三体II 黒暗森林 下

  • 早川書房
4.47
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099495

感想・レビュー・書評

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  • 今ハマっている中国のSF小説"三体"。
    長編小説にハマったのは村上春樹さんの"1Q84"以来。
    宇宙戦争というスケールの大きさと予想できないストーリーがすばらしい!

    本作は、人類を救うため冬眠した主人公が、200年後に起きて、三体文明と交渉するまでのストーリー。
    手に汗握る交渉の場面は、本作で完結していいと思えるほどの完成度だった。

    次は三部作の完結編。
    全く予想できないけど、早く読みたい。

  • 「人類は勝利できるか」
    面壁者たる著者は、その裏に本心を隠す
    「人民は勝利できるか」

    勿論、この書評は物語(フィクション)です。

    多くの評者が、本格SFとエンタメの融合という視点で評価しているので、私は多くを語らない。面壁者レイ・ディアスの最期の場面。ぼろぼろの面壁者・羅輯と三体星人との最後の交渉場面。もう、歌舞伎ばりの映える場面である。

    私は別の視点から物語りたい。
    解説者・陸秋槎氏は、作品構成が、密告が奨励された文革と関連していると指摘する。私はそんな限定的な「関連」ではないと思う。これは「中国人民」(特に知識人)と「中国共産党」との戦後60年にわたる歴史物語をSF小説にしたのだと、私は思う。本心を明かさない知識人としての面壁者の登場、それを暴く破壊者の登場、大峡谷時代、第二次ルネサンス、絶望の時代、そして新たな時代。それらの時代を跨いで猜疑連鎖と技術爆発が存在する。それはこの小説のあらすじであるのと同時に、中国共産党史でもあると、私は牽強付会的に思う。ネタバレの関係で、あらすじも必要最低限のことしか書けないし、歴史的事実も詳しく書けない。よって、よくわからんことを書いているかもしれない。でも、劉慈欣氏はかなり上手くやった。中国共産党は、第一部の文革批判ぐらいならば、党としても批判しているのだから目こぼししていたかもしれないが、小説の構造自体が党批判になるとは気がつかなかった。もしかして気がついた時には、既に2千数百万部の大ベストセラーになっていて、気が付いたと公表すること自体が党批判を助長することになるので「出来なくなった」。ベストセラーになったのも、劉慈欣もおそらく一生本心を明かさないだろうが、中国人民が気がついて一生懸命に買ったからかもしれない。これも面壁者・劉慈欣の戦略だったのだ。

    第一部は中国の過去の話、第二部「黒暗森林」は文革終了以後の中国、そうなると第三部は「予想される未来」となるのだろうか。

    因みに、(上)書評で、智子が全てのコミュニケーションを監視するならば、表情だけで言いたいことを読み取れる人類の特技〈以心伝心〉が現状を打開するだろう、と私は予測したのだけど、三体世界への勝利に何も貢献しなかった事を報告します。いや、(下)では重要場面で、そういう人類の得意技は出てくるんだけど、そういう浅はかな知恵では、三体世界の強大な力の前では無力なのだとわかった。私は面壁者にはなれそうにもない。

    2021年4月25日読了

  • だんだん読みやすくなってきました。
    漠然と面白いな〜とは思うのですが、解像度が低くて、細かい感想が書けません(笑)
    現時点でもうすでに最初から読み直さないといけないなと感じていますが、読み直したいと思えるくらいに魅力はある作品です!
    頑張って読み進めよう。

  • 200年後に人工冬眠から羅輯、史強、ハインズ、章北海たちが目覚める。大峡谷時代を経て人類はテクノロジーを発達させ、宇宙大艦隊を編成し、三体世界の脅威に対して楽観的な空気が支配していた。宇宙大艦隊が三体艦隊の探査船を捕獲に向かうと、探査船は涙型をした奇妙なものだった。ここから驚くべき展開が始まるのだ。人類は絶望の淵まで追いやられるのだが、章北海は思い切った手に出る。一方、羅輯の放った呪術が思わぬ結果となり、人類の命運を左右することになる。
    絶望の淵に追いやられたとき、人々はパニックになってやけくそな行動を取ったりするのだが、ふと日本人だったらどうなんだろうと考えてしまった。すべてがそうだと言わないが、諦観的な静かな行動をとるような気がする。
    「黒暗森林理論」が今回大きな位置を占めるが、うーんなんか納得できない。三体世界も意外と見通しが甘かったように思う。しかし、物語自体は実に面白い。涙型探査船の戦いが意表をついていて臨場感があった。さて、いったん物語は節目を通り越したのだが、Ⅲでどんな展開を見せるのか楽しみだ。予想もつかない未来が待っていそうだ。

    • えみりんさん
      はじめまして!
      物語はとても面白いのに、話の運び方とか登場人物の作りが納得出来なくて、ツッコミまくりなんです。三体世界の諦め方もあっさりし過...
      はじめまして!
      物語はとても面白いのに、話の運び方とか登場人物の作りが納得出来なくて、ツッコミまくりなんです。三体世界の諦め方もあっさりし過ぎでした。
      似たような感想を持ちましたのでコメントさせていただきました。
      2022/02/20
    • goya626さん
      えみりんさん
      「ツッコミまくりなんです」おお、えみりさん、凄い!確かに、なんか作者の予定通りって感じですかね。実際は、もっとしぶとく粘るは...
      えみりんさん
      「ツッコミまくりなんです」おお、えみりさん、凄い!確かに、なんか作者の予定通りって感じですかね。実際は、もっとしぶとく粘るはずじゃないかと思います。でも、私は、物語の面白さに流されて、ぐいぐい読んでしまいました。
      2022/02/20
  • 感想は最終巻にて記載。

  • 『三体Ⅱ黒暗森林』は中国ではシリーズ中、最も評価が高い一冊であるそうです。
    主な理由はハードSFとして、頭脳戦エンタテイメントとしての完成度が極めて高いということですが、SFを読んだのが初めてに近い私は全く反対でSF用語の多さに辟易しました。

    安心して読めたのは、主人公のルオ・ジーが出てくる人物の交流場面のみで、宇宙戦隊の戦闘の場面などは正直読むのがかなりつらかったです。

    なぜ、三体世界と地球生命は愛のあるもの同士の世界なのに戦うのかと思いました。

    地球の歴史を考えてみても、地球の歴史は戦争の歴史であるのだから、どこの世界でも、宇宙と交信する時代になっても、愛があっても、戦争は行われるのかと思いました。

    『三体Ⅲ死神永生』でも「ある宇宙の真相」が解明されると巻末の解説にあり、とても読んでみたい気もしますが、作者によって創作された、宇宙理論より、現実の歴史を読んで勉強した方がよくないかという気もしています。
    SFを読むというのはそういう理屈じゃないのかもしれないのですが。
    そこが、わからない私はSFファン失格だと思いますが。

    • 地球っこさん
      まことさん、こんばんは。
      いやはやお疲れさまでした!
      最後まで読まれたんですね。

      わたしはまだ読み始めてませんが、とても難しそうで...
      まことさん、こんばんは。
      いやはやお疲れさまでした!
      最後まで読まれたんですね。

      わたしはまだ読み始めてませんが、とても難しそうですね。
      戦々恐々としちゃうなぁ(^o^;
      でも、逆に「よし読んでやるぞ~」との気持ちも湧いてきたような……
      読み終えたら、わたしも頑張ってレビュー書きますね。

      もしかしたらSFも漫画とかアニメとかなら、情景が分かりやすいかもしれませんね。
      ディストピアものとか終末ものとか、タイムトラベルとか……SFにもいろんな分野があるので、これから何か気になるものも出てくるかも……

      わたしにとってSFは「よくわからなくても面白い」と思えたら、それで満足としてます 笑
      まことさんが登録されてる『バーナード嬢曰く。』に登場する、SF好きの女の子がそんな感じのこと言ってました(*^^*)

      2020/06/25
    • まことさん
      地球っこさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      私は、戦闘シーンや、SF用語が出てくる場面が、難しく、読むのが辛く感じま...
      地球っこさん♪こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      私は、戦闘シーンや、SF用語が出てくる場面が、難しく、読むのが辛く感じましたが、今のところ、他のレビューされている方を拝見すると、そんなことおっしゃっている方皆無ですね(^^;
      私だけかもしれないです。
      皆さん、面白かったって言って、続きが早く読みたいとおっしゃっていますね。
      読む日数も、私は1週間近くかかってしまったけれど、発売2日でレビューされている方もいらしたし…。

      解説には『黒暗森林』がいちばん面白いと書かれていましたが、私は『三体Ⅰ』の方が面白かった気がします。
      『三体Ⅲ』はさらに長さがあるということで、辛いシーンがまた多かったら…と思うと気が引けます。

      SFにも、いろいろな、分野があるのですね。
      うちにも、積読している『星を継ぐもの』他あります。
      あと『夏への扉』とか『ビブリア堂』に出てきた『たんぽぽ娘』とか気になっています。
      地球っこさんは読まれているかもしれないですね。私は未読なのでその辺から読んでみたいですが、なかなか…。
      『バーナード嬢曰く。』もまだ、積んでいますが、あれは、すぐに読んでみようと思います。ありがとうございます。
      2020/06/26
  • ちょうどAmazonでmoonfallを見たので、オーバーラップして興奮して一気に読んでしまった。
    三体世界からのコンタクトにはちょっと違和感があったが、よくプロットが練られていて非常に面白かった。
    「インデペンデンスデイ」などハリウッド系の映画で前半の不安感の盛り上がりに比べて、異星人が現れたらまるで円谷プロの怪獣映画になって笑ってしまうようなことはなく、水滴という未知の武器も意表をついてよかった。世紀を渡る壮大な小説世界に最終巻の「死神永生」も期待大だ。

  • 三体Ⅱ 暗黒森林の下巻。

    上巻に続き、面壁計画が進行している。しかし破壁者は執拗で、人類は依然として劣勢。羅輯とハインズの2人は冷凍睡眠に入ることとなる。

    200年後の時を経て、人類の技術力は向上。地球には総楽観ムードが広がっていた。それを目覚めた冬眠者の視点で知る、というのはSF的で素晴らしい。

    しかし三体の偵察艦である「水滴」が登場。地球艦隊への虐殺行為をもってして、改めて力の差が露呈する。総楽観ムードは一転し、世界は地獄と化す。

    このあたりからの没入感は凄まじく、ラストまで一気に駆け抜けていく。

    そして満を持して、上巻からの伏線が回収される。背筋が冷えるような感覚とともに、読者は「暗黒森林」の意味を知ることとなる。

    総括として大変夢中になって読めた。溢れるような情緒を、SF的な大風呂敷に載せてみせた。SF小説として恐ろしく傑作。

    それにしてもまだ三部作の2部。3部目がいったいどのように展開するのか、全く想像ができないし、あまりにも楽しみ。

    (ネタバレを含む感想は書評ブログの方を宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%81%93%E3%81%AE%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E7%9C%9F%E7%9B%B8%E3%81%AB%E5%87%BA%E4%BC%9A%E3%81%86_%E4%B8%89%E4%BD%93%E2%85%A1%E6%9A%97%E9%BB%92%E6%A3%AE%E6%9E%97%E4%B8%8B_%E5%8A%89%E6%85%88%E6%AC%A3

  • 【感想】
    Ⅱの上下巻を読了。Ⅰと比べるとお話がだいぶ分かりやすく、かつミステリー要素も加わったことで、全体的に面白さがアップしたと感じた。

    「分かりやすさ」で言えば、大峡谷以降の世界の描写が挙げられる。地下都市、空飛ぶ車、四方を埋め尽くすディスプレイなど、現代人が考える「近未来」にある程度沿っているため、だいぶ想像がしやすい。もちろんその根底には緻密な設定があるのだが、こうした親近感を覚えるような描写が没入感を増していると感じる。
    また、「ミステリー要素」として「黒暗森林」理論がでてきた。Ⅱ上の冒頭の「生存は、文明の第一欲求である。文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である」という伏線がやっと回収された。始めはこの公理が「星への呪文」にどう関係するのかと疑問に感じていたが、Ⅱ下の最終版、この呪文を武器に三体世界を脅すシーンを読んで、「なるほどこう使われるのか」と、驚くとともに納得してしまった。(さすがに三体世界はあっさり諦めすぎだと思ったが)

    思えばこの作品、発想はSFらしく突飛であり、使われる設定も極めて多様で難解なのだが、その根底に位置する原理自体は理解が優しい。「簡単」というよりも「直感的に想像しやすい」と言ったほうがいいかもしれない。「面壁計画」といい「黒暗森林」理論といい、話の核となるパーツの軸には必ず分かりやすいロジックがある。本書はこうした間口の広さと、ミステリーや人間ドラマといった「駆け引きの面白さ」によって人気を博したのだと思う。普段SFを読まない人にもウケた理由が分かる。

    さて、相変わらず三体人は強い。圧倒的科学力が地球のテクノロジーをコテンパンに打ち負かし、かつ人類は仲間割れを起こしてバラバラ……。依然として「ここからどうやって勝つんだよ」とツッコみたくなるほどの実力差がある。いよいよ次から最終章なわけだが、打開策が見えてこないのは相変わらずだ。しかし、羅輯と史強のコンビには何かしら作戦があるはずだ。きっとまだまだ面白いものが見られると信じ、第Ⅲ巻に移ろうと思う。

    ―――――――――――――――――――――――――
    【メモ】
    面壁者ハインズとその妻である山杉は、人類と文明の生存のため敗北主義を克服するべく、精神印章によって人間に「戦争に必ず勝利する」という信念を植え付けようと試みる。
    もう一人の面壁者レイ・ディアスは、水星で恒星型水素爆弾の実験を行う。その真の狙いは、百万発以上の恒星型水素爆弾の推進力によって水星を太陽に落下させることだった。これにより太陽から放出された渦巻き層が金星、地球、火星を次々と飲み込み、やがて太陽系すべてが太陽に墜落することとなる。
    三体文明にとって太陽系は消えてはならない希望の地である。レイ・ディアスは太陽系を人質に取って三体世界に降伏を要求する予定だった。それを破壁者に見破られ、計画を暴露された。
    レイ・ディアスはその後故郷に戻ったものの、国民に殺された。

    三体艦隊の太陽系到達まであと2.10光年となった危機紀元205年、面壁者羅輯が185年間の冬眠から覚醒する。
    危機紀元205年では国家を超越した存在、「宇宙艦隊」が編成されていた。アジア艦隊、ヨーロッパ艦隊、北米艦隊の3種類が存在しており、それぞれが超大国と同じ規模の力を持っている。
    羅輯が目覚めた未来では、人類の科学力が目覚ましいほどの発展を遂げており、三体艦隊を撃退するのは確実とされていた。地球三体協会は消滅しており、面壁者計画も無用とされ、羅輯とハインズは目覚めた後すぐに面壁者の任を解かれる。

    面壁者解任の議案が可決された瞬間、ハインズの妻である山杉恵子が声を上げる。
    「私はハインズの破壁者だ」
    ハインズが行っていた精神印章は、実は全く逆の効果、つまり人類に敗北主義と太陽系外への逃亡計画を刷り込むものだった。精神印章を受けた「刻印族」が未だどこかに潜伏している。敗北主義者への人々の風当たりは強まっていった。

    羅輯が冬眠してから覚醒するまでの間に、人類は「大峡谷時代」を経験していた。
    大峡谷時代は羅輯が冬眠に入ってから約20年後に起こった。地球環境が悪化し、温室効果、異常気象、砂漠化が進行し始め、50年のあいだに世界人口は83億人から35億人に減少した。

    「文明に歳月を与えるより、歳月に文明を与えよ」
    人類は大峡谷時代を経験し、人類文明の存続と目の前の飢餓、どちらをより優先すべきかを天秤にかけた。その結果、人道主義が文明存続に優先するという考え方が主流になった。各国政府は宇宙戦略計画をすべて中止し、市民生活の改善に全力を注いだ。人類の数は大幅に減ったものの、大峡谷時代から20年余りで生活水準はもとに戻った。生活が安定し始めるとテクノロジーの急速な進歩が進み、世界は再び戦時態勢に入ったのだった。

    羅輯と同じく冬眠から目覚めた章北海は、アジア艦隊第三艦隊旗艦「自然選択」の艦長代行になる。
    そして、艦長権限を濫用し、艦隊ごと太陽系外へ逃亡した。
    「この戦争で人類はかならず負ける。わたしは地球のために恒星間宇宙船を1隻、温存したいだけです」
    章北海は刻印族ではない。彼は目覚めてからずっと自身の中にある敗北主義を隠し通し、人類が負けた後の未来に種を残すことを決意したのだ。

    時を同じくして、三体世界から一隻の探査機のようなものが発射される。人類側はそれを「水滴」と呼称し、鹵獲作戦を行うべく丁儀が派遣された。

    鹵獲した水滴の検査を行った結果、水滴は超高硬度の物体かつ何の波長のレーダーも通さない物質であった。丁儀がそれを確認した瞬間、水滴が急加速した。水滴は第三宇宙速度の2倍の速度で「インフィニット・フロンティア」に衝突。その後たった20分で1000隻以上の戦艦を貫通した。利用可能なあらゆる兵器は水滴に通じなかった。

    たった数時間の間に、人類の航空宇宙兵力は「量子」と「青銅時代」を残して殲滅されたのだ。
    全人類の航空宇宙兵力を壊滅させたのは、三体世界の探査機たった一機だった。同じような探査機があと9機、三年後には太陽系に到達する。この10機の探査機を合わせても、その大きさは、三体戦艦一隻の1万分の1にもおよばない。そしてその三体戦艦1000隻が、夜を日に継いで、いまも太陽系に迫りつつある。

    章北海は生き残った5隻の艦をまとめ、「星艦地球」を結成、地球から独立した星艦社会を形成するべく統治システムの構築へと移る。
    しかし、安定は続かなかった。藍色空間と青銅時代が他の宇宙艦を攻撃し乗組員を虐殺すると、残った核融合燃料を回収して宇宙のかなたに消えていった。
    宇宙艦同士のあいだで戦いが起きたあと、ひっそりと気配を消していた逃亡主義が急速に息を吹き返し、暴動が巻き起こった。地球との精神的な絆がとだえると、宇宙で暮らす人間は精神的にまったく変貌してしまう。たとえ逃亡に成功したとしても、生き残るのは人類文明とは別種の暗く邪悪な文明であり、それは三体世界と同じく、人類文明の対極に位置する敵となる。その新たな文明には、わざわざ名前までつけられた―――負(ネガ)文明と。

    水滴が艦隊を壊滅させてから3日後、地球に到達する。水滴はラグランジュ点で止まり、地球と太陽を結ぶ直線上で相対的に静止を続けた。水滴は太陽に向かってたえまなく強力な電磁波を出し続けている。つまり、人類が太陽というスーパーアンテナを通じて宇宙に強力なメッセージを送ることは不可能になったのだ。

    この状況において、面壁計画が復活する。羅輯はただひとりの面壁者に指名される。羅輯がかつて放った呪文により、187J3X1星が破壊されたからだ。彼はたった一人の、人類の未来を担う超文明の代弁者となったのだ。

    羅輯が面壁者になったから残りの水滴が到達するまで3年。しかし、世界が待ち望んでいる救世計画は、いつまで待っても出てこなかった。大衆の目に映る羅輯のイメージは、救世主から凡人へ、さらには大ペテン師へと変わっていった。羅輯にはもう、何の実権もなくなっていた。

    いったい、羅輯が放った「呪文」とは何だったのか?それは2つの公理と2つの重要な概念から導き出した、「黒暗森林」理論による呪いだった。
    宇宙じゅうの文明と文明は、文化的な違いと非常に遠い距離に隔てられているために、おたがいに理解することも信頼することもほぼ不可能である。また、どんな文明も、突然技術が飛躍的に発展する可能性がある。この二つの条件によって、もし宇宙の中に他の文明を見つけたら、たったひとつの賢明なやり方はすぐに相手を消滅させることである。この宇宙は暗い森、全ての文明は森の中に生きている狩人のような存在。位置が曝される瞬間に他の狩人に銃撃されて、消滅させられる運命にある。
    羅輯は187J3X1星の三次元座標を全宇宙に発信した。宇宙に存在する無数の知的文明がその情報をキャッチし、187J3X1星を攻撃したのだ。

    羅輯は三体世界と地球の三次元座標を全宇宙に公開する、と脅しをかけ、三体人と交渉を行う。結果的にそれは成功する。水滴の電磁波放射を停止させ、9隻の水滴を太陽系から追い出し、地球に向かっている艦隊の方向転換を実現させた。かくして、三体人との初めての交渉のもと、地球の寿命がわずかに伸びたのであった。

  • いや~。久々に燃えましたね。SF作品を読んで。

    第1部『三体』も良かったですが、この第2巻『暗黒森林』はさらにすごい。もうページをめくる手が止まらない。上巻を読むのは1週間弱。下巻はもう2日くらいで読んでしまいましたよ。もうすごかった。

    三体人が地球に攻めてくるのが約4百数十年後、それまでに地球人類はどのように対処すべきか。
    もう、何という壮大なスケールの小説だろうか。

    まさにこれがSFの醍醐味だろう。
    自分の脳みそが沸騰するくらい興奮していく様子が自分でも心地よかった(笑)。

    ストーリーはネタバレになるので割愛するが、本書を読んでいて感じたのだが中国人である著者の日本へのリスペクトというか『一目置いている感』がすごい。

    例えば、本書のなかで第二次世界大戦で神風特攻隊の基地として使われたことで有名な鹿児島の知覧平和会館の特攻隊員の遺書が話題に上ったり、日本SF界の不朽の名作である『銀河英雄伝説』の主人公の一人ヤン・ウェンリーのセリフが引用されていたりするのだ。

    恥ずかしながら僕は『銀河英雄伝説』の存在は当然しっていたが、小説を読んだこともアニメを見たこともなかった。しかしながら、このような世界的大ヒット小説にごく当たり前のようにヤン・ウェンリーのセリフが引用されてしまうと、もう日本人としては
      『銀河英雄伝説』を知りません
    とは言えなくなってしまうではないか(笑)。

    という訳で、遅ればせながら『銀河英雄伝説』も読ませていただきます。はい。
    ・・・ってなんのレビューか分からない終わらせ方はできないので、一つだけヒントを。

     宇宙社会学~『猜疑連鎖』と『技術爆発』

    この考え方はすごいな。だから宇宙人を見つけるのは大変なのだね。
    来年の第3部の発売が待ち遠しい。

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著者プロフィール

1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。2008年に刊行された『三体』で人気に火が付き、“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は中国で2100万部以上を売り上げた。2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行され、2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。2019年には日本語訳版が刊行され、11万部を超える大ヒット。

「2023年 『神様の介護係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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