楽園とは探偵の不在なり

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 1337
感想 : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099617

作品紹介・あらすじ

二人以上殺した者は"天使"によって即座に地獄に堕とされるようになった世界。細々と探偵業を営む青岸焦は「天国が存在するか知りたくないか」と大富豪・常木王凱に誘われ、常世島を訪れる。そこで彼を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。

感想・レビュー・書評

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  • 天使が人の殺人を監視する不思議な世界! 孤島に集められた人々は果たして… #楽園とは探偵の不在なり

    人を二人以上殺害してしまうと、天使が舞い降りてきて地獄へ引きずりこまれるという奇妙な世界。そんな環境で探偵を営んでいる主人公は、孤島を買い取ったとされる富豪から島への招待がなされる。島には怪しい面々が勢ぞろいし、予想通り殺人事件が発生するのであった…

    孤島、怪しい登場人物、人の殺人を監視している天使たち… なんとも独特の世界観の中で展開される殺人。怖いよっ

    本作の読みどころは、一人が二人を殺害すると、すぐに天使が舞い降り地獄に引きずりこまれてしまうという特殊設定。こんな設定なのに、なんでこんなたくさん人が死ぬんですか!
    いったいどんなトリックが使われ、どんな衝撃的な真相が待っているのか、期待でワクワクでしたが、いや~この発想は浮かびませんでした、素晴らしい。

    登場人物の描写も悪くなく、ひとりひとりの特徴が深く、時には可愛く描かれ、主人公には思わず感情移入をしてしまいました。ストーリーとしても起承転結がよくできていて、ラストはなかなかの切なさでしたね。

    ただ本作の残念な点は、詰め込みすぎなところ。バランスをうまくとろうとしすぎて、話の組み立てが本書のメイン処になってしまっています。
    地獄行のホラー的な世界観なのか、特殊設定条件の本格ミステリーなのか、仲間を想う熱い友情ものなのか、死生観なのか。1つ1つの要素は濃くて良質なんですが、全体でみると重厚感がなく、読み手を強烈に引き付ける要素がぶれてしまっているかなーと。

    斜線堂先生の良さ、例えば偏った恋愛描写を描くときなど1つの要素をやたら深堀っていく迫力を、本作でも感じられるとよかったなと思いました。

    とはいえ、面白い設定で楽しく読める作品でした。続編がでるなら、ぜひもっと魂をえぐるようなミステリーだととてもうれしいです。 特殊設定ミステリーが大好きな人には、おすすめしたい作品でした。

  • ファンタジーの要素を含むミステリーでした。
    ファンタジーは苦手なので少しつらいところもありました。

    常世島という島を所有している常木王凱の招きによって探偵の青岸が、天使のいる島に他の6人の実業家とともに招かれます。
    この物語の世界観では、一人殺しても大丈夫だけれど、二人以上殺すと生きながら焼かれる断末魔の叫びをあげながら、天使によって地獄へと連れて行かれてしまいます。

    青岸は過去に探偵事務所の所員4人全員を爆弾による爆破事件によって殺されています。

    そして常世島には、もう一人紛れ込んできた記者が一人と使用人たちで11人の人間がいます。

    以下ネタバレです。お気をつけください。


    まず、常木が殺されます。
    そして第二の殺人が同じ犯人によって起きれば地獄行きとなるので起きないであろうと皆、賛同しますが、起きてしまったのです。
    4人の人間が殺され2人の人間が地獄の炎に包まれました。
    この因果関係は、私には少々難しかったですが、この事件の首謀者の意図はよくわかりました。

    だけど青岸がこだわりをみせているこの作品のタイトルである「楽園とは探偵の不在なり」は寝不足で頭がぼんやりしているときに読んだせいかはっきり言ってなんだかよくわかったような、わからないようなでした。よくわからないレビューでごめんなさい。(__)

  • 人を二人以上殺した時点で問答無用に地獄の業火に引き摺り込む「天使」の存在が当たり前となった世界。呼び名とは裏腹に不気味な外見の天使が多く集まる大富豪常木所有の孤島で連続殺人事件が起きる。登場人物は限られており、また犯人候補の人物は複数存在するのに誰も業火に焼かれていない。招かれていた探偵の青岸がこの不可能に思われる事件の全体像を解く。特殊設定の掛け合わせ方が凝りすぎず絶妙で成程ねと頷く。天使の存在で殺人が減るどころか破滅する方向に世界が進み、巻き込まれてどうしようもなく傷付いた青岸の過去の話が明るい分辛い。謎を解くだけの探偵の存在意義とは?辿り着いた答えに漂う物悲しさがまたなんとも。

  • 2人以上殺せば、〈天使〉によって地獄に堕ちる。
    SF設定を前提としたミステリ。

    『このミステリーがすごい! 2021年版』国内6位。

    特殊設定、クローズドサークルの孤島、富豪の館。
    いかにもな要素を詰め込んだ作品で、推理小説らしさを楽しむ。

    ルールにはいくつか抜け穴があるのに、ひとり殺されたらもう犯行は起こらない、と単純に考えるのは、やや不自然。

    後ろ向きでぐじぐじしたキャラクターが多く、人物が魅力的だとなおよかった。

  • 斜線堂有紀さん「楽園とは探偵の不在なり」インタビュー 天使が登場しても…堂々の本格ミステリー|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13881513

    楽園とは探偵の不在なり | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000014599

  • この物語に出てくる天使は一般人が想像する天使像とあまりにかけ離れすぎて逆に悪魔っぽい。2人以上殺した人を地獄に引きずり込むのだからやはり悪魔なんじゃないのかな。

  • 最近よく聞く「特殊設定」ものミステリ。中でも本書はかなり振り切れた設定である。何せ、数多の天使が空を行き交い、2人以上を殺した者を生きたまま地獄へ引きずり込むというのだ。しかも、その天使のフォルムは、金髪の見目麗しい姿ではなく、長い手足、蝙蝠に似た羽、のっぺらぼうの顔…。

    そのような世界では、必然的に殺人事件は減少し、探偵の商売は上がったり。だがしかし、「2人以上」ということは、1人までなら神は赦し給うということに他ならない。強固なルールは、時に抜け穴も許容する。

    過去にトラウマを抱えた名探偵・青岸焦は、依頼人の常木王凱に招待され、天使の集まる常世島に赴く。そこに集った10人を待ちかまえていたのは、あり得ないはずの連続殺人だった。

    やはり特殊設定ミステリで面白いのは、その世界だからこそ可能なトリックである。本書は見事にそれをクリアしている。そもそも、この異形の「天使」なんてものを生み出した時点で作品としては大成功だと思う。でも見取り図はいらなくない?

    特殊設定ミステリは、世界そのものが一番の謎なので、ミステリとしてはどうにも消化不良感が残る。この奇妙な世界にもう一度浸りたい気もするが、シリーズ化は難しそうだ。

  • 天使の要素を見ると、異質なSFっぽさを感じて、推理ものの邪魔になるかもと思われるかもしれませんが、意外にもしっくりきており、推理の要素と上手く融合されたトリックにも、特に違和感はなく、良かったと思います。

    また、主人公の探偵、「青岸焦(あおぎし こがれ)」は、理不尽な事故で仕事仲間を失ったことにより、自らの探偵の存在意義を失い欠けていたのですが、それでも感謝してくれる人がいてくれることに、苦しみながらも前を向こうとする姿には、多少の青臭さは感じつつも、探偵というものの美意識を再実感させられ、正義なんてと思いながらも、胸を熱くさせるものを感じるのは、私もまだまだ青臭いのかもしれない。が、嫌な気分ではない。この物語で登場する非道な輩に比べればね。また、それとは対照的に、真犯人の最後のひと言は殊に切なかった。

    ただ、この物語のいちばんのポイントは別のところに感じられ、それを書くには、どうしてもネタばれになってしまうので、以下ご注意を。













    この物語で登場する天使たちは、あらすじでもあるように、二人目を殺した時点でおそらく地獄に連れて行くという、神の裁きのようなものがある設定なのだが、これがものの見事に上手いこと機能していない。

    だから、最初は世の中が良くなるのだろうと期待した人々だが、次第に諦めや狂気的な利用を思いついたりして、結局は何も変わらない。あくまで、天使はいるだけで何もしてくれないのである。

    ただ、青岸が仲間たちを助けようとしたときに、車の前に立ちはだかった天使たちに対しては、意図的に干渉しているようにも見えるが、それは見えていても存在していないのと同様であり、あくまで、人間の人生は、やはり人間自身が歩んでいくものだというメッセージのようにも感じられた。

    理不尽で頭にくるけれど、人生にはそういうこともある。天使に踊らされる必要はなく、結局は、どんな状況や未来においても、生き方を決めるのは人間なのであると。これについては、今のコロナに踊らされている、現代の世の中に対するメッセージにも感じられて、あながち異色な推理ものだけで、この作品を評するのは、ややもったいない気もします。作者の次回作にも期待したいです。

  • 斜線堂有紀さんの作品を図書館で見つけ、廃遊園地の殺人の前に読んでみようと思って借りました。

    2人殺したら、天使によって地獄に引き摺り込まれる、という非現実的な設定。
    それによって平和な世の中に、という訳でもなく、1人までならオッケーっていう謎の権利みたいなものが蔓延してしまった世界。
    いったい天使とは何なのか、天国はあるのか、人間に救いはあるのか、そういった問いが作中に何度も出てくる。

    主人公の探偵、青岸焦が抱える辛い過去も少しずつ明かされてきて、だんだんと感情移入していってしまいました。
    読みやすい文章で空き時間を使ってあっという間に読み終えました。廃遊園地の殺人にも期待します。

  • 久々の推理小説。
    2人を殺すと地獄に落ちる世界で、どうやって自ら直接手を下さずに、相手を死に至らしめるかの推理が面白い。
    意外と泣ける展開もあり楽しめた。

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著者プロフィール

2016年、第23回電撃小説大賞にて〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。受賞作『キネマ探偵カレイドミステリー』でデビュー。近著に『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(メディアワークス文庫)、『コールミー・バイ・ノーネーム』(星海社)がある。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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