「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて

  • 早川書房 (2022年11月16日発売)
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  • 本 ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152101877

作品紹介・あらすじ

フェミニズム、クィア理論、批判的人種理論――〈社会正義〉の御旗の下、急激な変異と暴走が続くポストモダニズム。「第二のソーカル事件」でその杜撰な実態を暴き、全米に論争を巻き起こした著者コンビが、現代社会を破壊し続ける〈理論〉の正体を解明する!

感想・レビュー・書評

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  • 『「社会正義」はいつも正しい』の掲げた「リベラリズム」の空虚さ|田楽心(田中ラッコ)|note
    https://note.com/rakkoblog/n/nef5d5186c9ba

    アメリカで「リベラリズム」の立場から「ポストモダニズム批判」が強くなっている理由(ベンジャミン・クリッツァー) | 現代ビジネス | 講談社
    https://gendai.media/articles/-/102169

    「社会正義」はいつも正しい──人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015266/

  • 私は2000年代の前半を文学部という環境で過ごした人間であり、いわゆるポストモダン思想の洗礼を浴びたわけであるが、当時、ポストモダン思想を徹底的にコケにしたアラン・ソーカルによる”ソーカル事件”を知ったときは、本当に驚愕したというか、その知的ユーモアに改めて感嘆させられた、という記憶がある。

    その”ソーカル事件”とほぼ同種の方法によって、人種・ジェンダーなどのアイデンティティポリティクスを徹底的にコケにした著者らの論考が本作であり、私としては自身がアイデンティティ・ポリティクスに対して抱いていた違和感が明晰に言語化され膝を打つ思いで読了した。

    前置きが長くなってしまったが、本作はちょっとした人種、ジェンダーなどの発言・振る舞いがSNS上で「当事者への配慮がない」として批判され炎上を巻き起こすような”キャンセル・カルチャー”の流れに対して、ロジカルに反駁する。

    極めて乱暴に要約すれば、
    ・人種、ジェンダーなどの問題に対する活動は初期の活動家たちによって一定程度成功を収め、少なくとも表面的なレベルでの問題は解消した
    ・そこで、問題が解消することで自分たちの存在意義が消失することを恐れた一部の活動家は、言説の世界を極めて重視するポストモダン思想を援用することで、”実は問題は解消されていない”というテーゼを打ち立てた(その結果がキャンセル・カルチャーの問題に結実している)
    ・しかし、彼らが立脚するポストモダン思想はそもそもが明らかに現実世界からは乖離したものであり、むしろ初期の活動家のようにプラグマティックな問題に対しては目を背けることで、かえって問題を大きくしている
    というのが本書の骨子である、と理解した。

    例えば私が心底憤ったのは人種、ジェンダーなどと並ぶアイデンティティの1つとして”肥満”を取り上げ、むしろ”肥満”を肯定的に捉えようとするファット・スタディーズ、という学問一派があるということであった。私は自らがプラグマティックな医療・ヘルスケアの業界で仕事をしているということもあり、無責任に”肥満”を礼賛して肯定するような動きを許すつもりはなく、そのような一派には腹を切って死んで欲しいとする感じている。

  • 体制の保護下にあってこその、ぬくぬくと作文で飯が食える身分を享受しておきながら「体制は抑圧だ」と批判し、現実に起きている問題の理不尽さは見ようともせずに「本質の批判ができる自分」の賢さ(笑)に酔いしれる、親のスネをかじりながら悪さをすることが格好いいと思っている中学生のような、幼稚で滑稽、愚かで無様で有害極まりないリベラルサヨク共のゲバ棒「ポリコレ」。

    学生運動の敗北とともに消滅したかに見えた「活動家」共がアカデミズムの世界に侵入し、「人権」を錦の御旗に、言論・学問の自由を盾に、SNSのネットリンチとキャンセルカルチャーを矛にして、自分たちへの批判は絶対に許さず、言葉狩りと思想統制と果てしない謝罪と賠償と特権の要求に乗り出した背景として、ポストモダン思想の「実用化」があった。

    当初は学者の言葉遊びに過ぎなかった何だかよくわからないポストモダン思想が、反証の困難さ(相互理解の可能性を否定する)を曲解と揚げ足取り用に都合よく利用され、活動家と狂信者が自由な言論空間を汚染し乗っ取る猛毒のツールに変質していった過程は、何やらの悪魔が召喚されたような感がある。

    狂ったポリコレがなぜ広告や創作の世界からタフなヒーローやチャーミングなヒロインを抹殺して気持ちの悪いキャラクターばかりを「強要」し、しかもその「結果」について一切関心を持たないのか、その妄執も歪んだ思想に由来している。(個人的には単なる僻みと嫉妬だと思うが)

    人権は重要。当たり前だ。しかし「人権の重要さを本当に理解しているワタシ『だけ』が正しい」という主張は絶対に誤りだ。

    「つけあがるな」

  • これはバックラッシュ本なのか、逆張りなのか。チェックしないと。

  • 【書誌情報】
    『「社会正義」はいつも正しい――人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』
    原題:Cynical Theories: How Activist Scholarship Made Everything About Race, Gender, and Identity—and Why This Harms Everybody (2020)
    著者:Helen Pluckrose
    著者:James A. Lindsay
    訳者:山形浩生
    訳者:森本正史
    発行:早川書房
    版型:四六判(重さ 497g)
    頁数:448
    定価:3,630円(税込)
    ISBN:978-4-15-210187-7

     フェミニズム、クィア理論、批判的人種理論――〈社会正義〉の御旗の下、急激な変異と暴走が続くポストモダニズム。「第二のソーカル事件」でその杜撰な実態を暴き、全米に論争を巻き起こした著者コンビが、現代社会を破壊し続ける〈理論〉の正体を解明する!
    [https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015266/pc_detail/]
    [https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152101877]

    【感想】
    ・「応用ポストモダニズム」(※ほぼ人文系の政治的に左翼で、科学的態度よりイデオロギーを優先するような、一部の学者・活動家を指す造語)を問題視し、リベラリズムの原理に立ち返ってみよう、の本。

    ・この書名なので「逆張り」は要素はある……というか、パロディ論文を投稿した著者の書いた本なのでむしろそれが狙い。しかも「逆張り」どころか正面突破を目指してるっぽい(この試みが成功してるかは本を読んで判断するしかない)。

    ・本書の外側の情報だが、著者(James A. Lindsay )が一部(英語圏のSNSとか)から極右とか差別主義とか評価されているが、どういう極右なのかは不明。実際たまにヤバい発言をしているが、陣営を移るさいのリップクサービスかもしれない。はたまた本当に転向したのかもしれない。
     ただ、少なくともこの書籍だけを見ればリベラル側ではある。逆に言えば、この書籍以外に著者の言動を考慮に入れると、極右がリベラルを騙っている本とも言えなくもない。

    ・ところで、現実のマイノリティへの差別という問題に対して、(この本のような)単純化されたリベラリズムまたは(James A. Lindsayのような)極右的な立場から、何らかの処方箋ってひき出せるんでしょうか? その問題意識を前提にして読むと、第10章はそれこそ空論っぽい印象なんですが。

    ・あと、本書の訳者解説は残念ながら解像度が荒すぎるまま筆が滑ってる(つまり、山形さんが内容をわかりやすくするための例を書いたつもりで、事実誤認を載せている)。
     今回は山形さんの悪いところが出てる。山形浩生さんは、小説と経済(とLinux周辺の言説)では信頼できるけど、国際政治と日本政治の時事とジェンダー問題とか環境問題ではあまり信用できない。

    追記:案の定、訳者解説がツッコミを受けて、ハヤカワの編集がそれを公開停止に。
     安易に停止するべきではないと思う。読者としてはこういうノリはヒースやピンカーで慣れているので、理屈で反論してほしい。
     早川が炎上商法を仕掛けておいて(くだんの文章を書いた訳者はともかく、公開した編集者は意図的ですよね?)、「こわい批判が殺到したので公開停止しました」と被害者ぶるのは作戦失敗ではなく現実逃避なので、やめてほしい。そういう手段は、短期的に批判をかわせるだけで、長期的には信用を失うだけだと思う。


    ・紹介記事。
    [https://gendai.media/articles/-/102169]

    ・ハヤカワ書房のサイトでは「原書名:CYNICAL THEORIES: How Activist」としているが(2022年11月16日アクセス)、毎度タイトルを切断する暴挙になっている。

    ・Amazonにも紀伊國屋書店にもハヤカワ書房にも、本書の簡易目次すら載ってないのはどういうことだ(なので写した↓)。


    【目次】
    献辞
    目次

    序章 

    第1章 ポストモダニズム――知と権力の革命
    ポストモダニズムのルーツ、原理、主題
    二つの原理と四つの主題
    ポストモダニズムは死んだんじゃなかったっけ? 

    第2章 応用ポストモダニズムへの転回――抑圧を現実に 
    〈理論〉の変異
    新しいデフォルトの見方
    応用できないものを応用する
    ポストモダン原理と主題の応用
    〈社会正義〉研究の出現

    第3章 ポストコロニアル理論――他者救済のために西洋を脱構築する
    応用ポストモダン的取り組みとしてのポストコロニアリズム
    思考様式の比較対象
    すべてを脱植民地化する
    研究正義を達成するには
    問題をさかだちさせて維持する
    危険で尊大な理論

    第4章 クィア理論――ノーマルからの自由
    クィア 〈理論〉略史
    動詞:クィアる、名詞:クィア
    『性の歴史』のクィア遺産
    クィア 〈理論〉の守護妖精たち
    クィア 〈理論〉におけるポストモダン原理と主題

    第5章 批判的人種理論と交差性――人種差別を終わらせるために、あらゆるところに人種差別を見い出す
    批判的アプローチをとる
    批判的人種〈理論〉の拡散
    応用ポストモダニズムとしての批判的人種 〈理論〉
    交差性
    交差性と応用ポストモダニズム転回
    複雑だけど、非常に単純
    〈社会正義〉のカースト制
    〈社会正義〉のミーム
    気高い目標、ひどい手段

    第6章 フェミニズムとジェンダー・スタディーズ――高度化としての単純化
    フェミニズム、今昔
    「ますます高度化する」〈理論〉
    ジェンダー・スタディーズする
    リベラル・フェミニズムの死
    多様性〈理論家〉たちの試練と苦難
    階級なき〈理論〉
    男らしさと男性について
    転回のまとめ

    第7章 障害学とファット・スタディーズ――支援グループのアイデンティティ理論
    障害学
    健常主義
    有益な支援の脱線
    ファット スタディーズ
    〈理論〉被害妄想のおとぎ話
    支援グループ的学術研究

    第8章 社会正義研究と思想――社会正義的な真理
    進化するポストモダニズム
    新語の洪水
    何者かは知識次第
    別の形の色盲〔カラーブラインドネス〕
    汝、〈理論〉に逆らうなかれ
    まとめ――ポストモダン原理と主題を現実にする

    第9章 行動する社会正義――机上の空論
    大学で何が起きているのか、そしてなぜそれが重要なのか?
    もっと広い世界への影響
    甘やかしと被害者意識の文化
    機関を襲った〈社会正義〉:事例研究
    〈理論〉がいいのは机上だけ

    第10章 社会正義イデオロギーに代わるもの――アイデンティティ・ポリティクスなきリベラリズム
    なぜ議論の自由が重要なのか
    〈理論〉はリベラリズムを理解できない
    リベラル科学
    リベラリズムから見たポストモダンの原理や主題
    アイデンティティ・ポリティクスは極右を煽る
    解決策についての簡単な議論

    結論と声明
    謝辞
    訳者解説
    主要参考文献

  • 障害者と支援者のところが理解しやすかった。ポリコレやDEIに限らず、事態を悪化させるのは当事者ではなくいつもその外野で、さらにその外野はたいてい自分のことを当事者の代理人と信じて疑わないところが問題なんだよなー。同時に、もし糾弾されたら、知らなかった、では済まないこともよく承知しておいたほうがいい(これはわたしへ言っている) 無知は罪なんだよ

  • 読み始めは、少々難解だなと感じました。
    ですが、読み進めていくうちに、昨今のポリコレに纏わる話を聞く度に感じる違和感の原因がわかった様な気がします。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC18435238

  • カルト化するポストモダン。近年、欧米、特にアメリカで猛威を振るうようになったポリティカル・コレクトネス、あるいは「社会正義」運動の理論と、その思想的源流についてまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40291134

  • 堅すぎて難読!

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