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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784152100061
作品紹介・あらすじ
子供の愛玩用に開発された人工フレンドのクララ。好奇心旺盛で店のウィンドウから外の世界を観察するのが大好きだ。ある少女の家庭に買われていったクララは、やがて一家の大きな秘密を知ることに……愛とは、知性とは、家族とは? 根源的な問いに迫る感動作
感想・レビュー・書評
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カズオ・イシグロ作品は読んでる時より読み終わった後に残るものが大きい。
アンドロイドと人間の世界を描いた『電気羊』などは「人間の目線」で語られていた。
この作品はクララという「アンドロイドの目線」で物語が進む。
「人間目線」と「アンドロイド目線」でこんなにも感じるものが違うとは…。
この物語に出てくる人間は、アンドロイドを完全に「モノ」だと考えている。
対してクララは誰に対しても深い愛情を持っている。それは人間以上に感じた。
自分は小さい頃からいつも一緒だった犬のぬいぐるみを今でも大切にしている。
喋れないぬいぐるみでも大切な存在なのに、どうしてクララのような子を「モノ」扱いできるのか?私には全く理解できない。
悲しいけど犬や猫を虐待する人がいるんだから、きっとアンドロイドにも同じようにする人間は実際に出てくるだろう…。
変わってしまう人間と、どんなことがあっても変わらないアンドロイド。
変わることができないからこそ切ない…。
できることならクララをうちに連れて来て一緒に暮らしたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初、高額な単行本だし図書館で借りようと思っていましたが、何度見ても表紙の絵があまりにも可愛らしく、ついつい買ってしまいました。
表紙の絵は帯を外すと本当に可愛いお花畑に女の子が立っている絵で、カバーを外してもオレンジがかった暖かい黄色一色のとっても素敵な表紙です。
こういうのジャケ買いというのでしょうか。
カズオ・イシグロ、ノーベル賞受賞第一作ということですが、カズオ・イシグロは、結構積読本がたくさんあるんですが、読んだのはこれが初めてです。
以下少しネタバレありますのでお気をつけください。
物語は人工頭脳を搭載したAIのクララと、病弱な少女ジョジーの出会いから別れまで。
語り手の「わたし」クララは人工親友(AF)で店で売られていますが、クララは最新型のB3型ではありませんがずば抜けた観察力と学習意欲を持っているすぐれたAFです。
そしてクララはジョジーの母親がジョジーの余命を短いと思い込みジョジーと全く同じ思考回路を持つAIを作ろうとしているのを知ります。
そして、そのAIの頭脳にクララ自身が選ばれているということも…。
だけどクララはその選択は間違っていると判断し、ジョジーの健康を取り戻すためお日さまにお願いをし、必死の努力をやれるだけやります。
クララに野心は全くなく、ジョジーの幸せだけを考えているのです。
人間の心の方が深淵が深く、AIのクララの方が素直で気持ちがよいとは何という皮肉な話であろうかと思いました。
そしてAIは必要がなくなると廃棄されてしまいます。
それでも恨み事ひとついわないAI、クララは一体何の象徴として作者は描いたのだろうかと考えさせられました。-
猫丸さん。
表紙にひかれて買ってしまいました。
映画もあるなんて知らなかったです。
カズオイシグロは、積ん読本がたくさんあるので、そのうち、...猫丸さん。
表紙にひかれて買ってしまいました。
映画もあるなんて知らなかったです。
カズオイシグロは、積ん読本がたくさんあるので、そのうち、読もうと思います。
カレルチャペック、読了したので、この次にレビューできたらと、思っています。
政治の部分は私にはちょっと難しかったけど、読書のところとか、大変面白く読みました。
ありがとうございました!2021/04/02 -
2021/04/03
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2021/04/03
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まず、多くの人が表紙の可愛らしい装丁に目を(心を)奪われるのではないかと思います。もう本当に私好みの絵で、こんなLINEスタンプがあったら絶対手に入れるのに!と思ってしまったほど 笑
そしてページをめくって読み始めると、AFと呼ばれる人工頭脳を搭載した人工親友が売られているお店で、次々と売られていくAFを見ながら自分はいつ選ばれる日がやってくるのだろうか?と待ち侘びているクララの目線で物語が進んでいきます。
このシーンがまた、子どもたちが小さかった頃に何度も読み聞かせをした絵本『くまのコールテンくん』を思い出させ、あったかい気持ちになり、その度に表紙を眺める‥‥の繰り返しになってしまいました。
クララもコールテンくんのように、売れ残りの中から自分を見つけてくれる女の子に出会うのですが、そこからのストーリー展開は絵本のようにはいかなくなります。
様々な人間の欲望が描かれています。
AFが賢くなり過ぎて恐怖を感じている人間がいる、とも本編では書かれていますが、人間の方が恐ろしい存在なんだ、この複雑に歪んだ欲望をAFが真似るようになることは不可能なんだ、と思いました。
それと同時に、AFには真似できない人間の中の『特別な何か』はある、「それはジョジーの中ではなく、ジョジーを愛する人々の中に」ある、という一文が深く心に残りました。
絵本のようなあったかいラストではなかったけれど、これも人間が創り出したある意味での“おとぎ話“なのかもしれません。
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「わたしを離さないで」以来の著者の2冊目。
A Fと呼ばれる子供の愛玩用として作られたロボットのクララの物語。病弱な少女に見初められ、共に暮らすことになったのだが。
クララの一人称で話は進む。たんたんと未来の子供たちの様子が描かれる。
読み落としたのかもですが、クララのサイズや容姿に関する記述がほとんどなかったのでイメージしづらかった。
ラストはやるせない気持ちにさせられた。
なんだか哀しいハッピーエンド。-
2023/07/05
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2023/07/05
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2023/07/05
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人工フレンドAFのクララ。ある意味、誰よりも人間らしくて、途中AFであることを忘れそうになった。
思いやりがあって、失敗からはしっかりと学ぶ。そしと記憶力もいい。こんな人がいたらすごいなと。
じゃあ、人間らしさってなんだろうと、他の登場人物に目を向けると、その不完全さが際立つ。
実際は不完全であることが人間らしさなのかもと思ってみたり。
AFが誰かの代わりを継続することはできない。理由は継続することの出来ない特別なものがあるから。
その特別なものというのが、確かに!と心にすっと入ってきた。 -
完全にやられた。水彩画のような温かみのある表紙と、「境界を越えた心の交流」という帯のアオリ。そして「AIロボットと少女との友情を描く感動作」という紹介文。
私はてっきり、不治の病にかかり人生に絶望していた少女を、同い年の機械の少女が献身的に支えながら、ともに最期の時を迎える、といったようなお話かと想像していた。「人間とアンドロイドの友情」という、SF作品における鉄板テーマが描かれるかと思っていたのだ。
ただ読んでみると、児童向け絵本のような外見からは想像できないぐらい、悲しくて不気味な結末である。感動の意味が「ハッピーエンド」や「死別」ではなく「無常観」から来るものだとは思いもよらず、読んでいて完全に打ちのめされてしまった。
思えば、随所に伏線は散りばめられていた。
クララが店頭から外を見ながら、AFを連れて歩く人が少ないのに気づいたこと。登場人物たちが一様にAFに対して蔑む視線を送り、彼女らをモノ扱いしていること。こんなに広くAFが普及しているのに、連れ添っているのは子どもだけであり、大人たちは一体も従えていないこと。
しかしこうした違和感は、筆者の筆さばきによって見事に隠されていた。
空と緑が眼に浮かぶほどの巧みな風景描写、光陰表現の色鮮やかさ、ジョジーに仕えるクララの献身さ、そして幼馴染の少年少女が描く純愛の物語。遺伝子操作による「向上措置」と格差社会といった、不気味なテーマが随所に散りばめられてはあるものの、全体を通しては明るいお日さまのような雰囲気だったことは疑いようもない。
だからこそ、結末で一気に叩き落される。
ジョジーの命を救い、「真の友人」と形容してもおかしくないほど親交を深めたクララが、生活環境が変わった(ジョジーが大学生になった)というだけで、廃棄処分にされる。ごみ処理場の中でかつての「店長」と会ったクララは、なおもお日さまのような明るく健気な様子を崩さない。
「人間×アンドロイド」作品の多くは、アンドロイドの持つ感情や、アンドロイドに対する人権をテーマにしたものが多い。「人間そっくりなのに人間ではない」という矛盾を主人公たちが乗り越え、2人(1人と1体)の間に種を越えた友情を宿す。2人の信頼関係が厚ければ厚いほど、両者の立場から生まれる葛藤が大きくなり、物語も激しく展開していく。
しかし、この世界は違う。「AFは人間ではない」という考えが、自明の理として世界に渦巻いている。そこに友情があろうともなかろうとも、彼らの価値観はドライなまま変わることはない。
AFはあくまで友達を作るための「補助器具」にすぎないのだ。彼女たちに人権はなく、環境が代われば捨てられる運命であり、人間はそれを悪だとは考えていない。
この小説はそんな「不気味さ」をずっと抱えている。綺麗な風景の中に、そこはかとない物悲しさを纏った世界観は、「千と千尋の神隠し」を思い出してしまった。もちろん、いい意味で。 -
シビアな一冊。
人工知能搭載ロボット クララと病弱な少女ジョジーの出会いの物語は可愛らしい装丁タイトルとはうらはら、シビアでせつない。
随所に微妙な格差、優劣を盛り込み、人間が放つ言葉が心にズキッと刺さってくる。
対してその心ない言葉に対するクララの姿が今度はギュッと心をせつなく掴んできた。
ただジョジーのために一途な想いでお日さまのチカラを借りようとする姿は誰よりも人間らしさと無垢な心を感じた。
その時点でクララ自身がジョジーのお日さまになっていたんだと思う。
だから永遠。
そう思うとせつなさの心もちょっと救われる。 -
カズオ・イシグロ『クララとお日さま』(早川書房)を読了。AIを搭載したロボットと病弱な少女の物語。取っ付き辛い面もあるが、最後は感動のおとぎ話。我慢して読了して良かった。
カズオ・イシグロ『クララとお日さま』(早川書房)を読んでいる。優しい文体なのに、なかなか読み進められない。『私を離さないで』と同じように、小さな謎が散りばめられている。
カズオ・イシグロ『クララとお日さま』(早川書房)を読んでいる。ノーベル賞受賞後の最初の作品。ウイングの広い作家なので楽しみ。 -
カズオ・イシグロのノーベル賞受賞後の作品。
鋭さを秘めた、切ないSFです。
AIを搭載した人工フレンド(AF)が子供の親友として与えられる時代。
子供よりも少し小さいロボットが、街で売られているのだ。
AFのクララは最新型ではなく、店のやや奥に並べられていました。
誰かが選んでくれるかどうか、今日も心待ちにしながら。
「観察力があり学習能力が高い、すぐれたAF」と店長は説明します。
ある日、店に来た女の子ジョジーと心通うものを感じ、また来てくれて購入されて嬉しいクララ。
ところが、ジョジーは病弱で長く生きられないかもしれない…
その母親がAFを求めたのには、秘かな目的が。
クララには系統だった知識が与えられているわけではないので、お日さまに力があると感じ、ジョジーのためにけなげな努力を重ねます。
ちょっとズレているけれど、それだけに必死さが愛おしく、切ない。
詳しくは語られないが、「向上措置」というものがあったり、実はかなり厳しい階級社会らしい?
ジョジーの病は癒えても、成長したらAFはもう卒業。
ジョジーが大学へ行った後は、クララはあっさり廃棄処分となります。
といっても、潰されてゴミの山に、というわけではないのですが。
人里離れた土地に放置されても、恨むでもなく、寂しがるでもなく、すっかり壊れてしまうのでもなく。
ただ幸福を感じているクララ。
この清らかで温かい心。
胸が痛くなります。
この心境になれたら、人間も幸せでしょう。
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カズオ・イシグロの作品





