戦闘妖精・雪風〈改〉 愛蔵版

  • 早川書房 (2022年7月20日発売)
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感想 : 5
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784152101532

作品紹介・あらすじ

『戦闘妖精・雪風〈改〉』『グッドラック』『アンブロークン アロー』、そして最新作『アグレッサーズ』まで、40年以上にわたる神林長平のライフワーク《戦闘妖精・雪風》。その第1作に貴重なインタビュー、解説、そして書き下ろし短篇を追補した完全保存版

感想・レビュー・書評

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  • 雪風かっこいい雪風かっこいい雪風かっこいい。
    大事な事なんでもう1回書いとこう。
    シルフかっこいいい!!!

    こちらはシンさまのオススメ作品です♪
    なんと図書館に書き下ろしやインタビューを追加した超お得版の〈改〉がありましたので勿論こちらを拝読。
    『シドニアの騎士』と言うSF漫画が大好きなのですが、どことなく同じような雰囲気漂う最高のSFでした!

    南極大陸に突如現れた霧状のゲート。その先は惑星フェアリイに繋がります。正体不明の異星生命体と思しきジャムの通路となっており、地球はこのジャムの侵略に脅かされる事になります。
    それを防ぐべく、通路の向こう側に地球軍は軍事基地を配置。
    それが主人公、零の所属する『フェアリイ空軍(FAF)』です。
    地下には巨大な街も作られており、配属される軍人の多くは地球で居場所を無くした社会不適合者達。零は人に裏切られ続けたせいで、心を開くのは特殊戦の戦隊指揮官であるジェイムズ少佐と愛機のスーパーシルフ雪風だけ。
    零の配属されている『戦術戦闘航空団特殊戦第五飛行戦隊』通称『ブーメラン戦隊』はジャムの情報を持ち帰るのが主任務です。
    味方がやられそうになっていても見殺しにして必ず帰投せよ。
    そのせいで他部隊からは死神と呼ばれ嫌われています。

    雪風は零が名付けたパーソナルネームで、ジェイムズの達筆文字でコックピットの下に名前が書かれています。
    『紫電改』とか『月光』とか漢字ネーミングの戦闘機ってなんでこんなにかっこいいんでしょう。
    勿論かっこ良いのは名前だけではありません。雪風は隊の中でも飛び抜けた性能を持つ機体です。
    必ず帰投せよ、と言ってもジャムは無差別に攻撃を仕掛けてくるので戦闘をしない訳ではありません。ジャム相手にとんでもないGをものともせずに華麗に飛び回ります。

    私は科学技術とか工科学などはさっぱりなので、難しい用語は調べたりしつつ読んでいたので時間がかかってしまいましたが、それもその筈。巻末のインタビューで仰っていたのですが神林さんは工業高校専門学校を卒業されているようです。
    なので分からないなりにも物凄いリアリティを感じられました。
    今後、緊急事態が起きた時には「PAN PAN!」と叫ぼうかな。(すぐ影響される)
    こんな風に淡々と、かっこいい用語が並びます。
    「アレスティングフック-DN 。ACLS-SET。アンチスキッド-OFF。」
    わ、分からんけどかっこいいー!!
    そう、私は戦闘機が好きとか言ってるけれど肝心のメカニズムについてはさっぱりわからんのだ!!(ドォォオオオン!!)

    と威張ってる場合では無く、これだけ分からない用語が頻出しても楽しめたのは、神林さんの文体のお陰です。理路整然と文字が並んでいてしかも完結で、凄く分かりやすい。
    分かった気になれると言った感じ?
    人間を機械のように捉えて接するので淡々としている零の雰囲気と非常に合っています。

    結局は途中でジャムの正体が若干見えて来るのですが、本作は大きなテーマに「人間と機械の戦い」があります。
    対ジャム用に、FAFの方も無人機を導入。それに追従している雪風は学習機能が優れているのでその内に零を必要としなくなるだろうとジェイムズ少佐は予想します。
    人間を乗せていなければ、どんなGにも耐えられる動きが出来る。雪風は零を邪魔に思うのではないか。
    ジャムの方も人間に興味を示していない節もあるので、もしかするとジャムはコンピューターと戦っているのかも知れない。
    零と違って人間味を失っていないジェイムズ少佐はこれについて葛藤しています。「この戦いに、人間は必要なのか?」
    実際に少佐がコンピューターと対話を試みようとする場面もあり、現在のAIの急速な発展と被ってしまいちょっと薄ら寒くなりました。本作ではコンピューターからパチパチと紙に印字されたデータが出てくるお懐かしさですが、シルフのメインコンピューターが凄く近代的なのでうっかり84年に書かれたものだと言う事を忘れていました。
    凄い…。

    一章ごとに話が完結して行きながらも続いて行く構成なので、次はどんな展開が?!胸熱な空中戦が?!と楽しみ過ぎて仕方ありませんでした。この胸熱空中戦の脳内映像を保管したいが為にアニメOAVを見たのですが、物凄い速さで進むので1話で私の読んだ1巻全てが終わってしまい、自動再生で2話目に行こうとするのを慌てて止めました。
    (エンディングテーマがムッシュかまやつさんで、一気に超SFの世界観が崩れましたがこれはこれで…マーイスウィートホーム♪)

    1番好きだったのは大雪に見舞われた基地をひたすら除雪する部隊の話。能力のない犯罪者達が、アルコールを飲みながら凍え死ぬ程の環境で滑走路を除雪して行くのですが、何故か大酒飲みで肝臓を壊している天田少尉が最高位の武勲賞であるマース武勲章を身に覚えの無いまま受章することになり、仲間から孤立、ジェイムズと出会う話。
    派手な戦闘シーンも無いのですが、最後の雪風との接触シーンが凄くて今も強烈に残っています。

    零とジェイムズの友情についても、やり取りが翻訳本を読んでいるかのように軽妙で楽しかったです。
    ジェイムズが零に「雪風を降りる時が来た」と話している時は1巻で?!と驚いていたら、その後の零と雪風の対話のようなシーンになんと?!と更に驚き、しまいにはとんでもない事になり、えぇ?!まだ1巻ですぜ?!!と度肝を抜かれた所で……続く!!

    このシリーズ、13年位かけて(訂正です、40年近くらしいです…)4作が出ているとシンさまに教えて頂いたのですが、リアルタイムで読んでいた方々はよく待ってらっしゃったなあと…。こんなの気になりすぎてハゲるよ!!

    まあ、とにかく言いたいのは…

    雪風、かっこいいぃぃいいい!!!
    (BGM『水の星へ愛をこめて』)

    さて、ここ暫く読書時間が取れずにストレス溜めまくっていたのですが、そんなとある日の事件をついでに置いとこうと思います(また長くなる)

    先日、肌が青白くて弱い私は日焼けすると肌がパンデミックを起こす為に日焼け止めを買いに。
    最近は参考書を読み直したりと読書の時間が全く取れなかったので、さっさと買って雪風に乗ろう!(乗ってるつもり)といそいそ近所のスーパーへと向かい、兵庫県民の味方、はばタンpay(ローカルの電子マネーで、チャージすると5000円分のポイントプレゼントと言う神のようなもの)を使いお買い物。

    ところが!近所のスーパーは電波が弱く『CODE ERROR』『RED ERROR』と私の電子計器(スマホ)が警告を発し全く支払いが完了せず!

    レジのお兄さん、こっち電波強いんで、とレジを放棄して共に私を出口へ誘導!(良いのですか?!)
    再度試みる!
    『ERROR』
    もう店舗の外に出てしまってますよ!お兄さんが職務放棄で軍法会議にかけられないか心配!
    「もう一度QR読み込みましょう」と言う職務違反の優しいお兄さんと戻る途中…
    「ピロ~ン♪」
    で、できたあー!!

    ヘコヘコ頭を下げて階下に降りた時に気付く。
    2重払いになっとる!!!
    2階にブーメラン。「申し訳ありませんー」と泣きつくもレジ混雑中!待つ事10分、お兄さんの上官が到着。「あーこれはサービスカウンター言って貰って良いですか?」
    敬礼
    再度ブーメラン!

    何が言いたかったかと申しますと、お兄さんに多大なる迷惑をおかけした上に、貴重な読書時間が削れた、と3行で終わる事件でした。

    • yukimisakeさん
      1Qさん…(>_<。)
      はばたんpayはなんと現金でコンビニ払い出来るんですよ!
      コンビニチャージできる一休payを誰か作ってあげて!
      (但...
      1Qさん…(>_<。)
      はばたんpayはなんと現金でコンビニ払い出来るんですよ!
      コンビニチャージできる一休payを誰か作ってあげて!
      (但し、溜まったポイントは奥様に行く仕様になります…)
      2024/05/30
    • 1Q84O1さん
      溜まったポイントは奥様へ…
      それは大丈夫!
      理解しております!
      そういう仕組みは我が家のルールなのでw
      溜まったポイントは奥様へ…
      それは大丈夫!
      理解しております!
      そういう仕組みは我が家のルールなのでw
      2024/05/30
    • yukimisakeさん
      1Qさん…(>_<。)
      もう遺伝子レベルで奥様ファーストが染み付いている…笑
      でも、何故かほっこりする…( ˙꒳​˙ )
      1Qさん…(>_<。)
      もう遺伝子レベルで奥様ファーストが染み付いている…笑
      でも、何故かほっこりする…( ˙꒳​˙ )
      2024/05/30
  • 連載開始が1979年で、最初の文庫化が1984年というから、今から40年以上前の作品ということになる。こちらの本は題名の<改>からわかるように、その第1作の改訂版と短編を追加した特別編となっている。なるほど確かに今ならAIと表現しそうなところを「コンピューター」と言っているところなど古さを感じさせる点はあるが(きっとそれも敢えて残しているんだろう)、その扱うテーマは、まったく今読んでも色褪せることがなく、逆に今の、今後の時代を予感さえさせる内容となっている。
    また、発進から戦闘におけるシークエンス、プロシージャーの表現のカッコ良さったら、映像超えのリアル感で、それを読むだけでも価値がある。
    現在、第4部作まで刊行されているそうなので、地道に読んでいこうと思います。

  • 「アグレッサーズ」を読むための復習のついでに、いい機会だから改訂版も読んでみようと思ったら、愛蔵版などというものが出ていて、つい買ってしまった。何度読んでも、好きな作品は変わらない。「インディアン・サマー」と「フェアリイ・冬」の二つ。逐一見比べたわけではないが、改訂箇所が一番多いのは、その「フェアリイ・冬」のようだ。天田少尉は、旧版では戦闘機に乗るための耐性試験を受けていないが、改訂版では受けて落とされている。何よりも目を引くのは、最後の一文が変更されたこと。改訂箇所が多いのは、作者にとっても思い入れのある作品だからだろうかと想像していたら、大当たり。収録されているインタビューの4つ目、「我はいかにして侵略者(アグレッサー)となりしか」によれば、作者が一番好きなのは「インディアン・サマー」で、一番よく書けていると思うのは「フェアリイ・冬」だそうだ。二〇二二年七月二十日印刷、二〇二二年七月二十五日発行。定価(本体2200円+税)。
    収録作品:「戦闘妖精・雪風<改>」、「棘を抜く者――エピソード零(ゼロ)」、「ぼくの、マシン」、「インタビューでたどる神林長平と雪風の40年」

  • 戦闘妖精・雪風〈改〉本編と、82年、99年、09年、22年の貴重なインタビュー、深井零の少年時代を掘り下げる短編「ぼくの、マシン」
    そして、雪風と深井零の出会いを描いた完全新作短編「棘を抜く者 ー エピソード零」が収録されたファン必携本!

    第4部アグレッサーズが出て、第5部も連載中という今!ちょうど〈改〉から再読をしていたところで、雪風熱がぶり返しています。

    ジャムとは何なのか…言葉や哲学を駆使しての探索と、人間と戦闘知性体たちとの共闘とかとか、会話劇が深くてずっと傍線引いていたくなるけれど、そういうのを吹き飛ばす爽快さや清涼感を雪風と深井零から貰っています。雪風の飛ぶ空が美しくて、美しくて、いつまでも終わらないでいてほしいなあ。

    新作短編の「棘を抜く者 ー エピソード零」では、雪風と零の出会いとパーソナルネームの由来が語られます。
    予想外の機動をして乗員を危険な目に合わせてきた機体79113。その問題機の次のパイロットに推されたのが深井零。戦闘機パイロットとしては群を抜いているが、軍人としての適性は最低レベル。訓練機で教官を負傷させた問題パイロットだ。問題機に問題パイロット。毒を持って毒を制することはできるのか?!
    もう、雪風と深井さんの馴れ初めとして最高のストーリィ!!!!でした!
    読めてホントによかったです。

    SFマガジンで連載中の第5部も追っかけています!

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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