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本 ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784152101907
作品紹介・あらすじ
マリアンは、お手伝いの息子コネルとは幼馴染。惹かれ合い、周囲に内緒で付き合い始めるが、高校卒業前に別れてしまう。だが同じ大学に通うことになりーー。劣等感や社会格差、すれ違いで引き裂かれた男女の恋愛の機微を描く、全世界100万部超の傑作長篇小説
感想・レビュー・書評
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アイルランドの田舎の高校生男女2人が、おとなになっていく過程を、2人の関係性から描いたお話。
高校でのスクールカーストが、貧富の差ゆえに、大学では逆転してしまうところなど、子供の頃の社会と大人の社会のあいだにある理不尽な違いは、日本よりも海外の方が顕著なんだろうなと想像しながら読みました。
二人の間には、いわゆる、ソウルメイトのような、でもそんな爽やかな言葉では言い表せないような絆もしくは共依存があって、すれ違いまくりこじらせまくり、ラブストーリーと友情物語を行ったり来たりする息苦しい感じも、リアルな青春小説という感じ。
毒親(毒家族)との別離がなかなかうまくいかないところや、友達だと思ってる人たちが実はそうではなかったなど、おとなになる途中でもがきながら通り過ぎる様々なイベントもあり。
お酒やセックスや暴力が多すぎるのは、ちょっと好きではないけど(そんなものなくても青春のもがきはあり得ると思っているので)、
大学や文学とは社会ステータスを示すためだけのシンボリックなものにすぎないのだという気付きに気持ち悪くなる主人公の男の子(元スクールカースト上層部)の青臭さが好きです。
それにしてももともとの文体のせいなのか翻訳のせいなのか、読みづらいのがもったいない。元の英文はこんな感じなんだろうなと思いながら読みました。ということは、日本語としてはぜんぜん自然体じゃないと言うか。
この作家さんはイギリスで凄く人気とのことなので、他の作品は原文で読もうかなと思いました。
ただ、ところどころ胸を打つ文章があって。私は、主人公の男の子が、鬱になり世の真実の醜い姿に気が付きながらも、文章を書いていきたいといううちなる前向きな思いに駆られて復調してゆく描写が好きでした:
「それでもその夜コネルは家に戻ると、新しい短編のために書いてあったメモのいくつかを読み返して、サッカーの完璧なゴールのような、木漏れ日がキラキラと揺れ動くような、通り過ぎる車の窓から聞こえてきた曲のフレーズのような、そんな喜びの鼓動がかつてのように自分の中で脈打っているのを感じた。どんな状況であっても、人生はこんな喜びの瞬間を運んでくる。」 -
人からどう思われるか、見栄、自己肯定感の低さ、未熟さ、お互いのパワーバランス、属してる環境など色んな要因ですれ違いまくる2人を見ているともどかしい。2人の心の闇というか抱えている問題が繊細に描かれていて、単純にどちらかが悪いと言い切れないようなどちらにも問題があるようなほの暗さが終始続くため明るい話ではないけれど、不思議と瑞々しい青春に思える。
マリアンの「自分の本当の人生はどこか遠いところで、自分抜きで進んでいるという感覚があったがどうすればそこにたどり着いて参加できるのか分からなった」っていうところに共感してしまう -
共依存になる背景が散りばめられてたな
思春期までは自分たちの本能だけで恋愛できてたのに、大人になるにつれ家族構成とか労働階級が露見してきて恋愛が上手くいかないの分かる -
☆☆☆ / なんだかすごく読みにくくて、読むのに時間がかかった。同世代の頃に読んでいたらもう少し入り込めたのかも。
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某誌で角田光代さんがおすすめしていたので読んでみた。恋愛小説はもういいかなと思うし、実際この小説もあらすじだけまとめれば、さほど新鮮味はない…はずなのに、ふたりの行方から目が離せず、残酷な展開に何度も胸をぶっ刺されながらも読み耽った。山崎まどかさん、コラムやオシャレな何かをオススメするツイートしか読んだことなかったけど、翻訳もすごく上手だ。コネルの喋り方とか同じ年頃のうちの子みたいで、母親目線で生態を観察している気分になったり。マリアンは魅力的なのに痛々しくて、あの被支配体質はちょっとはコネルのせいもあるのかな、それとも生来の性癖なのかな。いい歳して恋愛のキビがよくわからないので、考え込んでしまった。サリー・ルーニー、
淡々としてるのにじわっと深く、低温なのに生身を感じる、ちょっと未体験の読み心地がクセになりそう。 -
互いに惹かれながらもすれ違い続けるマリアンとコネルにじりじりした。もし付き合い続けたとしても先行きに明るい展望は望めない。それは2人の関係が共依存的だからだ。
やっと2人の仲が安定しそうになったやさきに、コネルの今後の人生を考慮して別れを決意するマリアン。
最後の1行を読んで感じたのはふっと心が軽くなるような開放感だった。
心に深い傷を持つマリアンがコネルとの共依存的な関係から一歩を踏み出したのだ。えらい、えらいよマリアン。 -
海外の作品にはずっと抵抗感があったけど、この作品はスイスイ読めた。
登場人物の横文字の名前や地名が、固有名詞としてではなく、単なる記号としてか入って来ず没入できなかったのが原因だったかも。
でもこの作品に関しては、色んな登場人物が出てくるけど、とにかく主役2人だけがわかればあとはそんなに重要ではないというか、そこの軸がぶれなければどんどんのめり込む物語だった。
またその没入感は、会話のテンポや会話と地の文が続いているように読めるっていうのも理由だったかも。原文を読んでいないからわからないけど。
そうなると、翻訳が自分に合っていたのかもしれないし、そこの重要性をかなり感じた。また、読み慣れていないからこそ、訳者あとがきがめちゃくちゃありがたく、要旨をしっかり振り返ることができた。
かなり現代的でまさに今を生きる若者の物語なんだけど、青臭さや瑞々しさだけではない、汚いことや暗さや欲望もしっかり表現されていて、周囲に左右されながら近づくとまた離れてしまう2人の関係性は読み応えがあったし、情景がすんなり思い浮かんで映画的でもあった。
この作品をきっかけにもっと海外作品も読んでいきたい。 -
ヒリヒリする、そして何よりエモい。
根っこで繋がって、養分を分け合う関係って素敵だなと思った。
言葉は割とシンプルで、英語原文で読みたかったなと思う本。 -
友達になりたいと思う主人公に久しぶりに出会えた。
たまたま年齢設定が同世代だったけど、たぶんどんな時期に読んでも大好きになったと思う。
二人の感情がとても繊細で危なっかしくて、ページを捲る手がピリピリした。
共感できるところしかない!
こんなに暮らしてる環境が違うのに、同じ気持ちになるなんて不思議。
最後の一行で泣きそうになった。