機龍警察 白骨街道 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
4.18
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本棚登録 : 489
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100450

作品紹介・あらすじ

新型機 "龍機兵"を導入した警視庁特捜部に新たな指令が下る。ミャンマーで確保された国外逃亡犯の引き渡しを特捜部の傭兵にやらせろというのだ。その道行は危機に次ぐ危機の連続だった……フィクションがリアルを突き抜ける今最も熱い警察小説シリーズ第6弾

感想・レビュー・書評

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  • 毎回カテゴリ分けに悩むシリーズ…。
    従来は”敵”の存在を少しずつ炙り出しながら、特捜部の面々が(産官学の癒着した)巨悪と闘うという構図に、3人の搭乗員の過去を描きこんでいた。

    しかし(前回からの流れを受けて)今回は大きく物語が動き、特捜の3人がミッションを追ってミャンマーの山中でゲリラや国軍と逃避行を繰り広げることになる。
    日本での捜査とアクション満載の逃避行が交互に描かれて一気に読み終える。
    しかもこれで終わりではなく、新たな局面を感じさせるラストも見事。まだまだ続きそうなシリーズではあるが、早く次を読みたいものだ。

  • オピニオンパラレルSF警察小説。
    ロヒンギャ問題とインパール作戦、国産兵器の輸出に関わる大疑獄。
    逆ロッキードとはすごい発想。ミャンマーのクーデターで、ほぼ時差は存在しないパラレル世界なんだと理解した。

    人間が人間を異物と見なすとき、どんな残虐行為にも罪悪感は発生せず、むしろ称賛される善行となる。「民族浄化」という言葉そのものに表れている盲目的な憎悪。
    アイゼンの箍は何によって破壊されたのだろう。どこで破壊されたのだろう。ミャンマーで?それとも日本で?

    クァンジェンピンのチートっぷりがヤバい。道理で尊大なはずだ。個人では世界でも指折りの殺傷能力を有するキキフなのだから。
    オキツ部長の思いやりなのか、ストックなのか、遅れて現れるヒーロー、シェラーの参入は私としては嬉しいんだけど、スガタはたまらんよね。
    自信も喪失してるし…
    契約期間終了しても継続して欲しいけどなぁ。
    ユーリとライザが人として復活してきてるから、次はスガタも頼んます…

    あと…シロキさんの闇堕ちも避けてほしいな…
    従姉妹の清純派から毒婦への変わり身は衝撃だったと思うが…

    オキツ部長が戦いたい敵って、存在するんだろうけど、それとは別な「不条理そのもの」な気がして、個々人の無意識の集合体とどう戦って、何が勝ちなのか、今後が非常に気になるけど、そろそろ最新作まで追いついちゃったから待たねばいけない。
    オキツ部長の目指すものが、著書の希望なんじゃないかと期待している。

  • こちらも期待通りの一気読み。国家権力の不都合をもみ消そうと、厄介払いを兼ねて紛争地帯へ主人公たちが送りこまれる。孤立無援の状態から、まさかの裏切りまで、ピンチのオンパレード。持ち前の戦闘能力、センス、チームワークを駆使し、「敵」の巧妙な罠にハマったフリで裏を描こうとするが、敵もその策略を見通してさらに手の込んだことを仕掛けてくる。どんでん返しも伏線回収も見事。国の腐敗を前提にしているが、昨今の状況に鑑みるとさもありなんということろ。ただし、現実の方がちっこくて笑えない。

  • 機龍警察6作目。警視庁特捜部・突入班3名は、初の国産機甲兵装モジュールの技術流出を目論むとされる国際指名手配犯・君島の奪還のため、インパール作戦の「白骨街道」に続くミャンマーへ派遣される。一方日本では、城木理事官の親族らが経営する会社に合同捜査が入る。

    インパール作戦やロッキード事件など、史実に関する知識の無さを恥じると同時に、機龍警察という素晴らしい作品を通じて実際の過去を詳細に知ろうとする意欲が掻き立てられたので、物語や作品の持つ力は大きいとも思う。

    機龍警察の好きなところは、挙げ出したらキリがないのだが、第一に登場人物の立場とリンクするそれぞれの「戦い方」の描き分けにある。
    突入班であれば当然、ドラグーンによる戦闘、あるいはドラグーン意外の機甲兵装を含めた装備による戦闘である。また孤高の部長・沖津は、人材の最適配置やそれによって得られる情報の分析・予測による先読み、あるいは対人との振舞いによる組織の存続など、あらゆる要素に隙のない戦略・戦術の展開であろう。さらに城木・宮近両理事官は、出世を見据えた組織での立回りに加え、人脈の形成、そして利用することで特捜の捜査を進める力が必要だし、由起谷や夏川などの主任クラスになると、現場での機転や実際の対人戦闘に迫られることもある。さらに捜査二課の面々の知能犯罪に対する動き、鈴石ら技術班の深い知見による洞察、組織の緩衝機能としての庶務の存在、などなど、これら全ての人たちが物語の不可欠な存在となっており、彼らは自分たちの職務を全うしている。本作・白骨街道もその役割と戦い方が忌憚なく描かれ、非常にスリリングで興奮するのである。

    そしてストーリーは「敵」の存在に近付きつつあり、また突入班の人材も1人増えた。新たな4人目はキール-ウィスカー方式のドラグーンではないとは言え、元モサドの経験を活かし、姿以上の才能の片鱗を覗かせている。姿自身は、引退を諭されているように受け取っている描写もあったが、そんなはずはない。沖津は姿を信頼している。その沖津が、彼に引退させるはずはないのだ。むしろ彼にもドラグーンが導入される方向で話は進み、その中で、本来のドラグーンというものの素性が明かされながら、さらに日本の特捜以外で、ドラグーン相当の機甲兵装が誕生する……そんな次回作を予想している。

    ドラグーンが登場しなくても、ここまで面白い。もう押井守監督に映像化してほしい。

  • シリーズ第6作。
    今作は国産機甲兵装の鍵を握る国際指名手配犯である君島の引き渡しに上層部のほぼ独断の決定により、突入班の3人がミャンマーまで行くこととなった。
    これは、敵が仕組んだ罠で3人がさまざまな危険に晒されつつも、それを回避し、無事に日本に帰還しようとする。
    一方東京の新木場では、これを仕組んだ敵の正体を探るために捜査が開始される。前作で協力関係にあった二課などの協力により、敵に迫りすぎ解体の危機もありというずっとハラハラした展開で面白かった!
    次作ではさらに面白い展開があると思うので楽しみ!

  • 機龍警察シリーズ、6作目。

    今回のテーマはミャンマー・ロヒンギャ問題。至近未来という設定で、今回も龍機兵こそ出てこないものの、別の型の機甲兵装はふんだんに登場し、数多くの戦闘描写が描き込まれているが、その舞台の背景にあるロヒンギャ問題においては現実そのもののように超リアルでシビア。アウンサン・スー・チー統治政権下、日本がどのように対応してきたか、問題点が浮き彫りにされている。また、日本では、国産機甲兵装開発計画が絡んだ権力闘争が繰り広げられ、特捜部が崩壊の危機に晒される。ミャンマー、東京、京都と三舞台で同時進行しながらも、展開はそれぞれスピーディー。断然不利な場面もその直後には好転し、事態は逆転の連続。熱い展開に痺れますワ。そして、最後。ミャンマーの今現在がどうなっているかは誰もが皆が知っていること。なるほど、そういうオチかと。この本はいつ書かれたものかと思いながら読んでいたが、上手くリアルな時事を落とし込んできたなと最後溜息をついた。

  • まるでチャンバラ劇!機甲兵装を駆使して敵をやっつける。一方で黒幕が暗躍しているところなんてそのもの!こういうの好きです。

  • 最初から最後まで、スピーディーでスリリングな展開で一気に読めた。ラードナーがカッコ良すぎる!!!
    龍機兵が出てこないのは寂しいような。

  • 機龍警察シリーズの6冊目。
    機龍3人組はミャンマーに出張して肉弾戦。日本でお留守番組は頭脳戦。どちらも読みごたえがあった。
    ミャンマー組が保護した少年とか、城木の親戚の女性とか、特捜メンバーの心労が相変わらずな感じ。

    続きが非常に気になる終わりかたしてて困る。

  • 機龍警察の最新刊。
    ミャンマーで収容された容疑者を
    姿らが、引き取りに行く。
    途中、ミャンマーの警察が護衛に
    付くものの、襲撃される。
    戦闘の描写、徒歩で山中の移動の
    描写は、読書していながら映画を
    観ているような感覚だった。
    今回は、日本での捜査とミャンマ
    ーでの過酷なミッションを繰り返
    して物語が進んでいく。
    結局、〈敵〉の正体は明らかにな
    らず、次のシリーズに続くのか?

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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