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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784152100788
作品紹介・あらすじ
完全自動運転車が普及した2029年の日本。自動運転アルゴリズム開発会社の社長・坂本は、仕事場の自動運転車内で突如拘束された。襲撃犯はその様子をライブ配信し首都高の封鎖を要求、さもなくば車内に仕掛けた爆弾が爆発すると告げる……迫真のテクノスリラー
感想・レビュー・書評
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舞台は2029年の東京。完全自動運転車が実現した世界。主人公は完全自動運転のアルゴリズムを開発したサイモンテクノロジーズ社の社長、坂本義晴。
ある日、坂本が普段仕事場としている自動運転車で移動中、何者かの男にカージャックされてしまう。
「ムカッラフ」と名乗る男は、坂本にある目的を告げ、その様子をインターネットの動画サイトで配信する。車内には爆弾が仕掛けられており、他の者が干渉しようとすると爆発するよう設定されている。
ムカッラフの正体は?その目的は?そしてどう解決するのか?とてもスリリングな内容だった。
本書でテーマとなっていることは、自動運転が普及する時に問題となることは知っていたが、より具体的に、この問題へのアプローチを知ることができた。
ハヤカワSFコンテストの優秀賞受賞作ということだが、壮大な世界観ではなかった。しかし、楽しめたという意味でも、勉強になったという意味でも有意義な読書体験になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すっごくおもしろかった!
続きが気になって一気読み!
2029年、完全自動運転車が普及する社会。
完全自動運転車…、車内にはハンドルもアクセルも運転席もない!ナンテコト∑(゚Д゚)
自動運転アルゴリズムの開発者であり、サイモン•テクノロジー社の社長である坂本義春が誘拐されるところから物語りは始まる。
自動運転車に拘束され、髪の毛を切られ、頭に嘘発見器を装着され、嘘がバレると電流が走る、そして嘘を重ねるごとに電流はどんどん強くなっていく。
もう、始まりから、ぐいぐい、ぐいぐい、ぐいぐい引き込まれる。次は?それで?どうなるのっ?会社にいても早くお昼休みにならないかなぁってそわそわしてしまった。
AIの事はさっぱりわからないけれど、それでもちゃんと内容が理解できるように書かれていて、とっても読みやすい。
そして近未来のお話だけど、大好きな昭和感たっぷりの刑事まで出てくる。あぁ大好き。
これはぜひ映像化してほしいなぁ。
安野貴博さんのデビュー作。
おもしろかったぁ!
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都知事選後メディアで知った”候補者”安野貴博氏。SFの本も出していると知り読んでみた。
2029年の日本。車はほとんどか自動運転となっているが、ある日、その自動運転アルゴリズムの設計会社の若き社長坂本の乗った車が「ムカッラフ」という者に乗っ取られ、「坂本は殺人者だ」とその様子をネット配信し始め、さらに車は自動爆破されるという。
ムカッラフの狙いは何か? 話が進むにつれ、自動運転アルゴリズムの残酷さと、それがある意図をもって使われた時の恐ろしさが描かれる。
乗っ取り犯ムカッラフ、自動運転設計者坂本、さらにその自動運転車を売る大手自動車会社、警察、ネット配信業者、と犯人の狙いに向けて、動き出す。
自動運転する時、前方に避けがたい人物を複数発見した時、自動運転ソフトは被害の少ない方にぶつかる「トロッコ理論」が働いている。がしかし、ムカッラフはその被害者が、人種や宗教、年齢などにより、偏りがあるのではないか? 意図的に操作されているのではないか? というのだ。なに? トロッコ理論? 初めて耳にしたが、説明を聞くとなるほど、自動運転における選択は、生者と犠牲者を選ぶものだった。半ば近い将来やってきそうな未来、う~ん、自動運転恐るべし。
第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。(2021.8.23選考) ・大賞は「スター・シェイカー」人間六度氏
2022.1.25発行 -
完全自動運転の自動車が普及した数年後の未来に起きるある事件のお話。
すごく良く出来ているし、リアルで、想像以上に面白かった。
本を全く読まない友人にこの小説の話をしたら、「え、それって外国で実際に起きたこと?」と聞かれた。
それくらい、自動運転技術が進んだ国でリアルに起きていそうな問題について書かれている。読んでいてゾッとした。
出てくる登場人物の意思決定プロセスが、どれも十分に納得できるものだったので、とても読み進めやすかった。
完全自動運転のプログラミングコードを実装することは、目に見えない誰かの命を救うことであり、目に見える人の命を奪う事故に繋がることである。
そのことを主人公の坂本が一度も深く認識したことがなかったというのは、あまりにも浮世離れしすぎてるんじゃ?とは感じた。 -
ハヤカワSFコンテスト優秀賞作品。ノンストップのサスペンス?正体は不明でも冒頭から犯人は姿を現し、いわゆる誘拐監禁事件が始まる。舞台は首都高の上を走る自動運転自動車。
自動運転車に仕掛けられた爆弾の起動トリガーは、自動運転車の時速が90kmを下回ること、他の車両が数m以内に接近すること、そして犯人の動画生配信の中断。自動運転車の通信システムは破壊され、犯人と交渉もできない。
犯人が監禁したのは、日本の自動運転車の多くに搭載されている、自動運転アルゴリズムを開発しているサイモン・テクノロジーズ社の創業者、社長、エンジニアの坂本。犯人は、トロッコ問題でそのアルゴリズムが選択する被害者に、人種による偏りがあることを、坂本にシミュレーションで解析するよう求める。
時は2030年、自動運転により職を失ったドライバー、自動運転車により身近な人を喪ったひとなど、いろいろと社会的な問題も描かれている。
冒頭のスピード感の後、事件の背景と登場人物を紹介していく場面が多く、ちょっとスローペースに。全体的には興味深い社会問題の提示もあり面白かった。
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レベル5の自動運転車が実現・普及した将来を舞台にした劇場型カージャック事件。
動き続ける密室ということでは映画「スピード」に近い設定ながら、配信サービスによる縛り、自動運転車ならではのセンサ利用、時限装置のGitHub公開など、現代ならではの舞台装置と、中盤の展開、カージャック事件のミステリ的謎解きもあって、一気に読ませる。
特に自動運転・電気自動車実現後の社会の描き方が未来を感じられて魅力的。
パンドラの箱が開かれた後の世界も気になる。 -
どうなるのか全くわからないハラハラドキドキ感と、それでもどんどん進んでいく疾走感がすごかった
ぜんぜん無駄な文がなく簡潔だったし専門的なことがわからなくてもスピードを落とさずに読めてすごかった
最後の決断と犯人に対するセリフになんか号泣してしまった
すごいよかった〜
最近犯人がすごいヤバい人だったりじつは主人公がすごいヤバい人だったりする小説ばかり(別に選んでそうなったわけではないのに…)読んでたからちゃんとした人たちがそれぞれ自分の最適解で動いていて一番ヤバかった人でも一応罪悪感とかはある普通の人だったのがさらにグッと来た -
トロッコ問題を突き詰めるとこうなる、というひとつの回答のような作品でした。これがデビュー作とは思えない完成度。面白かったです。
テクノロジーの進化は両刃の刃で、いつも人を悩ませます。例えば、AIの進化は人を楽にするのか?はたまた仕事を奪うのか?
自動運転で事故が減る一方、万が一事故が起きた場合の責任の所在はどうなるのか。
AIの医者と人間の医者、どちらの医療ミスなら許せるのか等々…
そんな思考実験を豊かな想像力で何通りも創ることができる。いや~小説って本当にいいもんですね。(水野晴郎風に…古っ) -
すごく面白かった。
最後の展開に引き込まれた。
スピード感が心地よい。
岸田と安藤の坂本を救うための連携プレーと2人の間に交わされる会話や信頼性の高さが見どころだった。
2人じゃなきゃ坂本を救うこともできず、見事なハッピーエンドになることもなかったと思う。
それくらい2人は、刑事ドラマでいう名コンビだと思った。
岸本の「未来は自分で作る」という信念のもと、絶望に瀕してもなんとか解決に導こうとするシーンが感動した。
安藤の、故意に個人情報漏洩したという刑事として絶対に犯してはならないミスをして、逮捕されそうになっても、岸本との連携によって結果的に手柄を上げるところがいい。スカッとした。
終盤、緊急事態が次々と発生しながらも、岸本、安藤、坂本、吉田(犯人)の努力によって間一髪見事としか言いようがない結末に向かう。そこがゾクゾクしてとんでもなく面白い。
犯人もただの悪人ではなく、信念をもって行動していたので、読んだ後見方が変わった。彼のように家族が事故で殺されることはあってはならないと強く思う。
ただの近未来の社会を描くのではなく、登場人物の過去も描いた人物模様、トロッコ問題も含めている所が良い。
社会的弱者が被害を受けやすい(殺されやすい)という物語の展開は、現実の世界でもおこっており、どのように対処するべきかというメッセージが込められていると思う。
安野貴博の作品





