トラスト ―絆/わが人生/追憶の記/未来―

  • 早川書房 (2023年5月26日発売)
3.84
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本 ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784152102362

作品紹介・あらすじ

1930年代、NY。金融の寵児、アンドルー・べヴルをモデルにした小説『絆』が出版されたが本人はこれに猛反発。自伝を秘書に代筆させる。その後秘書は当時の回想録を記し、数十年後、アンドルーの妻の日記を発見するが--。視点の異なる四篇からなる実験的小説。

感想・レビュー・書評

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  • 巨万の富を築いた投資家とその妻の人生を異なる視点から描いた4部構成。
    本書の帯にあるとおり「全ての先入観が覆される」のですが、じわじわと進行するその感覚たるや。足元が崩れ落ちるような不安に陥りながらもぞくぞくする高揚感、かつてない読書体験。

    第4部のミルドレッドの日記がとてもよかった。豊かな感性で描かれた詩的な表現に何度も胸を突かれました。前半の重厚な文体との対比が互いを引き立てあう見事な構成。
    読み終えて、なぜ『未来』というタイトルがつけられたのか考えています。心に残る余韻が後を引く作品でした。

    ※うーむ毎度のことながら作品の素晴らしさに反比例する感想しか書けない自分にもどかしさを募らせつつも無い袖は振れぬ。はい、愚痴は以上です堪忍して。

  • 小説内小説のメタ構造、信頼できない語り手、で初めの印象を覆していくのは手法としてあるが、4部構成で畳み掛けていく複雑な構造でうまい。
    真実の妻はそういう女性ではなかった、という趣旨は予想通りではある。「絆」がアイダが感心する文学だったのか、夫が描きたい妻像がありきたり、「わが人生」の金融の蘊蓄の細かさと退屈さ(面白いかどうかは人によるのだろうが)は聞き書き設定に合っているのか、など細かいところは気になった。エンタメ的ではあるが、そこまで感心できなかったのでこの点数。それはさておき面白かった。

  • なにこれ、面白かったー!よくできてる。タイトルと表紙の写真から、金融実録物?などと勝手に思いながら、その先入観を払い除けられ(それさえも仕掛けの1つだった?)、『絆』面白いけどふうんそれだけ?と思っていると、『我が人生』でどうもそうじゃないな、と妙な心地がしてくる。さらに『追憶の記』で捻られ、どんどん加速して面白くなり、『未来』で唸る。唸ったし、久々に悪寒もしましたよ。小説を読む時に私は(読者は)何を信じているのか。そこに何があるのか。もしかしたら、早くも、今年のベストかもしれないなあ。

  • 4部作、別の視点からの積み重ねで解き明かす。
    真実は分からないが。
    一気に読ませる組み立てでした。

  • 斬新な構成で、実験的というのは確か。経済史でありファミリーヒストリーでもある、と見せかけて自分勝手な男性の片鱗を見せつける奥深い作品でした。誰もが自分のストーリーを語りたがるとはいえ、あんまりでは、、と思えてしまいます。アイダが見つけてくれてよかった。

    #夏の読書感想文

  • 思いがけず、トランプ、マスクといった起業家が政治の中枢に乗り出してきた2024年。
    起業家の国というアメリカの国是と、政治が名実共に一つになったアメリカの誕生の時で。

    そういうthis is Americaかつwhat is Americaの時代に、この起業家の人生からアメリカを描く本作は、尚のこと時宜を得てきているように感じた。
    つまり、このラスク氏はトランプとも読めるし、今日のアメリカ人的存在の象徴性を感じさせる。

  • 4部作中前半は淡々と読み進めながら、ふぅん、という感じでしたが、「追憶の記」に入ってあれ?思ってたのとちょっと違う?からの「未来」。
    最後の解説にもありますが、本を読むことによる無防備な「信頼」をユラユラと揺るがす、まさにそういう作品でした。
    本を読みながらこれほど不安にかられ、揺れ動いたことはなかった。

  • うーん

  • 投資で富を得た夫婦の真実とは。
    世界恐慌の頃のニューヨークでも男性優位社会だったんだ。
    最後の妻の日記が物足りない気がした。


  • 数学的才能と金融危機を背景に、四篇の物語は響き合い真実の仕掛が読み手を掴む。ミルドレッドの明敏さを感覚で満たす『未来』が凄い。冴える一文の余白に夫の面映い心が透けて影を転写する。"おしまいにしましょう"の声から心は浸った。傑作。

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