不快な夕闇

  • 早川書房
2.79
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感想 : 14
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102119

作品紹介・あらすじ

オランダの酪農家一家に育った10歳のヤスは、クリスマスの晩餐用に殺されるかもしれない自分のウサギの代わりに兄が死にますようにと神に祈る。その祈りが現実となった時、不穏な空想の闇がヤスを襲う。史上最年少でのブッカー国際賞受賞作。解説/鴻巣友季子

感想・レビュー・書評

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  • ブッカー国際賞、「ディストピア」がキーワード 小川洋子「密やかな結晶」も最終候補|好書好日(2020.09.06)
    https://book.asahi.com/article/13692968

    2020年 国際ブッカー賞受賞作はThe Discomfort of Evening - トーキョーブックガール(2020-09-01)
    https://www.tokyobookgirl.com/entry/the-discomfort-of-evening

    Marieke Lucas Rijneveld - Marieke Lucas Rijneveld
    https://mariekelucasrijneveld.com

    不快な夕闇 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000015348

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      (書評)『不快な夕闇』 マリーケ・ルカス・ライネフェルト〈著〉:朝日新聞デジタル(有料記事)
      https://www.asahi.com/...
      (書評)『不快な夕闇』 マリーケ・ルカス・ライネフェルト〈著〉:朝日新聞デジタル(有料記事)
      https://www.asahi.com/articles/DA3S15605080.html

      【試し読み】オランダ文学界の新星が、10歳の子どもの視点から描く”歪み”──ブッカー国際賞受賞作『不快な夕闇』(マリーケ・ルカス・ライネフェルト/國森由美子訳)|Hayakawa Books & Magazines(β)
      https://www.hayakawabooks.com/n/n889d101906b0

      オランダの農家育ちの作家が、ブッカー国際賞を最年少受賞。マリーケ・ルカス・ライネフェルトってどんな人?|Hayakawa Books & Magazines(β)
      https://www.hayakawabooks.com/n/ne46940d53e87
      2023/04/12
  • 「不快なのはいいことで、不快の中にいるのがほんとうのわたしたちなんだって」

    ひとつひとつの会話が、おまじないのように、あるいは、呪いのように、暗闇をてらすランタンのようにぽつりぽつりと灯っている。
    詩人でもある彼女の紡いでゆく少女のものがたりは、まるで思い出のアルバムにそえられた詩のよう。少女からみた世界の不気味さと神秘は、氷の張った湖の中からみた光と影。「出口へとむかうには、暗いほうへと泳がなくてはいけない」。
    ちいさな身体を、彼女の頭のなかの宇宙がのみこんでゆく。よせあつめた孤独の束にそっとふれると、凍りついたその花々が粉々に砕けた。愛をかいさない 神 のことばは、彼らをどこでもない闇のなかへと漂泊させる。



    「そしてわたしは思った──いやちがう。親は子どもたちの中に生き続ける。その逆じゃなくて。親の持っている狂気が私たちの中に生き続けるんだ──。」

  •  最初から主人公ヤスの独白で終始する段落のない話し言葉で語られる文章はこのまま本を閉じてもう読むのはやめようかと思わせた。話は全然前に進まず、どこにも終わりがない穴倉にいるよう。ただこの先、この主人公がどう変わっていくのか、どんな結末を迎えるのか、それを知りたくてページをめくった。何が辛いと言っても主人公が幸せではないことが一番の不幸であった。

     オランダ人作家の本を探しこの本にたどり着いたが、過激なほどの「主」への信仰、オランダ(社会、習慣)は宗教にがんじがらめな社会なのかと最上級の驚きがあった。家族を縛り厳しく監視しているようで、なにも子どものことが見えていない「父」。目の前にいる子どもたちには無関心で逝ってしまった「子」へのゆがんで生気のない「母」。お互いがお互いを縛る宗教で封じ込められ、人々は現代社会から隔絶されているかのようで、表出される子どもたちの行為、行動は動物的で、日本で言うところの「自然主義文学」なのかと思わないでもなかったが、盲目的に「主」を信じる者たちはもはや「人間」とは離れた存在であるのかもしれないと思った。

     とにかく解説を読まなければこの物語の大事な部分(ヤスがジャケットを脱がない理由が感情や心情的なものでなく病理的なもので、ヘソに刺す画鋲の意味もここにある信仰もある意味特殊であることもわからないで終わっただろう。

     獣医師が「君は僕が今まで出会った中で一番かわいい女の子」との言葉に希望を見出した私はジャケットをヤスが脱いだ時、蝶のように変貌してほしいと願いながら・・・。

    「不快 uncomfort」なんて物足りないくらいな読了後も心に「不快」が沈むくらいな作品だった。賞讃された作品のようだけれど読了するには読書筋が相当にいるような気がする。


     

  • 読み終わってなお、飲み込みきれない作品だった。

  • 気味悪さにハマる前に文体の幼さに読めなくなった。子供主人公だと文体までそうすること多いけど、おかげで全然のめり込めない

  • 本の雑誌・めったくたガイドから。上半期を含めたベスト企画や、ジャンル特集などでのオススメ作品については、複数人の意見だったり、時を経ての評価だったりで、ある程度以上の保証付きって感じがするけど、新刊については、とりあえず留保っていう臨み方が妥当なのかも。手あたり次第の時間があるでもなく、書店での目利き力があるでもない自分は、どうしても書評やブックガイドで当りをつけたくなってしまう訳だけど、その仕方も工夫しないと、ってことで。前置きばっかになったけど、要は本作が、いまひとつ楽しめなかったということなのでした。

  • 表題と表紙絵の不吉さに惹かれて手に取る。
    うさぎではなく、一緒にスケート大会に連れて行ってくれなかった兄の死を祈ってしまった主人公ヤス。それはほんの些細な出来心。
    そしてそれは兄マーティスの死とは関係ないと誰もが思うに違いないのに。彼女は常に孤独で救いを求めている。自分自身さえ見られない闇の中でじっとうずくまって。
    この物語は主人公ヤスの祈りの物語なのだと感じた。

    わたしは雪の上にあとを残していく。
    だれかがわたしを見つけてくれますように。
    わたしが自分自身を見つけられるようにしてくれますように。P.325

    歌声を聞いているとき、電車に揺られているとき、ストレッチをしているとき、ふとヤスのことを考える。
    決して衝撃を受けるような物語でも特段面白い物語でもなかったのに、しばらくの間、彼女はわたしの頭に居続けそうだ。
    自分もびっくり。


    なお、あとがきによれば「内容はオランダらしく、わたしたちの文化は日本とかなり違う」P.340という。
    確かに、日々の過ごし方、聞いたこともない料理やお菓子の名前がちょこちょこと登場しており、おおいに興味をそそられた。

    ヒュザーレンサラダ、具のたくさん入ったポテトサラダ
    アドヴォカート、卵黄で作るリキュール。ホイップクリームをのせる
    ファイヤーボール、ガム。赤い
    つぶつぶ飾りのついたフィリングいりのリングクッキー
    ライスプディングケーキ
    尻からジャガイモやニンニクや、ネとかビーツとかをいっぱい詰めたかもや七面鳥
    ホットチョコレート
    トムプース、オランダ独特のミルフィーユ風なケーキ
    アップルストロープ、りんごを原料とする濃厚なエキス状のペースト
    レーズン入りでアイシングのかかったコーヒーブローチェ
    卵パン
    サワードゥ
    スペキュラースクッキー
    ミューズリー付きパン
    塩漬けハーリンク
    ヤギの足(お菓子)
    アップルベニエ
    オリーボレン、オランダ風ドーナッツ。アップルベニエとともに大晦日に食べる
    バターサブレ

    デルトフトブーレー
    魔女がいっぱい ロアルド・ダール 本

    【図書館本】

  • 暗くて辛くて、、、

  • 魂が入り込めなかった。
    宗教的な背景なのか、主人公との感性が違いすぎるのか。
    イメージが結ばない。

  • 10歳の時スケートに出かけた大好きな兄が氷の割れ目に落ちて死んだ。その喪失感がヤスの心に暗い陰を落とし壊れていく家族とともに闇の中で喘いでいるような日々となる。聖書の言葉が恐ろしい枷となり、父母の修復のための生贄や目覚め始めた性への興味、禍禍しい兄の性的虐待や牛の口蹄疫などいろんな問題がごった煮になった風景が物悲しく広がって、最後の冷凍庫の場面に収束する。
    表紙の少女が身を守る赤いジャケットを着てこちらを見る虚な目に恐怖する。

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