嘘と正典

著者 :
  • 早川書房
3.64
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本棚登録 : 422
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098863

作品紹介・あらすじ

第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞後、第2長篇『ゲームの王国』で日本SF大賞および山本周五郎賞を受賞した小川哲。その受賞後第一作となる短篇集を刊行する。奇想小説、歴史小説、そしてSF小説……ジャンルすべてを包含して止揚する傑作集の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 第162回直木賞候補作。
    「魔術師」・・・タイムトラベルに挑むマジシャン、その一家のお話。
    「ひとすじの光」・・・父が亡くなり残された馬。その馬について調べてゆくと。
    「時の扉」・・・東フランクの王を永遠に呪縛する。
    「ムジカ・ムンダーナ」…自らの音楽を貨幣が割とする島を舞台に父の跡を辿る。
    「最後の不良」・・・カルチャーが絶えた未来。そこで最後の不良として起こした行動は。
    「嘘と正典」・・・CIA工作員は共産主義をなくそう過去を変えようと試みる。(書き下ろし)
    6篇。
    初読みの著者さん。表紙のデザインで硬い内容なのか、SFで読み切れるのかとかなり不安でしたが、読み始めたら一転面白くて一気に読んでしまった。読み進め、こういう設定になっているのねとその後の展開が気になって気になって。親子関係のもの「ひとすじの光」「ムジカ〜」は印象に残るし、最後の「嘘と正典」読み入った。こうして歴史は守られているのか、なあんてね。

  • #日本SF読者クラブ 真実あるいは事実、虚構あるいは創作、現在と過去、そして未来。それらが散りばめられた短編集。

     以前「ゲームの王国」を読んだ時から思っていたのだが、話を創るのが上手い人だ。必ずしも壮大ではない話でも、読者を物語に引き込んでゆく。

  • 読み終わって、SFの人だと気付いた。
    それくらいうまくバランスさせて物語を作っています。

    表題の作品は、出だしのエピソードがわからなかった。
    読み終わってから再度読み直すと、仕掛けに気づきました。

    「ゲームの王国」も読んでみたくなりました。
    これからに期待してます。

  • 歴史とは一方向から見た一部事実の羅列である。別方向から見た時に、それが全く違う事実であったとしても驚かない。例えそれがファンタジックでSFな内容であっても。陰謀論が好きな人は気に入ると思う。完走の詳細はこちら→https://youtu.be/U21LZXPGo_o

  • ”SF”・”ポル・ポト”・”脳波”という3つの無秩序なキーワードを見事にまとめあげ奇想天外な小説世界を味わわせてくれた『ゲームの王国』が大変素晴らしかったために、別の作品も読みたいということで選んだ6作の短編集。

    6作それぞれが別個のテーマであり、いずれもが高い完成度を誇り、作家としての天才性に圧倒されてしまう。特に表題作の『嘘と正典』は『ゲームの王国』にも通じる現代史×SF系の世界観が極めて魅力的である。マルクスではなくそのパートナーであったエンゲルスをターゲットと定め、歴史介入によってエンゲルスがかけられた実際の裁判の判決を変え、共産主義の勃興を防ぐ・・・という筋書きだが、その過程も含めて、非常にエキサイティングなストーリー。

  • 魔術や音楽、流行、時間など、様々な素材にSF要素を盛り込んで仕立てた6編を収録。うち5編は短編で、表題作のみ書き下ろしの中編。

    新聞の書評で興味をもち、初めて読む作家。
    SFで若手というと手に取るのを躊躇しがちだったが、奇をてらうわけでもなく、むしろSF要素は控えめ。最後にオチのある小粋なミステリーといった趣で、味のある作品集だった。

    山本周五郎賞を受賞した長編『ゲームの王国』も読んでみよう。

  • 「ゲームの王国」で現代史とSFという鉱脈を発見した著者の短編集。SF味が薄い物もあるが、特に最後の表題作が、共産主義の起源と冷戦下のCIAの活動をSF的にリンクさせて素晴らしい。

  • 『ゲームの王国』に魅了され、この連休で絶対読むぞ!と決めていた小川哲。

    オビに「『歴史』と『時間』についての作品集」とあり、最近、時間についての本ばっかり読んでるなぁー、引かれてんのかな、と独り言。

    ストーリーはややベタだけど、時間や定理、文化や思考といったテーマの提起の仕方が面白くて、読みながら考えている一冊だった。
    以下、抜粋して感想。



    「魔術師」
    マジシャンの父を持つ姉弟の話。
    それが、マジックであろうと、本物の魔法であろうと、彼を父として見つめる姉弟の目を忘れてはいけない。

    「時の扉」
    王と語り部という構成が面白い。
    自分にとって都合の悪い過去、痛みを伴う過去を「抹消」することが出来たなら。
    「男は最後に『解釈』を変えてしまいました」

    脳が認識する機能を改変することで、時間と空間は消滅し、有限なる永遠が訪れる。
    ふと、認知症における時間や空間認識って、どういうものなのだろうと考えた。
    忘れてしまうことの怖さを聞いたことがあるけど、自分を作り上げてきた時間の感覚が消失することの恐怖って、想像を絶してしまう。

    「嘘と正典」
    エンゲルスって、あのエンゲルス?
    と思いながら、章が変わると唐突にCIAとKGBの話に変わり、何なんだ?と思っていたらの、オチ。
    時間を遡ることが出来たら、という方法にまつわる面白さはあるけど、結末が……。
    多分、この感想を読んだだけでピースを当てはめられる人はいると思う。
    でも、何度も言うけど、テーマは面白い(笑)

    他に「ひとすじの光」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」。

  • 標題作を含め6つの短編を収録した短編集。一応SFなんだけど,典型的なSFっぽくはないけど不思議な雰囲気の漂う話しが多い。すっきりいしない終わり方も多いけど不思議な余韻を楽しめる。全体を貫くSF要素は「時間」かな。個人的にはとても好きな小説ばかりだった。最初の「魔術師」も真相が気になるし,標題になっている「嘘と正典」は,こんな発想よくできるな,という内容。何か本物っぽい。映画にしても面白いかもしれないな,と思う。

  • マジック・リアリズム的な独特の筆致。面白いけど、う〜ん微妙…と思いつつ読み進めたら、最後の表題作が直球ガチSFで、しかもSFとしては古典的なアイディアながらそこにこの世界観を、この価値観を載せますか!?

    これはやられました。傑作。
    相当読む人を選びますが。

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