その丘が黄金ならば

  • 早川書房 (2022年7月20日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784152101518

作品紹介・あらすじ

父が亡くなり、孤児になったサムとルーシー。二人は亡骸を埋葬する場所を探すため、広大な土地を彷徨う。それは、中国系移民の過去をめぐる壮大な旅の始まりだった──。ゴールドラッシュ以後の西部を舞台にしたブッカー賞候補作。オバマ元大統領が薦める一冊

感想・レビュー・書評

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  • 中国系移民の一家の喪失と再生を描いたブッカー賞候補作『その丘が黄金ならば』(C・パム・ジャン/藤井光 訳)|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/n947265d92c4d

    The PEN Ten: An Interview with C Pam Zhang - PEN America
    https://pen.org/the-pen-ten-an-interview-with-c-pam-zhang/

    =TOP= | Mariko Enomoto
    http://www.mrkenmt.com/

    その丘が黄金ならば | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/detail.html?id=000000015160

  • 土ぼこり舞うゴールドラッシュ黄昏のとある国、とある時代。
    二人の子供が父親の亡骸を葬りに街を出る。

    黄色い肌の子供達が向かうは荒野。
    バッファローに虎の骨が転がる乾いた世界で彼ら彼女ら(原文の少女の1人は“he”や“she”を避けて語られるらしい)はそれでも流離い生き延びていく。

    新しい肌の色や性差で語られる西部は、例え題名の通りであったとしても、マイノリティであるならそれが幸福に繋がるわけではないことを物語る。

    トニモリスンもコーマックマッカシーも、ジャスミンウォードなんかも、きっとこの本読んで手を振ったり、拍手してる。

  • 哀しい詩のような情景。悪臭を放つ現実。幾つもの放りだされた想いが涙から生まれた湖に波紋を描くころ、あなたのとけていった肉と蠢く欲望は、彼方の土へと還ってゆく。
    はじめは泥。水。血。肉。骨。塩。金。わたしたちをカタチづくっている、すべて。そして風のようにわたしたちは活き、語り、歓びと哀しみを湛えた海のむこうに、夢をみる。
    なにがひとをひとたらしめるのか。なにがあれば、わたしはわたしなのだろう。ひとつひとつ一歩ずつ世界とひとを知ってゆく。賢くなってゆくたび、なんだか恐くなるのはなぜだろう。歴史の本に書かれていない 歴史 がこわいのはなぜだろう。醜く意地悪な現実(過去)を知りたくない。すべてを憎んでしまうから。
    文明社会はまやかしの巣窟だ。そこではさまざまなことを誤魔化しながら生きてゆく。金銭的豊かさと引き換えに、魂を少しづつ、削ってゆく。
    How much of these hills is gold。はるかむかしから。いまのわたしには、見えなかったそれが、とてもよくみえる。金草金草金草骨泥愛。

    どこにもゆけない、なにものにもなれない、そんな息苦しさから逃げてゆく(かえってゆく)、疾走感が快くて、馬上で吹かれる風が目にしみて、うまれたての愛が眩しくて、最後の数頁は涙がとまらない。とてもすきな作家かもしれない。また新しいあなたの詩と物語を、聴きたい。きっと原文は途方もなく美しいのだろうなあ。

  • ふむ

  • 面白かった。
    家族の話、そして2人残された姉妹の物語。
    悲しい現実の中で、家族のために生きること。ルーシーは最後に何を願ったのだろう?サムはルーシーの嘘に気づいているのかな?それとも海の向こうでルーシーが来ることを信じているのか?そもそも無事に海を渡れたのか。
    サムとルーシーが船に乗るために2人で旅をするシーンが心に残った。

  • 最初から最後まで不幸な物語が続く、でもなぜかのめりこんで読んでしまう。
    父親が死亡するまでは貧困と墓力によって苦しんでいくルーシーだが、スィートウォーターに住み始めてからは憐れみを含んだ友情にも表面上は穏やかだが内面は反骨心を持って生きていく様子が美しい。それが成長とは言えないかもしれないが父親と母親の自立して生きていくという信念を引き継いでいる女性になっている。彼女が唯一幸せだったのが父親の遺体を埋葬する旅の間だけだったのでしょう、死んでからのほうが人間の本音が伝わってくることはあると思います。

  • 移民系作家を手掛け続ける藤井光さんの名訳。
    第一部の、荒涼とした世界に二人だけ取り残された姉妹の世界感に驚きながら読み進めると、そこからの二転三転、終盤には思いもよらない怒涛の展開と、詩的で美しい文章がこれでもかと押し寄せる。プロットはものすごく密度が高く、やや過剰なほどだと思ったが、それが優れた小説であることを邪魔しているわけではない。力強くワイルドな設定はコーマック・マッカーシーが引き合いに出されるだろうが、現代女性作家の新鮮な視点が確かに感じられる。

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