われら闇より天を見る

  • 早川書房
4.02
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152101570

作品紹介・あらすじ

自称「無法者」の少女ダッチェスと、過去に囚われた警察署長ウォーク。彼女たちの町に、かつての事件の加害者ヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱しダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が起こり……解説/川出正樹

感想・レビュー・書評

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  • たどり着いた結末、そして明かされる真相はあまりにも哀し過ぎました( •̥ࡇ•̥ )
    「英国推理作家協会賞最優秀長編賞(ゴールドダガー)」受賞
    「2023年本屋大賞翻訳小説部門第一位」
    ミステリー要素だけではなく、愛、友情、悲劇、運命、再生…様々な要素が含まれた味わい深い素晴らしい作品でした


    三十年前アメリカ・カリフォルニア州の田舎街で、子供(ヴィンセント)が子供を轢き殺してしまう事件から物語はスタートする
    そして彼が出所して来たと同時に、また街の歴史は変わって行く
    根っからの悪がいないのにも拘らず、事件が起き続けてしまう

    二人の主人公、13歳の少女ダッチェスと警察署長のウォークの視点で物語は進行していく


    酒と薬物におぼれる母親とまだ幼い弟を守る為に孤独に闘い続けるダッチェスの姿が、読んでいて辛かったです
    ウォークをはじめ、周りの大人は見守ってくれているけれど、誰だって性格ひん曲がっちゃう
    「私は無法者だよ」と言って、常に自分を奮い立たせる姿は痛々しいものでした

    もう一人壮絶な人生を送ったのはヴィンセント
    刑務所にいながらも自分を追い詰め続ける姿は哀しい
    勤め上げて出て来てからも、彼は何も語らない
    どうして?っと時々苛ついちゃう程、語らない
    その彼の謎が鍵を握っているのだろうけれど

    不可解な事件が続いて沢山の人が死んでしまった
    事件が解決し、あまりにも哀しい真相が残された

    ダッチェスのおじいちゃんの言葉
    「人は終わりから始める」
    人は始めの運命は選べない
    しかし自分で人生の区切りの時期を見極め、過去の自分を精算し、明日へ新たな一歩を踏み出すことは出来る
    まさにタイトルぴったりではないか?

    まだまだダッチェスの人生は長い
    闇の中にある一筋の光を求めて生きていって欲しい

    気になっていたこの作品、私の貴重な連休を利用してやっと読めました
    積読からの脱出〜♪ദ്ദി˙◡・)

  • 英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。
    『ミステリが読みたい』海外篇 第1位。

    「それが、ここに流れてる
    あたしたちの血。
    あたしたちは無法者」

    アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘィヴン。30年前にひとりの少女が命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還は、かりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が…。苛烈な運命に翻弄されながら彼女たちがたどり着いたあまりにも哀しい真相とはー?

    (以上、単行本うらすじより)


    まず、ダッチェスの母の妹のシシーを誤って轢き殺してしまったヴィンセントは刑期を務めるために生きてきたという一行があり、なぜそこまでするのかと思いました。15歳の子どもが犯した罪です。

    そして、幼なじみが起こした事件を解決しようとする刑事のウォークの苦悩。

    6歳の弟のロビンを思いやる、わずか13歳の少女のダッチェスの愛情の深さ。

    ヴィンセントは一体何を隠して罪を被っているのか…など不思議でならなかったけれど、思いもよらない結末。
    ヴィンセントの真実がわかったときは、ため息がもれました。

    大きな賞を獲る作品とはこういう作品なのだと思いました。
    家族の大きな愛の物語だと思いました。

    皆さんのレビューを再拝読してみると、ダッチェスやウォークを讃える声が多いように感じましたが、私は一番愛情深い人物は他ならぬヴィンセントだったと思い涙しました。

    なんで、こんな悲劇が起こってしまったのか。
    ダッチェスの未来が明るいものであることを願ってやみません。

  • どうにもならない感情が、この一冊に収まりきらないほど詰まっています。
    15歳の同級生の4人。男女は恋人同士であり、男2人女2人はそれぞれ親友同士。
    キラキラの青春を送っていたであろう4人に事件が起こり、1人は刑務所に入る。
    30年後、彼(ヴィンセント)が刑務所から出てくるところから物語はは動き出す。
    バラバラになってしまった4人だけれど、心は未だに30年前に囚われたまま。ヴィンセントの恋人だったスターの娘・ダッチェス、そして父・ハルも。
    物語はダッチェスと、ヴィンセントの親友・ウォークの目線で進んでいく。ダッチェスにとってヴィンセントは憎むべき相手。ウォークにとっては何があっても変わらず友情を持ち続けている相手。
    ヴィンセントは本当はいいヤツなのか、悪いヤツなのか、読者の気持ちも二転三転させられます。
    そして、愛情の受け取り方を知らないダッチェスと大人たちとのやり取りに胸が痛くなります。特に祖父ハルとの関係は読んでいて切なくなるほど。ただでさえ、思春期の年齢で素直になれないのに、次々と辛すぎる現実を突きつけられ悲しみを抱えきれず、差し伸べられた手を握り返すことができない。
    真実はどこにあるのか?というミステリー要素はもちろんのこと、大切な人を守ろうとするが故に拗れていく登場人物たちの心、真相が分かった時の驚き‥‥重厚な人間ドラマでした。

  • 超★5 テーマは『愛』 今年の海外ミステリー上位に間違いなく入る、超推し! #われら闇より天を見る

    スゴイ本を読んでしまった…
    重厚かつ複雑な人間ドラマ。そして個性豊かで、人間味と気丈な精神をもつ愛しむべき登場人物たち。もう最高です!

    ■レビュー
    かつての凄惨な事件から30年、さらなる不幸の渦に巻き込まれる彼ら。まず物語としての規模が大きすぎて、まるで海外ドラマをフルシーズンを見たかのようです。
    ミステリーとしての真相も超強烈で、読んだ読者は『愛』 を知ることができます。

    そして原題の "We begin at the end"の意味を知った時、明日からまた仕事に勉強に頑張ろうと思わせてくれる作品です。

    特に本書の抜群な点は、登場人物の人間描写が超イイんですよ。

    自分の娘にしたいような素敵な子が登場しちゃいましたよ、主人公のお姉ちゃん。
    何度も何度も心の扉をノックしても、不幸にまみれた人生しか知らない彼女は決して扉を開いてくれない。
    その名の通り無法者だった彼女が、少しずつ『愛』という縁がめぐってきた時、心の扉が少しずつ開いてくる。

    しかし神様は残酷、さらなる試練を彼女に与える。
    胸を張って自分の未来を歩んでほしい。強く強く生きてほしい。あーもうガンバレ!

    おとうとくんも可愛すぎるでしょ。
    純粋で素直で力いっぱい甘えてくる、こんな子を守るためなら、私はどんなことでもしそう。

    そして刑事の彼ですよ。
    30年間も背負い続けてしまった、バカがつくほど真面目で未練の塊のアホ。
    しかし誰よりも強い意志をもっている、バチクソカッコイイ男なんです。
    一人のためにここまで出来たら、俺の人生には意味があったと胸をはって言えると思います。

    他にもおじいさん、弁護士の彼女、ボーイフレンドの彼など、恵愛あふれる人でいっぱいな本書。愛情の切り取り方がめっちゃ上手で、全編通してツライ話にもかかわらず、優しい気持ちに包まれました。

    ちょい長いけど1週間もあれば読めます。
    超絶いいお話なので、死ぬまでには絶対読め!

    ■推しポイント
    おじいさんのセリフ「誇りに思っているぞ」

    私も親をやっていますが、こんなセリフを子供に言えるか自信がありません。
    これを言えるということは、誰よりも子供を信じてあげて、愛しているのはもちろん、知っていなければなりません。

    何を思い、何に迷い、何と戦い、何を楽しんで、何を悩んで、何が好きで、何が嫌いか。皆さんは自らの子供のことを、ちゃんと知っていると言えるでしょうか。

    そして時を経て、お姉ちゃんがおじいさんに投げかけたセリフですよ(※436ページ 最後の一行。知りたい人は読んでね)
    もうこれだけで3杯はメシが食えるし、2,530円を払った価値があります。

    最高に素敵なお話、こんな本に出会えて嬉しいです。
    純粋にそう思える本でした。

  • 2023年本屋大賞翻訳小説部門1位おめでとうございます!

    500ページを超えるイギリスの犯罪小説。
    終始、暗くて辛いストーリーだけど、最後に少し光が差し込んで希望をもてたのがよかった。
    2人の主人公ごとのストーリーが、後半に交わって、事件の真相がわかっていく構成がよかった。

    長編小説だけど、読みやすい小説でした。

  • アメリカの田舎町を舞台に、痛ましさに満ちた13歳の自称「無法者」の少女ダッチェスの成長を描くー

    が、ダッチェスの境遇が痛ましすぎて見ていられない。
    希望もへったくれもない。

    この少女にいったいどうやって救いがもたらされるのか。
    そのことだけが566ページという長いこの物語を読み進める原動力となった。


    とってもアメリカンな小説なので、作者のクリス・ウィタカーさんはイギリスの作家ということに驚いた。

    このミス2023年版の海外編第1位。
    ちなみに、このミス海外編第1位は2019年から2022年までアンソニー・ホロヴィッツさんの独占でした。
    ホロヴィッツさんを2位に押しやっての第1位!

    読むしかないですね。

  • これは、大きな大きな愛の物語です。

    カリフォルニア州の小さな町で起きたひとつの事件。
    それに関わった人々が30年間苦しみ続け、そしてまた次々に起こる悲劇。
    その過酷な運命を背負って生きている13歳の少女ダッチェス。

    最初はあまりにも切ないストーリーに、読み進めるのが苦しくてたまらなかった。
    でもね、幼い弟を守るため、強がって懸命に生きているダッチェスから目が離せなくて。
    祖父の納屋から、あるものを発見する場面があるんだけど、最高に良い場面なの。
    胸がいっぱいになり涙腺崩壊。

    アメリカの美しい自然と広大な大地。
    数々の悲劇はその景色の中に描かれていて、それがまた悲しみを誘う。

    そして衝撃のラストと明らかになる真実。
    もう鳥肌が立つ。
    本当に読んで良かった作品。
    心が震えるって、こういう感覚なのかな。

    ダッチェスと弟のロビン、どうか幸せになって!


    追記
    最後まで読んでしびれたのはヴィンセントの覚悟と、ハルの静かで深い愛情。

    • 松子さん
      あおちゃん、この本ずっと読みたくて
      実は本棚にあるのっ。
      あおちゃんの星5と感想読んでますます読みたくなってきたぁー!(≧∀≦)
      あおちゃん、この本ずっと読みたくて
      実は本棚にあるのっ。
      あおちゃんの星5と感想読んでますます読みたくなってきたぁー!(≧∀≦)
      2023/01/31
    • 1Q84O1さん
      aoiさん
      こんにちは♪
      私もちょっと前に読みました
      過激な言動が多いけど弟を守るためのダッチェスの一生懸命さが心にグッときました(/_;)...
      aoiさん
      こんにちは♪
      私もちょっと前に読みました
      過激な言動が多いけど弟を守るためのダッチェスの一生懸命さが心にグッときました(/_;)
      ダッチェスとロビン本当に幸せになってーって思いますね!
      2023/01/31
    • aoi-soraさん
      まっちゃん、こんにちは^⁠_⁠^
      私は順番待ちしてたんだよ
      手元に持ってるなら、ゆっくり読めるね
      結構ボリュームあるのよ
      でもすごく良いお話...
      まっちゃん、こんにちは^⁠_⁠^
      私は順番待ちしてたんだよ
      手元に持ってるなら、ゆっくり読めるね
      結構ボリュームあるのよ
      でもすごく良いお話だから、是非読んで!

      1Qさん、こんにちは^⁠_⁠^
      レビュー読ませて頂きましたよ
      本当に、幸せになって欲しいですね。
      いっぱい話したいことあるけど、ネタバレするからね
      胸の中に留めて…
      あー、まだ余韻がすごいです
      2023/01/31
  • とても悲しい物語でした。
    多くの登場人物について、それぞれが抱えている問題が描かれており、誰のどの話を聞いても、心が押し潰されそうになります。
    中でも、主人公のダッチェスは圧倒的で、最後までそのオセロがひっくり返ることはありません。
    読み終わって思ったことは、負は連鎖する、ということです。
    不自由なく暮らしている人からすると、"無法者"に対して、なぜそんな行動をするのか、なぜそんな結果になるのか、疑問に思いますが、"無法者"はそうならざるを得ない道の上にいるのかもしれません。
    私は普段生活していて、唾を吐かれることも殴られることも差別を受けることもありませんが、それが全人類に当てはまるわけではないんですね。
    当たり前のことかもしれませんが、改めて気付かされました。
    翻訳かつ文量が多いため、手に取りづらいタイプの本でしたが、読めて良かったなと思います。

    ---
    「みんながきみを見ていても、ほんとのきみは見えてないと思うことはないか?」
    ---

  • We Begin at the End 人は終わりから始める

    いやいやとんでもないが来たな
    自分を無法者と呼ぶ少女ダッチェスと少女の家族を暖かく見守る警察署長(と言っても署に警察官は彼だけ)のウォーク、二人の主人公の物語です

    それにしても作者はこの二人にとんでもない過酷な運命を歩ませます
    二人は共に(他人からの見え方は別として)とてつもなく善良な人間であるのに、その善良さこそが罪であるかのように苦難に襲われ
    ただただ弟や友人たちに幸せになって欲しいと願っての行動が次々と悲劇を呼び込みます

    ですが二人は「終わらせる」ことができずに進み続けます間違った道を
    そして全ての謎が明かされたとき二人の歩む道は!?
    是非とも確かめてほしいです

    第二部の最後なんてもう涙、涙です
    天に向かってふざけんな!と叫びたくなります

    是非とも読んでほしいです


    ホロヴィッツの新作まだ読んでないけどこれはこのミス海外5連覇に待ったがかかるかも!
    そんな★5じゃ足りない名作でした!

    • みんみんさん
      これ図書館の予約順番がやっときたよ〜
      天に向かって叫んでみるわ♪( ´▽`)
      これ図書館の予約順番がやっときたよ〜
      天に向かって叫んでみるわ♪( ´▽`)
      2022/10/11
    • ひまわりめろんさん
      地味に話題になってるようだよ
      捉え方によっては全員が空回りして悲劇を呼び込んでるともとれるけど
      素直なみんみんは素直に感動できるはず!w
      地味に話題になってるようだよ
      捉え方によっては全員が空回りして悲劇を呼び込んでるともとれるけど
      素直なみんみんは素直に感動できるはず!w
      2022/10/11
  • 愛と苦しみがいっぱい詰まった作品。

    主人公は二人。
    ひとりは、小さな町の警察署長 45歳のウォーク。
    変化を好まない 親切で献身的な人物。
    彼が抱えている病を思うと、ただ切ない。

    もう一人は13歳の少女、ダッチェス。
    弟のロビンを守ることだけを考えて生きています。
    誰にもおもねらず、自らを「無法者」と称し
    過激な行動に出ることもしばしば。

    30年前に不幸な事件が起こってしまいます。
    子どもが子どもを不本意に殺害してしまったのです。
    加害者のヴィンセントには重い刑が科せられます。
    そして、刑期を終えたヴィンセントが帰郷。
    その後、小さな町で起こる放火と殺人。
    さらにもう一つ。
    町から遠く離れたダッチェスの祖父・ハルの農場。
    ここでも悲惨な事件が起こってしまいます。

    この作品では、犯人を追うミステリーの要素より、
    登場人物の心理描写に心が奪われます。
    とりわけ13歳のダッチェスには心が痛みます。
    辛い現実に ひねくれてしまった 心と行動。

    最後の書評にあったように
    ふたりの主人公は自分のためではなく
    他人の幸せのために必死で生きるのですが…。

    ハルの口癖「人は終わりから始めるんだ」
    これはこの作品のタイトルでもあります。
    これまでの人生に区切りをつける時。
    それを人は自分で判断して前に進む
    ということでしょうか。

    スケールの大きい 壮絶な愛の物語でした。
    それにしても13歳の少女のあまりにも過酷な人生。
    そして加害者として服役したヴィンセントの想い。
    ダッチェスが前を向いて一歩を踏み出しても
    私ひとりが後に取り残されたような
    ちょっと苦しい読後感が残ります。

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