- 早川書房 (2019年5月23日発売)
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感想 : 12件
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784152098658
作品紹介・あらすじ
栗本薫と中島梓、二つの名前を持ち、作家・評論家・演出家・音楽家など、才能を自在に操り多くの人たちに感動を与える稀有な存在でありながら、ついに自身の心理的葛藤による苦悩から逃れることはできなかった人。その生涯を関係者への取材と著作から検証する。
感想・レビュー・書評
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栗本薫さんへ思いのたけをぶつけるレポートです。もはやレビューではありません。
僕が本を読むようになったきっかけは完全に「グインサーガ」のおかげです。忘れもしないスキーで行った富山の駅の本屋で、友人に「たまには本でも読んで見なよ」と言われて手に取ったのがグインサーガ28巻でした。15歳の冬でした。
何故グインサーガだったのかと言えば表紙が大好きな天野喜孝だったから。何故28巻だったのかと言えば、表紙がとってもかっこよかったから。まさかそんなに長い小説なんて有るわけないと思っていたので、どれ読んでも一冊で完結するんだろうと漠然と思っていたからです。
話が途中からって気がつかなかった理由として、導入部にグインが颯爽と登場して木から落ちた少年を馬上で受け止めるというシーンが印象的で、途中からで初めての読書なのにかっこよさに打ちのめされたんですよね。どうも続き物らしいと気がついてからはまさに怒涛の読書人生が始まりました。
グインサーガ、魔界水滸伝、ロードス島戦記、アルスラーン戦記、銀河英雄伝説、幻獣少年キマイラ、創竜伝と今でいう所のライトノベルの走りのような本に大嵌りしました。そしてその本たちを入口に無限に広がる本の世界に入場する事が出来たのであります。
まさに人生の恩人とも言うべき作家、それが栗本薫でした。
とにかく書くのが早くて次から次へ読めるので他の作家さんがサボっているんじゃないかと疑う位でした。描写が細やかで(細かすぎるという所も有る)頭の中に情景から風景から思い浮かんで、愛好者の人は本当にその世界が有るんじゃないかと錯覚するくらいの書き込み具合でした。頭の中に浮かんでいるこの風景が本当は無いなんて信じられないという状況でありました。おかげで他の本が書き込み足りなく無い?なんて思っていました。無知とは恐ろしいものです。
あの熱に浮かされたような読書体験は他の本ではありえなかったので、いい経験させてもらったなあとしみじみ思います。
そして道半ばでお亡くなりになり、我らグインサーガワールドの住民は、現世に取り残されて永遠の迷子になってしまったという訳です。結構な年かと思い込んでいましたが56才なんてこれからまだまだという年だったんですね。
プロットも特に残していなかったようなので、お弟子さんが書き進めていますが栗本薫という天才の閃きを望んではいけないですよね。せめて大まかな筋書きだけでも残してくれていれば・・・。
10年前お亡くなりになった時、文字通り腰が抜けるくらいびっくりしました。有名人がお亡くなりになってもそれほど悲しくなる事はありませんが、彼女の場合はグインサーガの世界そのものの終焉を意味していましたから、創造主を失った世界がどこかへ流れて失われてしまう恐怖を感じました。
僕は本そのものにしか興味ありませんでしたので、この本にあるような色々な事は知りませんでした。難しそうな人だなとは思っていましたがそれ以上でしたね。伴侶の今岡さんもさぞ大変だった事でしょう。
ちなみに彼女の書く本で同じ話を繰り返したり、明らかに前と言っている事が違ったりするのは、推敲をしないという事と、校正で直すことを認めなかったという事だったようです。後年、何故周囲の人は訂正しないんだろうと疑問に思っていましたが、本人の問題だったんですね。
もっと主線に絞って書いてくれていればもっと先まで読めたのになと悲しくなりますが、そもそも筆の速さだけは日本有数の人だったのでここまで書けたこと自体が奇跡だったのかもしれません。
ちなみに魔界水滸伝に関しては20巻で一応完結しているので、満足は出来ませんが許せるという気持ちです。この本もメチャクチャ影響受けて、もしかしたらこういう妖怪や古い神や宇宙生物が暗躍しているんじゃないかと思ってしまいました。すぐに同性愛に流れていくのがどうにも閉口しましたが、この本読んで納得しました。完全な形の恋愛表現を求めるがゆえに同性愛というものを求めたのですね。
彼女の本を色々読んで皆思ったと思うのですが、とにかく男同士が惹かれあう事が非常に多い印象です。というか殆ど男同士です。
グインサーガに出てくるロベルトという盲目の貴族を使って、自らやおい小説を書いた時には当時流石に・・・でした。自ら二次創作に勤しむとはさすが腐女子のパイオニア。
未だに130巻以降のお弟子さんが書いたグインを読む気がしなくて買うだけ買っています。いつか読む日が来るのでしょうか・・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
栗本薫(中島梓)。自分の青春時代に全盛期でいらした作家である割には『グイン・サーガ』は未読だったりしますが、やはり自分的には外せない作家なので読了。
彼女が重度障害児で24時間介護を要する弟さんを持つ、所謂「きょうだい児」であったことはこの本で初めて知りました。また、恐らくその状況が彼女の孤独感を深め、独自の底知れぬ深さを持つ物語世界の醸成につながったと思われることも。
実は彼女の生前の活動を横目で見ていて、
「小説(しかも複数ジャンル)、評論、エッセイ、音楽、演劇……。マルチかつハイレベルな才能の持ち主であることは疑いないけれど、どうしてここまで熱を持って駆り立てられたように実行してしまうのか? 加えてファンもどうしてあんなに熱狂的について行っているのか」
と正直訝しさを覚えたのも確かです。
しかし本書を読み終え、彼女の活動の全てには本能に基づく必然性があっただけでなく、彼女自身の精神と生命を維持するためには欠かせない活動であったのだと認識するに至っています。
しかも、ご家族やお友達、近しい編集者やクリエイター、スタッフの方々の証言が、生前にあれだけ彼女に振り回されたにも関わらず、皆様実に優しく愛情深い! もちろん本当にしんどい思いをさせられて決裂した相手は取材を受けなかったのかも知れませんが、彼女がいかに関わった人々を強く惹きつけ引き込む存在であったか、そして彼女がとりわけ波長の合った相手といかにとことん絆を深めたか、が伝わってきました。
没後11年。グイン・サーガの物語世界を本当は自身で書き続けたかっただろうと思いを馳せると同時に、別の書き手に引き継がれ終わりなく続いていく物語世界もまた彼女の一つの理想であったのかも知れない……いや、本当にそうだったんだろうか? と複雑な思いを抱きながら本を閉じました。 -
やばい本を読んでしまった。こんなの書かれたら、否が応でも栗本薫・中島梓作品を読みたくなってしまうではないか。そもそも、『ぼくらの時代』をむかーし読んだような…といううっすらした記憶しかない作家さんの評伝をなぜ読んでしまったのか。(新聞の書評欄で気になったからですが)。困ったことになったぞ、とニヤニヤ笑いが止まらなくなるほど、栗本薫・中島梓さんの魅力を四方八方から語り尽くしている作品でした。
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「息をするようにものを書く人間」というのは、なんだかんだでフィクションの中にしか登場しないキャラクター像だと思ってましたが、実在しました。あまりにもその生き方が物語・表現と不可分で、ある意味やっぱりフィクションの中に生きる方だったんだなと思いますが。
思春期に『終わりのないラブ・ソング』を回し読みしたり、学生時代に『我が心のフラッシュマン』の文庫(表紙絵は出渕裕!)を愛読した程度で、『グイン・サーガ』は手付かずのままですが、このルポを読んだらますます手を出すのが怖くなったり、それでもこれは是非読まねばとも思ったり。
晩年の著作からの引用部分が特に印象的でした。
「ただひとつ確かなのは 、私は生きている限り 、生きていることをとても好きだろうということです 。だけれども 、死ななくてはならないときには 、 『まあ 、しょうがないから死ぬしかないな 』ということです 。」 -
里中高志氏、単純に文章が上手え。
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栗本さん(=中島さん)が活躍した時代背景についても思い出しながら、非常に興味深く読んだ。
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僕は『グイン・サーガ』を知らない。栗本薫といえば『ぼくらの時代』である。中島梓は「クイズ ヒントでピント」の女性チームキャプテン。この二人が同一人物だと知るのは高校生になってからのことだった。その意味で、僕は栗本薫・中島梓の熱心な読者ではない。
にもかかわらずめちゃくちゃ面白かった。
評伝といえばいいのか、この分野は評される人に魅力があって書き手がしっかりしていれば、めちゃくちゃ面白くなる。取材力と文章力のなせる技だと思う。
そして、僕が『ぼくらの時代』を読んだのは、恩田陸が面白いから、と言ったからだったような気がする。あの終わり方は、恩田陸に通ずるものがある、と感じるのは僕だけか。
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安井かずみ、森瑤子に続いて読んだ評伝。前二編とは趣が異なるのは著者が違うからはもちろん、作り出した作品の方向性とご本人方のキャラクターの違いだろう。
中島梓の本は少し読んでいるが、栗本薫のほうはほとんど読んでないといっていいだろう。評論は面白かったが、小説のほうはなにやら読みづらいというか、あまり魅力を感じなかった。ごめんなさい。
ずらずらと長文を書きなぐるエネルギーは驚愕の一言。また他方面にも活躍されていたようだが、エッセイ面でのみのファンでありました。漫画やダイエットに関する論考はすごかったなぁ。
と、本の感想になっていないね、これでは。
里中高志の作品
