嘘と正典

著者 :
  • 早川書房
3.76
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本棚登録 : 306
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098863

作品紹介・あらすじ

第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞後、第2長篇『ゲームの王国』で日本SF大賞および山本周五郎賞を受賞した小川哲。その受賞後第一作となる短篇集を刊行する。奇想小説、歴史小説、そしてSF小説……ジャンルすべてを包含して止揚する傑作集の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 第162回直木賞候補作。
    「魔術師」・・・タイムトラベルに挑むマジシャン、その一家のお話。
    「ひとすじの光」・・・父が亡くなり残された馬。その馬について調べてゆくと。
    「時の扉」・・・東フランクの王を永遠に呪縛する。
    「ムジカ・ムンダーナ」…自らの音楽を貨幣が割とする島を舞台に父の跡を辿る。
    「最後の不良」・・・カルチャーが絶えた未来。そこで最後の不良として起こした行動は。
    「嘘と正典」・・・CIA工作員は共産主義をなくそう過去を変えようと試みる。(書き下ろし)
    6篇。
    初読みの著者さん。表紙のデザインで硬い内容なのか、SFで読み切れるのかとかなり不安でしたが、読み始めたら一転面白くて一気に読んでしまった。読み進め、こういう設定になっているのねとその後の展開が気になって気になって。親子関係のもの「ひとすじの光」「ムジカ〜」は印象に残るし、最後の「嘘と正典」読み入った。こうして歴史は守られているのか、なあんてね。

  • 読み終わって、SFの人だと気付いた。
    それくらいうまくバランスさせて物語を作っています。

    表題の作品は、出だしのエピソードがわからなかった。
    読み終わってから再度読み直すと、仕掛けに気づきました。

    「ゲームの王国」も読んでみたくなりました。
    これからに期待してます。

  • 歴史とは一方向から見た一部事実の羅列である。別方向から見た時に、それが全く違う事実であったとしても驚かない。例えそれがファンタジックでSFな内容であっても。陰謀論が好きな人は気に入ると思う。完走の詳細はこちら→https://youtu.be/U21LZXPGo_o

  • 魔術や音楽、流行、時間など、様々な素材にSF要素を盛り込んで仕立てた6編を収録。うち5編は短編で、表題作のみ書き下ろしの中編。

    新聞の書評で興味をもち、初めて読む作家。
    SFで若手というと手に取るのを躊躇しがちだったが、奇をてらうわけでもなく、むしろSF要素は控えめ。最後にオチのある小粋なミステリーといった趣で、味のある作品集だった。

    山本周五郎賞を受賞した長編『ゲームの王国』も読んでみよう。

  • 「ゲームの王国」で現代史とSFという鉱脈を発見した著者の短編集。SF味が薄い物もあるが、特に最後の表題作が、共産主義の起源と冷戦下のCIAの活動をSF的にリンクさせて素晴らしい。

  • 『ゲームの王国』に魅了され、この連休で絶対読むぞ!と決めていた小川哲。

    オビに「『歴史』と『時間』についての作品集」とあり、最近、時間についての本ばっかり読んでるなぁー、引かれてんのかな、と独り言。

    ストーリーはややベタだけど、時間や定理、文化や思考といったテーマの提起の仕方が面白くて、読みながら考えている一冊だった。
    以下、抜粋して感想。



    「魔術師」
    マジシャンの父を持つ姉弟の話。
    それが、マジックであろうと、本物の魔法であろうと、彼を父として見つめる姉弟の目を忘れてはいけない。

    「時の扉」
    王と語り部という構成が面白い。
    自分にとって都合の悪い過去、痛みを伴う過去を「抹消」することが出来たなら。
    「男は最後に『解釈』を変えてしまいました」

    脳が認識する機能を改変することで、時間と空間は消滅し、有限なる永遠が訪れる。
    ふと、認知症における時間や空間認識って、どういうものなのだろうと考えた。
    忘れてしまうことの怖さを聞いたことがあるけど、自分を作り上げてきた時間の感覚が消失することの恐怖って、想像を絶してしまう。

    「嘘と正典」
    エンゲルスって、あのエンゲルス?
    と思いながら、章が変わると唐突にCIAとKGBの話に変わり、何なんだ?と思っていたらの、オチ。
    時間を遡ることが出来たら、という方法にまつわる面白さはあるけど、結末が……。
    多分、この感想を読んだだけでピースを当てはめられる人はいると思う。
    でも、何度も言うけど、テーマは面白い(笑)

    他に「ひとすじの光」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」。

  • こりゃ読み手を選ぶ一冊ですな。私は明らかに読み手としての知力が劣っており、選ばれなかったようです。およそ初読では混乱するばかりで、さりとて再読する気力もなければ、おそらく再読しても理解できんのでしょう。『最後の不良』では、サブカル大好き、無駄遣いの権化みたいな私には、桃山のあの郷愁ってのは分かる気がする。あとの作品は時空をめぐるSFってことだけど、いずれも途中からついていけなくて斜め読み。それでも『嘘と正典』の、ニュートンがいなかったら万有引力は発見されていたか?、ディケンズがいなかったら『オリバー・ツイスト』は描かれていたか?っていう問答、あれは勉強になりました。

  • 「時空」を扱ったものが三作。
    (受け継がれる血脈や流行も、「時」と切り離す
    事は出来ないから五作とも…)

    そして、著者にとって「父親」とは、何かしらの悔いを伴う存在なのだろうか…


    ◯魔術師・・自らが捨てた子供達(姉・弟)が見つめるステージで、マジック界の大スターとして一時代を築いた父親が最後に魅せたマジックは、文字通り「人生を掛けた」時空を旅するマジックだった。
    目撃した娘は…

    ◯一筋の光・・父親が残した遺産で唯一整理されていなかったのは、凡庸な戦績の競走馬だった。
    その意味するところを探るうちに…
    時を超えて受け継がれた「血」と「想い」

    ◯時の扉・・忌むべき過去を無かった事に…
    時を操り、勝ち続ける呪縛に取り憑かれた男に向けられる、復讐の因果。
    ヒトラーとユダヤ人

    ◯ムジカ・ムンダーナ・・
    曲作りを辞めてしまった作曲家の父親が行う狂気のレッスンに反発し、コンクールの優勝を機にピアノを断ち、音楽とも距離を置く息子は、父の死後自分の名が書かれた一本のデープを聴く。 何故か心を揺さぶり続けるその曲が導き辿り着いたのは、音楽を「至上の財産」とする島だった。

    ◯最後の不良・・流行を創り、常に最先端を行く雑誌を創り続けた男は、特攻服に身を包み、ある暴動に参加する。
    時の流れと共に、一切飾らない「あるがまま」が主流となった時代に逆らう者達…
    その暴動の正体は・・

    ◯嘘と正典・・物語は、
    共産主義の母とも称されるエンゲルスがマルクスと出逢う前…被疑者となった裁判から始まる。
    有罪が確定的なその裁判でエンゲルスは全てを失うはずだったが…

    時は流れ・・
    共産主義の生み出す矛盾に鬱屈した想いを抱くソ連の科学者は、命がけでCIAと接触を図り機密を漏洩し続ける。
    ある時、長きにわたり等閑に付して来た上司の研究から、限界値を超えて放出された電子が過去の時空に消えた事から過去への通信の可能性を見出す。
    果たして…
    世界に混沌をもたらしたその発見の末路は?

    正典とは

  • 表題作「嘘と正典」が面白かった。時間を巡るぶっ飛んだ話しだが、スピード感と最後の落ちが見事。

  • SF短編集。先日まで長編の前半を読むのに苦しんでいたので、やっぱり短編はいいなあ。作者の作品は初めてだがおしゃれで余韻に富み、十分楽しめた。
    魔術師:手品師の父・姉はどこに行ったのか?
    ひとすじの光:ダービー馬スペシャルウィークの祖先フロリースカップの架空の妹の子孫の話。
    時の扉:過去改変と代償の話
    ムジカ・ムンダーナ:ルテア族の音楽、ダイガのために
    最後の不良:ミニマムライフスタイル(MLS)に抗う話
    嘘と正典:エンゲルスの裁判で正典の守護者が歴史戦争を終結させる話。

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