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本 ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784152100221
作品紹介・あらすじ
1940年、アメリカ。小さな町のお嬢様ヴィヴィアンは、大学を辞め、NYのショーの世界に飛び込んだ。華やかで刺激的な毎日。だが、それは突然終わる。彼女の過ちが、街中を騒がす醜聞になったのだ。恋人も友達も居場所も失い、彼女は初めて自分と向き合う
感想・レビュー・書評
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ものすごくよかった。今年のベストワンかもっていうくらい。とっても好み!!
1940年代のニューヨーク、素行不良で女子大から追い出されたヴィヴィアンは、ニューヨークで劇場を営む叔母ペグのもとで暮らすことになり、衣装係をしながら、ショーガールたちなどと自由奔放に遊びまわり、やがて大女優エドナがやってきたことではじめた新しいショーが大当たり。前半のこのあたりは、ニューヨークの話で、ショービジネス界の話で、個人的に好きな要素がたくさんなのですごく楽しく読んだ。新作のショーがだんだんつくりあげられていく過程にわくわくして、いよいよ初日の幕が上がるとき、舞台裏で脚本家兼演出家のビリーがするスピーチに感動した。「観客を先に愛せば、観客はきみたちを愛してくれる」。まるで自分もその舞台裏にいるような、そういう舞台裏を知っているような、暗い舞台袖とかまぶしい照明とかが見えるような気さえした。
そういうキラキラした話が続くのかと思っていたら、でも、そうではなくて、そこにちょっと驚いた。まさに青春のきらめきのなかにいたようなヴィヴィアンが、スキャンダルを起こして困った立場になり、逃げるように実家に帰る。
このときのエドナの言葉がひどかった。「あなたは絶対にひとかどの人間にはなれない。あなたがどんなに苦労してたいせつなものをつかもうとしてもけっしてうまくいかない。あなたは何者にもなれない」。若者に向けて言うこんなにひどい言葉がある? こんなこと言われたら生きていけない、と読んでいてものすごくショックで、読みながらずっとあとをひいていて、いつか和解する場面とかがあるのかも、と祈っていたけどそれはなく、それもなんだかショックだった。どんなに悔やんでも時が経っても許されないこともある、癒されない傷もあるってことなのか、と。だいたい、エドナ、なんでそこまでに怒る?って気もするんだけど……。
敬愛するエドナにそこまで言われ、大好きだった劇場を出て、恋人も友人もなくしたヴィヴィアンは傷つき深く落ち込んで、しばらく実家でまわりの人の言うなりになって無為な暮らしを続けるんだけど、やがて叔母ペグが迎えにきてニューヨークに戻る。戦時中ということもあってそこからは地道に生活して、そのうち友人とウェディングドレスをつくる仕事をはじめる。
前半のショービズだニューヨークの夜だっていうキラキラ感もよかったけど、後半の、ヴィヴィアンが堅実に仕事をして自分の生き方をつかんでいくっていうところがすごく好きだった。淡々と静かでしっとりした感じがあって。
そもそも、ニューヨークで自由に生きていく、とかいうと、やりたいことがあって情熱があって邁進する、みたいなイメージだけど、ヴィヴィアンの場合は、やりたいことも計画もなく、むしろなにをしたらいいかどうやって生きていったらいいかわからない感じで。ウェディングドレスをつくる仕事をはじめるのも友人に誘われてのっかる形でうまく進んでいって、正直うらやましいと思ってしまった(笑)。そういうのも才能とか人格とかなんだろうか……。
自由に生きる、っていう意味をすごく考えさせられた。それはよく口にされるけど、そう簡単なことではないと思っていて。自由に、ってどういうこと? 自分の好きなことだけしてなににも縛られず、ってこと? それですごく心に残ったのが、「臆病者だろうが酒浸りだろうが不誠実だろうが信用できなかろうが、どんなに欠点があっても、それがなに? それになんの意味が? なんの意味もない、そういうものだというしかない」。というヴィヴィアンの言葉。自由に生きる、っていうのはそういうことかなと思ったりした。そしてなんだか勇気づけられた。そういうことをめざして生きていけばいいのかな、とか。もちろん、そういうものだ、って思えるようになることが最高に難しいんだけど。
この小説、年をとったヴィヴィアンが、ある人の娘に向けて過去をふりかえって手紙を書く、という体裁になっているんだけど、その「ある人」、娘の父親はだれか、っていうのが謎になっていて。だれのことだろう、どういうことだろう、と思って読んでいくのもよかった。予想しなかった展開になって、予想しなかったような人物が出てくるところがおもしろかった。
あと、わたし、普段はキンドル派なんだけれど、この本の装丁の色合いとか表紙のニューヨークの街角の絵とかがすごく好きだと思って紙の本を買った。この絵ほしい。。。 -
煌めくショービズの世界にすとんと嵌まり込む田舎出の娘。やりたい放題の生活にも何かしら自分への正当性を主張してる。ある出来事さえ、男は咎められないのに何故女性だけが?と他人を傷つけた事より現状の生活を疎んでる。ここからどんな共感が得られるのかと思ったが‥前半の眩しい位の煌めきと後半の地道な生き方のコントラストが見事だった。勝手にハリウッド女優を当てはめながら読んだ。
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びっくりした。最初のほうはバブリーでキラキラでイケイケの酒池肉林で、正直、どこまでこれに付き合わされるの〜?!とちょっとウンザリ気味だったけれど、後半からのこの濃密さはなに。人生の楽しさ、喜びと、苦しさ、切なさ。その両方があっての重さ。そう、「この世界はまっすぐじゃない」。
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控えめに言っても最高な一冊。
どうして2021年になるまでこの本が存在しなかったのかと責めたくなるほど、これは女として生まれたからには避けては通れないバイブルのような一冊だ。
嫌悪する人もいるだろうし、うんざりする人もいるかもしれない。でも目を逸らせないだろう。
だって、ヴィヴはわたしたちが目を背けたものをすべてから目を逸らさず、そして思うままに生きている。
取り返しのつかない失敗を経て、彼女はようやく自分になれたのかもしれない。
あの時代にこんな風に生きた人がいるなら、それならば、21世紀に生きる私たちが日和ってる場合ではない。
曲がった世界で、自分を見つけて自分の人生を生きていかなくては。
叶うことならヴィヴと友人になってみたかった。
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とにかく、読み終えて勇気をもらった。生き方とか価値観とか、グタグタ述べず、言い訳せず、自分の人生楽しもう!って。後半は特に沁み入る言葉があった。
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女なら特に憧れる煌びやかな世界。
自分の顔と体が美しいとされ、それがお金になるとしたら。
主人公はそんな憧れも含めて、ニューヨークという街に染まっていく。
私も田舎から都会に出た時のあの無敵で何でも手に入ると思う感覚は忘れられない。
それでは危険でもあったし、自分の人生において学ぶことがたくさんあった。
人間関係でも、男女関係でも、お金関係でも。
ニューヨークのショーパブという世界を通して、主人公の人生が様々な視点で描かれていく。
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2024/02/23
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