- 本 ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152102119
作品紹介・あらすじ
オランダの酪農家一家に育った10歳のヤスは、クリスマスの晩餐用に殺されるかもしれない自分のウサギの代わりに兄が死にますようにと神に祈る。その祈りが現実となった時、不穏な空想の闇がヤスを襲う。史上最年少でのブッカー国際賞受賞作。解説/鴻巣友季子
感想・レビュー・書評
-
「不快なのはいいことで、不快の中にいるのがほんとうのわたしたちなんだって」
ひとつひとつの会話が、おまじないのように、あるいは、呪いのように、暗闇をてらすランタンのようにぽつりぽつりと灯っている。
詩人でもある彼女の紡いでゆく少女のものがたりは、まるで思い出のアルバムにそえられた詩のよう。少女からみた世界の不気味さと神秘は、氷の張った湖の中からみた光と影。「出口へとむかうには、暗いほうへと泳がなくてはいけない」。
ちいさな身体を、彼女の頭のなかの宇宙がのみこんでゆく。よせあつめた孤独の束にそっとふれると、凍りついたその花々が粉々に砕けた。愛をかいさない 神 のことばは、彼らをどこでもない闇のなかへと漂泊させる。
「そしてわたしは思った──いやちがう。親は子どもたちの中に生き続ける。その逆じゃなくて。親の持っている狂気が私たちの中に生き続けるんだ──。」
-
読み終わってなお、飲み込みきれない作品だった。
-
気味悪さにハマる前に文体の幼さに読めなくなった。子供主人公だと文体までそうすること多いけど、おかげで全然のめり込めない
-
本の雑誌・めったくたガイドから。上半期を含めたベスト企画や、ジャンル特集などでのオススメ作品については、複数人の意見だったり、時を経ての評価だったりで、ある程度以上の保証付きって感じがするけど、新刊については、とりあえず留保っていう臨み方が妥当なのかも。手あたり次第の時間があるでもなく、書店での目利き力があるでもない自分は、どうしても書評やブックガイドで当りをつけたくなってしまう訳だけど、その仕方も工夫しないと、ってことで。前置きばっかになったけど、要は本作が、いまひとつ楽しめなかったということなのでした。
-
表題と表紙絵の不吉さに惹かれて手に取る。
うさぎではなく、一緒にスケート大会に連れて行ってくれなかった兄の死を祈ってしまった主人公ヤス。それはほんの些細な出来心。
そしてそれは兄マーティスの死とは関係ないと誰もが思うに違いないのに。彼女は常に孤独で救いを求めている。自分自身さえ見られない闇の中でじっとうずくまって。
この物語は主人公ヤスの祈りの物語なのだと感じた。
わたしは雪の上にあとを残していく。
だれかがわたしを見つけてくれますように。
わたしが自分自身を見つけられるようにしてくれますように。P.325
歌声を聞いているとき、電車に揺られているとき、ストレッチをしているとき、ふとヤスのことを考える。
決して衝撃を受けるような物語でも特段面白い物語でもなかったのに、しばらくの間、彼女はわたしの頭に居続けそうだ。
自分もびっくり。
なお、あとがきによれば「内容はオランダらしく、わたしたちの文化は日本とかなり違う」P.340という。
確かに、日々の過ごし方、聞いたこともない料理やお菓子の名前がちょこちょこと登場しており、おおいに興味をそそられた。
ヒュザーレンサラダ、具のたくさん入ったポテトサラダ
アドヴォカート、卵黄で作るリキュール。ホイップクリームをのせる
ファイヤーボール、ガム。赤い
つぶつぶ飾りのついたフィリングいりのリングクッキー
ライスプディングケーキ
尻からジャガイモやニンニクや、ネとかビーツとかをいっぱい詰めたかもや七面鳥
ホットチョコレート
トムプース、オランダ独特のミルフィーユ風なケーキ
アップルストロープ、りんごを原料とする濃厚なエキス状のペースト
レーズン入りでアイシングのかかったコーヒーブローチェ
卵パン
サワードゥ
スペキュラースクッキー
ミューズリー付きパン
塩漬けハーリンク
ヤギの足(お菓子)
アップルベニエ
オリーボレン、オランダ風ドーナッツ。アップルベニエとともに大晦日に食べる
バターサブレ
デルトフトブーレー
魔女がいっぱい ロアルド・ダール 本
【図書館本】
-
暗くて辛くて、、、
-
魂が入り込めなかった。
宗教的な背景なのか、主人公との感性が違いすぎるのか。
イメージが結ばない。 -
10歳の時スケートに出かけた大好きな兄が氷の割れ目に落ちて死んだ。その喪失感がヤスの心に暗い陰を落とし壊れていく家族とともに闇の中で喘いでいるような日々となる。聖書の言葉が恐ろしい枷となり、父母の修復のための生贄や目覚め始めた性への興味、禍禍しい兄の性的虐待や牛の口蹄疫などいろんな問題がごった煮になった風景が物悲しく広がって、最後の冷凍庫の場面に収束する。
表紙の少女が身を守る赤いジャケットを着てこちらを見る虚な目に恐怖する。
https://www.asahi.com/...
https://www.asahi.com/articles/DA3S15605080.html
【試し読み】オランダ文学界の新星が、10歳の子どもの視点から描く”歪み”──ブッカー国際賞受賞作『不快な夕闇』(マリーケ・ルカス・ライネフェルト/國森由美子訳)|Hayakawa Books & Magazines(β)
https://www.hayakawabooks.com/n/n889d101906b0
オランダの農家育ちの作家が、ブッカー国際賞を最年少受賞。マリーケ・ルカス・ライネフェルトってどんな人?|Hayakawa Books & Magazines(β)
https://www.hayakawabooks.com/n/ne46940d53e87