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本 ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784152101839
作品紹介・あらすじ
ガーナー郡に住む16歳のすべての少女は、危険な魔力を持つとされ、森の奥のキャンプへ一年間追放される。少女ティアニーが、謎に包まれた通過儀礼〈グレイス・イヤー〉でのサバイバルの果てに見た真実。『侍女の物語』×『蠅の王』のポスト・ディストピア小説
感想・レビュー・書評
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【話題の新刊】キム・リゲット/堀江里美訳『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』|Hayakawa Books & Magazines(β)
https://www.hayakawabooks.com/n/n285cfec56207
エリザベス・バンクス、キム・リゲットの新刊「The Grace Year」映画化でメガホン : 映画ニュース - 映画.com
https://eiga.com/news/20190217/6/
Kim Liggett | Author
http://www.kimliggett.com
グレイス・イヤー──少女たちの聖域 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015264/pc_detail/
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物語を通して漂う狂気や異常さには、読んでいて顔を顰めることも多々あったが、制約や制限をされる女性たちが生き残るための希望を見つける姿に心が震えた。
少女には”魔力”があると信じられており、その力が最大になる16歳になると森の奥のキャンプ地へ1年間送られる。それが”グレイス・イヤー”。そこで魔力を解き放ち、清らかな女性になって戻り妻となる。しかし、旅立つ前に求婚されヴェールを送られた少女が生きて戻った場合である。ヴェールを送られなかった少女が生きて戻ってもどこかの労働所送りになる。
そんな理不尽な風習がまかり通る世界そのものに怒りを覚える方も多いだろうが、読み進めていくと現実世界に類似する状況がいくつも浮かんできて目を逸らすことができなくなる。先の風習はきっかけであって、実際に送り込まれた少女たちの状況や心理の恐ろしさこそ現実を思い起こさせる。その中で、絆や信頼が希望となり変化していくことに救われる。また、言語以外に花言葉も要所で使われており、暗く不穏な世界の中で暖かみを感じる。
中盤までは非常に苦しい気持ちになることも多かったが、グレイス・イヤーを終えた少女たちと抗う一部の人達の未来をもっと知りたいと思い、『少女たちの聖域』というサブタイトルが示すことに想像を巡らせる。 -
すごいものを読んでしまった!という読後感。
アメリカの作家が書いた本。
恐ろしい話だった。
ジェンダー問題どころではない。
みんなで生き残るか、ひとりで死ぬか。
女性同士が手を取り合って闘うことが世界を変える道。それにはまず、見方を変えること。
ティアニーの生きる力、立ち直る力が素晴らしい。
後から気づくのだが、両親も姉もティアニーに生き抜いて欲しいと希望を託していた。
ライカーとの未来は、太陽のようだった。
勇敢なティアニーを、ライカーは最初から認めていたのだと思う。
映画化されるそうで、ぜひ見てみたいと思った。
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過酷な物語を通じてとにかく怒りが伝わってくる小説。
ティアニーから目が離せなくて、分厚さをものともしないスピードで読み進めました。
序盤は人名が多くてメモを取りながら読む羽目になったけれど、主要な人物は嫌でも覚えるから結果的にはあまり必要なかった。
苦しみとささやかな希望との間でぶんぶん揺さぶられるような作品で、脳が喜んでいるのがわかる。
ヘイルメアリーを読んでいた時の感情に近い。
特にジューンがマントに仕込んだ仕掛けがわかるシーンが大好き。
ティアニーがずっと逞しくてかっこよくて、本当に過酷なお話だけどもエンパワーされる。
草木や土の匂い、血の匂い、心臓や呼吸の音、それから痛みまで、ありありと想像ができる。
文章で読んでいるとは思えないくらい映像、匂い、音が頭に入ってくる。
私があの中の女の子のうちの一人だったらどうするだろうと考える。
ティアニーみたいに強くない。キルステンのようにはなりたくないしなれない。モブの1人として私はどういう行動をし、どう狂い、生きることかできるだろうか。
結末は少し意外だったし、だからこそ現実的な感じもした。
読み終わってからこれがディストピア小説に分類されることを知ったし、言われてみれば確かにそうなのですが、なんかこれ現実だよなあと思わずには居られない描写がたくさんある。
映画を見たような読後感。映像化されるそうですね。楽しみです。 -
一気読み。
ディストピアのサバイバルYAエンタメ小説で、フェミニズム小説。
面白くないわけがない!
家父長制が支配するディストピアはもちろん現代の社会のメタファーであり、おぞましさの度合いは現実を超えて酷ければ酷いほど、なぜかリアルな現実感となる。
そうなのだ。私たちはこんなサバイバルの毎日を生きている。
「傷つけ合うのは、それがわたしたちに許された唯一の怒りを示す方法だから。選択肢が奪われたとき、わたしたにの内側には炎が生まれる。」
グレイスイヤーでの怒りの放出は、内に向かうしかない女たちの鬱屈の吐き出し口。
グレイスイヤーというものでそれを表現するなんて上手い!
家父長制に傷つくのは女ばかりではないことも描かれる。
「グレイスイヤーの女の子たちだけがガーナーの犠牲者なわけじゃない、密猟者も、警備隊も、妻たちも、アウトスカーツの女たちも…みんなこの一部、わたしたちは同じなのだ。」
そして、女たちの密かな連帯がカッコいい。レジリエンスを持つ女たちのたくましさ!YA小説はこう出なくっちゃ!希望が必要です!
後半のストーリー展開はご都合主義だと言われるかもしれないが、こういう小説を書く人がいること、読む人がいること、そしてそれがヤング向けだということ、その意味は大きい。
映画化もされるとのこと。楽しみだなあ。
続編もあるとのこと。これもまたグレイスのその後が楽しみだな。 -
平積みで気になり手に取った。
ディストピアフェミニズム小説は初だったが、架空世界の設定に現実をひしひしと感じる点が、読んでいてとても面白かった。 -
女性が男性の所有物とされている世界の話。
女性は魔力を持っているなどと書かれていますが、ファンタジー作品ではないです。
訳者あとがきで書かれている、フェミニスト・ディストピア小説という言葉がしっくりきます。
個人的には、痛快なエンタメ要素は感じられず、息苦しくなるような小説でした。
描かれるディストピアは架空の世界だとしても、いつかの時代に、どこかの場所で存在しただろう世界でした。 -
女性って、なぜこんなにも強いのに、こんなにも聡いのに、男よりも下なのだろう。その位置に甘んじているのは、力が弱いからだろうか。ケンカに勝てないからだろうか。ジェンダーギャップを埋めるために叫ばれて久しいが、心に刺さる。母・姉・女の子たちの言葉が、どこかリアルなのだ。日本にはこんな風習ないけれど、どこかリアルで怖いんだ。生き延びても待っているのは、男が望む結婚。16歳で運命の決まる人生。でもその運命に屈さず、己の力で今までの風習にNOを突きつける力が女性にはある。勇気づけられる一作。
p.71 その人を形作っているのは、人生で重ねた無数の小さな選択、誰の目にも触れない選択なのだと。私にコントロールできる事は多くは無いかもしれない。結婚相手にしても、子供を産むことにしても。でも、この瞬間をコントロールするのは私だ。それを無駄にしたくはない。
p.p.294 体中にある傷痕は暴力的で、肌の下でうねる筋肉は攻撃的に見えた。でも今は別のものが見える。強さだけじゃなく、自制心が、傷痕だけじゃなく、癒しがそこにはあった。
p.403 「傷つけ合うのは、それが私たちに許された唯一の怒りを示す方法だから。選択肢が奪われたとき、私たちの内側には炎が生まれる。時々、いつか世界を燃えかすになるまで焼き尽くしてしまうような気がするの。私たちの愛と、怒りと、その間にあらゆるもので」
p.422 「ここでいろんなことがあったけど、それでもみんなの、一人ひとりの中に、強さや慈悲や思いやりを垣間見ることができた」私は全員と目を合わせながらしゃべる。「想像してみて、みんなのそういうところを輝かせることができたら、世界はどんなに明るくなるか。私はそういう世界に住みたい。私にどれだけ時間が残されているのかわからないけど。父さんがよく言ってた。誰も見ていない時にする小さな決断が、その人を作っていくんだって。みんなはどういう人になりたい?」「でもあなたはどうするの?」「帰れないでしょう…今は…あれだけのことがあった後じゃーー」「その通りだね。ガーナーに帰って妻になるなんてまさかできない。でも真実を伝えることができる。彼らの目を見て、グレイスイヤーが本当は何であるかを話すことができる」自分を保つので精一杯だが、気を強く持たなくちゃいけない。たったひとつの亀裂で、この鎧にわずかな隙間ができただけで、きっとバラバラに壊れて床に崩れ落ちてしまうのだから。私が感情を抱いて良い時、快くまで嘆き悲しんで良い時は、いつか私が火葬される時だ。今じゃない。 -
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グレイスイヤーの制度設計を見ていくうちに、子沢山な中、労働力にならない女子の中でもできるだけモテない女子から口減らししたいと考えたら、このやり方が残酷だけど最適なのではないかと恐ろしくなりました。
親兄弟もわかっていて、でもそれを甘んじて受け入れなければ、家族全員豊かに暮らしていくのは無理なのかなあと。
中盤以降、主人公だけ都合の良い展開にも程があるのですが、まあ主人公が超絶美少女だったらと思えば納得できます。
白王子を選ぶ?黒王子を選ぶ?みたいな胸キュン展開も、私としてはまあまあ楽しめました。最終的にどっちもおいしいとこ取りをしたのはさすがにドン引きしましたが。 -
思っていたよりYAロマンス色が濃くて意外だったが、そのジャンルで女たちが被る傷と断絶、それを超える連帯を描いているのがいいなぁ。
十代の読者たちの支えになるだろう。
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最高に面白く
最高に苦しい
こんな世界はいやだな…
いや…世界はこんなだな
今年は例年より本を読んだけど、ある意味断トツ!
続きが読みたくて読みたくて仕方ない。そして進んだら進んだでもっとこの先を知りたい!!
とまるで自分に毒が回ったかのように読んだ
たくさんの方達にせひ読んで欲しい最高の一冊。 -
過去に敬意を払い、未来に希望や願いをたくした物語。
最初はただただ残酷なディストピア小説かと思っていて、何が起こるかわからない恐怖にゾワッとしたし本を閉じて目を背けたくなるくらい嫌悪感にかられたけど、読み終えたときにはなんとも言えないあたたかさで心が満ちた。
この小説はフィクションだけど、完全なる空想の世界ではないと感じてしまうのはやはり未だに女性蔑視の風習がこの世界には根強く残っているからだと思った。これは現代に必要な物語だし、これからも誰かの救いになってほしい。
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何か前評判とか帯に書いてあった内容とは全然違う印象。歯に絹着せず正直にぶっちゃけるとあちこちそれっぽい事並び散らかしてるけど本質はただの恋愛小説としか思えなかった。登場人物誰にも感情移入も共感もできない。
最初ちょっと期待したけど序盤からもうずっとフーーーーーーン鼻ほじでしか読めなかった。主人公の扱われ方がもうほぼなろう。not for meでした。
女性の強さの物語にしたいにしては主人公が女すぎるし男からモテすぎ。結局男の助けを借りまくってるしその理由も自分の力ってよりは外見の魅力じゃんこれみたいな書き方。逆境や性格終わってる皆にいじめられても負けない私に酔ってる感がちょっと強すぎた。理不尽すぎる設定とふわっとした綺麗事と燃え上がる恋愛と雑なざまあがもう完全になろう ならなろう読むんだわ -
やや読みにくさを感じる。
思ったほど、盛り上がらず。
また、場面が飛躍しているように感じたり、明らかに「非現実的だろう」という描写を所々感じた。
訳本だからだろうか。
質の悪いバトル•ロワイアルのようだった。