【2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位】ザリガニの鳴くところ

  • 早川書房
4.35
  • (359)
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  • (12)
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本棚登録 : 4579
レビュー : 315
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099198

作品紹介・あらすじ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の顚末と少女の成長が絡み合う長篇

感想・レビュー・書評

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  • 作者のディーリア・オーエンズは、ジョージア州出身の動物学者で、この作品は69歳で執筆した初めての小説だそうです。
    非常にオーソドックスな恋愛小説であり、ミステリーです。
    最後のどんでん返しまで本当に飽きさせない、とてもよくできたストーリーだと思いました。
    ベストセラーになっているのも頷けました。


    以下途中までのストーリーです。

    主人公の少女カイアは、1969年、6歳の時に母が家を出て行ってから、しばらく暴力的な父親と二人で暮らしますが、父もいなくなり、学校に通ったのはわずか1日だけ。
    その後、ひとりで貝を獲って売りにいったり、燻製を作って売りに行き、ひとりで生活しています。

    そこに年上の少年テイトが現れ、カイアに読み書きを教えてくれます。
    カイアとテイトは恋仲になりますが、テイトは大学で生物学の研究をするために地を去り、カイアとの約束を破り帰ってこなくなります。

    打ちひしがれたカイアは、村の裕福な家の青年チェイスと付き合い始めますが、チェイスはカイアに結婚をちらつかせるものの、裕福な家の娘と婚約を発表してしまいます。

    もうひとつのストーリーは、1969年チェイスが不審死事件の被害者となって発見されます。
    その容疑者として、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれて、ひっそりとひとりで貝殻の標本を作りながら暮らしていたカイアが疑われます。

    そこへ、大学の研究を終えたテイトが帰ってきてカイアに何度も謝ろうとしますが、カイアはテイトを決して赦そうとしません。

    カイアはずっと湿地の家で6歳のときからひとりで自然の中で育った少女だったので町の人たちとは馴染めないという負い目がありました。

    カイアとテイトは幸せになれるのかと、はらはらしました。
    カイアが生き残ったたった一人の兄のジョデイと再会するシーンには目頭が熱くなりました。

    • くるたんさん
      まことさん♪こちらでもこんにちは♪

      ジョディとの再会、私も涙しました。
      ジョディといい、母親といい…みんないろいろな仕方ない気持ちを胸に押...
      まことさん♪こちらでもこんにちは♪

      ジョディとの再会、私も涙しました。
      ジョディといい、母親といい…みんないろいろな仕方ない気持ちを胸に押さえこんでいたんですよね。

      ジャンピン夫妻がいてくれて良かった…つくづく思いました( ´ ` )
      2020/06/03
    • まことさん
      くるたんさん♪

      そうですね。
      カイアは自然の中で一人で育ったけれど、ジャンピン夫妻をはじめとして、助けてくれるこころのある大人が周り...
      くるたんさん♪

      そうですね。
      カイアは自然の中で一人で育ったけれど、ジャンピン夫妻をはじめとして、助けてくれるこころのある大人が周りにいて、幸せでしたね。
      テイトやテイトのお父さんも忘れられません。
      2020/06/03
  • 心に残したい。

    最高。

    湿地で起きた不審死事件。
    疑惑の目を向けられたのは幼い時に家族に置き去りにされたカイア。

    まるで湿地に埋もれた感情、埋めざるを得なかった彼女の感情のかけらを一つずつ丁寧に掘り返していくような時間。
    涙し心震え、水彩画のように彼女の心も色づくことを願う そんな様々な感情がこみ上げる時間だった。

    自然、人にどれだけ彼女の孤独は支えられ包み込まれたのだろう。

    愛をひたすら求めた彼女の姿を永遠に心に刻み残したい。
    残さざるを得ない。

    ミステリかつ一人の少女の成長譚は最後の最後まで心震えずにはいられない。

    • まことさん
      くるたんさん♪こんにちは。

      この作品は、他の方のレビューもあって、知っていましたが、くるたんさんのとても素敵なレビューを拝見してとって...
      くるたんさん♪こんにちは。

      この作品は、他の方のレビューもあって、知っていましたが、くるたんさんのとても素敵なレビューを拝見してとっても読みたくなった本です。
      ご紹介ありがとうございました!
      ミステリーだけど全然怖くなかったし、ストーリーも凄くよくできていて、最後の最後まで飽きさせない、至福の読書体験でした。
      最後に大きなどんでん返しがあったけれど、この結末でよかったと本当に思いました(*^^*)
      この作品は星6をつけたいかんじでした!
      本当にありがとうございました!!
      2020/06/03
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      ありがとうございます♪

      ミステリーでもあるんだけれど、貧困や暴力、差別などあの時代の社会問題を盛り込んだ作品で...
      まことさん♪こんにちは♪

      ありがとうございます♪

      ミステリーでもあるんだけれど、貧困や暴力、差別などあの時代の社会問題を盛り込んだ作品でしたよね。

      そして何より湿地の自然描写が美しかったのが良かったです。
      最後の最後は…驚きもあり…。
      詩がまた心に響きました( ´ ` )
      2020/06/03
  • 二つの小説がひとつに縒りあわされている格好になっている。一つは一九六九年に沼地で起きた一人の男の死の謎を追うミステリ仕立ての小説。もう一つは、その十七年前の一九五二年に始まる稀有な生き方を強いられた一人の女性の人生を追った物語である。

    アメリカ東海岸、ノース・カロライナ州の海岸沿いには湿地帯が広がっている。水路が入り組むその辺りは開発が進んでおらず、もともとは逃亡奴隷や人生をしくじって流れ着いた貧乏白人たちが、粗末な小屋を建てて生活する土地となっていた。彼らはホワイト・トラッシュと呼ばれ、唯一の市街地であるバークリー・コーヴの住民から差別を受けていた。ただ、湿地は多様な生物が棲む豊かな土地でもあり、魚介類が豊富で、その気になれば自活できる環境にあった。

    主人公のカイアは両親と兄姉とともに潟湖とオークの森に隔てられた海沿いの土地に建つ小さな小屋に住んでいた。貧しい暮らしではあったが、優しい母や兄のジョディに守られて六歳までは健やかに育った。一九五二年八月のある朝、母が家を出て行った。父親は酒を飲んでは暴力をふるう男で、残された兄や姉は次々と家を出て行き、二度と帰ってこなかった。いちばん年の近い兄のジョディも、出て行ってしまうとカイアは一人になった。

    父に定職はなく、戦争で足を負傷したため障害年金で生活していた。もともとは広大な綿畑を持つ富裕な一家に生まれたが、大恐慌が起き、ゾウムシに綿がやられ、借金を負い、家を失った。学校をやめて働き出したが、何をやっても長続きしない。妻の実家は製靴工場を経営しており、そこで働き夜学に通うも、酒に溺れて退校処分となる。心機一転まき直しのため、湿地に建つ小屋へ家族で引っ越し、出直すはずだったが結局は酒浸りというのがこれまでの経緯。救いようのない男だ。

    ぷいと家を出ると何日も帰ってこない父は頼りにならず、カイアは記憶に頼り、トウモロコシ粥を作り、菜園のカブの葉をゆでて飢えをしのぐ。少しずつ家事もできるようになると、父もカイアを見直し、素面の父とボートに乗って魚を釣る平穏な日々も持てるようになった。そんなある日、母からの便りを読んだ父は手紙を焼き捨て、怒って家を出て行ってしまう。一人ぼっちになったカイアの孤独な生活が始まる。

    帯に「2019年アメリカで一番売れた本」とある。ベスト・セラーというのは、ふだん本を読まない人がこぞって読むからベスト・セラーになるのだ、という。だから、設定はいささか極端なものになりがちだ。年端もいかない少女が、人里離れた湿地の小屋に一人きりで生きていくのだ。学齢が来ても、親のいない少女は学校に行かない。家に迎えに来た女性に連れて行かれた学校で「湿地の少女」とからかわれ、二度と行かなくなる。少女の友だちは小屋近くにある海辺に集まるカモメだけだ。

    父親の置いていった金が途絶えると、貝を掘って袋に詰め、ボートで顔見知りの黒人の店に行き、物々交換でガソリンや食料品を手に入れる。ジャンピンという黒人は酷い差別を受けていたが、カイアに優しく、妻のメイベルは服やその他の品々をカイアのために都合してくれたりする。もう一人、テイトという少年との出会いがカイアの人生の転機となる。テイトはジョディの友だちでカイアを知っていた。鳥の羽の交換を通じ、二人は仲良くなる。カイアはテイトに読み書きを教わることになる。

    乾いた大地が水を吸い込むように、文字を知ったことでカイアの知識欲に火がつく。もともと、貝殻や鳥の羽を集めるのが好きだったカイアは、それらを図鑑で調べ、名前や採集場所その他を記載するようになる。テイトは学校の教科書の他にも詩集やナチュラリストの書いた本をカイアに与え、カイアは自分の見知っていた物についてぐんぐん知識を吸収していく。それらはやがて、テイトの手を通じ、出版社に送られて本にされることになる。

    二人は惹かれあっていたが、カイアに死んだ妹の面影を見ていたテイトは最後の一線を越えることなく、大学に入るため湿地を去った。再び一人になったカイアは、もう立派な女になっていた。そんなカイアに目を留めたのがバークリー・コーヴの商店主の息子で、フットボールの花形選手でもあったチェイスだ。二人は急速に関係を深めるが、結婚を約束しながら、チェイスは町一番の美女と結婚してしまう。

    沼地に建つ火の見櫓から転落して死んでいたのはチェイスだった。不思議なことに足跡も指紋もないことから、保安官は殺人を疑う。チェイスが死ぬ少し前にカイアと争っているところが目撃されており、保安官はカイアを逮捕する。しかし、カイアはその夜、出版社の人間と会うため、別の町にいてアリバイがあった。後半は、カイアの弁護士と検察側の法廷劇となる。敏腕弁護士によって次々と証言の不備が暴かれていくのは痛快だが、カイアは差別されていて陪審員の出す評決は予断を許さない。

    謎の提出で幕が開いた物語は、謎解きで幕を閉じる。そういう意味では通常のミステリのようだが、そうとも言い切れない。ホタルやザリガニをはじめとする湿地の多様な自然、種の保存の為になされる生物の行為、生命を維持するための動物の本能の持つ残酷さ。湿地の中でひとり生きる女の孤独。閉ざされた集団の持つ差別性。孤独な人間の中に育つ、他者との間に一線を画す心情。様々なものが多種多様な色糸で織りなされ、描き出された一枚の大きなタペストリーを思わせる一篇である。

  • 舞台はノースカロライナ州の湿地

    かつては追放者、反逆者、逃亡者などのいわゆる流れ者達しか辿り着かないような場所
    勝手に住みついても誰もその土地を欲しがらないような不毛な地
    しかしながら実際は陸地にも水中にも多様な生き物のいる豊かで肥沃な土地なのだ

    この場所主人公カイアの家族は住んでいる
    アルコール依存症かつDVの父親
    かつては育ちの良かった母親
    二人の姉と二人の兄
    そして主人公カイアは五人兄弟の一番末っ子、6歳だ

    まず母親が青い旅行鞄を持って去って行く
    そして上の兄と姉達
    一番年が近く仲の良かった兄のジョディまでも…
    とうとう父親と二人残される
    当然父親は留守がちでカイアを放置
    それでも何とか週に一度タダではやらん、家事と引き換えだ!となけなしの僅かなお金を渡される

    字も読めない
    まともな服もない
    食べるものない
    もちろんお金も…
    たった一人での初めての買い物
    相手に何を言えばいいのか
    どれだけお金を渡せばいいのかもわからない
    空腹だけが彼女を前進させた

    結局父親もカイアが10歳の頃帰らなくなる
    収入は全くのゼロに
    そして全くの独りぼっちに

    足に釘が刺さるような大怪我、餓死しそうな空腹、小屋を叩いて騒喚く少年達の悪質な悪戯に息を殺して涙をこらえることも…
    そうどんな時もたった一人で過ごすのだ
    話しかける唯一の相手はカモメ
    学校に行ったのはたった1日

    それでもたくさんの人に助けてもらう
    まだお金の勘定ができないカイアにお釣りを多めにくれるスーパーの店員
    学校に行く義務を見逃してくれる補導員
    カイア相手になんとか商売を成立させようとする黒人夫婦
    読んでいてとても救われ、心安らぐ数少ない場面だ

    彼女は自分で何とか生きる術を見つけ、知識をつけ生きていく
    そんな折、読み書きを教えてくれる青年テイトと出会う
    カイアの世界が広がる
    聖書に書いてあった家族の名前と生年月日を初めて知るのだ
    それまで自分の年や誕生日も曖昧だったのだ
    また学ぶことにより湿地の生き物達の生物学など結びつき、人生が少しずつ好転し始める

    が、それも束の間…
    酷い裏切りの連続に打ちのめされる
    逆境に追い討ちをかけるような人生
    なぜこんな境遇なのか、自分が一体何をしたというのだ!
    心の叫びにやりきれなくなる
    それでもカイアの周りの自然の豊かさ、そこにいる生き物達がなんとか彼女の心を支える

    彼女に、彼女の人生にひたすら夢中にさせられた
    ひとりの少女が自分の手で生き、自分の足で大地を踏み、人生を生き抜く成長の物語だ
    …いやちょっと待った!
    うっかり忘れそうになるが、この書はミステリーなのだ
    そして心震える恋愛要素もある
    家族の物語でもある
    他にも読みどころは多岐にわたる
    この時代のアメリカの差別社会が浮き彫りになっている
    有色人種居住区があり、学校は白人と黒人は別だ
    レストランでも「黒人入店お断り」である
    白人の子供が黒人の大人を平気で差別する
    またカイアは沼地のトラッシュと呼ばれる
    こちらは逆に生きていくために手助けが必要な子供に大人があからさまな差別をする
    アメリカ社会だけではないだろう
    人類の差別と偏見、周りに流され同調してしまう心理
    この時の心理はあなたや私なのだ
    そう突きつけられた

    この著を読みながら、人間の深層心理を考えたり、自分はどうなのか…自問自答する部分が多く、その辺りがベストセラーの要因であるような気もする
    設定はある意味極端ではあるものの、誰もが自分の心に問いかけずにいられない
    そしてカイアに心寄せずにいられない

    描写もわかりやすく、あまり湿地に詳しくないながらボンヤリ情景が目に浮かぶ
    湿地の自然の豊かさだけと深さ
    少女の孤独さ
    このコントラストが非常に良くも悪くも映える

    カイアに心を寄せながら、そっと見守るように夢中で読んだ

    ミステリー部分に言及したいことがあるのだが、少しでも触れると完全なるネタバレになるので残念ながら触れられない
    非常に思うところのある結末だ
    どう感じるか
    多くの意見があるだろう
    個人的に一番語りたい部分が触れられないのが残念である…(泣)

  • 読み終わるのがさみしい本だった。

    帯に書いてある、言葉たち。
    「泣いたのは、森で一人ぼっちの彼女が、自分と重なったからだ。
    ―同じ女性というだけで。」
    「この少女を、生きてください。」

    本当だ。読後にすぐにそう思った。いや、読書中もきっと、ずっと。
    カイアは私だった。
    カイアとの共通点なんて女性であるというただそれだけのことなのに。
    カイアは私だった。

    何がそうさせたのかがはっきりわかるほど、自分は賢くも読書家でもない。
    ただただ、私もトウモロコシ粥をかき混ぜ、カモメにエサをやり、落ちている羽根を広いあげて、足を水に浸して歩く。そんな日々がもう何年も続いたようだった。

    「出会えてしまうんだもんなあ、こんな本に。」
    本当にそうだ。
    改めて、読書っていいな。
    たった2000円で、今いる場所も時代も年齢も天気もなにもかも、関係なく心は1960年代のアメリカの湿地にある。ほかのどんな娯楽ともちょっと違う。
    私の目の前には枝を垂らしたオークの木があって、ちょっと傾いた小屋があって、古ぼけたボートがあって、ジャンピンは笑顔で出迎えてくれる。そしてこれは、私の記憶だ。
    読んだ人それぞれの風景があって、音があって色がある。それは紛れもないその人の記憶だ。
    ほかのどんな娯楽ともちょっと違うところ。漫画とも映画とも違う、自分の作り上げた世界を自分で見まわす。お話の世界が自分の世界になる。

    出会えてしまう、こんな本に、ふとした瞬間、唐突に。
    あ~、読書って、いいなあ。

  • 両親や兄姉達から見放され、たった一人湿地での生活を余儀なくされた僅か6歳の少女・カイア。
    飢えや寒さと闘い、孤独に苛まれながらも、世間から隠れて一人湿地で生きていく。
    そんな彼女もやがて数少ない理解者の協力により独自の世界観を創りあげていく。
    湿地の自然や鳥・昆虫等といった生き物との共存、類い稀なカイアの深い知識と豊かな感性が素晴らしい。
    いつまでも湿地の自然と共に慎ましく生きる暮らしが続くと思っていた。
    けれど成人したカイアは孤独に耐えきれなくなり、ついハンサムな一本の"藁"にすがったことにより人生が狂っていく。
    寄り添う相手を求めることはそんなに罪深いことなのか。
    本来の自分を偽った罰なのか。
    自然に育てられ守られたカイアはやがて、一人"ザリガニの鳴くところ"へと還っていく。
    それはカイアの望んだ生き方だったのだと思う。

    殺人事件の犯人を追うミステリをベースに、人種差別・偏見等といった社会的問題、湿地に生息する生き物を扱った生物学、と様々な要素が詰まっていて読み応えがありとても面白かった。
    500頁というボリュームも全く苦にならない。
    特に生物学の話が興味深かった。

  • 評判はきいてたけど、すごかった。
    ミステリーとして、ある孤独な少女の成長譚として、差別や環境についての社会派小説として、アメリカ南部の自然や風土を描いた文学作品として、全方面におすすめできる。

    海外の小説であること、500ページ以上とボリュームもあること。動物学者が書いていて、難しそうなイメージがあること。
    最初、正直読むのはためらわれた。
    だけど、本屋大賞の翻訳部門で受賞してて、評判も良いので思い切って読んでみた。

    途中から、それらの懸念事項をすべて忘れて読んでいた。全くの杞憂だった。
    アメリカの広大な自然の描写。
    過酷な環境を生き抜く少女の強さと孤独。
    文字が読めるようになることの喜び。
    めばえる恋愛感情。ゆらめく気持ち。

    表現や描写が丁寧で、美しかった。

    2つの時間軸が交互に描かれる。
    1つは、少女カイアの幼少期から大人までの成長の記録。
    もう1つは、カイアが大人になるころに起こった、ある青年の死。その真実を追う保安官の話。
    2つの時間軸は、カイアの成長に伴って徐々に狭まり、やがて一致し、裁判へと入る。
    カイアは、その青年の死に関係しているのかどうなのか……真実が最終盤で明らかになる。
    カイアの孤独や恋愛感情に共感し、それと同時に青年の不穏な死の真相も気になり、500ページ以上もあったけど展開が気になって引き込まれた。

    ザリガニの鳴くところとは、「茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所」(155ページ)のこと。
    カイアは自然を大いに愛し、自然に大いに愛されていた。

    最初は読むのためらったけど、読んでよかった。最後まで読めてよかった。

  • 主人公カイアは、ある朝、母親が出て行くところを目撃する。
    飲んだくれでDVの父親に虐待された兄や姉も次々と出て行く。
    その父親もカイアが9歳くらいの頃に行方知れずに。
    孤独のなかでサバイブしていくカイア。
    ジャンピンとアマンダ、そしてテイトという友を得て生きるためのスキルを身に着けて行く。
    大学進学するテイトとの別れ、募る孤独感。家族も友達も誰もいない。「湿地の少女」には誰もかまわない。
    食糧とボートのガソリンを買うために寄る店のジャンピン&アマンダの夫妻とも必要最小限の会話しかしないほど孤独の中で自分の殻に入り込んでしまったカイア。
    この辺はカイアの憐れな境遇に読むのを何度も中断した。
    またそこに付け込むクソな輩もいる。その男が死体で見つかった(この辺は物語の冒頭から並行して綴られている)
    逮捕されたカイアの裁判。
    無事に無罪放免となりテイトと末永く暮らしましたとさ。
    64歳没。そしてテイトが発見したものは。。。
    最後の最後に、ああなるほどね、という結末。
    スッキリもしなければ、かといって裏切られたとかも思わない。
    それにしても父親はドコで野垂れ死んだのかね?

    以下Amazonより紹介-------------------
    この少女を、生きてください。
    全米500万部突破、2019年アメリカでいちばん売れた本

    泣いたのは、森で一人ぼっちの彼女が、自分と重なったからだ。──同じ女性というだけで。島本理生氏(小説家)
    ずっと震えながら、耐えながら、祈るように呼んでいた。小橋めぐみ氏(俳優)
    素晴らしい小説だ。北上次郎氏(書評家、早川書房公式note流行出し版「勝手に文庫解説2」より)


    ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。
    6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。
    以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。
    しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……
    みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。


    ★★★書評・ご紹介★★★
    「目利きが選ぶ3冊」日経新聞夕刊 2020年3月19日付★5(北上次郎氏)
    「本よみうり堂」讀賣新聞書評 2020年4月5日付(宮部みゆき氏)
    「今週の本棚」毎日新聞書評 2020年4月18日付(仲俣暁生氏)
    産経新聞書評 2020年4月28日付(新田啓子氏)

    「ダ・ヴィンチ」2020年4月号(3月6日発売)「4人のブックウォッチャー絶対読んで得する8冊」ご紹介(山崎まどか氏)
    「ダ・ヴィンチ」2020年4月号(3月6日発売)「注目の新刊」コーナー
    「週刊文春」2020年3月12日号「ミステリーレビュー」★4.5(池上冬樹氏)
    「渋谷のラジオ」渋谷の柳瀬博一研究室 2020年3月18日(柳瀬博一氏)
    「ミステリマガジン」2020年5月号(3月25日発売)「勝手に文庫解説2」(北上次郎氏)
    「本の雑誌」2020年4月号(3月10日発売)「ミステリー春夏冬中」(宇田川拓也氏)
    「Post Book Review」週刊ポスト 2020年4月19日発売(鴻巣友季子氏)
    「週刊新潮」2020年4月23日発売号 書評欄(佐久間文子氏)

    「北上ラジオ」第13回Presented by 本の雑誌社 2020年3月11日(北上次郎氏)
    「基本読書」2020年3月9日(冬木糸一氏)
    読書メーター「週間おすすめランキング情報 Vol.375」小説部門第1位
    「Realsound」bookカテゴリ「山崎まどかの『ザリガニの鳴くところ』評:多くの問題を内包する大ベストセラーの魅力」2020年3月16日(山崎まどか氏)
    「文学Youtuberベル 2ndチャンネル」 2020年4月20日「本・雑誌が7冊も! 3月分 #のベルズ プレゼントを紹介します! 」Youtube(文学Youtuber ベル氏)
    「BIRDER」2020年5月号 書評欄


    ★★★早川書房公式note★★★
    ザリガニはどこで鳴くか~北上次郎の早出し版「勝手に文庫解説2」(書評家・北上次郎氏)2020年3月4日
    きっと、あなたのための本──『ザリガニの鳴くところ』レビュー(梅田 蔦屋書店・河出真美)2020年3月5日
    ザリガニの鳴くところに思いを馳せて──『ザリガニの鳴くところ』訳者あとがき(翻訳家・友廣純氏)

  • 湿地のボロ小屋で暮らす少女・カイア。
    兄弟や母親は家を出て行き、暴力を振るう父親にも捨てられてしまう。

    頼れる人はなく、終わりのない孤独に耐え続ける日々。
    そんな彼女に寄り添ってくれたのは、湿地に生息する野鳥や植物、そして広大な海。
    やがて彼女を理解してくれる人がポツリポツリと現れますが、彼女を最後まで守ってくれていたのは湿地の自然であったように思います。
    涙する彼女を包み込み、時には彼女の暗い部分を覆い隠してくれた。

    町の人々に汚い子供だと偏見の目で見られ、ずっとずっとひとりぼっちだった彼女が、湿地の自然のもとで最後まで安らかに人生を送れたことが何より良かったなぁと思いました。


    翻訳本には苦手意識があり滅多に読みませんが、本作の細やかな自然の描写には圧倒されました。なんだか私も、ちょっと湿地の大自然に迷い込めたような気分。すごい大作だと思います。

  • ミステリーと紹介されているが、メインはミステリーではない。そして、心優しいテイトとのラブストーリーでもない。
    生きとし生けるものが「寿命を全うする」ということは本来どういうことを意味するのか、動物学者らしい著者の目線で描かれた壮大ないのちの物語ではないかと思う。
    アル中、DV、差別や偏見、自然破壊。社会問題がふんだんに盛り込まれている。

    酒乱でDVをする父親のせいで、わずか6歳にして母親に捨てられ、父にも捨てられ、ついにたった一人で生きていくことを強いられた孤独な少女カイヤ。
    貧しく孤独な生活の中で、カイヤは広大な湿地に1人、美しくも過酷な自然と、そこに居る動植物と共存しながら、逞しく成長していく。その姿を見守る読者の情緒は激しく揺さぶられる。
    雄大でまぶしい自然の緻密な描写は、作者の自然への愛情が感じられる。
    それとは対照的に、明かりを灯すことすらできず、古びたボロ屋で一人ぼっちで小さくなって過ごすカイヤの夜の暗闇の情景が、彼女の孤独をより際立たせている。

    あまりに人に裏切られ蔑まれ、孤独の中で生きるカイヤがたった一人で自分の命を守り通すことは、偽りの愛のメッセージを送るホタルや交尾相手を食べるカマキリでも、そして感情や知恵を持つ人間に於ても同じこと。
    生命の行為に善悪はなく、あるのはただ拍動する命だけなのだ。
    彼女は純粋に自らの命を守るため、生き延びるために「行動」を起こした。だからこそ、殺人犯として裁かれている最中も無実を訴えることなく、ただひたすらに自由を求め、拘束中に唯一「猫」を心の拠り所としたのだろう。
    しかし人としてそれは誰にも言えないことであり、理解されないこともカイヤは十分に解っており、愛するテイトにすら一生隠し通し、多くの人の前に姿を現す事を拒み続けたのだと思う。
    これこそ作者が伝えたいテーマである生物の野性的本能ではないか。
    カイヤの野性的な強さと人としての生き方の覚悟に脱帽する。
    とはいえ、テイトという唯一無二の存在があって本当に心救われた。本当の愛を手に入れられて、良かった。。

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【2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位】ザリガニの鳴くところを本棚に登録しているひと

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