楽園とは探偵の不在なり

著者 :
  • 早川書房
3.46
  • (56)
  • (156)
  • (192)
  • (38)
  • (10)
本棚登録 : 1660
感想 : 170
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099617

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本格館物連続殺人事件をテーマにしたミステリ作品。 
    粗筋の通り、犯人が二人を殺害した時点で、地獄に落とされるという特殊ルールがあり、物語の深さを増すことに貢献している。

  • 先にテッド・チャンの地獄とは神の不在なりを読了していたのと
    スタァライトの制作陣が作る新作アニメの脚本が斜線堂先生という事でお名前を気になっていたのもあり購入

    こういった特殊な世界観でのクローズドミステリーは屍人荘の殺人を思い出させた
    トリック周りのミステリー的な要素はあまり個人として価値判断を持っていないので割愛するが
    登場人物の過去や価値観、善悪についての考え方などそういった物の方がメインになってるかなとは思った

    僕はそういうのが好きなので高評価しておきます

  • もう一歩欲しかった。この設定に魅力を感じたら、ぜひテッド・チャン『地獄とは神の不在なり』も読んでみてほしい。

    テッド・チャンのファンなので本書を手に取ったが、思っていた以上にオマージュ元の内容を取り込んでいた。人間の悪事を「裁く」基準が可視化された世界における、人々が倫理観を変化させ思い悩む描写はチャンのファンとして非常に興味深かった。神が布いた世界のルールは明確になったが、しかしそれが人類既存の倫理観に照らし合わせて公正とは言い難い場合に、人は何を信じ、何に祈ればいいのか。本作の主軸はミステリーというよりは、そういった人間の心理のほうにあると思う。

    ただロジックが弱い。1人につき1名までの殺人は逆に「可能」であり、「2名以上の殺人」以外の悪事に関しては一切天使が裁かないのだから、この世界において「探偵が不要」とまで言われる理由が飲み込めない。司法が不要、警察が不要のほうがまだわかる。死刑が廃止されたという話にせよ、例えば緩やかに餓死させる、死刑囚に死刑囚を殺させるだとか、特に非民主的国家であれば如何様にも手段を変えて継続させるのではないかと思える。

    ミステリー的な謎解きにしても、「部屋にすぐ戻っていたはずなのに、明かりが点かなかった」という証言だけで犯人扱いされるなど、組み立て方が軽い印象を受ける。徐々に消化不良なものが喉につかえながら読むような感覚になり、面白さが尻すぼんでいくような印象となってしまった。テッド・チャンがかなり緻密に世界観を組み立てる作家であるだけに、それを引いてくるならばもっと突き詰めてほしかったな、という感想が残った。

  • 本著者は初読。巻頭に舞台となる館の見取り図があり、自分の苦手な本格ロジック系かと思ったが、天使のいる世界の設定が興味深く、探偵を取り巻く面々の熱さが気持ちよく、ロジックも程よく楽しめた。自分にしては珍しく一日で一気読みしてしまったのは文章の読みやすさによるところも大きいと思います。

  • 驚くような結末ではなかったけれど、悪は滅び、目的を達成した犯人は自殺するというオーソドックスな結末は清々しいと感じた。ヴィクターの印が取り除かれるという伏線はよかった。井戸とボートが杭を伝って紐で結ばれて絞殺されるという図は、距離感などどうしても納得いく形で頭の中に描くことはできなかった。主人公青岸の過去の仲間たちとのエピソードは、それだけで小説になりそうで、回想だけではもったいない気がした。「天使」が「降臨」した世界というトンデモ設定だが、至って平静で安定したストーリー展開に好感が持てた。他の作品も読んでみたい。

  • 可もなく不可もなく…そんな作品でした。ハウダニットがこの作品のキモで、特殊な設定を上手く活かしているなぁとは思いますが…
    特殊な世界観についてもっと詳しく説明が欲しかったかなぁ、と。

  • 2人以上殺すと降臨している「天使」に地獄に落とされる世界で、孤島で連続殺人事件が起こるという特殊設定ミステリ。
    重点は連続殺人の段取りがどのようなモノだったか?解決編を読んでも綱渡り感がありあり。
    それでも楽しめた。

  • 気になっていのだがやっと読めました。
    設定が面白く、「二人は殺せない」世界での連続殺人と、ならではのトリックがよかった。
    それにしても天使が怖い。

  • やはり「二人殺したら地獄いき」の特殊設定の中、次々と連続殺人が起きるのが不可解で面白かった。

    また、登場人物がトリック上の駒ではなく、みなやけに魅力的で、トリック以外のところでも読んでいて楽しかった。

  • 探偵が凄く人間臭く描かれている作品。

    大体の探偵像と言えば、どこか飄々としていたり、ミステリアスな雰囲気を纏っていたり、あくまでも“キャラクター”と言う印象が自分の中では強かった。
    でも、この作品の探偵は凄く“生きている”

    過去の悲劇から、生きながらにして死んでいるような状態になってしまっている描写。
    探偵であると言うことの葛藤や苦悩の描写。
    そのどれもが青岸焦をただのキャラクターではなく、人間臭く感じさせている。

    今回の事件で青岸焦を探偵として信じ、期待してくれている人がいること、
    救われる人がいることに気付いた焦が、もう一度“探偵”として立ち上がっていける様になって欲しいと思った。

全170件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

2016年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビュー。楽園とは探偵の不在なり』『恋に至る病』『コールミー・バイ・ノーネーム』ほか著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斜線堂有紀の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×