嘘と正典

著者 :
  • 早川書房
3.88
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本棚登録 : 223
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098863

作品紹介・あらすじ

第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉受賞後、第2長篇『ゲームの王国』で日本SF大賞および山本周五郎賞を受賞した小川哲。その受賞後第一作となる短篇集を刊行する。奇想小説、歴史小説、そしてSF小説……ジャンルすべてを包含して止揚する傑作集の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいく途中でジャンルがSFだと言うことを思い出させる作品達

    個人的には一番経路の違う「時の扉」が一番好きです。

  • 1話目の「魔術師」は傑作だと思いました。
    マジシャンとしてかつて一世を風靡したものの、製作した映画や魔術団の運営に失敗して表舞台からフェードアウトした男、竹村理道が仕掛けた一世一代のマジック「タイムマシン」をめぐるお話です。
    自分が知らないだけなのかもしれませんが、パターンがあらかた出尽くした感のあるタイムトラベルものとしてはかなり新鮮な印象で、こういう切り口もあるのかと感心しました。

    表題作の「嘘と正典」も時間移動ネタを使っていますが、こちらはちょっと既視感がありました。
    とはいえこちらもなかなか面白かったです。
    物語の主な舞台は冷戦下のソ連で、CIAの工作員が接触した研究者が過去への通信ができる技術を発見し、これを使って歴史の改変を企むというスリリングなSFサスペンス作品です。
    「正典」はてっきり聖書やコーランの類なのかなと予想していたのですが、そういう意味だったとは。

    それ以外の収録作も「時間」をテーマにしており、いずれも様々な趣向が凝らされていて飽きなかったのですが、前述の2作に比べるとちょっと弱いように思えました。
    SF色の強い作品が印象に残ったためか、いち作品集としてみると少しまとまりが悪かったような気がします。

  • 様々なジャンルの短編集。

    マジック、競馬、部族、タイムトラベル、ナチス、KGB…。
    一つの短編に複数のジャンルが絡まっている話が多く、それらのジャンルが好きな人ははまりそう。
    裏を返せば短編にも関わらず複数の要素が含まれているため、そのジャンルに対する前知識や勘所がないと、話の最後まで置いてきぼりにされた気持ちになってしまうかも。自分は話によってはオチの面白みすら気づけてないかも。

  • 200110*読了
    直木賞予想企画、5作中の4作目。今回の候補作のうち、唯一の短編集。
    なんとも不思議なお話が多く、独特の世界観だなと思いました。今まで読んできた3作とは、そしてきっと残り1冊とも違う異質を放った作品たち。これもまた文学。小川さんはSF小説の作家さんなんですね。

    魔術師
    手品師の父が行った驚くべきマジック。そして、姉も…。
    ひとすじの光
    父が残した書きかけの文章。競馬のサラブレッドの血系と、自分の関係とは?
    時の扉
    ある国の王と、過去を抹消する時の扉。語り手との関係とは…?
    ムジカ・ムンダーナ
    父の遺した音楽と、音楽が貨幣の代わりの役割を持つ島について。
    最後の不良
    流行がなくなってしまった未来と、それに抗おうとする男性。
    嘘と正典
    第二次世界大戦時、ロシアでのCIAの活動と、スパイをするロシア人。そして時空を超え、過去によびかけることの出来る装置。さぁ、歴史は変わるのか!?

    ネタバレしたくないので多くは書けませんが、それぞれ発想がおもしろく、どんどん読み進めることができました。
    どれも過去との繋がりが関係していますね。
    わたしはムジカ・ムンダーナが好きです。

  • SF、特に時空に絡めた話は私にはあまり馴染みのないジャンルのため難しかったです。話の組み立てを綿密に練って書かれているんだろう、すごい、と感嘆。6作とも題材も内容も面白かったものの、自分の頭が悪いせいで話を理解するのに精一杯で楽しみ切れなかったので私にとっては星3でした。この中では『嘘と正典』と『ひとすじの光』が好きです。

  • 時間SFのおいしさが詰まった短編集、近代西洋史の知識があるとなお美味しく頂ける造りになっている。波動関数という言葉は出てこないけれども、特に『時の扉』は私の大好きな小林泰三の『酔歩する男』に似たテイストで、大いに好み。

  • タイムトラベルを題材にした作品を中心に編まれた短編集。表題作「嘘と正典」は、もう少し読みたい感じのする中編。合理性を何よりも重んじるソ連の科学者が印象的。「時の扉」はおとぎ話と見せかけて……数奇な運命に彩られた、ロマンのある復讐劇。

  • 6編が収録された短編集。4編がSFマガジンに掲載されたものだが、あまりSFという感じはしない。20代半ばまで同誌を購読していたぼくにとっては隔世の感がある。書き下ろしの表題作は約100ページと他の作品の倍近い長さがあり、本書の中では一番SFらしい作品だった。どれも面白かったが、表題作と、音楽がテーマの「ムジカ・ムンダーナ」が特によかった。

  • 嘘と正典
    著作者:小川哲
    早川書房
    デビューは2017年に発表した第2長篇「ゲームの王国」が吉川英治新人最終候補となりその後日本SF大賞と山本周五郎賞を受賞する。
    タイムライン
    https://booklog.jp/item/1/4152098864

  • 短編集6編
    SFやミステリータッチの作品.最後まで謎が残るような余韻の残るラスト.そしてどの作品も歴史の流れ時間の持つ意味のようなものに関わっている.表題作はもちろん良かったがサラブレッドの血の歴史を扱った「ひとすじの光」が好きだ.

  • 短篇集。1作目2作目とラストが読者に委ねる感じで好きじゃないなと思ったのだが、3作目からそんなこともなく、ラストの表題作まで楽しく読めた。

    1.魔術師
    マジシャンの父が最後のマジックとともに消え、それを姉が再び行ったところで終わる。
    2.ひとすじの光
    亡くなった父の残した競走馬にまつわる血縁のすこしふしぎな話。馬は結局どうなったんだろう。1作目2作目は収まりきらなくて端折ったような印象がある。
    3.時の扉
    千夜一夜物語風で話が進んでゆくごとにパズルの絵が完成してゆくような楽しさ。
    4.ムジカ・ムンダーナ
    過去に父のせいでピアノをやめている主人公、亡くなった父が残したカセットテープにあった音楽は音楽を所有する部族にかかわるものであった。父の残したものというモチーフが多いなと思ったものの、この短篇集の中で一番好き。
    5.最後の不良
    流行を追わずシンプルに生きるという風潮が流行してしまった世界。抗おうとした主人公が選んだやり方がスマートじゃなくて、もっとかっこいい不良があるのではと思いつつも大人のもの悲しさを感じられていいなと思う。
    6.嘘と正典
    スパイと科学者と時空間通信。歴史改変が成功するか否か最後まで楽しめた。これが一番面白かった。

  • 2019.12.8読了。
    面白い。
    が、難しいとも思う。
    馬主の話が一番良かった。

  • 現在、未来、過去を横断的に扱った「時間」をテーマにした短編が揃った作品集である。

    エンゲルスを消滅させる!といったうたい文句で知ったので、壮大なパラドックス物かと思って手に取ったのでそこはちょっと違っていた。

    どれも、標準以上にまとまった作品ではあるのだが、『ゲームの王国』の大作感や、『ユートロニカのこちら側』の見事な未来世界設定を読んできていると、ちょっと物足りなく感じた。

  • 「ゲームの王国」で現代史とSFという鉱脈を発見した著者の短編集。SF味が薄い物もあるが、特に最後の表題作が、共産主義の起源と冷戦下のCIAの活動をSF的にリンクさせて素晴らしい。

  • SFマガジン掲載作は、これSFじゃないじゃん、と、SFか否かが価値判断の基準だったガキのころなら放り投げてたかもしれない代物ばかり。(特に競馬の話が)
    まぁ、山尾悠子がJAにラインナップされていたのを思えば、ハヤカワ的にはさほど問題ではないのかもしれないけど。
    書き下ろしの表題作は、技量は判るんだけど、60年代ならともかく今これなの、と思ってしまう。

  • 過去にSFマガジンに収録された作品を中心にした短編集。時間SFの成分が多いが、それだけではない。馬SFや音楽SFもある。ミステリー要素も大きく、どれも深く味わえる作品となっている。気に入った作品は、音楽を通貨とする「ムジカ・ムンダーナ」と米ソのスパイと時間SFを融合した「嘘と正典」だ。「魔術師」も様々な解釈ができる不思議な物語である。どれもSF好きなら必読だ。

  • 小川哲『嘘と正典』読了。『ゲームの王国』作者による短編集。駒場の博士課程出身とだけあって表題作筆頭に歴史や文化人類学的な題材の作品を高頻度かつ高クオリティで提供してくれるので自分のような人文系SF読みにとても刺さる。ぐいぐいと引き込ませ読ませる筆致が素晴らしい。
    サラブレッドの血統を追う「ひとすじの光」の参考文献に本村凌二の名前があって思わずほっこりした

  • SFと聞いただけで「無理…」と避けてきたのですが、『なめらかな世界と、その敵』に続いて五つ星をつける作品に出会ってしまいました。こちらの方がSFを普段苦手とする者にとっては読みやすいと思います。


    テーマは時間。

    人生をかけた衝撃のトリック『魔術師』

    ソビエトが舞台のスパイもの?個人的キラーワードのレッド・ツェッペリンがでてくる『嘘と正典』
    が特に面白かったのですが、
    競馬好きとしては、まるまるダービー馬スペシャルウィークの血統を辿る『ひとすじの光』は、思わず、初出は『優駿』なのでは⁈と一覧を見てしまいましたが『SFマガジン』でした…。そりゃそうだ。

  •  

  • 『ゲームの王国』に魅了され、この連休で絶対読むぞ!と決めていた小川哲。

    オビに「『歴史』と『時間』についての作品集」とあり、最近、時間についての本ばっかり読んでるなぁー、引かれてんのかな、と独り言。

    ストーリーはややベタだけど、時間や定理、文化や思考といったテーマの提起の仕方が面白くて、読みながら考えている一冊だった。
    以下、抜粋して感想。



    「魔術師」
    マジシャンの父を持つ姉弟の話。
    それが、マジックであろうと、本物の魔法であろうと、彼を父として見つめる姉弟の目を忘れてはいけない。

    「時の扉」
    王と語り部という構成が面白い。
    自分にとって都合の悪い過去、痛みを伴う過去を「抹消」することが出来たなら。
    「男は最後に『解釈』を変えてしまいました」

    脳が認識する機能を改変することで、時間と空間は消滅し、有限なる永遠が訪れる。
    ふと、認知症における時間や空間認識って、どういうものなのだろうと考えた。
    忘れてしまうことの怖さを聞いたことがあるけど、自分を作り上げてきた時間の感覚が消失することの恐怖って、想像を絶してしまう。

    「嘘と正典」
    エンゲルスって、あのエンゲルス?
    と思いながら、章が変わると唐突にCIAとKGBの話に変わり、何なんだ?と思っていたらの、オチ。
    時間を遡ることが出来たら、という方法にまつわる面白さはあるけど、結末が……。
    多分、この感想を読んだだけでピースを当てはめられる人はいると思う。
    でも、何度も言うけど、テーマは面白い(笑)

    他に「ひとすじの光」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」。

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