不見【みず】の月 博物館惑星2

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 138
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098597

作品紹介・あらすじ

地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館苑〈アフロディーテ〉では、データベースに直接接続した学芸員たちが美の追究に勤しむ。赴任したばかりの新人警備員・兵藤健は、いわくつきの芸術品、問題を抱えたアーティストらにまつわる事件に対処していく。全6篇収録

感想・レビュー・書評

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  • 「博物館惑星」19年振りの続編とのこと!とはいえ第一弾の「永遠の森」は未読で、「五人姉妹」収録の番外編「お代は見てのお帰り」で博物館惑星体験をしたのみだが、それでも今回は十分に楽しめた。
    全世界の美術品や動植物を収めた、地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館苑〈アフロディーテ〉。この設定だけでも興奮する。壮大で緻密な舞台を想像しながら読むのは、大変ながらもなかなか楽しかった。
    近未来の様々な芸術に触れながら、「美」とは何だろうということを改めて考えさせられる。価値観の相違によって露わになる本音。素晴らしさを追求するあまり、見え隠れする人の心の醜さ。目の前の事件に右往左往しつつも少しずつ成長していく新人自警団員・健のキャラクターがよい。全6篇、どれも心に響く内容だったが、とりわけ表題作の「不見の月」が印象的だった。
    どんなに技術が発展しようと、人の心は一筋縄ではいかないなと、菅浩江さんの作品を読むたびいつも感じる。

  • 感じのよい話が多くて気分もゆるみ、同時に芸術とは? に思いを巡らすことになります。
    /警備(VWA)の兵藤健、学芸員の尚美・シャハム、新システムのダイク(デイケ)、ふたりの新人を中心にロマンチスト田代孝弘は指導する立場として背景に。警備のタラブジャビーン、ネネの姪ティティ、健の叔父ジョー、批評家のアイリスなども印象的。
    /芸術は《人の心の中にしか存在しないんじゃないだろうか》p.88。《あるけれど見えない。》P.288。

  • 19年ぶりの続編だそうだ。前作は読んだ記憶のみある。本作も粒ぞろいの連作短編集であり、芸術とSFの組み合わせの妙は、19年経っても色褪せることのないフロンティアであることを感じさせる。主人公をめぐる物語はまだまだありそうで、続編は内容を忘れないうちに出て欲しい。

  • 2022.01.15 図書館

  • 設定はSFだけど、語り口はミステリー。
    真理と善と美についての物語群。とても良かった。

  • 菅浩江先生、第41回日本SF大賞受賞おめでとうございます、って、え?!『博物館惑星』続編出てたの!?知らなかった。ということで慌ててまずはIIを手に取る。折り返しを見ると19年ぶりとのこと。今回は警備担当者が主人公で、接続先DBは犯罪等の情報を教えてくれるけど、前作と違い主人公の兵頭健が人間の感情についてDBに教えて育てている。相棒のアテナ所属の尚美シャハムとのやりとりがエヴァのシンジとアスカのよう。芸術に纏わる事件を通しての二人の成長と過去の克服がメインテーマのよう。前作のような接続したDBとのやり取りを読んでいるワクワク感が薄いのは、インターネット環境が広がるワクワク感のあった前作との時代の違いか。前作の主人公の田代孝弘が上司なのか。懐かしくて出てくるとホッとする。日系イスラエル人の尚美、兵役の頃の年齢設定だけどな、と野暮なことを考える。

  • 世界を理解していたからか、一巻目よりも読みやすかった。三巻目も今すぐ読みたい。そして美術館行きたい。

  • 「博物館惑星」の1巻からかなり時間が経っていて、続編がでていることにもしばらく気づかなかった。19年ぶりらしい。今年の星雲賞ってなんだっけって確認していて気づいた次第。1巻の主人公は偉くなっていて、部下たちの話。特に主人公の兵藤健は学芸員ではなく警備員。でも「正義の女神(ディケ)」と呼ばれるデータベースに直接接続していて、情動教育をしているところが、ただの警備員と違う。「総合管轄部署(アポロン)」配属の同期、尚美・シャハムと協力して、博物館惑星で起きる事件に対応する。
    健と尚美の会話や、彼らを取り巻く人とのやり取りも面白いのだけれど、芸術や現代美術をめぐる問いかけが面白い。1巻を読み返してないので断言できないけど、インタラクティブな作品の話も増えている気がする。現代美術が大きく変化したのではないかもしれないけれど、それを楽しむ観客は約20年の間に変わったように思う。

  • 20/09/29読了
    続刊を出してくれたことに、気付いてなかったわたしにきっかけをくれたTwitterのツイートに、感謝。
    よかったです。

  • 芸術とは何か、美とは何か。前作を読んだ時も感じたことだったが、それがより深く考察された気がする。単行本としては18年ぶりの新作ということだが、それは恐らく、著者自身の思索をも深めた時間だったのだろう。

    芸術は言葉にするのが本当に難しいが「印象は鑑賞者の経験から引き出される」との言に、ワシは安心した。 前作の主要人物を出しつつも、メインキャラは入れ替えたのも英断だし、その上できっちり面白く仕上げているのが素晴らしい。

    SF×アート×ミステリー、それらを使って丁寧に人を描いている良作。

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著者プロフィール

1963年生まれ。SF作家。2015年、『放課後のプレアデス みなとの宇宙』のノベライズを上梓。他の著作に『おまかせハウスの人々』『プリズムの瞳』など。本作がはじめてのビジュアルブックとなる。

「2016年 『GEAR [ギア] Another Day 五色の輪舞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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