


    女性は、その多くが「産む性」であり、生き方は男性よりも複雑で繊細。右に行き左に行き揺らぐ。
    「三つ編み」は、そのように揺らぎながらも、最後は一本筋になる、強くたおやかに編み込まれたもの、女性の象徴。

    「これは私の物語。
    なのに、私のものではない」。

    読後、光がさす作品。

  • 三人三様の、境遇も状況も年齢、国籍、人種、何もかも異なる女性たち。けれど、女性として三人共に、生きづらさを抱えてそれぞれに闘う。タイトルは、物語の構成、テーマ、ラスト、全てに絡んでいる。
    女性の生き方を、深く深く考えさせられる。大きなテーマは差別だと感じる。

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著者プロフィール

レティシア・コロンバニ(Lætitia Colombani)
1976年、フランス・ボルドー生まれの映画監督・脚本家・作家・役者。刊行前から16言語で翻訳権が売れて話題をあつめた初の著作『三つ編み』は、2017年春に刊行されベストセラーとなり、フランスで85万部を突破、32言語で翻訳され、邦訳もされた。2019年5月15日に2作目の小説"Les Victorieuses"を刊行し、こちらも翻訳が待たれる。

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