嘘と正典

著者 :
  • 早川書房
3.87
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本棚登録 : 228
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098863

作品紹介・あらすじ

第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞後、第2長篇『ゲームの王国』で日本SF大賞および山本周五郎賞を受賞した小川哲。その受賞後第一作となる短篇集を刊行する。奇想小説、歴史小説、そしてSF小説……ジャンルすべてを包含して止揚する傑作集の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 『ゲームの王国』に魅了され、この連休で絶対読むぞ!と決めていた小川哲。

    オビに「『歴史』と『時間』についての作品集」とあり、最近、時間についての本ばっかり読んでるなぁー、引かれてんのかな、と独り言。

    ストーリーはややベタだけど、時間や定理、文化や思考といったテーマの提起の仕方が面白くて、読みながら考えている一冊だった。
    以下、抜粋して感想。



    「魔術師」
    マジシャンの父を持つ姉弟の話。
    それが、マジックであろうと、本物の魔法であろうと、彼を父として見つめる姉弟の目を忘れてはいけない。

    「時の扉」
    王と語り部という構成が面白い。
    自分にとって都合の悪い過去、痛みを伴う過去を「抹消」することが出来たなら。
    「男は最後に『解釈』を変えてしまいました」

    脳が認識する機能を改変することで、時間と空間は消滅し、有限なる永遠が訪れる。
    ふと、認知症における時間や空間認識って、どういうものなのだろうと考えた。
    忘れてしまうことの怖さを聞いたことがあるけど、自分を作り上げてきた時間の感覚が消失することの恐怖って、想像を絶してしまう。

    「嘘と正典」
    エンゲルスって、あのエンゲルス?
    と思いながら、章が変わると唐突にCIAとKGBの話に変わり、何なんだ?と思っていたらの、オチ。
    時間を遡ることが出来たら、という方法にまつわる面白さはあるけど、結末が……。
    多分、この感想を読んだだけでピースを当てはめられる人はいると思う。
    でも、何度も言うけど、テーマは面白い(笑)

    他に「ひとすじの光」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」。

  • SF短編集。先日まで長編の前半を読むのに苦しんでいたので、やっぱり短編はいいなあ。作者の作品は初めてだがおしゃれで余韻に富み、十分楽しめた。
    魔術師:手品師の父・姉はどこに行ったのか?
    ひとすじの光:ダービー馬スペシャルウィークの祖先フロリースカップの架空の妹の子孫の話。
    時の扉:過去改変と代償の話
    ムジカ・ムンダーナ:ルテア族の音楽、ダイガのために
    最後の不良:ミニマムライフスタイル(MLS)に抗う話
    嘘と正典:エンゲルスの裁判で正典の守護者が歴史戦争を終結させる話。


  • 時間を操る「魔術師」。サラブレッドに夢を預ける「ひとすじの光」。独裁者の罪の代償の「時の扉」。父から息子に渡る音楽の「ムジカ・ムンダーナ」。流行を捨てオリジナリティを追求する「最後の不良」。共産主義の始まりと消滅への道の「嘘と正典」。SFが主だけど、雰囲気がそれぞれ違う短編ばかり。でも全てに共通して「時間」や「歴史」をキーワードとしていて、それぞれの話に色んな切り口でそれを料理し、供するユニークな短編集。

  • 読んでいく途中でジャンルがSFだと言うことを思い出させる作品達

    個人的には一番経路の違う「時の扉」が一番好きです。

  • 1話目の「魔術師」は傑作だと思いました。
    マジシャンとしてかつて一世を風靡したものの、製作した映画や魔術団の運営に失敗して表舞台からフェードアウトした男、竹村理道が仕掛けた一世一代のマジック「タイムマシン」をめぐるお話です。
    自分が知らないだけなのかもしれませんが、パターンがあらかた出尽くした感のあるタイムトラベルものとしてはかなり新鮮な印象で、こういう切り口もあるのかと感心しました。

    表題作の「嘘と正典」も時間移動ネタを使っていますが、こちらはちょっと既視感がありました。
    とはいえこちらもなかなか面白かったです。
    物語の主な舞台は冷戦下のソ連で、CIAの工作員が接触した研究者が過去への通信ができる技術を発見し、これを使って歴史の改変を企むというスリリングなSFサスペンス作品です。
    「正典」はてっきり聖書やコーランの類なのかなと予想していたのですが、そういう意味だったとは。

    それ以外の収録作も「時間」をテーマにしており、いずれも様々な趣向が凝らされていて飽きなかったのですが、前述の2作に比べるとちょっと弱いように思えました。
    SF色の強い作品が印象に残ったためか、いち作品集としてみると少しまとまりが悪かったような気がします。

  • 様々なジャンルの短編集。

    マジック、競馬、部族、タイムトラベル、ナチス、KGB…。
    一つの短編に複数のジャンルが絡まっている話が多く、それらのジャンルが好きな人ははまりそう。
    裏を返せば短編にも関わらず複数の要素が含まれているため、そのジャンルに対する前知識や勘所がないと、話の最後まで置いてきぼりにされた気持ちになってしまうかも。自分は話によってはオチの面白みすら気づけてないかも。

  • 200110*読了
    直木賞予想企画、5作中の4作目。今回の候補作のうち、唯一の短編集。
    なんとも不思議なお話が多く、独特の世界観だなと思いました。今まで読んできた3作とは、そしてきっと残り1冊とも違う異質を放った作品たち。これもまた文学。小川さんはSF小説の作家さんなんですね。

    魔術師
    手品師の父が行った驚くべきマジック。そして、姉も…。
    ひとすじの光
    父が残した書きかけの文章。競馬のサラブレッドの血系と、自分の関係とは?
    時の扉
    ある国の王と、過去を抹消する時の扉。語り手との関係とは…?
    ムジカ・ムンダーナ
    父の遺した音楽と、音楽が貨幣の代わりの役割を持つ島について。
    最後の不良
    流行がなくなってしまった未来と、それに抗おうとする男性。
    嘘と正典
    第二次世界大戦時、ロシアでのCIAの活動と、スパイをするロシア人。そして時空を超え、過去によびかけることの出来る装置。さぁ、歴史は変わるのか!?

    ネタバレしたくないので多くは書けませんが、それぞれ発想がおもしろく、どんどん読み進めることができました。
    どれも過去との繋がりが関係していますね。
    わたしはムジカ・ムンダーナが好きです。

  • SF、特に時空に絡めた話は私にはあまり馴染みのないジャンルのため難しかったです。話の組み立てを綿密に練って書かれているんだろう、すごい、と感嘆。6作とも題材も内容も面白かったものの、自分の頭が悪いせいで話を理解するのに精一杯で楽しみ切れなかったので私にとっては星3でした。この中では『嘘と正典』と『ひとすじの光』が好きです。

  • 時間SFのおいしさが詰まった短編集、近代西洋史の知識があるとなお美味しく頂ける造りになっている。波動関数という言葉は出てこないけれども、特に『時の扉』は私の大好きな小林泰三の『酔歩する男』に似たテイストで、大いに好み。

  • タイムトラベルを題材にした作品を中心に編まれた短編集。表題作「嘘と正典」は、もう少し読みたい感じのする中編。合理性を何よりも重んじるソ連の科学者が印象的。「時の扉」はおとぎ話と見せかけて……数奇な運命に彩られた、ロマンのある復讐劇。

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