生存者

  • 早川書房 (2023年7月19日発売)
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感想 : 7
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  • 本 ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152102539

作品紹介・あらすじ

20年前にある悲劇が起こった湖のコテージに三兄弟が戻ってきた。今、彼らは母親の遺灰を湖に撒き、目を背けてきたあの夏の真実と対峙する。光り輝いていた少年時代を変えた日のことを──スウェーデンを代表する作家が過去と現在を巧みに交差させ描く家族の物語

感想・レビュー・書評

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  • ニルス13歳、ベンヤミン9歳、ピエール7歳の三兄弟は、湖畔のコテージで水泳競争をしたり森で探検したりして過ごす。
    両親は、彼らを見ているようでいて関心がないのがわかる。
    三兄弟は、楽しんでいるようには見えなくて、ただ時が過ぎるのを待っているような気がして仕方ないのだが…。

    彼らの少年時代を振り返りながら…それはベンヤミンの記憶だったが、思いだしながら現在と過去を行き来する。
    20年後、母親の骨壷を持って湖畔のコテージに戻ってきたのは…。
    彼ら兄弟は、何を思ったのか。
    両親をどう思っていたのか。
    そのなかでもベンヤミンの歪んだ記憶が修正されたとき、こんなにも記憶に蓋をするような出来事だったのかとことばも出ない驚きだった。

    コテージでの夏の出来事、楽しめるはずなのに両親は酒浸りといってもいいくらいで、勝手に怒りだしたり情緒不安定。
    ベンヤミンは常に両親の機嫌を気にしていていた。
    ニルスは距離をおき無関心で、ピエールは粗暴さを身につけた。
    これはネグレクトとも呼べる状態であったのかもしれない。
    そんな中でおこる出来事を嫌な部分は抹消したいと望んだ結果だったのだろう。

    夏の記憶としてはとても悲しい。









  • 以前読んだ同じスウェーデン発のミステリ『忘れたとは言わせない』の、北欧特有の寂寥感を味わえるものと期待して、新刊紹介で挙げられていた本作を手に取ってみた。

    少年時代の思い出―――両親と三兄弟で過ごす夏の湖畔のコテージ。機嫌の上下が激しい両親を窺いながらも、楽しいひと時。それから20年後―――母親の骨壺を持ってかつて過ごしたコテージを訪れる三兄弟。とある事件をきっかけに訪れることがなくなった思い出の場所。「あの夏の日に一体何があったのか」―――過去と、遡りながら描かれる現在が交差する時、その真実が明らかとなる―――。

    広大でどこか寂寥感を湛える北欧の森を主な舞台に、とある家族で生じた事件を巡って描かれる、ヒューマンドラマ&ミステリ。事件が起こった少年時代と、遡りながら描かれる20年後の現在が交互に描かれ、最終的に一つに繋がり真相が明らかになるという構成。哀愁と寂寥が物語を占めるが、読了後はほんのりと心に灯が点る、そんな一作。

  • 何よりも構成の練り具合が巧みで、後半に読み進めるほどに味わい深くなる小説でした。

    最初は展開や構成に混乱して、あまり内容がよくわからなかった。

    進むにつれてリトリックがわかってきて、展開を予想する面白さも出てきた。
    三兄弟と両親と冒険を通じた家族愛を感じる作品。

  • 家族で湖畔のコテージで過ごす休暇と、そのコテージに戻って行く現在が交差していく話。

    何かが起こりそうな不穏な空気がずっと流れていて、家族がダメになっていくまでのカウントダウンを見せられている気分になる。
    物語の形式上、最後まで読んだ後にもう一回読みたくなる。

  • 夏に家族と過ごしたコテージに三兄弟が数十年ぶりに向かう。しかしそこで起こった兄弟の喧嘩は警察と救急車をよぶはめに。三兄弟が家族とともに過ごした幼少の頃のコテージの思い出と交互にして喧嘩から数時間ずつ時間を遡りながらどういう経緯で三兄弟がまたコテージへ行くことになったのかが徐々に明らかになっていく。
    次男のベンヤミンを中心として幼少の頃の思い出が描かれていくのだけど、夏のコテージの美しさとともに自然の荒涼とした雰囲気、そして家族間に漂うぎこちなさに読んでいて不思議な懐かしさを感じる。
    母親が家族、子どもに対する態度、思い。父親が家族、子どもに対する態度、思い。そして兄弟のなかで家族全体に思うこと、そして兄、弟に対しての愛憎の複雑さ。子どもが大きくなるにつれ少しずつ回らなくなる家族。
    一つ一つの思い出のなかに描かれていく抱えているものがちょっとした描写で感じられて胸が苦しくなる。
    抱え込んで口に出されなかった思いは口にしないと伝わらず、それは後戻りできない段階になってようやく口に出せて伝えることができる。
    悔恨と愛情とで読み終わった瞬間にため息がでる。そして改めてまた読み直したくなる。最初とまた違う感触がありそうで。
    大人になった頃の母親の誕生日パーティの場面は、すべて分かったうえで読むと苦しさが増す。家族という関係はものすごく近くて他にはない関係性で、さらけ出すことに遠慮はいらないながらも、だからこそそこで秘密が生まれるし言えない思いも出てくる。複雑だと改めて思ったりもする物語だった。

  • 構成が見事で
    今と過去の話が交互に描かれていきます。

    つまり本の1番最初がエンディングなので
    全部終わって読み返すと
    こうなるのかとなりました

    家族愛とは
    母親、父親、兄弟
    難しい話でしたが終わってみればスッキリした

  • パイを連想。

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