- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152099389
作品紹介・あらすじ
現代。ソレーヌは、困窮した女性が避難できる施設のボランティア。百年前。ブランシュは、その施設創設のため奔走する。背景の異なる人との連帯に苦労しつつ、手をとりあうソレーヌ。理解と資金を得ていくブランシュ。だが、2人の前に最後の壁が立ちはだかる
感想・レビュー・書評
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前作「三つ編み」では、同じ時を生きるイタリア・インド・カナダの女性たちの人生を、まさに三つ編みのように交差させて描いていたが、今作は、フランスの同じ場所を舞台に別の時代を生きる女性たちを描いている。
それぞれ横軸と縦軸で紡ぐ物語。
その切り取り方がすごい。
100年ほど前、救世軍の創成期の頃に幾多の困難を乗り越え、女性のための居場所を造った女性ブランシュと、現代に生きるバーンアウトしてしまった敏腕弁護士ソレーヌ。自分を含め女性が抱える困難に寄り添い、立ち向かう二人の女性の生き方に、諦めずに進めと言われているような気がする。
救世軍は、年末になるとターミナル駅などで募金を募る「社会鍋」を、子どもの頃よく見た。
その名前が印象的だったが、日本ではあまり知られていないのではないだろうか。この物語を通して、思いがけず救世軍のことも知ることができきた。
2020.12.18詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
パリの女性会館。現在と過去、二人の女性の苦闘。現在のソレーヌ、女性会館で代書人のボランティアをすることになる。100年前、救世軍のブランシュは女性・子供を救う施設を作る。ソレーヌは自分とは違う境遇の女性たちに最初は戸惑うが、代書を通じて心を通じ合わせる。ブランシュは病気であっても女性のために奮闘する。
ブランシュの方は女性会館ができるまで、ソレーヌの方は、うつ状態を脱し、自信を取り戻し、立ち上がるまで。タイプは違うが二人の強さが描かれる。二人の物語でもあるが、現在のところで描かれる女性会館に登場する女性たちも、私に、読者にエールを送る。様々な境遇で戦う女性たち。どの女性もなんと力強かったことか。信じること、進むこと、この本から得られる者は多い気かった。できることは少ないかもしれない、でも確実にすることが大事なのだな。 -
困窮女性のための住宅施設、パリ11区にある女性会館を舞台にした100年を行き来する物語。創設した救世軍のブランシュ&アルバン夫妻の情熱を描いた伝記小説部分にも、もがきながら生きる女性たちが紡ぐ現代パートにも深く感動した。
フランス人の作者でさえ存在を知らなかったという女性会館Palais de la Femme、この本を読むと、創設できたことも、それが今もあることも奇跡のように思える。人を助けること、寄り添うことの難しさと、理解しあい連帯できる希望が描かれているし、冒頭の詩をはじめ、祈りの言葉があふれている。
ただ、原文がそうなんだろうけど、短い文章をリズムよく重ねていく文体で、日本語訳だと体言止めが多く、一文の長いのが好きなわたしとしては読み進めるのに引っかかった。 -
「三つ編み」や今作、「82年生まれ、キム・ジヨン」などの所謂フェミニズム文学に弱い。共感と、連帯感。
私自身女性として生きてきて、女性ならではの生きにくさを感じることがあるけれど、特にレティシア・コロンバニの作品に描かれる女性たちの人生というのはとても過酷で、同じ世界・同じ時代に生きているとは信じられないほど。
偶々生まれた環境が違うだけ・偶々ボタンを掛け違えただけでここまで違ってしまう人生に、罪悪感のようなものを感じてしまう。なにか自分に出来ることがあればしたいけれど、無力な自分に何ができるのか、そこまでの責任が負えるのかと思うと、躊躇してしまうー 今作の主人公の一人、ソレーヌの気持ちがとてもよくわかる。
救世軍というとミュージカル「ガイズ&ドールズ」しか思い浮かばなかった。こんなに尊い活動をしている団体なのだと初めて知った。ただただ、圧倒されるような気持ち。
今作の中で紹介されていたフランスの思想家ピエール・ラビ氏のハチドリ運動の話がとても胸に刺さった。
大きな山火事に、小さな嘴に運べるだけの水をかけ続けたハチドリのように、自分は自分にできることをするのだと、私は動けるだろうか。 -
知らなかったことをたくさん知った。アフリカ大陸に根深く残る女性器切除、フランスの貧困、難民のこと…。
何もしないより、ちょっとのことでもした方が何倍も良い。小さいくちばしで汲んだ水を山火事に掛けるハチドリみたいに。
自分のことだけで手一杯、他のことは気になっても何もできない…それは本当か?何かほんの少しでもできることを探して、やりたくなった。 -
面白かった。
今回は二つの時代を行き来する話。(前作の「三つ編み」では場所を行き来していた)。
エリート女性の主人公が、依頼者の人生を聞いてぼろぼろと泣いてしまうところが、生きてきた境遇は違えどエンパシー(共感)で繋がれるんだというシスターフッドの希望を表しているようで、とてもよかった。
またアフリカの国で「女は男の名前で呼ばれる。(男の名前)の妻、娘、妹……」という説明書きのところを読んで、強制的夫婦同姓(そして96%の女性の姓が夫の姓に変更になっている)の意味についてすごくピンと来た。前々から「夫婦別姓を許すと誰が誰の妻か、既婚か未婚かわからないじゃないか」と言っている国会議員がいるという話を知っていて、「そんな、女を男の所有物として見るから生まれる発想する人いるんだ」と変なものを見る目で見ていたけれど、多分「倫理的に正しくない」けれど「普遍」ではある認識で、それが事実なんだとそのフレーズで初めて思い至った。
レティシアさんの作品はめちゃくちゃ心揺さぶられるしその割にするする読めて本当に心地良い読了感をくれるので、好き。
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世界の女性の生きづらさを、改めて考えさせられる本だった。いつの時代も強く闘う女性達の姿に、勇気とパワーで満たされた。受け継がれる正義感。
読み終えた後、暖かい感情が全身を駆けめぐり、しばらく涙が止まらなかった。
強い勇気をもらえる一冊。ずっと持っていたい本。 -
知らない世界を教えてもらった。