同志少女よ、敵を撃て

著者 :
  • 早川書房
4.29
  • (1616)
  • (1301)
  • (429)
  • (61)
  • (24)
本棚登録 : 16769
感想 : 1449
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100641

作品紹介・あらすじ

1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、ドイツ軍の襲撃により突如奪われる。母を殺され、復讐を誓った彼女は、女性狙撃小隊の一員となりスターリングラードの前線へ──。第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 朝、普通に目覚め、食べるご飯があり学校に行く。
    当たり前のように1日を終え、
    当たり前のように朝を迎える。
    そんな暮らしが出来ている私は、とても恵まれているのだと知った。

    明日が来ないなんて考えた事なかった。
    来ないで欲しいと思えるくらい、
    平和な世界で暮らしている。


    これは、10代の少女の物語。
    私と同じ10代の少女の物語。

    銃を構え人を殺す。
    それが生きがい
    戦後はどうすれば良いのと
    少女は迷う。
    戦争が自分の生きる意味
    そのものだったからだ。


    「戦いたいか、死にたいか」
    この問いに私は答えれるだろうか。
    自分の大切な人を目の前で殺され
    故郷もぼろぼろにされた絶望の中で。

    私は故郷が嫌いだし
    多分戦う道を選ぶと思う。


    ー何のために戦うのかー

    少女はその問いに悩まされる。
    敵を殺すため…?
    いや、女性を守るためだ。

    守るために殺す
    自分の敵を殺す
    敵は誰?


    最後に題名の意味が分かる。

     同志少女よ、敵を撃て





    この本、やっと読み終わった…
    一体何ヶ月かかったのだろう。
    読書感想文のために読んだ本だ。

    戦争の事だから難しいんだろうなと思い、
    苦手なタイプの本だと決めつけていた。
    まぁ、苦手ではあった。
    でも読んで良かったと思う。

    戦争の本当の怖さを知れたし、
    自分の愚かさにも気づけた。


    戦争は終わったはずなのに
    ロシアとウクライナの戦争が今、
    起きている。

    平和な世の中なんて
    世界が滅びたとしても
    訪れないだろう。

    そう、思った。

    • みどりのハイソックスさん
      本3さん、こんにち
      読書感想文で書かなければ読まなかったと思います。
      長くて長くて、挫折するかと思いました。私は読み終わるのに半年ほどかかっ...
      本3さん、こんにち
      読書感想文で書かなければ読まなかったと思います。
      長くて長くて、挫折するかと思いました。私は読み終わるのに半年ほどかかってしまいました…
      でも、凄く面白かったのは確かです!
      ぜひ読んでみてください
      2022/08/30
    • 読書は聴くものですさん
      みどりのハイソックスの女さん

      この本は内容もテーマも今の日本では想像しづらく、正直読みづらい本だと思います。
      その中で主人公と同じ目線の方...
      みどりのハイソックスの女さん

      この本は内容もテーマも今の日本では想像しづらく、正直読みづらい本だと思います。
      その中で主人公と同じ目線の方が読んで考えるというのはきっと貴重なものになったのだろうと思います。
      素直な気持ちが出ているコメントがとても素晴らしいと思いました。

      2022/10/30
    • みどりのハイソックスさん
      ありがとうございます。

      まだ、歴史とか世界のことを何も知らないし時代も時代なので難しく感じる物語でした。
      ですが、それでも伝わってくるメッ...
      ありがとうございます。

      まだ、歴史とか世界のことを何も知らないし時代も時代なので難しく感じる物語でした。
      ですが、それでも伝わってくるメッセージは深く、貴重で大切なものだったと思います。
      2022/10/31
  • 今年初の図書館本です。(冬は雪が多くて図書館に通えないので)
    今、世界で大変なことが起きているこのタイミングで順番が回ってきたのは、時代は違いますが色々なことが知れてよかったと思いました。
    一体、何が書かれているのかと夢中で読みました。


    この作品は1942年18歳のロシア人のセラフィマがドイツ軍に村と家族を奪われて復讐しようとする物語です。
    母を殺されて一人になったセラフィマは女性兵士イリーナが集める精鋭の狙撃兵の一人として中央女性狙撃兵訓練学校に入校します。
    ナチ・ドイツを打ち砕き復讐を遂げようと決意します。
    セラフィマの復讐は母を撃った狙撃兵と、村を家族の写真と母の遺体ごと焼いたイリーナに向けられていますが、セラフィマは、
    「君は何のために戦う」と問われ、
    「味方を守り、女性たちを守るためであります」と偽りを答えます。
    そして、セラフィマは第三九独立小隊として戦い、100人に及ぶ敵兵を撃ちます。
    仲間の何人かは敵兵に殺されます。
    そしてこの作品の最も訴えの強いのは、とにかく弱い女性の立場です。
    敵兵は、相手を撃ったあとに必ずといっていいほど女性たちを陵辱していきます。
    女を犯すことが同志的結束を強めるというおぞましい論理。
    そして、その論理は敵兵ばかりでなく、味方も同じことをやっているというのがセラフィマにとって一番のショックだったろうと思います。
    セラフィマはやがて自分の復讐心よりも、
    「自分は女性たちを守るためにここに来たのだ」
    ということを心の底から思うようになっていきます。


    戦争というのは人が人でなくなることだと思いました。
    今、世界で起きていることがどうかこの作品より酷いことが行われていないようにと祈り、早く終わるようにと願います。
    この戦いでは、戦うのを嫌がっているロシア兵もいるという報道を耳にしたことが救いです。
    戦争にはいいことなど、何ひとつないのですから。

  • 圧倒的な本屋大賞だと思った。

    2019年の「そして、バトンは渡された」も他のノミネート作品に比べて圧倒的だと思ったが、「同志少女よ、敵を撃て」は自分の中ではそれ以上に差がついた。
    (ただし、「夜が明ける」と「残月記」は未読。)

    「スモールワールズ」はすっごい好きで「同志少女」を読むまではダントツの候補作だったのだけど、2月24日以降、世界の見え方は少し変わってしまったこともある。「同志少女よ、敵を撃て」はまさしく今、読むべき本なのだろう。

    住んでいた村をドイツに急襲され、突如狙撃兵とならざるを得なくなったロシア(ソ連)の少女セラフィマの成長譚。

    「戦いたいか、死にたいか」の壮絶な選択をせざるを得ない状況。今、ウクライナ国民は、そんな状況にある。
    領土は何のためにあるのだろう?
    国は誰のためにある?
    人は何のために戦う?
    正義とは何か?

    この小説からは、さまざまな問いが発せられる。

    そして、少女が撃つべき「敵」とは?

    • あゆみりんさん
      たけさん、はじめましてです、こんばんは。
      たけさんのレビューを読んで、今読まないといけないと強く感じてしまいました。
      今図書館で予約待ち37...
      たけさん、はじめましてです、こんばんは。
      たけさんのレビューを読んで、今読まないといけないと強く感じてしまいました。
      今図書館で予約待ち37番目ですが、なかなか列が進みません。

      たけさんの魅力的な本棚をコソッと参考にさせていただきました、ありがとうございました♪
      2023/01/07
    • たけさん
      あゆみりんさん、はじめましてです。
      コメントありがとうございます。

      この本は、今読むのにタイムリーな本ですよね。
      でも、戦争の本質はいつに...
      あゆみりんさん、はじめましてです。
      コメントありがとうございます。

      この本は、今読むのにタイムリーな本ですよね。
      でも、戦争の本質はいつになっても変わらないと思うんです。
      だから、仮に図書館の予約待ちがすごく長くてその間にウクライナ情勢が好転したとしても、読んでほしい本だなーと思います。

      僕の本棚が魅力的だなんて恥ずかしいですが、あゆみりんさんのこと、フォローさせていただきました。
      こちらこそあゆみりんさんの本棚を参考にさせていただきますね♪
      2023/01/07
    • あゆみりんさん
      たけさん、返信ありがとうございます♪
      ロシアのお話は、ことあるごとにコニャックと◯◯◯コフさんがたくさん登場してしまい混乱を極め苦手意識があ...
      たけさん、返信ありがとうございます♪
      ロシアのお話は、ことあるごとにコニャックと◯◯◯コフさんがたくさん登場してしまい混乱を極め苦手意識がありましたが、気長に図書館の予約待ちしますね。
      「圧倒的な本屋大賞」読みたいです、たけさんのレビューに唆られました。
      私もフォローさせて頂きました、宜しくお願い致します♪
      2023/01/07
  • 純粋に小説としてとてもおもしろかった。
    さすが2022年本屋大賞作品。

    第二次世界大戦の独ソ戦の物語。
    主人公であるソ連の女性狙撃手"セラフィマ"の視点から見た戦争が描かれている。

    兵士の複雑な心理の描写がすばらしかった。
    作品から戦争がいかに人を狂わせるかを強く感じた。

    戦争というテーマから命と幸福について考えさせてくれる作品でした。

  • 2022年本屋大賞受賞作品

    いや〜、紆余曲折でようやく話題作を読了。
    本屋大賞が発表されてから何日かたって図書館で予約するも90人待ち。借りられるのは半年以上先になっちまった。あ〜、もっと早く、てゆーか大賞発表日に予約しとくんだったと激しく後悔。(なら本屋で買えよと突っ込まれそうですが、僕図書館派なんで笑) 

    読むまで時間があるので作品をより楽しむために予習をすべく「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」(2020新書大賞第一位)などを読む。この戦争の悲惨さは想像を絶するものだったことを知る。
     
    そんなこんなで順番を待ってたんだが、7月から一緒に働くことになった職場の同僚と話してたら本作を買い、もう読んだとのこと!貸しましょうかのお言葉に甘え借りた!
    なんというラッキー、なんという僥倖!友よ、ありがとう!

    余談はさておき本題です。

    2月以降、毎日のようにウクライナの映像をテレビやネットニュースで目にする。現代社会でここまであからさまに大国が他国へ侵略するとは信じがたい。ロシアにはロシアの理屈があるんだろうが許せるものではなく世界中で断固糾弾すべきと思う。

    本作は人類史上最も悲惨な戦争といわれる独ソ戦(第二次世界大戦におけるヒトラーのナチスドイツとスターリン率いるソ連との戦い)が舞台。デビュー作とは思えない程に出来がよく、読み応えがある。

    主人公セラフィマはソ連のうら若きスナイパー。モスクワ近郊の農村で暮らしていたが、ナチスが攻め込んで来て、母親や村人たちが皆殺しにされた。セラフィマも殺されかけたが、ソ連軍の女性スナイパー・イリーナに助けられ、彼女が教官をしているスナイパー養成学校で厳しい訓練を受けることになる。

    一緒に学んだ女性スナイパーとともに、女性狙撃専門部隊の一員として、現場最前線へ。強烈過酷な戦場のスターリングラード攻防戦をはじめ、悲惨激烈な現場だらけだ。
    いつも死が間近な極限状況が続く毎日。そこでの女性同士の友情や確執・裏切り。戦場での兵士による女性蔑視の発言、
    振る舞いやセクハラ発言。はたまた民族差別や出自をめぐる葛藤。多民族国家であるソ連という国の複雑さもなんとなくわかった。

    なぜ殺し合わなければならないのか、なぜ撃たねばならないのかという疑問が何度も繰り返される。極限状態での思考の深化と人間ドラマが面白い。

    長距離から相手に狙いをつけて撃つスナイパーの卓越した職人技も本作の特徴だ。スコープに映るのはたった一人の敵。敵と向き合う研ぎ澄まされた緊迫感が良い。相手の命を握るという重さとこちらの命は相手に握られている不安。
     
    読む前には思わず逡巡してしまった470頁の長編だが、読み始めたら一気だ。登場人物のキャラがたっており、ストーリー性も文句なし。理解を助けるたまに出てくる地図も良かった。地図にはキエフやハリコフなど、最近なじみの地名も頻出。

    果たしてセラフィマは戦争を通してどのように成長したのか。一体、何を得たのか。それは読んでみてのお楽しみだ。

    • ひまわりめろんさん
      TAKAHIROさん
      こんにちは!

      うらやましい!
      うらやましすぎて思わずコメントしちゃいました
      同じく図書館派の私はあと三ヶ月待ちくらい...
      TAKAHIROさん
      こんにちは!

      うらやましい!
      うらやましすぎて思わずコメントしちゃいました
      同じく図書館派の私はあと三ヶ月待ちくらいかな〜w
      2022/08/30
    • TAKAHIROさん
      ひまわりめろんさん

      コメントあざっす。
      僕が言うのもなんですが、気長に待ちましょう(笑)
      ひまわりめろんさん

      コメントあざっす。
      僕が言うのもなんですが、気長に待ちましょう(笑)
      2022/08/31
  • 「戦いたいか、死にたいか」

    赤軍の女性士官は全てを失った猟師の娘にそう問いかけました
    何れにしても死に向かうと思われるその言葉は生に向かうための問いでした

    うひゃあ、すごいの来たな
    すごいの読んだなと思いました
    思ったけど自分はこのエピローグはいらないなと思いました
    自分はこのエピローグを作者が愚者たちの歩みを描いたこの物語を書いたことの「言い訳」のような気がしてしまったんです
    投げっぱなしで良かったんじゃないかなって
    もっと読者を信じても良かったんじゃないかなって

    それでもとんでもない傑作であったことは間違いなく
    単純に戦争は良くないよねとか、女性を兵士とすることの是非や、戦時下における性被害についてとかってことだけじゃない何かを訴えてる気もしました
    もっともっと複雑な人はどうしたら人の中にあるどうしようもない悪魔を飼い慣らすことができるのかってことの問いかけだったような気もしました

    明確に分かったことは、生きることと殺すことが同義になるような世界はやっぱりいらないなぁってことかな

  • 「戦うのか、死ぬのか」と問われ、戦うことを選んだセラフィマ。
    それは復讐するという目的がないと生きていけなかったから。
    だけどいつしか、敵を撃つことで気分が高揚している自分に気付き、自分が怪物に近づいてゆくような気がしてくる。
    自分と敵とはどこが違うのか?
    お互い、相手を“敵“という記号で見做し、相手も自分と同じように大切な家族や生活がある一人の人間なんだということがすっぽり抜け落ちてしまっている。
    だから戦争はなくならない。
    「戦うのか、死ぬのか」どっちも嫌だ、という答えもあったんだ!
    でも、セラフィマにとって本当の敵とは‥‥
    戦争は誰も彼もを正当化の術を身につけた怪物にしてしまう。
    世界から戦争がなくなることはあるのだろうか?

  • "照準線の向こうに獲物を捕らえた時、心は限りなく「空」に近づく。"

    極限まで研ぎ澄まされた集中力。無心の境地で標的を撃つ。獲物を仕留めた瞬間に戻ってくる世界、高揚感。
    今なら「ゾーンに入る」というのだろうか。
    第二次世界大戦下、激化していく独ソ戦。ソ連には、戦うことを選んだ女性狙撃手がいた。

    モスクワ近郊の人口たった40人のイワノフスカヤ村。猟師の母に育てられ、高校で優秀な成績を収めたセラフィマは、秋からモスクワの大学に入学することになっていた。夢は学んだドイツ語を活かして外交官になること。本当は幼馴染のミハイルと一緒に大学へ行くはずだったのに、ミハイルは志願兵として戦争に行ってしまった。狩りの帰り道、母を一人残してしまうことを心配するセラフィマに、母は言う。
    「銃の撃ち方なんて忘れて、あなたは勉学に励んでちょうだい。戦争は男どもに任せておきなさい。あれは男が始めて、女はその陰で犠牲になるのよ。」
    …しかし、村にたどり着く前、二人は村がドイツ軍の兵士らに襲われ皆殺しになっていることを察知する。村人らはを助けようとした母も気配から撃たれ、幼馴染の母子は陵辱して殺される。さらにはセラフィマもドイツ兵に捕らえられたとき、それを救ったのは赤軍の女性兵士イリーナだった。
    イリーナはセラフィマに問いかける。

    「戦いたいか、死にたいか」

    ーーー戦う。"敵"を皆殺しにする。
    私は、女性を守るために戦う。
    セラフィマは決意し、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵となる訓練を受ける。そのとき彼女はまだ18歳だった。

    序盤、和やかな村の雰囲気からの急転直下。故郷を愛し、ドイツとの友好を望んでいた彼女の人生はその日を境に一転してしまう。学校では同じく女性狙撃手となる訓練兵らがいて、彼女らとセラフィマは、深く結びつきながら共闘する戦友となる。
    セラフィマたちは、激戦地スターリングラードの最前線に派遣され、死と隣り合わせの極限状態の中、狙撃手として戦果をあげていく。

    ドイツ兵を狙撃して倒すことに喜びを感じ、戦果を誇っていたセラフィマだが、徐々に揺らぎが生じてくる。
    ドイツ兵と愛し合うようになったスラブ人の女性がいた。反対にドイツ兵に騙されて連れてこられ、虐げられていたドイツ人女性がいた。何より、信じたくないのは、ソ連の兵士が侵攻先のドイツ人女性を襲い、その数を仲間内で競い合い、連帯を高めているという事実。
    被害者と加害者、味方と敵、自分とフリッツ(ドイツ兵)、ソ連とドイツ。それらは全て同じだと信じていた。
    しかし、ソ連兵士として戦うことと、女性を救うことが一致しない日がきたら、自分は、そのときどう行動すればよいのか、、、と。

    すべてを蹂躙し、虐殺し、奪い、辱める。戦場の生臭さすら感じるこの臨場感がすごかった。彼らは互いに差別して見下し、相手を同じ心ある人間だとは扱わなくなる。心が麻痺してしまうのか。心が自死してしまうのか。彼らだって、家族のいる普通の人たちなのに。
    特にラストがね…。衝撃だった。

    読了後、はぁ、、、と深くため息が出た。
    素晴らしい本を読んだ時、
    立ち上がってわぁぁぁー!と拍手したり、「ブラーボー!ブラーボー!」とブラボーおじさんが顔を出したりするときと、
    ただ余韻に深く浸って何も言葉が出てこないときとがあって、
    この本は後者の方だった。なんか…この気持ちを書ける気がしない。

    最初、よくわからないタイトルだと思っていたの。でも、このタイトルの「同志」「少女」「敵」「撃つ」に全てが詰まっている気がする。

    独ソ戦のドイツの死者は900万人、ソ連の死者は2000万人を超えるとか。数字だけでその戦争の凄惨さは計れるものではないけれど、恐るべき数だ。大切な人を殺された恨みや憎悪が復讐心を煽り、残虐な行為へと走らせ、さらに恨みや憎悪は膨らむ一方だったこと、その後遺症が長く続いたことは想像に難くない。
    それなのに今また、ロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まり、なぜこんなにも戦いが尽きないのだろう、と暗澹とした気持ちになる。

    この本の執筆に強烈なインスピレーションを与えたのが、おそらく『戦争は女の顔をしていない』だろう。私はまだ読んでいないから、内容も知らないけれど、同志少女の読了後、強く思ったよね。「あぁ確かに。戦争は、女の顔をしていない」って。色々な読み方があり、正解はないのだろうけれど、次はこちらも読んでみたい。
    また、第二次世界大戦のドイツ側からの話に興味が出た方には、是非、須賀しのぶさんの『神の棘』を読んでみてほしい。

    今は一日も早く、ウクライナに平和が戻るように祈るばかりだ。

  • 「スナイパー」という生き物は格好のドラマになる、と私は思っている。それは狙撃手という兵種ならではの「孤独性」が戦争の本質を生々しく描写するからだ。息を殺し、弾丸を込め、撃鉄を起こし、引金を引くという一連の動作がある種の「職人性」を醸し出すことで、人を殺すことへの罪悪感が薄まっていき、人間の純たる残酷さがありありと浮かび上がる。一連の動作は敵兵士を撃ち抜くごとにどんどん作業化していき、やがて凄腕スナイパーという存在には「英雄」と「悪魔」の二面性が備わるようになる。そこに人々は崇拝し、同時に恐怖を覚え、後世に語り継がれるドラマが生まれる。

    本書もそれは例外ではない。

    主人公の少女セラフィマは、ソ連のイワノフスカヤ村で育った16歳の猟師だった。村にドイツ軍が侵攻して肉親を含む全員が皆殺しにされたことをきっかけに、少女狙撃部隊に入隊。以降各戦地に動員され、100人近くのドイツ兵士を殺すことになる凄腕スナイパーへと成長していく。
    スナイパーを題材にした作品と言えば、イラク戦線で160人以上の敵を仕留めた米兵を描いた映画『アメリカン・スナイパー』がある。この作品は、「英雄」と呼ばれた凄腕の狙撃手が、度重なる戦争と殺人によって精神が蝕まれていく様子を描いている。『同志少女』も同様のコンセプトであり、淡々と人を殺していく少女の中に快楽に似た感情が芽生え始め、獣臭い狂気が少女を蔽いつくしていく作品となっている。例に洩れず「戦争と狂気」をテーマとした作品なのだが、他と決定的に違うのは主人公が「少女」だということだ。また、彼女は一切の孤独ではなく、同じ境遇の女性たちで結成された狙撃小隊を組み、仲間で行動すること、そして彼女の戦う動機が「復讐」によるものだということだ。

    セラフィマは2つの復讐を胸に戦地に赴く。母親を殺したドイツ兵狙撃手を殺すために。そして、母親の遺体を焼き払った、自らの師であるイリーナを殺すために。
    怒りによって銃を取り、憎しみによって戦地に赴き、やがて快楽によって人を殺すよう、少女は変わっていく。ソ連の田舎で育った心優しい16歳の少女が、戦果を挙げるにつれキリングマシンへと成り下がっていく。本書はこの「変貌を遂げていく」描写が実に見事で、彼女を人間たらしめているもの、つまり「女性たちを守りたい」という願いと、彼女を悪魔たらしめているもの、つまり「人を殺したい」という願いが、イカレた戦争に晒され続けるなかで齟齬を起こし、彼女の二面性を浮き彫りにしていく。

    筆者の逢坂さんはウェブメディアの取材にこう答えている。
    「戦地という過酷で不条理な世界において、自分の倫理を貫こうとするとどこかで破綻が起きる。彼女たち一人一人が何を志し、その願いがいかにして歪められ、絶望の果てに何を掴んだのか。それらを丁寧に描くことで、戦争というものを重層的にとらえられるのではないかと考えました」
    そう、戦地では人だけでなく理想も死ぬのだ。狙撃小隊の少女たちはみながそれぞれ夢を持ち、互いに語りあうことで絆を深めていた。しかしながら、繰り返される惨劇を前に、その理想は成就し得ない残酷な現実として彼女たちの精神を蝕んでいく。そんなときは、ただ静かに敵を待ち、引金を引く。この行為だけが、狂った世界を一時の間忘れさせてくれ、彼女たちを無の境地に追いやってくれる。その繰り返しによって、ますます自分たちの願いが歪められていくと知りながら。
    ――――――――――――――――――――――――――
    本書の読みどころの一つは、緻密に描かれた戦争描写だ。赤軍やナチス軍、実在の人物である「リュドミラ・パヴリチェンコ」等々、実際の独ソ戦で登場した人物や戦地が、フィクションを超えたリアリティを提供してくれる。加えて、筆者の卓越した筆致により各戦線の雰囲気が表現され、息をつかせぬほどの緊迫感が生まれる。ページをめくるごとに銃声が聞こえ、乾いていない血の匂いが感じ取れそうなほどだ。これは集団戦だけでなく、狙撃手同士の個人戦でも同様であり、息のつまるような駆け引きと一瞬の攻防によって、セラフィマの心音が聞こえてきそうなほどの緊張感がにじんでくる。

    また、本書は女性ならではの目線で戦争を解く本でもある。例えば「女性兵士、しかも後方支援ではなく前線で戦う女の生き方」「女性兵士の目線から見た女性捕虜への野蛮行為」など、一定の答えを出せなさそうな問題が次々と描かれる。こうした行為――特に交戦法規に明らかに違反していながらも、戦争という特殊状況だからこそ目を瞑られる行為――は、「戦争の狂気さ」を描くうえで避けては通れないものだ。しかし、その内容が議論を呼ぶこともあってか、作品内で取り上げながらも、含みを持たせたうえで回答を保留することも多い。
    しかし本書は違う。そうしたセンシティブな問題にきちんと答えを出しながら、全てを伏線として絡ませ、一気にクライマックスまで突っ走る。特に見事なのはラストシーンであり、今までの「女性狙撃手にとっての戦争とは何か」を包括するような答えをズドンと出してくれた。読んでいて思わず、「うわ、そう終わらせるのか!!」と驚愕してしまったほどだ。それは決して奇想天外な結末なわけではなくむしろ逆で、とても綺麗なまとめ方である。
    ラストシーンの後にエピローグが挟まるのだが、「この物語を終わらせたくない」という気持ちでいっぱいだった。そんな感情で小説を読み終えるのは、後にも先にももう無いかもしれない。

    セラフィマは果たしてこの復讐劇にどのような決着をつけるのか。そして彼女とイリーナは、この戦争にどのような答えを見つけるのか。その結末は是非、読んで確かめてほしい。
    ――――――――――――――――――――――――――
    アガサ・クリスティー賞では「史上初の選考委員全員5点満点」となりましたが、それも納得の出来です。本当に凄まじい作品でした。

  • 読みたかった一冊を2022年2冊目として手にとりました。

    ちと長い。

    でも、大満足な作品でした。

    なかなかガチな作品で、主人公は第二次世界大戦下にあるソ連で敵国ドイツの狙撃兵イェーガーに目の前で母親を撃ち殺された少女セラフィマ。

    そして最愛の母、生まれ育った村に火をつけて焼き払った同胞イリーナ。

    「戦いたいか、死にたいか」と問うイリーナに対し「ドイツ軍も、あんたも殺す!敵を皆殺しにして、敵を討つ!」と答えたセラフィマはイリーナに狙撃兵として育て上げられる。

    先の大戦で唯一女性が兵士として戦場に立ったソ連。

    過激な独ソ戦の最大の悲劇を生んだスターリングラード攻防戦に要塞都市ケーニヒスベルクの戦い。

    息詰まるリアルな戦闘シーンも圧巻ながら、セラフィマを中心とした戦争の中で精神が、感情が、どのように変化していくのかを見事に描ききった作品。

    いやぁ、新年早々にとんでもない作品と出会えました。

    説明
    内容紹介
    第166回直木賞候補作
    史上初、選考委員全員が5点満点をつけた、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作

    アクションの緊度、迫力、構成のうまさは只事ではない。
    とても新人の作品とは思えない完成度に感服。──北上次郎(書評家)

    これは武勇伝ではない。
    狙撃兵となった少女が何かを喪い、
    何かを得る物語である。
    ──桐野夏生(作家)

    復讐心に始まった物語は、隊員同士のシスターフッドも描きつつ壮大な展開を見せる。胸アツ。──鴻巣友季子(翻訳家)

    多くの人に読んで欲しい! ではなく、
    多くの人が目撃することになる
    間違いなしの傑作!
    ──小島秀夫(ゲームクリエイター)

    文句なしの5点満点、
    アガサ・クリスティー賞の名にふさわしい傑作。──法月綸太郎(作家)


    独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?
    著者について
    1985年生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。本書で、第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー。埼玉県在住。

全1449件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

逢坂冬馬(あいさか・とうま)
1985年生まれ。35歳。埼玉県在住。『同志少女よ、敵を撃て』にて第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞。

逢坂冬馬の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
夕木 春央
恩田 陸
米澤 穂信
クリス ウィタカ...
知念 実希人
伊坂 幸太郎
宇佐見りん
カズオ・イシグロ
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×