グレイス・イヤー 少女たちの聖域

  • 早川書房 (2022年11月16日発売)
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本 ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784152101839

作品紹介・あらすじ

ガーナー郡に住む16歳のすべての少女は、危険な魔力を持つとされ、森の奥のキャンプへ一年間追放される。少女ティアニーが、謎に包まれた通過儀礼〈グレイス・イヤー〉でのサバイバルの果てに見た真実。『侍女の物語』×『蠅の王』のポスト・ディストピア小説

感想・レビュー・書評

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  • 【話題の新刊】キム・リゲット/堀江里美訳『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/n285cfec56207

    エリザベス・バンクス、キム・リゲットの新刊「The Grace Year」映画化でメガホン : 映画ニュース - 映画.com
    https://eiga.com/news/20190217/6/

    Kim Liggett | Author
    http://www.kimliggett.com

    グレイス・イヤー──少女たちの聖域 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015264/pc_detail/

  • 物語を通して漂う狂気や異常さには、読んでいて顔を顰めることも多々あったが、制約や制限をされる女性たちが生き残るための希望を見つける姿に心が震えた。

    少女には”魔力”があると信じられており、その力が最大になる16歳になると森の奥のキャンプ地へ1年間送られる。それが”グレイス・イヤー”。そこで魔力を解き放ち、清らかな女性になって戻り妻となる。しかし、旅立つ前に求婚されヴェールを送られた少女が生きて戻った場合である。ヴェールを送られなかった少女が生きて戻ってもどこかの労働所送りになる。

    そんな理不尽な風習がまかり通る世界そのものに怒りを覚える方も多いだろうが、読み進めていくと現実世界に類似する状況がいくつも浮かんできて目を逸らすことができなくなる。先の風習はきっかけであって、実際に送り込まれた少女たちの状況や心理の恐ろしさこそ現実を思い起こさせる。その中で、絆や信頼が希望となり変化していくことに救われる。また、言語以外に花言葉も要所で使われており、暗く不穏な世界の中で暖かみを感じる。

    中盤までは非常に苦しい気持ちになることも多かったが、グレイス・イヤーを終えた少女たちと抗う一部の人達の未来をもっと知りたいと思い、『少女たちの聖域』というサブタイトルが示すことに想像を巡らせる。

  • すごいものを読んでしまった!という読後感。
    アメリカの作家が書いた本。
    恐ろしい話だった。
    ジェンダー問題どころではない。
    みんなで生き残るか、ひとりで死ぬか。
    女性同士が手を取り合って闘うことが世界を変える道。それにはまず、見方を変えること。
    ティアニーの生きる力、立ち直る力が素晴らしい。
    後から気づくのだが、両親も姉もティアニーに生き抜いて欲しいと希望を託していた。
    ライカーとの未来は、太陽のようだった。
    勇敢なティアニーを、ライカーは最初から認めていたのだと思う。
    映画化されるそうで、ぜひ見てみたいと思った。

  • 過酷な物語を通じてとにかく怒りが伝わってくる小説。
    ティアニーから目が離せなくて、分厚さをものともしないスピードで読み進めました。

    序盤は人名が多くてメモを取りながら読む羽目になったけれど、主要な人物は嫌でも覚えるから結果的にはあまり必要なかった。

    苦しみとささやかな希望との間でぶんぶん揺さぶられるような作品で、脳が喜んでいるのがわかる。
    ヘイルメアリーを読んでいた時の感情に近い。
    特にジューンがマントに仕込んだ仕掛けがわかるシーンが大好き。
    ティアニーがずっと逞しくてかっこよくて、本当に過酷なお話だけどもエンパワーされる。

    草木や土の匂い、血の匂い、心臓や呼吸の音、それから痛みまで、ありありと想像ができる。
    文章で読んでいるとは思えないくらい映像、匂い、音が頭に入ってくる。

    私があの中の女の子のうちの一人だったらどうするだろうと考える。
    ティアニーみたいに強くない。キルステンのようにはなりたくないしなれない。モブの1人として私はどういう行動をし、どう狂い、生きることかできるだろうか。

    結末は少し意外だったし、だからこそ現実的な感じもした。

    読み終わってからこれがディストピア小説に分類されることを知ったし、言われてみれば確かにそうなのですが、なんかこれ現実だよなあと思わずには居られない描写がたくさんある。

    映画を見たような読後感。映像化されるそうですね。楽しみです。

  • 一気読み。
    ディストピアのサバイバルYAエンタメ小説で、フェミニズム小説。
    面白くないわけがない!

    家父長制が支配するディストピアはもちろん現代の社会のメタファーであり、おぞましさの度合いは現実を超えて酷ければ酷いほど、なぜかリアルな現実感となる。

    そうなのだ。私たちはこんなサバイバルの毎日を生きている。


    「傷つけ合うのは、それがわたしたちに許された唯一の怒りを示す方法だから。選択肢が奪われたとき、わたしたにの内側には炎が生まれる。」
    グレイスイヤーでの怒りの放出は、内に向かうしかない女たちの鬱屈の吐き出し口。
    グレイスイヤーというものでそれを表現するなんて上手い!

    家父長制に傷つくのは女ばかりではないことも描かれる。
    「グレイスイヤーの女の子たちだけがガーナーの犠牲者なわけじゃない、密猟者も、警備隊も、妻たちも、アウトスカーツの女たちも…みんなこの一部、わたしたちは同じなのだ。」

    そして、女たちの密かな連帯がカッコいい。レジリエンスを持つ女たちのたくましさ!YA小説はこう出なくっちゃ!希望が必要です!
    後半のストーリー展開はご都合主義だと言われるかもしれないが、こういう小説を書く人がいること、読む人がいること、そしてそれがヤング向けだということ、その意味は大きい。

    映画化もされるとのこと。楽しみだなあ。
    続編もあるとのこと。これもまたグレイスのその後が楽しみだな。

  • 平積みで気になり手に取った。
    ディストピアフェミニズム小説は初だったが、架空世界の設定に現実をひしひしと感じる点が、読んでいてとても面白かった。

  • 女性が男性の所有物とされている世界の話。
    女性は魔力を持っているなどと書かれていますが、ファンタジー作品ではないです。

    訳者あとがきで書かれている、フェミニスト・ディストピア小説という言葉がしっくりきます。
    個人的には、痛快なエンタメ要素は感じられず、息苦しくなるような小説でした。
    描かれるディストピアは架空の世界だとしても、いつかの時代に、どこかの場所で存在しただろう世界でした。

  • ガーナー郡に住む16歳のすべての少女は、危険な魔力を持つとされ、森の奥のキャンプへ一年間追放される。《紀伊国屋書店のHPより引用》

    巷では『蠅の王』と『侍女の物語』を掛け合わせたような作品と言われているらしい。たしかに読みながら『蠅の王』に似ているなと思った。
    『侍女の物語』は読むの挫折したのでよくわからない。

    映画の『ヴィレッジ』に雰囲気が似ているような気がしていた。オチもそうなのかな(舞台だけ現代社会と切り離されている)と思ったが、これは違っていたみたい。勝手に近代アメリカだと思って読んでいたが、他の街や村についての言及がなく、ガーナー郡とサバイバル地である森しか世界がない(逃亡先として他の土地が少し出てくる)。

    魔力だと信じたかったものは、森に自生する植物が見せる幻(薬物中毒)と集団ヒステリーで、主人公ティアニーがそれに気づくまで、誰も真実に辿り着くことはなかった。

    このティアニー、自立心に溢れすぎている。冒頭から「誰かの妻になることを嫌い」、そうなるくらいなら「"野良"と呼ばれる下賤の身になってもいい」とまで言う。物語の構造上、貞淑で従順な者ではなくその反対のキャラクターが必要なのは仕方ないとして……

    読んでいて不憫になるほど、ティアニーが真っすぐすぎる。
    悪い言葉を使えば「協調性がない」。一人で戦う(そうならざるをえない状況になる。彼女の頑なな性格ゆえに)姿に、読んでいるこちらも気力が段々と削がれていく。

    フェミニズムが少しあるなと感じたのは、魔力=男を誘惑するもの、少女たち=イヴのように堕落に導く存在という屁理屈に近い言いがかりをガーナーの男たちが信じて主張しているところ。
    お前ら一体誰の腹から生まれてきたんだい?
    中には、珍しくまともな神経を持っている男たちもいるが、大半がアレなのでイライラする。

    頭に映像が浮かんだシーン
    ・終盤、少女たちがサバイバル地から戻る時に、ティアニーの妊娠がわかるところ
    →ここは多分作者も見せ場のつもりで描いたと思う。

    ・序盤で自死のために石を拾う少女
    →入水自殺のために石を拾っていたという理由。もう既にこのあたりから、とんでもない話が始まってしまったという覚悟をした。

    ・キルステン
    →ティアニーのライバル・キルステンが、恋を叶えられず狂って落ちていく様なんて、本当に素晴らしく美しくて見惚れた。水面を指先で撫でる様子が、文章でしか知らないのに、実際に目にしたような気持になる。

    映像化向きだとも思う。でも叶うなら、日本で漫画化かアニメ化してほしい。絵が綺麗な人がいいな。

    読んでいる時、ちょうど「女だけでサバイバルしたらどうなるか」っていう話題を目にした時で、なんでもできる・やろうとする女は使い捨てにされるという説が真実に近いという気がしてきた。

    ちびちび読もうと思ったが続きが気になって仕方がなかった。この物語にも魔力が詰まっている。翻訳が上手だった。

    ティアニーとライカーの恋が、あんな風に始まって終わって、序盤の空気読めないマイケルも苦悩して大人になって、枠に嵌められるような正解なんてなかったのではと思う。

    続けてもう一度読む気にはなれないけれど、またしばらくしたら再読するかもしれない。

  • 女性って、なぜこんなにも強いのに、こんなにも聡いのに、男よりも下なのだろう。その位置に甘んじているのは、力が弱いからだろうか。ケンカに勝てないからだろうか。ジェンダーギャップを埋めるために叫ばれて久しいが、心に刺さる。母・姉・女の子たちの言葉が、どこかリアルなのだ。日本にはこんな風習ないけれど、どこかリアルで怖いんだ。生き延びても待っているのは、男が望む結婚。16歳で運命の決まる人生。でもその運命に屈さず、己の力で今までの風習にNOを突きつける力が女性にはある。勇気づけられる一作。

    p.71 その人を形作っているのは、人生で重ねた無数の小さな選択、誰の目にも触れない選択なのだと。私にコントロールできる事は多くは無いかもしれない。結婚相手にしても、子供を産むことにしても。でも、この瞬間をコントロールするのは私だ。それを無駄にしたくはない。

    p.p.294 体中にある傷痕は暴力的で、肌の下でうねる筋肉は攻撃的に見えた。でも今は別のものが見える。強さだけじゃなく、自制心が、傷痕だけじゃなく、癒しがそこにはあった。

    p.403 「傷つけ合うのは、それが私たちに許された唯一の怒りを示す方法だから。選択肢が奪われたとき、私たちの内側には炎が生まれる。時々、いつか世界を燃えかすになるまで焼き尽くしてしまうような気がするの。私たちの愛と、怒りと、その間にあらゆるもので」

    p.422 「ここでいろんなことがあったけど、それでもみんなの、一人ひとりの中に、強さや慈悲や思いやりを垣間見ることができた」私は全員と目を合わせながらしゃべる。「想像してみて、みんなのそういうところを輝かせることができたら、世界はどんなに明るくなるか。私はそういう世界に住みたい。私にどれだけ時間が残されているのかわからないけど。父さんがよく言ってた。誰も見ていない時にする小さな決断が、その人を作っていくんだって。みんなはどういう人になりたい?」「でもあなたはどうするの?」「帰れないでしょう…今は…あれだけのことがあった後じゃーー」「その通りだね。ガーナーに帰って妻になるなんてまさかできない。でも真実を伝えることができる。彼らの目を見て、グレイスイヤーが本当は何であるかを話すことができる」自分を保つので精一杯だが、気を強く持たなくちゃいけない。たったひとつの亀裂で、この鎧にわずかな隙間ができただけで、きっとバラバラに壊れて床に崩れ落ちてしまうのだから。私が感情を抱いて良い時、快くまで嘆き悲しんで良い時は、いつか私が火葬される時だ。今じゃない。

  • とにもかくにも読め、読んでくれと言いたい本。

    簡単に言えば、家父長制と女性消費から立ち向かう話……なのだが、作中の時代と主人公が暮らすコミュニティ外の世界観が明らかにされていないのがミソで、つまりはどの時代・どのコミュニティでも有り得る話という恐ろしさを感じる。

    コミュニティ内にミソジニーがあるとはいえ、それに密かに立ち向かおうとしている他の女性や、終盤で明らかになるが、女性を一人の個人として尊重する男性もいる。

    正直、中盤に展開したロマンスは「結局恋愛かよ」と萎えたが、そこからの終盤の展開と伏線回収に脱帽した。

  • ハリウッドで映画化!とか、広告もかなり派手に打ち出してるし、推し感強めだなーと気になっていた。
    早川書房でこの値段なら刷り部数も多いんだろうしなー。

    舞台となるガーナー郡では女性は魔力をもつ存在として恐れられ貶められていた。
    すべての女性は牛のように焼き印を捺され、16歳になると男性が妻を選ぶ競りにかけられる。妻になれなかった少女たちは一生過酷な労働を強いられるのだ。
    選ばれた少女も選ばれなかった少女も、グレイスイヤーを生き延びなければならない。
    グレイスイヤー。それは少女たちを一年間森の中のキャンプに追放する風習。
    彼女たちは最低限の日用品や食料を与えられ、共同生活をする。キャンプの外には密猟者がいて彼女たちを狙っている。捕まればれ生きたままゆっくりと解体されて、そのパーツは瓶に詰めた薬として売り物になる。
    そんな過酷な環境をサバイバルする中で、少女たちは自分の中の魔力を見出し燃やし尽くして安全な存在となり、やっと町に戻ることを許されるのだ。
    町の中の女性たちはみんなグレイスイヤーを生き抜いてきた経験を持つ。体のどこかを失った者も少なくない。
    キャンプで起きたことは口外しないのが掟だ。

    ものすごい設定。
    蠅の王とか侍女の物語が引き合いに出されるのも納得。
    日本人ならバトルロワイヤルも思い出すところ。

    キャンプでじわじわと少女たちの精神を侵食していく狂気。狂信的な新興宗教の出家生活にも似た洗脳の日々。
    もし自殺や逃亡をすれば、残してきた妹たちが町から追放されるのだ。
    恐怖、絶望、怒り、嫉妬、ネガティヴな感情が少女たちを追い詰めていく。

    協力して和やかに一年間を過ごせば全員無事で戻れるのに、どうしてもマウンティングが始まってしまうのは、グレイスイヤーの直前に男性に選択される儀式があったからだろう。そのことによって階級意識が生じたのだ。
    うまいなー。ずるいなー。男たち。

    エグイ設定に恋愛要素も絡んできて、ガーナー郡の秘密も次第に明かされていき、最後まで一気読みせざるを得ない。物凄いエネルギーのある物語。

  • あまりに生々しく、ダーク''ファンタジー''であることを忘れかけた。恋愛の話が絡んできてヤングアダルト?と思い、白けそうになってしまったが、「そうだ、この子はまだ16歳なんだ」と思い出す。その後の展開にも引き込まれ、夜更かしして一気に読んでしまった。

    女性達に立ちはだかる理不尽な運命。
    ・女性同士で集うのを禁じられる
    ・女性の結婚相手を男性が決める
    など女性に主導権を渡さないように必死というか、
    力を与えない為の巧妙なシステムに胸糞悪い思いをした。

    「でもわたしは誓った。
    この息が続くかぎり、もっといい人生、嘘偽りのない人生を追い求めると。」p422

    自分に嘘をつかない。女性は消費されたり利用されるためにいる訳では無い。こんな環境なのに主人公の強い決意が希望。


    「女って怖い」
    よく聞くセリフである。
    確かに、女にはいけずだったり、嫉妬深かったり厄介な気性があることは否めない。
    しかし、女を結束させまいとする圧力の方が怖いのではないか、とこの作品を通して思った。
    競わせたり対立を深めさせる見えない構造は無いだろうか?それは私達が生きていくために必要だろうか?
    訳者あとがきで、女性が生き抜く為には結束すること、同性を見る視線を和らげること、という旨の著者の主張が取り上げられている。
    これは本当にその通りだなと。

    世界の見方を変えることで、変革は実は始まっていたのだと、味方は想像以上に多いと、主人公が気づく展開には希望があった。

  • グレイスイヤーの制度設計を見ていくうちに、子沢山な中、労働力にならない女子の中でもできるだけモテない女子から口減らししたいと考えたら、このやり方が残酷だけど最適なのではないかと恐ろしくなりました。
    親兄弟もわかっていて、でもそれを甘んじて受け入れなければ、家族全員豊かに暮らしていくのは無理なのかなあと。
    中盤以降、主人公だけ都合の良い展開にも程があるのですが、まあ主人公が超絶美少女だったらと思えば納得できます。
    白王子を選ぶ?黒王子を選ぶ?みたいな胸キュン展開も、私としてはまあまあ楽しめました。最終的にどっちもおいしいとこ取りをしたのはさすがにドン引きしましたが。

  • 思っていたよりYAロマンス色が濃くて意外だったが、そのジャンルで女たちが被る傷と断絶、それを超える連帯を描いているのがいいなぁ。
    十代の読者たちの支えになるだろう。

  • 最高に面白く
    最高に苦しい
    こんな世界はいやだな…
    いや…世界はこんなだな

    今年は例年より本を読んだけど、ある意味断トツ!
    続きが読みたくて読みたくて仕方ない。そして進んだら進んだでもっとこの先を知りたい!!
    とまるで自分に毒が回ったかのように読んだ

    たくさんの方達にせひ読んで欲しい最高の一冊。

  • 過去に敬意を払い、未来に希望や願いをたくした物語。
    最初はただただ残酷なディストピア小説かと思っていて、何が起こるかわからない恐怖にゾワッとしたし本を閉じて目を背けたくなるくらい嫌悪感にかられたけど、読み終えたときにはなんとも言えないあたたかさで心が満ちた。

    この小説はフィクションだけど、完全なる空想の世界ではないと感じてしまうのはやはり未だに女性蔑視の風習がこの世界には根強く残っているからだと思った。これは現代に必要な物語だし、これからも誰かの救いになってほしい。

  • 「グレイス」という言葉がその中に抱くさまざまな意味を思い知った気がする。
    何十年も続く16歳になる少女たちへの通過儀礼。命を懸けたその1年間を「グレイス」と呼ぶことの、その恐ろしさ。
    なぜ今まで誰もその儀式に対して疑問を抱かなかったのか。なぜ女たちは唯々諾々とその儀式を受け入れ続けてきたのか。なぜ、彼女たちは女としての尊厳を踏みにじられ続けてきたのか。
    架空の都市の、架空の儀式だと思いながら読み始めたけれど、読んでいる途中自分の中に生まれ、読み終わった後もずっと育ち続けている熱いマグマのようなものに焼き尽くされそうだ。
    この熱はなんなんだろう。悲しみか、怒りか、いや、多分これはあきらめない希望の熱だ。
    女として生まれた多くの人が、どのような形であってもさらされるこの理不尽さ。蹂躙され翻弄され搾取され、そしてその命さえ軽々と奪われていく。
    この理不尽を終わらせるのは多分いま私の中でも燃えている怒りと希望なのだろう。女たちの小さな抗いが、ひとつひとつと集まってきっと終わらせるのだ。
    1人の少女の命を懸けた戦いが、この狂った世界を変えていく。
    私たちも試されているのだろう。あなたたちは何もしないの?と問いかけられているのだろう。16歳の少女たちに。

  • 何か前評判とか帯に書いてあった内容とは全然違う印象。歯に絹着せず正直にぶっちゃけるとあちこちそれっぽい事並び散らかしてるけど本質はただの恋愛小説としか思えなかった。登場人物誰にも感情移入も共感もできない。

    最初ちょっと期待したけど序盤からもうずっとフーーーーーーン鼻ほじでしか読めなかった。主人公の扱われ方がもうほぼなろう。not for meでした。

    女性の強さの物語にしたいにしては主人公が女すぎるし男からモテすぎ。結局男の助けを借りまくってるしその理由も自分の力ってよりは外見の魅力じゃんこれみたいな書き方。逆境や性格終わってる皆にいじめられても負けない私に酔ってる感がちょっと強すぎた。理不尽すぎる設定とふわっとした綺麗事と燃え上がる恋愛と雑なざまあがもう完全になろう ならなろう読むんだわ

  • 最初は、わりと面白く読めた。
    けどグレイス・イヤーが始まり、だんだんと主人公であるティアニーの行動に対して理解が追いつかずそのまま終わってしまった。

    冒頭であまり同年代の子たちのとの交流が描かれていないため、立場がわかるような分からない。それなのに、リーダーであるキルステンに媚を売ったり立ち向かったり、キャンプを出たり、戻ったり。
    夢の内容や赤い花もいまいちインパクトにかけて、ティアニーはあのままツリーハウスにいたほうが幸せだったのでは??と。

    結局グレイス・イヤーに関する告発は誰からも行われることなかったのも尻すぼみ。
    あと映画化の報があったけど、あれは残酷だからこそ際立つものがあったので(逆にあんなに酷な描写が多いとは思わなかった)キツそうですね。

  • やや読みにくさを感じる。

    思ったほど、盛り上がらず。
    また、場面が飛躍しているように感じたり、明らかに「非現実的だろう」という描写を所々感じた。
    訳本だからだろうか。

    質の悪いバトル•ロワイアルのようだった。

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