狂女たちの舞踏会

  • 早川書房 (2021年4月14日発売)
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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100153

作品紹介・あらすじ

19世紀末、パリ。少女ウジェニーは「霊が見える」と告白したために、家族に勘当され精神病院に入れられた。そこでは女性の苦悩やトラウマが「狂気」と診断されていた。病院で行われた公開講義や舞踏会の史実を元に、社会から排除された女性たちを描いた小説。

感想・レビュー・書評

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  • 【書評】「ふつう」の人々が彼女たちを危険でエロティックな珍獣として見物した~『狂女たちの舞踏会』 【書評】『狂女たちの舞踏会』著◎ヴィクトリア・マス 訳◎永田千奈|連載|婦人公論.jp(『婦人公論』2021年8月24日号)
    https://fujinkoron.jp/articles/-/4300

    狂気のとなり  サルペトリエールとラ・ボルド - 似て非なるもの 遠くて近きもの(2021/08/20)
    https://ngtchinax.hatenablog.com/entry/2021/08/20/130645

    Victoria Mas - Women's Prize : Women's Prize
    https://womensprize.com/book-author/victoria-mas/

    狂女たちの舞踏会 | 著訳者,マ行,マ,マス, ヴィクトリア | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014806/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「普通でない」のは狂気なのか?「他の人と同じ」なのが幸せなのか? | フランス文学の愉しみ | Bunkamura
      https://www...
      「普通でない」のは狂気なのか?「他の人と同じ」なのが幸せなのか? | フランス文学の愉しみ | Bunkamura
      https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/essays/tanoshimi/book17.html
      2022/03/30
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      Tel père Telle fille 父と娘 | 似て非なるもの 遠くて近きもの(2024-06-20)
      https://ngtchi...
      Tel père Telle fille 父と娘 | 似て非なるもの 遠くて近きもの(2024-06-20)
      https://ngtchinax.hatenablog.com/
      2024/07/17
  • 「男にちんこがある限りこの世に不幸は無くならないよ」

  • 実際にパリに存在する精神病棟を舞台の内容で、実在の人物も登場する。日本でいう時代劇的なスタイル?時代的には19世紀の話で、様々な理由からそこに女性が幽閉されてきた暗い過去がある。どこまで創作けわからんか、舞踏会、公開治療(見せ物的な)などもある。当然のようにあとがきでは作者に好意的だが、自分には、ちょっと調べ物してちょちょっと書いただけで、絶賛するのは?と思ったが、作者の母上が著名な歌手らしくて、いわゆるセレブ本だから話題になってるんかな?と思った。文章はうまいが、根底にある訴えるべき物の存在が見えない。

  •  パリに実在した女性患者用の精神病院を舞台にした小説。
     19世紀末、パリのサルペトリエール精神病院では、年に一度市民を迎えて開かれる舞踏会の準備で女性患者たちは浮き足立っていた。
     名家の進歩的な娘ウジェニーは、霊が見えることをうっかり告白したために、家名を重んじる家族から無理やりこの病院に入れられてしまう。舞踏会の日が近づく中、ウジェニーの持つ不思議な能力を知ってしまった勤勉実直な看護婦ジュヌヴィエーヴは、これまで信奉していた医学や科学的なものが揺らぎはじめるのを感じる。

     実際に行われていた舞踏会は、患者たちにとっては服を着飾って脚光を浴びる夢のような舞台であったが、招待されるパリ市民たちは狂女たちを間近で見られる「見世物興行」と捉え、タブーに触れることができるまたとない機会を待ち望んでいた。
     この時代を流れていた差別の空気や、塀の中と外、正常と異常、医師と患者、男性と女性の違いといったものを強調して書こうと思えば書けただろうが、作者はそれらを背景として取り込みつつも、どちらかというとウジェニーとジュヌヴィエーヴや女性患者たち、亡くなった者たちの心情を中心に書いている。
     家族や社会から「厄介者」と烙印をされた女性たちが幽閉されていた精神病院を舞台にしながら、どこか柔らかなムードで温かく感じるのはそのせいだろう。もう少し彼女たちの心情に迫る展開があってもいいかと思ったが、いま注目されているシスターフッドの流れにも通じるものがあり、映画化が早々に決まったというのもうなずける。

  • 19世紀のフランスでは、精神病棟に多くの女性が入れられていた。ヒステリーを起こした女性が「見世物」として扱われ、年に一度の舞踏会では「狂った女たち」を一眼見ようと貴族たちが集まってくる。そんな病棟に長年勤務してきた看護師と父親に「狂ってしまった」と思われて強制的に入院されられた少女が出会ったことから物語は動き出す…・

    うわーまじかー、そうなっちゃうのか〜〜!というのが読了直後の感想。
    だけど、読了してしばらくすると、「でもその方が心穏やかにいられるのかもしれない」とも思った。
    封建的で女性は自分の意見を持つことが許されず、ノータリンでいなければならなかった時代の苦しさや理不尽が描かれている。

  • 『パリ、女性差別に翻弄される狂女たちの足掻き』

    19世紀末のパリを舞台に、「狂っている」と診断されて入院中の女性患者と看護婦が、父や恋人、医師など男性から受ける女性軽視の風潮の中でもがく姿を描く。100年ほど昔のパリが、これほどの女性蔑視社会だったことがとても意外だった。読み始めるとすぐに物語に引き込まれ、一気読みでした。

  • 全体的にもっと長くてもよかったんではなかろうか。面白かっただけに、そして多くの今日的問題も含んでいるだけに。特に脱出劇は意外とアッサリで、え、ここもっとほしいなーと思ってしまった。

  • わたしにとってはひどくホラーだった。
    読み終えても恐怖心が抜けなくて頭がつらい。
    つぎはもうちょっと穏やかな物語を読みたい

  •  ウジェニーとジュヌヴィエーヴという二人の女性が自立する物語、といったら乱暴にまとめすぎだろうか。そもそもウジェニーが「幽霊が見える」と告白して精神病院に放り込まれた背景には、自立意識の強いウジェニーを疎んじる父親という存在があり、精神病院が人間を捨てる場として機能していた事実がある。またジュヌヴィエーヴはシャルコー医師に心酔し、また科学を信仰している。ここには父権的な(押しつけ型の)温情主義があり、科学主義がある。

     冷徹だったジュヌヴィエーヴは当初ウジェニーの霊的な能力に戸惑い恐れるのだけど、次第に感化されてゆく。と同時に、崇拝していたシャルコー医師が自分を駒としてしか見ていなかったことを悟り、ついに袂を分かつことを決意する。

     ウジェニーの物語であると同時に、このジュヌヴィエーヴが価値観を転回させるのが、この本の大きな見どころだろうと思う。かつてのジュヌヴィエーヴは周囲の人間と同じように、男尊女卑の価値観のなかで生き、科学が万能であると信仰していた(しかしその科学の実態がいかに杜撰なものであるかは、ルイーズを見れば明らかだ)。いわばこの旧習から逃れる物語としてみると、ウジェニーやジュヌヴィエーヴといい、ウジェニーの兄といい、若者には未来があり、ウジェニーの告白を踏みにじったババアや父親は常識の外に出られなかったということなのだろう。善良な面をして裏切ったババア、あー腹立つ。(怒りのあまり、暴言失礼)

  • 時は19世紀場所は華やかなりしパリ。その中の女性患者のための精神病院が舞台の小説だ。主人公のウジェニーは家族に霊が見えると言ってしまったがためにこの精神病院に無理やり入れられてしまう。この時代、精神病患者の扱いは見せものに近く、酷い扱いを受けていた。ウジェニーは必死にそこから抜け出そうとするが…。というのが本書のスリリングなところ。この本はヴィクトリア・マスのデビュー作で、「高校生が選ぶルノード賞」も受賞しており、さらに映像化が決定している。映像化された時はぜひ見てみたいと思った。

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